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2023年12月31日 [仕事関係のおさらい]
今年初めて、ブログを更新しました。と言っても、12月31日ですが。年の前半はやることが多くて、更新をあとまわしにしているうちに、年が暮れてしまいました。
2023年は、単著を3冊(『ある裁判の戦記』『この国の同調圧力』『アイヒマンと日本人』)を上梓し、内田樹さんとの対談ブックレット『「ある裁判の戦記」を読む』が刊行されました。
また、もう20年以上も寄稿している「歴史群像」には『オーストリアの第二次大戦』『ヒトラー暗殺計画』『オランダの軍事史とナチス支配時代を知る(博物館探訪)』『KGB』『ムルマンスクの戦い』『ナルヴィクの戦い』の6本を寄稿しました。
8月には、文化放送ラジオの「大竹まこと ゴールデンラジオ」にリモートで出演しました(通算三度目)。その時の音源は、同番組の公式YouTubeチャンネルで公開されています。
【大竹まことゴールデンラジオ】2023年8月7日
新型コロナウイルスの感染もいったん落ち着いたということで、取材を兼ねた旅行も今年から再開しました。3月には、オランダのアムステルダムと周辺地域、フランスのパリに行きました。
アムステルダムでは、国立美術館で開催されていた「大フェルメール展(現存する35作品のうち28点を展示)」を鑑賞したり、前記した「歴史群像」の博物館探訪記で紹介した、国立軍事博物館と抵抗運動博物館、アーメルスフォールト収容所記念館などを見学しました。
パリでは、市内のみどころと郊外のサン・ジェルマン・アン・レー城(第一次大戦の連合国とオーストリアの講和条約が調印された場所)などを見学したほか、歴史ボードゲーム関連の友人たちと再会し、一緒に食事しました。
6月には、今年一度目(通算二度目)の北海道旅行を行い、前半は函館と白老、札幌で史跡や博物館などを見学し、後半は中標津を拠点に羅臼、摩周湖、阿寒湖、屈斜路湖、網走、根室、納沙布岬、釧路を回りました。羅臼では、天気が良かったので、ソ連/ロシアに不法占拠されている北方領土の国後島がクリアに見えました。
11月には、まず内田樹さんと凱風館門人の皆さんと韓国の釜山を訪れ、市内の博物館(臨時首都記念館、日帝強制動員歴史館、国連平和記念館など)や巨済島の巨済島捕虜収容所記念公園を見学しました。
続いて、今年二度目の北海道旅行を行い、札幌で差別とヘイトスピーチに関する講演を行ったほか、同市内と小樽、旭川で博物館や歴史施設を見学しました。
他にも、雑誌や新聞のインタビューを受けたり、さまざまな形での言論活動を行ってきました。また、10月にパレスチナのガザとイスラエルの戦争が始まったことで、日本で中東紛争に関心が高まり、2016年に上梓した『[新版]中東戦争全史』の増刷が二回かかりました。刊行から7年が経過しましたが、本の末尾にはイスラエルのネタニヤフ首相とパレスチナの武装政治組織ハマスの対立と「利害の一致」について言及しており、現在の状況を理解する上で、有益な情報を提供できたのではないかと考えています。
来年は、2月に文庫本を一冊、3月に新書を一冊上梓する予定ですが、できれば後半にあと一冊くらい、何らかの著書を出せたらと思っています。
私の本を買って下さった方々をはじめ、今年一年、親切にしてくださった方々に感謝いたします。来年もよろしくお願いいたします。それでは、皆様もよいお年を。
【おまけ】
各地でいただいた美味しいもの。
アムステルダムのハンバーガーセット。パンも肉も私の好みで、野菜もしっかり入っていて大満足でした。
パリのロニョン・ド・ヴォー(仔牛の腎臓)。現地の友人が連れて行ってくれた、肉屋直営のレストランの名物メニューとのことで、臭みもなく美味しくいただきました。
小樽の炭焼きニシン定食と浜茹でシャコ。店先で串に刺して炭で焼いていて、メスのお腹には加熱した数の子がたっぷり入っていて美味でした。シャコも、関西ではほとんど見なくなりましたが、小樽はシャコの漁場です。
旭川のラーメン。11月でも昼間の気温が1〜2度で、あったかいラーメンのスープが五臓六腑に染み渡りました。
新千歳空港でいただいたイクラかに丼。北海道のイクラはとにかく旨くて、行く度に何度も食べてしまいます。
2023年は、単著を3冊(『ある裁判の戦記』『この国の同調圧力』『アイヒマンと日本人』)を上梓し、内田樹さんとの対談ブックレット『「ある裁判の戦記」を読む』が刊行されました。
また、もう20年以上も寄稿している「歴史群像」には『オーストリアの第二次大戦』『ヒトラー暗殺計画』『オランダの軍事史とナチス支配時代を知る(博物館探訪)』『KGB』『ムルマンスクの戦い』『ナルヴィクの戦い』の6本を寄稿しました。
8月には、文化放送ラジオの「大竹まこと ゴールデンラジオ」にリモートで出演しました(通算三度目)。その時の音源は、同番組の公式YouTubeチャンネルで公開されています。
【大竹まことゴールデンラジオ】2023年8月7日
新型コロナウイルスの感染もいったん落ち着いたということで、取材を兼ねた旅行も今年から再開しました。3月には、オランダのアムステルダムと周辺地域、フランスのパリに行きました。
アムステルダムでは、国立美術館で開催されていた「大フェルメール展(現存する35作品のうち28点を展示)」を鑑賞したり、前記した「歴史群像」の博物館探訪記で紹介した、国立軍事博物館と抵抗運動博物館、アーメルスフォールト収容所記念館などを見学しました。
パリでは、市内のみどころと郊外のサン・ジェルマン・アン・レー城(第一次大戦の連合国とオーストリアの講和条約が調印された場所)などを見学したほか、歴史ボードゲーム関連の友人たちと再会し、一緒に食事しました。
6月には、今年一度目(通算二度目)の北海道旅行を行い、前半は函館と白老、札幌で史跡や博物館などを見学し、後半は中標津を拠点に羅臼、摩周湖、阿寒湖、屈斜路湖、網走、根室、納沙布岬、釧路を回りました。羅臼では、天気が良かったので、ソ連/ロシアに不法占拠されている北方領土の国後島がクリアに見えました。
11月には、まず内田樹さんと凱風館門人の皆さんと韓国の釜山を訪れ、市内の博物館(臨時首都記念館、日帝強制動員歴史館、国連平和記念館など)や巨済島の巨済島捕虜収容所記念公園を見学しました。
続いて、今年二度目の北海道旅行を行い、札幌で差別とヘイトスピーチに関する講演を行ったほか、同市内と小樽、旭川で博物館や歴史施設を見学しました。
他にも、雑誌や新聞のインタビューを受けたり、さまざまな形での言論活動を行ってきました。また、10月にパレスチナのガザとイスラエルの戦争が始まったことで、日本で中東紛争に関心が高まり、2016年に上梓した『[新版]中東戦争全史』の増刷が二回かかりました。刊行から7年が経過しましたが、本の末尾にはイスラエルのネタニヤフ首相とパレスチナの武装政治組織ハマスの対立と「利害の一致」について言及しており、現在の状況を理解する上で、有益な情報を提供できたのではないかと考えています。
来年は、2月に文庫本を一冊、3月に新書を一冊上梓する予定ですが、できれば後半にあと一冊くらい、何らかの著書を出せたらと思っています。
私の本を買って下さった方々をはじめ、今年一年、親切にしてくださった方々に感謝いたします。来年もよろしくお願いいたします。それでは、皆様もよいお年を。
【おまけ】
各地でいただいた美味しいもの。
アムステルダムのハンバーガーセット。パンも肉も私の好みで、野菜もしっかり入っていて大満足でした。
パリのロニョン・ド・ヴォー(仔牛の腎臓)。現地の友人が連れて行ってくれた、肉屋直営のレストランの名物メニューとのことで、臭みもなく美味しくいただきました。
小樽の炭焼きニシン定食と浜茹でシャコ。店先で串に刺して炭で焼いていて、メスのお腹には加熱した数の子がたっぷり入っていて美味でした。シャコも、関西ではほとんど見なくなりましたが、小樽はシャコの漁場です。
旭川のラーメン。11月でも昼間の気温が1〜2度で、あったかいラーメンのスープが五臓六腑に染み渡りました。
新千歳空港でいただいたイクラかに丼。北海道のイクラはとにかく旨くて、行く度に何度も食べてしまいます。
2022年12月30日 [仕事関係のおさらい]
8月15日の更新以来、いろんな用事にかまけてブログを放置してしまいましたが、この4か月の仕事に関する新しい情報を投稿します。
まず、1999年から23年間、1回のお休みを除いて毎号寄稿している雑誌「歴史群像」(ワン・パブリッシング)への寄稿から。
9月発売の10月号の担当記事は「アイゼンハワー」で、第二次大戦後半戦で西ヨーロッパをナチスドイツから解放した、欧州連合軍最高司令官の評伝です。
16年間も少佐止まりだった下積み時代、パワハラ上司マッカーサーの下での苦労などを経て、第二次大戦勃発時は中佐だった彼が、たった数年で欧州連合軍最高司令官と元帥に昇進。そんなサクセスストーリーと、戦後に合衆国大統領へ選出されるまでの足跡を概説しました。長い下積み時代に培った専門知識と経験が、有事に大きな力となって花開いた希有な事例です。
11月発売の12月号の担当記事は「韓国軍の歴史」で、大日本帝国による朝鮮併合の時期から現在にいたるまでの韓国軍とその成立前段階の歴史を、組織と精神文化、戦歴等から概説しました。
創設時の韓国軍幹部のほとんどは、日本軍や満洲国軍の元軍人でした。反共思想を含む日本軍の精神文化を継承して創設された韓国軍の、国内と海外での「戦い」の足跡を俯瞰しています。
そして来年1月6日発売予定の23年2月号の担当記事は「フランコ伝」で、20世紀のスペイン史に大きな足跡を残した「独裁者」フランコの人物伝です。
スペイン現代史で最も国際的知名度の高い軍人政治家の足跡を、青年将校時代からスペイン内戦期、さまざまな思惑で中立を維持した第二次大戦期、戦後の独裁政権期へとたどります。ヒトラーやムッソリーニと似た面もありましたが、大きく違う面もあり、それゆえ前二者が滅びた後も、フランコは生き延びたのだろうと思います。
大阪府保険医協会が刊行する「大阪保険医雑誌」2022年8・9月号に、「戦争プロパガンダと歴史修正主義」という原稿を寄稿しました。
戦争プロパガンダと歴史修正主義は、構造的にも目的面でも共通点が多く、それらの手法と影響力を分析することは、あらゆる「政治プロパガンダ」を読み解く上でも役立つと思います。
財界展望社の「ZAITEN」10月号には、9月の安倍国葬に関するメディア報道の「弱腰」あるいは「下僕的態度」を批判する記事を寄せました。権力者が横暴な態度をとれば、最前線でそれに抗うべき政治報道の業界人が、異様なほど弱腰になっていると改めて思いました。戦前戦中のメディアと同じ道。「この先」が危険です。
全日本教職員組合の機関誌「クレスコ」(大月書店)12月号の巻頭エッセイ「私の出会った先生」にも寄稿しました。小5〜6年の担任だったH先生の話。当時先生を通じて買った本『科学的とはどういうことか』(板倉聖宣著、仮説社)は引っ越しの時も手放さず、今も書庫にあります。
前回のブログ更新直後の8月15日には、東京の文化放送ラジオ「大竹まこと ゴールデンラジオ」にリモートで出演しました。
同番組への出演は、2015年に続いて二度目でしたが、新刊『未完の敗戦』(集英社新書)で提起した「なぜこの国は人を粗末に扱うのか」という観点で、現在の日本社会の問題点について、さまざまな事例を挙げながら自分の考えを述べました。
この時の放送は、私の出演部分の音源がYouTubeで公開されています。26分25秒ありますが、興味のある方はぜひお聴きください。
【ゲスト:山崎雅弘】2022年8月15日(月)【大竹まことゴールデンラジオ】
7月14日に共同通信の記者が名張まで来られ、近所の珈琲店で受けたインタビューの記事が、8月15日とその前後に各地の地方紙約20紙に掲載されました。
テーマは、こちらも『未完の敗戦』で指摘した「日本軍の人を粗末にする形での戦争遂行」とその原因(従順さを子どもに植え付ける教育)、現在もなお社会にはびこる「人を大事にせず粗末に扱う精神文化」などについて話しました。
11月8日にZoomで受けたインタビューの内容が、11月21日付の神奈川新聞の記事で取り上げられました。外務省が公式サイトで始めた「我が国の立場と相容れない、又は我が国に関する事実誤認に基づく記述についての情報提供」というページの政治的な意味について、背景にある政治的意図「歴史戦」に言及しつつ所見を述べました。
10月15日には、朝日カルチャーセンター新宿教室主催でオンライン講座を行いました。8月に上梓した『太平洋戦争秘史』(朝日新書)を軸に、アジア太平洋戦争を「周辺国と植民地の視点」から振り返る意味、国際社会で互換性のある歴史認識などについて語りました。
ブルース・リーの映画「ドラゴン危機一髪」、大沢たかお主演「深夜特急」パート1、NHK大河ドラマ「いだてん」などのエピソードも絡めながら、東南アジアの旧植民地や周辺国と太平洋戦争について、今までとは少し違った観点の話をできたのでは、と思います。
11月15日には、衆議院第2議員会館第5会議室で講演を行いました。タイトルは【「安倍後」も続く「戦前回帰」の背景】。
冒頭で、7年前の2015年に『戦前回帰』(初版は学研)を上梓した理由について説明し、その「理由」、つまり1930年代の大日本帝国時代と重なる社会的現象の増加が、安倍氏の退場後も続いている事実を指摘しました。
7月から12月まで、毎月名古屋の栄中日文化センターで行った連続講座「知られざる第二次世界大戦・太平洋戦争 周辺国から読み解く」も、全六回を無事に終了しました。『第二次世界大戦秘史』と『太平洋戦争秘史』で紹介した、大国以外の「周辺国と植民地」の視点で、ヨーロッパの第二次大戦とアジア太平洋戦争を読み直すという内容でしたが、毎回とても鋭い質問が寄せられ、緊張しつつも中身の濃い講座にできたのでは、と思います。
このほか、2008年に個人出版した歴史ボードゲーム「モスクワ攻防戦」の中国語版が、9月末に上海のメーカーから出版され、10月8日に見本が届きました。
莫斯科で「モスクワ」と読みます。グラフィックは私が制作したオリジナル版をほぼ流用し、テキスト部分だけ中国語に変換されました。本作は2020年にアメリカのメーカーからも英語版が出版されたものです。来年も、いくつかの歴史ボードゲームについて、中国語版を出す話が進行しています。
このブログの2022年の記事を読み返すと、今年もいろいろなことがあった一年だったと深い感慨を覚えます。8月に父が永眠するなど、つらい出来事もありましたが、全体としては充実した2022年でした。
今年は新書三冊を上梓しましたが、来年は(現時点で決まっているものとして)、単行本一冊と新書二冊、文庫本一冊を出す予定で、それ以外にもさまざまな活動をしていく所存です。今年一年、応援やご支援を下さった方々に深くお礼を申し上げます。来年もよろしくお願いいたします。
それでは皆様も、よいお年を!
【おまけ】
びわ湖の西岸から湖を見渡した光景です。来年は、コロナの感染拡大も収まりますように。
まず、1999年から23年間、1回のお休みを除いて毎号寄稿している雑誌「歴史群像」(ワン・パブリッシング)への寄稿から。
9月発売の10月号の担当記事は「アイゼンハワー」で、第二次大戦後半戦で西ヨーロッパをナチスドイツから解放した、欧州連合軍最高司令官の評伝です。
16年間も少佐止まりだった下積み時代、パワハラ上司マッカーサーの下での苦労などを経て、第二次大戦勃発時は中佐だった彼が、たった数年で欧州連合軍最高司令官と元帥に昇進。そんなサクセスストーリーと、戦後に合衆国大統領へ選出されるまでの足跡を概説しました。長い下積み時代に培った専門知識と経験が、有事に大きな力となって花開いた希有な事例です。
11月発売の12月号の担当記事は「韓国軍の歴史」で、大日本帝国による朝鮮併合の時期から現在にいたるまでの韓国軍とその成立前段階の歴史を、組織と精神文化、戦歴等から概説しました。
創設時の韓国軍幹部のほとんどは、日本軍や満洲国軍の元軍人でした。反共思想を含む日本軍の精神文化を継承して創設された韓国軍の、国内と海外での「戦い」の足跡を俯瞰しています。
そして来年1月6日発売予定の23年2月号の担当記事は「フランコ伝」で、20世紀のスペイン史に大きな足跡を残した「独裁者」フランコの人物伝です。
スペイン現代史で最も国際的知名度の高い軍人政治家の足跡を、青年将校時代からスペイン内戦期、さまざまな思惑で中立を維持した第二次大戦期、戦後の独裁政権期へとたどります。ヒトラーやムッソリーニと似た面もありましたが、大きく違う面もあり、それゆえ前二者が滅びた後も、フランコは生き延びたのだろうと思います。
大阪府保険医協会が刊行する「大阪保険医雑誌」2022年8・9月号に、「戦争プロパガンダと歴史修正主義」という原稿を寄稿しました。
戦争プロパガンダと歴史修正主義は、構造的にも目的面でも共通点が多く、それらの手法と影響力を分析することは、あらゆる「政治プロパガンダ」を読み解く上でも役立つと思います。
財界展望社の「ZAITEN」10月号には、9月の安倍国葬に関するメディア報道の「弱腰」あるいは「下僕的態度」を批判する記事を寄せました。権力者が横暴な態度をとれば、最前線でそれに抗うべき政治報道の業界人が、異様なほど弱腰になっていると改めて思いました。戦前戦中のメディアと同じ道。「この先」が危険です。
全日本教職員組合の機関誌「クレスコ」(大月書店)12月号の巻頭エッセイ「私の出会った先生」にも寄稿しました。小5〜6年の担任だったH先生の話。当時先生を通じて買った本『科学的とはどういうことか』(板倉聖宣著、仮説社)は引っ越しの時も手放さず、今も書庫にあります。
前回のブログ更新直後の8月15日には、東京の文化放送ラジオ「大竹まこと ゴールデンラジオ」にリモートで出演しました。
同番組への出演は、2015年に続いて二度目でしたが、新刊『未完の敗戦』(集英社新書)で提起した「なぜこの国は人を粗末に扱うのか」という観点で、現在の日本社会の問題点について、さまざまな事例を挙げながら自分の考えを述べました。
この時の放送は、私の出演部分の音源がYouTubeで公開されています。26分25秒ありますが、興味のある方はぜひお聴きください。
【ゲスト:山崎雅弘】2022年8月15日(月)【大竹まことゴールデンラジオ】
7月14日に共同通信の記者が名張まで来られ、近所の珈琲店で受けたインタビューの記事が、8月15日とその前後に各地の地方紙約20紙に掲載されました。
テーマは、こちらも『未完の敗戦』で指摘した「日本軍の人を粗末にする形での戦争遂行」とその原因(従順さを子どもに植え付ける教育)、現在もなお社会にはびこる「人を大事にせず粗末に扱う精神文化」などについて話しました。
11月8日にZoomで受けたインタビューの内容が、11月21日付の神奈川新聞の記事で取り上げられました。外務省が公式サイトで始めた「我が国の立場と相容れない、又は我が国に関する事実誤認に基づく記述についての情報提供」というページの政治的な意味について、背景にある政治的意図「歴史戦」に言及しつつ所見を述べました。
10月15日には、朝日カルチャーセンター新宿教室主催でオンライン講座を行いました。8月に上梓した『太平洋戦争秘史』(朝日新書)を軸に、アジア太平洋戦争を「周辺国と植民地の視点」から振り返る意味、国際社会で互換性のある歴史認識などについて語りました。
ブルース・リーの映画「ドラゴン危機一髪」、大沢たかお主演「深夜特急」パート1、NHK大河ドラマ「いだてん」などのエピソードも絡めながら、東南アジアの旧植民地や周辺国と太平洋戦争について、今までとは少し違った観点の話をできたのでは、と思います。
11月15日には、衆議院第2議員会館第5会議室で講演を行いました。タイトルは【「安倍後」も続く「戦前回帰」の背景】。
冒頭で、7年前の2015年に『戦前回帰』(初版は学研)を上梓した理由について説明し、その「理由」、つまり1930年代の大日本帝国時代と重なる社会的現象の増加が、安倍氏の退場後も続いている事実を指摘しました。
7月から12月まで、毎月名古屋の栄中日文化センターで行った連続講座「知られざる第二次世界大戦・太平洋戦争 周辺国から読み解く」も、全六回を無事に終了しました。『第二次世界大戦秘史』と『太平洋戦争秘史』で紹介した、大国以外の「周辺国と植民地」の視点で、ヨーロッパの第二次大戦とアジア太平洋戦争を読み直すという内容でしたが、毎回とても鋭い質問が寄せられ、緊張しつつも中身の濃い講座にできたのでは、と思います。
このほか、2008年に個人出版した歴史ボードゲーム「モスクワ攻防戦」の中国語版が、9月末に上海のメーカーから出版され、10月8日に見本が届きました。
莫斯科で「モスクワ」と読みます。グラフィックは私が制作したオリジナル版をほぼ流用し、テキスト部分だけ中国語に変換されました。本作は2020年にアメリカのメーカーからも英語版が出版されたものです。来年も、いくつかの歴史ボードゲームについて、中国語版を出す話が進行しています。
このブログの2022年の記事を読み返すと、今年もいろいろなことがあった一年だったと深い感慨を覚えます。8月に父が永眠するなど、つらい出来事もありましたが、全体としては充実した2022年でした。
今年は新書三冊を上梓しましたが、来年は(現時点で決まっているものとして)、単行本一冊と新書二冊、文庫本一冊を出す予定で、それ以外にもさまざまな活動をしていく所存です。今年一年、応援やご支援を下さった方々に深くお礼を申し上げます。来年もよろしくお願いいたします。
それでは皆様も、よいお年を!
【おまけ】
びわ湖の西岸から湖を見渡した光景です。来年は、コロナの感染拡大も収まりますように。
2022年8月15日 [仕事関係のおさらい]
久々に更新です。まず、今月12日に発売となった、今年3冊目の新刊の紹介から。
タイトルは『太平洋戦争秘史』(朝日新書)。今年2月に上梓した『第二次世界大戦秘史』(同)の姉妹編で、太平洋戦争を「大国(日米英中)以外」の視点(周辺国と植民地)の視点から読み直します。大国に偏重しがちな歴史認識を深めるために役立てていただければ幸いです。
『太平洋戦争秘史』の章立てです。仏印や香港、タイ(東南アジアの独立国)、オーストラリアやニュージーランドの太平洋戦争との関わりは、断片的にしか語られないことが多いと思います。モンゴルの章では、同人民共和国、満洲国、中華民国に分かれたモンゴル人の戦いを解説しています。
『第二次世界大戦秘史』と同様、『太平洋戦争秘史』も知られざるエピソードが満載の、中身がたっぷり詰まった一冊です。ぜひ併せてご一読を。日本国内の一部でしか通用しない「日本中心の歴史認識」でなく、諸外国の人々と互換性のある「国際基準の歴史認識」を持つことが、今後さらに必要になるでしょう。
今年5月に上梓した『未完の敗戦』(集英社新書)も、好評発売中です。6月19日、大阪の隆祥館書店にて、この本の発売記念として、内田樹さんとの対談イベントをしました。
6月22日付の毎日新聞夕刊に、私のインタビュー記事が掲載されました。『未完の敗戦』の内容とも絡めながら、現在の日本社会の問題点について、思うところを語りました。
7月6日には雑誌「歴史群像」の8月号が出ました。私の担当記事は「シリア内戦とロシア軍」で、2011年に始まったシリア内戦でバッシャール・アサド政権をロシアのプーチンが支援し、2015年から本格的な軍事介入を行った経緯を読み解いています。ロシア軍のシリアでの行動は、ウクライナ戦争ともリンクします。
2015年にロシア軍がシリア内戦に本格介入し、ロシア航空機の爆撃でISと反アサド派を駆逐してアサド体制を立て直した時、ロシア国内でのプーチンの支持率は爆上がり。しかしロシア軍はシリア軍の化学兵器使用を黙認(データを共有?)し、シリア内戦を新兵器や新戦術の実戦テストに利用しました。
7月7日に発売された、朝日新聞出版のムック「歴史道」で、24ページ分の原稿執筆と監修を行いました。ウクライナでの戦争を機に改めて注目されている第二次大戦。その勃発に至るヨーロッパの国際関係と、戦争初期のドイツ軍による電撃的侵攻を解説しています。
電子書籍の新刊も、久々に出しました。
タイトルは『金門島の戦い 1949』で、第二次大戦終結から4年後の1949年10月に、中国の「国共内戦」の一環として繰り広げられた金門島の戦いを、主に台湾側の戦史研究資料に依拠して分析した概説書です。
一年前に「歴史群像」誌に掲載された記事の電子版ですが、巻末に「『根本博中将の金門島防衛伝説』の真偽」と題したコラム記事(歴群掲載版に大幅に加筆したもの)を収録し、「金門島の戦いでの国民党軍の本当の指揮官は根本博だった」という、日本の一部で信じられている「ストーリー」の信憑性についても検証しています。
金門島の戦い 1949(Amazon)
6月30日には、集英社のサイト「イミダス」に久しぶりに寄稿しました。タイトルは「『日本もウクライナのように侵略される』というのは本当か」。ウクライナ戦争の勃発後、日本で広まりつつある「防衛力はもっと強化すべき」という世論の危うさについて、思うところを述べています。締めくくりの言葉は「日本人が真に警戒すべき脅威は、国の外と内のどちらにあるのか、今はそれを冷静に考えるべき時だと思います。」
「日本もウクライナのように侵略される」というのは本当か(imidas)
さて、ギリギリの告知になりましたが、本日(8月15日)、文化放送の「大竹まこと ゴールデンラジオ」に出演予定です。私の出演予定時間は、14時25分頃からの予定です。同番組への出演は、『戦前回帰』を上梓した2015年以来の2回目ですが、今回は『未完の敗戦』の内容に関連して、今の日本社会の諸問題について、考えをお話するつもりです。関東にお住まいの方は、ぜひお聴きください。
名古屋のテレビ塔。7月から、名古屋のカルチャーセンターで毎月一回の講座を担当しています。
タイトルは『太平洋戦争秘史』(朝日新書)。今年2月に上梓した『第二次世界大戦秘史』(同)の姉妹編で、太平洋戦争を「大国(日米英中)以外」の視点(周辺国と植民地)の視点から読み直します。大国に偏重しがちな歴史認識を深めるために役立てていただければ幸いです。
『太平洋戦争秘史』の章立てです。仏印や香港、タイ(東南アジアの独立国)、オーストラリアやニュージーランドの太平洋戦争との関わりは、断片的にしか語られないことが多いと思います。モンゴルの章では、同人民共和国、満洲国、中華民国に分かれたモンゴル人の戦いを解説しています。
『第二次世界大戦秘史』と同様、『太平洋戦争秘史』も知られざるエピソードが満載の、中身がたっぷり詰まった一冊です。ぜひ併せてご一読を。日本国内の一部でしか通用しない「日本中心の歴史認識」でなく、諸外国の人々と互換性のある「国際基準の歴史認識」を持つことが、今後さらに必要になるでしょう。
今年5月に上梓した『未完の敗戦』(集英社新書)も、好評発売中です。6月19日、大阪の隆祥館書店にて、この本の発売記念として、内田樹さんとの対談イベントをしました。
6月22日付の毎日新聞夕刊に、私のインタビュー記事が掲載されました。『未完の敗戦』の内容とも絡めながら、現在の日本社会の問題点について、思うところを語りました。
7月6日には雑誌「歴史群像」の8月号が出ました。私の担当記事は「シリア内戦とロシア軍」で、2011年に始まったシリア内戦でバッシャール・アサド政権をロシアのプーチンが支援し、2015年から本格的な軍事介入を行った経緯を読み解いています。ロシア軍のシリアでの行動は、ウクライナ戦争ともリンクします。
2015年にロシア軍がシリア内戦に本格介入し、ロシア航空機の爆撃でISと反アサド派を駆逐してアサド体制を立て直した時、ロシア国内でのプーチンの支持率は爆上がり。しかしロシア軍はシリア軍の化学兵器使用を黙認(データを共有?)し、シリア内戦を新兵器や新戦術の実戦テストに利用しました。
7月7日に発売された、朝日新聞出版のムック「歴史道」で、24ページ分の原稿執筆と監修を行いました。ウクライナでの戦争を機に改めて注目されている第二次大戦。その勃発に至るヨーロッパの国際関係と、戦争初期のドイツ軍による電撃的侵攻を解説しています。
電子書籍の新刊も、久々に出しました。
タイトルは『金門島の戦い 1949』で、第二次大戦終結から4年後の1949年10月に、中国の「国共内戦」の一環として繰り広げられた金門島の戦いを、主に台湾側の戦史研究資料に依拠して分析した概説書です。
一年前に「歴史群像」誌に掲載された記事の電子版ですが、巻末に「『根本博中将の金門島防衛伝説』の真偽」と題したコラム記事(歴群掲載版に大幅に加筆したもの)を収録し、「金門島の戦いでの国民党軍の本当の指揮官は根本博だった」という、日本の一部で信じられている「ストーリー」の信憑性についても検証しています。
金門島の戦い 1949(Amazon)
6月30日には、集英社のサイト「イミダス」に久しぶりに寄稿しました。タイトルは「『日本もウクライナのように侵略される』というのは本当か」。ウクライナ戦争の勃発後、日本で広まりつつある「防衛力はもっと強化すべき」という世論の危うさについて、思うところを述べています。締めくくりの言葉は「日本人が真に警戒すべき脅威は、国の外と内のどちらにあるのか、今はそれを冷静に考えるべき時だと思います。」
「日本もウクライナのように侵略される」というのは本当か(imidas)
さて、ギリギリの告知になりましたが、本日(8月15日)、文化放送の「大竹まこと ゴールデンラジオ」に出演予定です。私の出演予定時間は、14時25分頃からの予定です。同番組への出演は、『戦前回帰』を上梓した2015年以来の2回目ですが、今回は『未完の敗戦』の内容に関連して、今の日本社会の諸問題について、考えをお話するつもりです。関東にお住まいの方は、ぜひお聴きください。
名古屋のテレビ塔。7月から、名古屋のカルチャーセンターで毎月一回の講座を担当しています。
2022年5月31日 [仕事関係のおさらい]
2か月ぶりの更新です。まずは、今年二冊目の新刊のご紹介から。
5月17日に『未完の敗戦』(集英社新書)が刊行されました。この国は、なぜ人を粗末に扱うのか、という社会問題の根源を多角的に検証すると、1945年の敗戦で社会から除去されたはずの「大日本帝国型の精神文化」があちこちに残っているからだという結論に至りました。
タイトルの『未完の敗戦』とは、1945年の「敗戦」を日本はきちんと「完結」しなかった、つまり問題の根源である「大日本帝国型の精神文化」を社会から一掃できなかったがために、今また当時と同じ過ちを繰り返しているという意味です。
その象徴が2021年夏の東京五輪(オリンピック・パラリンピック)の開催強行で、自民党の菅政権による、コロナ感染拡大中の東京五輪開催強行が、いかに人命を軽視した異常な暴挙であったか、NHKなどの大手メディアはそれにどう加担したかを、大量の資料に基づいて批判的に検証しています。
帯に書かれているような日本社会の問題について「こういう問題がある」という指摘や批判は多いですが、それらに共通する根源的な原因を探る分析は、あるようで実は見当たらないように思います。本書は問題点の批判だけでなく、どうすればそこから脱却できるかという前向きな提言もしています。今ならまだ、前回「大日本帝国がたどった道」から市民が降りられる段階です。さらに加速すれば降りられない。人が粗末に扱われる精神文化は、もう止めにしましょう。
5月17日の朝日新聞朝刊に掲載された『未完の敗戦』(集英社新書)の広告。隣の『フィンランド 幸せのメソッド』との対比がすごい。
3年前の5月17日の朝日新聞朝刊に掲載された『歴史戦と思想戦』(集英社新書)の広告。『未完の敗戦』の中でも、大日本帝国を擁護する「歴史戦」について触れた箇所がありますが、重複を避けるため、要点のみに絞り込んでいます。併せて読んでいただければ、その箇所の理解がより深まるかと思います。
集英社の情報誌『青春と読書』6月号には、私のインタビュー記事(6ページ)が掲載されています。主な内容は『未完の敗戦』の執筆意図ですが、プーチン大統領のウクライナ侵攻での思考や行動が、大日本帝国のそれと似通っている理由などの話題にも言及しました。一冊91円で、書店で注文できると思います。
この『青春と読書』6月号に掲載された私のインタビュー記事は、ネット版で全文読める模様です。歴史の話が多いですが、どれも今の日本社会の問題点と繋がります。
『未完の敗戦』山崎雅弘さんに聞く「過去の誤った道を再び歩まないために──」(集英社 青春と読書)
5月6日には、「歴史群像」誌の6月号(第173号)が発売されました。私の担当記事は「キエフ包囲戦」で、独ソ戦初期の1941年6月〜9月のウクライナ方面での戦いがメインですが、前史の部分ではキエフ(現キーウ)の町の起こりや、ロシア内戦期のウクライナが置かれた複雑な立場にも触れています。諸々の背景を知る参考になれば幸いです。
「歴史群像」誌の6月号(第173号)は、創刊30周年記念号でもありました。私が最初に同誌へ寄稿したのは1999年の第38号で、当時は季刊でしたが、第45号から隔月刊になりました。1999年から数えて23年間で、一度だけ寄稿をお休みしましたが、それ以外の計135号には毎号(時には2本)原稿を寄稿してきました。付録のボードゲームを計4回、グラフィックも含めてデザインしたこともあります。
雑誌業界の栄華盛衰もある中で、同一誌に23年間も寄稿を続けてこられたのは、筆者としても感慨深いものがあります。ちなみに、それらの原稿の一部は、アマゾンkindleの電子書籍で個人出版していますので、興味のある方はご参照ください。近々、電子書籍の新刊も何冊か出します。
六角堂出版 電子書籍カタログ
ちなみに、7月発売予定の「歴史群像」誌次号の担当記事は「シリア内戦とロシア軍」です。対立の構図が複雑で全体像を把握しにくいシリア内戦ですが、ロシアの介入(前半は政治、後半は軍事)を軸に光を当てれば流れが読み取れると思います。ウクライナでのロシア軍の動きと重なる部分も多々あります。
さて、4月13日、竹田恒泰氏が私に対して起こした裁判での最高裁判所の決定が下されました。
【竹田恒泰氏の上告は棄却、上告受理申立は不受理】
つまり、東京地裁での一審、東京高裁での二審に続き、こちら側の全面勝訴でした。ご支援いただいた皆様、ありがとうございました。
この最高裁の決定を受けて、内田樹さんが総括するコメントを「裁判を支援する会」のサイトに寄せて下さいました。ありがとうございます。この「支援する会」のサイトでは、裁判の関連資料もいろいろ公開しています。
裁判を終えて(内田樹)
私も、「支援する会」のサイトにコメントを寄せました。裁判そのものは、こちら側の完全勝訴で終結しましたが、この裁判とその発端のツイートが示す日本社会の問題は、今もそのまま残っています。
最高裁判所の決定に関するご報告と、これからの行動計画について(山崎雅弘)
最高裁の決定書類は、以下のサイトでご覧いただけます。
2022年4月13日 最高裁決定資料
4月21日の夕方、最高の弁護をしてくださった佃克彦さん、絶大なサポートをしてくださった内田樹さんと、全面勝訴を振り返る記者会見を行いました。その記者会見は、40分近くになりましたが、東京新聞の記事にある動画でノーカットでご覧頂けます。差別問題に関心のある方は、ぜひ最後までご覧ください。「裁判で私は被告の立場だったが、判決を読むと、原告の竹田氏を裁いたように感じた」という私の言葉も、記事中で紹介されています。
竹田恒泰氏の敗訴確定を受け、山崎雅弘氏らが会見「『日本は素晴らしい』も差別につながる」(東京新聞)
弁護士ドットコムのサイトでも、一審勝訴、二審勝訴の会見と同様、最高裁勝訴の会見も丁寧に記事で紹介して下さいました。「明治天皇の玄孫」という枕詞(?)は、竹田恒泰氏本人が訴状に書いたことなので、こんな風に不名誉な形で使われても、すべて竹田恒泰氏の責任です。
竹田恒泰さんの敗訴確定 「差別主義者」ツイート訴訟 「裁かれたのは彼のほう」(弁護士ドットコム)
日刊スポーツも、記者会見の内容を記事で紹介して下さいました。「人権侵害常習犯の差別主義者」という言葉を、私は他で使ったことはありませんが、東京地裁と東京高裁は、竹田恒泰氏の過去の言動を確認した上で、これは公正な論評であるとの判決を下し、最高裁判所もそれを支持しました。
この記者会見の翌日、東京の隣町珈琲で収録した、平川克美さんとの対談音源がリリースされました。
「ウクライナ情勢とスラップ訴訟について」というのは、他ではあまり見かけないタイトルですね。竹田裁判における完全勝訴の報告のあと、ロシア・ウクライナ戦争について所見を述べました。
【特別対談】山崎雅弘×平川克美「ウクライナ情勢とスラップ訴訟について」(ラジオデイズ)
ここからは告知です。
6月19日(日)の午後、「ホロコースト教育資料センター」の主催で、ドイツ在住の中村美耶さんと「日本とドイツ それぞれの戦後」というテーマでZoom対談をします。中村さんは『未完の敗戦』第五章の259ページで書いた「ザクセンハウゼン強制収容所跡で仕事をする人」です。
対談では『未完の敗戦』第五章で触れた、戦後ドイツと戦後日本の「第二次大戦との向き合い方の違い」などについて、両国の実例を交えながら話す予定です。本の中で触れた、ドイツの戦争関連博物館で感じたことと、日本の戦争関連博物館で感じたことの大きな違いなども、より詳しく説明します。
先の戦争との向き合い方について「ドイツから学ぶ」と言うと、すぐに「ドイツを理想化する考えは」と論点をすり替える人がいますが、「学ぶ」とはドイツが理想だという意味ではなく、日本ができていないことをドイツはしているという程度の話です。日本はまだ、敗戦を「完結」させる作業において、スタートラインにも立っていないのでは、と思います。
日本とドイツ それぞれの戦後(詳細情報)
【おまけ】
5月24日に伊勢志摩へ行きました。
竹田裁判における完全勝訴や、今年刊行された新書二冊の売れ行き好調などのお礼の意味もあり、伊勢神宮の外宮と内宮へ。コロナの行動規制も徐々に緩んでいますが、この日はまだ人が少なく、静かな環境でした。
内宮そばのお店でいただいた、地魚の手こね寿司。
5月17日に『未完の敗戦』(集英社新書)が刊行されました。この国は、なぜ人を粗末に扱うのか、という社会問題の根源を多角的に検証すると、1945年の敗戦で社会から除去されたはずの「大日本帝国型の精神文化」があちこちに残っているからだという結論に至りました。
タイトルの『未完の敗戦』とは、1945年の「敗戦」を日本はきちんと「完結」しなかった、つまり問題の根源である「大日本帝国型の精神文化」を社会から一掃できなかったがために、今また当時と同じ過ちを繰り返しているという意味です。
その象徴が2021年夏の東京五輪(オリンピック・パラリンピック)の開催強行で、自民党の菅政権による、コロナ感染拡大中の東京五輪開催強行が、いかに人命を軽視した異常な暴挙であったか、NHKなどの大手メディアはそれにどう加担したかを、大量の資料に基づいて批判的に検証しています。
帯に書かれているような日本社会の問題について「こういう問題がある」という指摘や批判は多いですが、それらに共通する根源的な原因を探る分析は、あるようで実は見当たらないように思います。本書は問題点の批判だけでなく、どうすればそこから脱却できるかという前向きな提言もしています。今ならまだ、前回「大日本帝国がたどった道」から市民が降りられる段階です。さらに加速すれば降りられない。人が粗末に扱われる精神文化は、もう止めにしましょう。
5月17日の朝日新聞朝刊に掲載された『未完の敗戦』(集英社新書)の広告。隣の『フィンランド 幸せのメソッド』との対比がすごい。
3年前の5月17日の朝日新聞朝刊に掲載された『歴史戦と思想戦』(集英社新書)の広告。『未完の敗戦』の中でも、大日本帝国を擁護する「歴史戦」について触れた箇所がありますが、重複を避けるため、要点のみに絞り込んでいます。併せて読んでいただければ、その箇所の理解がより深まるかと思います。
集英社の情報誌『青春と読書』6月号には、私のインタビュー記事(6ページ)が掲載されています。主な内容は『未完の敗戦』の執筆意図ですが、プーチン大統領のウクライナ侵攻での思考や行動が、大日本帝国のそれと似通っている理由などの話題にも言及しました。一冊91円で、書店で注文できると思います。
この『青春と読書』6月号に掲載された私のインタビュー記事は、ネット版で全文読める模様です。歴史の話が多いですが、どれも今の日本社会の問題点と繋がります。
『未完の敗戦』山崎雅弘さんに聞く「過去の誤った道を再び歩まないために──」(集英社 青春と読書)
5月6日には、「歴史群像」誌の6月号(第173号)が発売されました。私の担当記事は「キエフ包囲戦」で、独ソ戦初期の1941年6月〜9月のウクライナ方面での戦いがメインですが、前史の部分ではキエフ(現キーウ)の町の起こりや、ロシア内戦期のウクライナが置かれた複雑な立場にも触れています。諸々の背景を知る参考になれば幸いです。
「歴史群像」誌の6月号(第173号)は、創刊30周年記念号でもありました。私が最初に同誌へ寄稿したのは1999年の第38号で、当時は季刊でしたが、第45号から隔月刊になりました。1999年から数えて23年間で、一度だけ寄稿をお休みしましたが、それ以外の計135号には毎号(時には2本)原稿を寄稿してきました。付録のボードゲームを計4回、グラフィックも含めてデザインしたこともあります。
雑誌業界の栄華盛衰もある中で、同一誌に23年間も寄稿を続けてこられたのは、筆者としても感慨深いものがあります。ちなみに、それらの原稿の一部は、アマゾンkindleの電子書籍で個人出版していますので、興味のある方はご参照ください。近々、電子書籍の新刊も何冊か出します。
六角堂出版 電子書籍カタログ
ちなみに、7月発売予定の「歴史群像」誌次号の担当記事は「シリア内戦とロシア軍」です。対立の構図が複雑で全体像を把握しにくいシリア内戦ですが、ロシアの介入(前半は政治、後半は軍事)を軸に光を当てれば流れが読み取れると思います。ウクライナでのロシア軍の動きと重なる部分も多々あります。
さて、4月13日、竹田恒泰氏が私に対して起こした裁判での最高裁判所の決定が下されました。
【竹田恒泰氏の上告は棄却、上告受理申立は不受理】
つまり、東京地裁での一審、東京高裁での二審に続き、こちら側の全面勝訴でした。ご支援いただいた皆様、ありがとうございました。
この最高裁の決定を受けて、内田樹さんが総括するコメントを「裁判を支援する会」のサイトに寄せて下さいました。ありがとうございます。この「支援する会」のサイトでは、裁判の関連資料もいろいろ公開しています。
裁判を終えて(内田樹)
私も、「支援する会」のサイトにコメントを寄せました。裁判そのものは、こちら側の完全勝訴で終結しましたが、この裁判とその発端のツイートが示す日本社会の問題は、今もそのまま残っています。
最高裁判所の決定に関するご報告と、これからの行動計画について(山崎雅弘)
最高裁の決定書類は、以下のサイトでご覧いただけます。
2022年4月13日 最高裁決定資料
4月21日の夕方、最高の弁護をしてくださった佃克彦さん、絶大なサポートをしてくださった内田樹さんと、全面勝訴を振り返る記者会見を行いました。その記者会見は、40分近くになりましたが、東京新聞の記事にある動画でノーカットでご覧頂けます。差別問題に関心のある方は、ぜひ最後までご覧ください。「裁判で私は被告の立場だったが、判決を読むと、原告の竹田氏を裁いたように感じた」という私の言葉も、記事中で紹介されています。
竹田恒泰氏の敗訴確定を受け、山崎雅弘氏らが会見「『日本は素晴らしい』も差別につながる」(東京新聞)
弁護士ドットコムのサイトでも、一審勝訴、二審勝訴の会見と同様、最高裁勝訴の会見も丁寧に記事で紹介して下さいました。「明治天皇の玄孫」という枕詞(?)は、竹田恒泰氏本人が訴状に書いたことなので、こんな風に不名誉な形で使われても、すべて竹田恒泰氏の責任です。
竹田恒泰さんの敗訴確定 「差別主義者」ツイート訴訟 「裁かれたのは彼のほう」(弁護士ドットコム)
日刊スポーツも、記者会見の内容を記事で紹介して下さいました。「人権侵害常習犯の差別主義者」という言葉を、私は他で使ったことはありませんが、東京地裁と東京高裁は、竹田恒泰氏の過去の言動を確認した上で、これは公正な論評であるとの判決を下し、最高裁判所もそれを支持しました。
この記者会見の翌日、東京の隣町珈琲で収録した、平川克美さんとの対談音源がリリースされました。
「ウクライナ情勢とスラップ訴訟について」というのは、他ではあまり見かけないタイトルですね。竹田裁判における完全勝訴の報告のあと、ロシア・ウクライナ戦争について所見を述べました。
【特別対談】山崎雅弘×平川克美「ウクライナ情勢とスラップ訴訟について」(ラジオデイズ)
ここからは告知です。
6月19日(日)の午後、「ホロコースト教育資料センター」の主催で、ドイツ在住の中村美耶さんと「日本とドイツ それぞれの戦後」というテーマでZoom対談をします。中村さんは『未完の敗戦』第五章の259ページで書いた「ザクセンハウゼン強制収容所跡で仕事をする人」です。
対談では『未完の敗戦』第五章で触れた、戦後ドイツと戦後日本の「第二次大戦との向き合い方の違い」などについて、両国の実例を交えながら話す予定です。本の中で触れた、ドイツの戦争関連博物館で感じたことと、日本の戦争関連博物館で感じたことの大きな違いなども、より詳しく説明します。
先の戦争との向き合い方について「ドイツから学ぶ」と言うと、すぐに「ドイツを理想化する考えは」と論点をすり替える人がいますが、「学ぶ」とはドイツが理想だという意味ではなく、日本ができていないことをドイツはしているという程度の話です。日本はまだ、敗戦を「完結」させる作業において、スタートラインにも立っていないのでは、と思います。
日本とドイツ それぞれの戦後(詳細情報)
【おまけ】
5月24日に伊勢志摩へ行きました。
竹田裁判における完全勝訴や、今年刊行された新書二冊の売れ行き好調などのお礼の意味もあり、伊勢神宮の外宮と内宮へ。コロナの行動規制も徐々に緩んでいますが、この日はまだ人が少なく、静かな環境でした。
内宮そばのお店でいただいた、地魚の手こね寿司。
2022年3月31日 [仕事関係のおさらい]
2月と3月に形となった仕事のおさらいです。
まず、3月発売の『歴史群像』最新号。今回の担当記事は、第二次大戦末期の東部戦線で繰り広げられた、東プロイセンとケーニヒスベルクの戦いを、独ソ双方の視点で詳述します。どちらも今の地図には存在しない地名ですが、そうなった理由についても最後で説明しています。
1945年のケーニヒスベルク攻略戦では、ソ連軍の方面軍司令官(上級大将)が前線視察中に戦死しましたが、普通は攻勢を仕掛ける側の将軍が戦死することは滅多にありません。しかし、今年2月24日に開始されたロシア軍のウクライナ侵攻では、ロシア軍の将軍や精鋭部隊指揮官がすでに6〜7人死んでいるとの情報です。近年の戦争では他に例がない、異様な展開になっている模様です。
次に、前回の投稿で紹介した2月10日発売の新刊『第二次世界大戦秘史』(朝日新書)ですが、発売一週間で重版、発売から三週間後の3月3日にはさらに重版(三刷)が決まりました。買って下さった皆様、ありがとうございます。この本で提示した「大国対周辺国」の図式は、現在のロシア・ウクライナ戦争の構図を考えるヒントにもなるのでは、と思います。一日も早く停戦が成立することを祈ります。
ネット媒体「プレジデントオンライン」に、『第二次世界大戦秘史』のあとがき(プーチンのソ連回帰志向などに言及)と同書で提示した「大国と周辺国」の図式でウクライナ危機を読み解く原稿を寄稿しました。これを書いたのは、ロシア軍の侵攻開始前日の2月23日で、最後に少し追記しました。
大国のパワーゲームではない…ロシアのウクライナ侵攻を報じる日本のメディアに欠けた視点
以下は、プレジデントオンラインの記事より。
雑誌「AERA」のネット媒体でも、『第二次世界大戦秘史』で取り上げた周辺国の大国への抵抗事例からロシア・ウクライナ戦争の構図を読むネット記事が公開されました。
過去の出来事が全てそのまま繰り返されることはありませんが、不透明な未来の道を探る手がかりとなる材料は、目を凝らせば見つかるはず。
「第二次世界大戦」中の和平交渉から学ぶ ロシアとウクライナの“妥結点”
また、6月25日に朝日カルチャーセンターで【大国とは別の視点から第二次世界大戦を読む 『第二次世界大戦秘史』で光を当てた20か国の事例】というオンライン講座を行う予定です。
ヨーロッパの「周辺国」が、いかにして「大国」の横暴に立ち向かったかという事例を紹介します。
大国とは別の視点から第二次世界大戦を読む
2月10日付の神奈川新聞朝刊に、私のインタビュー記事が掲載されました。テーマは、自民党政権が最近言及した「歴史戦」についてで、三年前に上梓した『歴史戦と思想戦』(集英社新書)で指摘した話を絡めて、その本質と目的を論じています。
紙面のスペースをしっかりとっていただき、また重要なポイントを漏らさず記事に含めた構成で、読者や社内からの反応も良かったとのこと。しばらくしたら、政府はまた「歴史戦」という言葉を持ち出し、政策の既成事実化を図るでしょう。
歴史問題を「日韓戦」や「日中戦」にすり替えて、日本人なら「日本政府側」に立つのが当然、そうしない奴は「反日」。冷静に考えれば、頭がどうかしていると気づくでしょうが、大声で威圧的に、集団の大合唱でこの妄言を繰り返せば、メディアも腰が引けて従います。けれども、歴史認識が政府の支配下に入ってどうなるかは、かつての大日本帝国や今のロシアが我々に教えるところです。
その『歴史戦と思想戦』について、Zoomで収録した解説動画が、ネット媒体「デモクラシータイムス」のYouTubeチャンネルで公開されました。44分ほどありますが、産経新聞と安倍晋三グループ(日本会議なども含む)が盛んに展開する「歴史戦」とは何かを解説しています。最後では『第二次世界大戦秘史』の話にも少し触れています。
山崎 雅弘 歴史戦と思想戦【著者に訊く!】20220223
上の画像は、デモクラシータイムスの『歴史戦と思想戦』動画で使うつもりで用意したものの、結局使わなかった説明画像3点。話した内容の一部を抜粋したものです。「歴史戦」の問題点、特に欺瞞のトリックと日本人および日本社会にとっての弊害の大きさを皆で理解するために、自由に拡散していただいて構いません。
さて、昨年刊行された『「自由」の危機』(集英社新書)に寄稿した「守るべきは自由」の文章が、本年度の某大学の入試問題で使われ、入試過去問題として大学ウェブサイトにも掲載したいとの依頼が。もちろん快諾しました。小学校から大学まで幅広く使っていただいて嬉しく思います。自由の価値を理解する人が増えて欲しい。
また、『歴史戦と思想戦』(集英社新書)の一部が某大学の入試問題に使用されたので、大学入試の過去問題集に収録したいという連絡もあり、もちろん快諾しました。既存秩序への無批判な服従を良しとする「権威主義」の風潮が広がる現状についても、若い人に考えていただけたら幸い。今の選択が将来を左右する。
それから、「週刊朝日」2月25日号の「『週刊朝日』が報じた大正・昭和・平成の大事件」に、私のコメントも少し掲載されています。「大日本帝国時代のもの」は「大日本帝国時代以前のもの」に修正し、「皇室を」の前に「天皇や皇族よりも」を挿入して読んで下さい。
今日はこのあと、8月に出す予定の新書の原稿を仕上げ、明日からは5月に出る別の新書の再校ゲラの仕事に取りかかります。
下は、先日車で訪れた鳥羽の海です。
まず、3月発売の『歴史群像』最新号。今回の担当記事は、第二次大戦末期の東部戦線で繰り広げられた、東プロイセンとケーニヒスベルクの戦いを、独ソ双方の視点で詳述します。どちらも今の地図には存在しない地名ですが、そうなった理由についても最後で説明しています。
1945年のケーニヒスベルク攻略戦では、ソ連軍の方面軍司令官(上級大将)が前線視察中に戦死しましたが、普通は攻勢を仕掛ける側の将軍が戦死することは滅多にありません。しかし、今年2月24日に開始されたロシア軍のウクライナ侵攻では、ロシア軍の将軍や精鋭部隊指揮官がすでに6〜7人死んでいるとの情報です。近年の戦争では他に例がない、異様な展開になっている模様です。
次に、前回の投稿で紹介した2月10日発売の新刊『第二次世界大戦秘史』(朝日新書)ですが、発売一週間で重版、発売から三週間後の3月3日にはさらに重版(三刷)が決まりました。買って下さった皆様、ありがとうございます。この本で提示した「大国対周辺国」の図式は、現在のロシア・ウクライナ戦争の構図を考えるヒントにもなるのでは、と思います。一日も早く停戦が成立することを祈ります。
ネット媒体「プレジデントオンライン」に、『第二次世界大戦秘史』のあとがき(プーチンのソ連回帰志向などに言及)と同書で提示した「大国と周辺国」の図式でウクライナ危機を読み解く原稿を寄稿しました。これを書いたのは、ロシア軍の侵攻開始前日の2月23日で、最後に少し追記しました。
大国のパワーゲームではない…ロシアのウクライナ侵攻を報じる日本のメディアに欠けた視点
以下は、プレジデントオンラインの記事より。
「戦争や紛争の発生を事前に回避するためには、それを引き起こす『力学』と『構造』を関係各国が理解し、軍事衝突を引き起こす『力点』と『作用点』を交渉で制御する必要があります。そこでは、特定の当事国から見た『善悪』や『正義』の概念は万能ではなく、それらの概念への過剰な固執は、逆に戦争や紛争の回避を妨げたり、勃発してしまった戦争や紛争の早期収束を阻む障害になることがあります」「ロシアとの戦争回避を意図したウクライナの『NATO加盟構想』が、逆にロシアとの戦争を引き寄せる効果を生み出しているのは、皮肉な展開だと言わざるを得ません」
雑誌「AERA」のネット媒体でも、『第二次世界大戦秘史』で取り上げた周辺国の大国への抵抗事例からロシア・ウクライナ戦争の構図を読むネット記事が公開されました。
過去の出来事が全てそのまま繰り返されることはありませんが、不透明な未来の道を探る手がかりとなる材料は、目を凝らせば見つかるはず。
「第二次世界大戦」中の和平交渉から学ぶ ロシアとウクライナの“妥結点”
また、6月25日に朝日カルチャーセンターで【大国とは別の視点から第二次世界大戦を読む 『第二次世界大戦秘史』で光を当てた20か国の事例】というオンライン講座を行う予定です。
ヨーロッパの「周辺国」が、いかにして「大国」の横暴に立ち向かったかという事例を紹介します。
大国とは別の視点から第二次世界大戦を読む
2月10日付の神奈川新聞朝刊に、私のインタビュー記事が掲載されました。テーマは、自民党政権が最近言及した「歴史戦」についてで、三年前に上梓した『歴史戦と思想戦』(集英社新書)で指摘した話を絡めて、その本質と目的を論じています。
紙面のスペースをしっかりとっていただき、また重要なポイントを漏らさず記事に含めた構成で、読者や社内からの反応も良かったとのこと。しばらくしたら、政府はまた「歴史戦」という言葉を持ち出し、政策の既成事実化を図るでしょう。
歴史問題を「日韓戦」や「日中戦」にすり替えて、日本人なら「日本政府側」に立つのが当然、そうしない奴は「反日」。冷静に考えれば、頭がどうかしていると気づくでしょうが、大声で威圧的に、集団の大合唱でこの妄言を繰り返せば、メディアも腰が引けて従います。けれども、歴史認識が政府の支配下に入ってどうなるかは、かつての大日本帝国や今のロシアが我々に教えるところです。
その『歴史戦と思想戦』について、Zoomで収録した解説動画が、ネット媒体「デモクラシータイムス」のYouTubeチャンネルで公開されました。44分ほどありますが、産経新聞と安倍晋三グループ(日本会議なども含む)が盛んに展開する「歴史戦」とは何かを解説しています。最後では『第二次世界大戦秘史』の話にも少し触れています。
山崎 雅弘 歴史戦と思想戦【著者に訊く!】20220223
上の画像は、デモクラシータイムスの『歴史戦と思想戦』動画で使うつもりで用意したものの、結局使わなかった説明画像3点。話した内容の一部を抜粋したものです。「歴史戦」の問題点、特に欺瞞のトリックと日本人および日本社会にとっての弊害の大きさを皆で理解するために、自由に拡散していただいて構いません。
さて、昨年刊行された『「自由」の危機』(集英社新書)に寄稿した「守るべきは自由」の文章が、本年度の某大学の入試問題で使われ、入試過去問題として大学ウェブサイトにも掲載したいとの依頼が。もちろん快諾しました。小学校から大学まで幅広く使っていただいて嬉しく思います。自由の価値を理解する人が増えて欲しい。
また、『歴史戦と思想戦』(集英社新書)の一部が某大学の入試問題に使用されたので、大学入試の過去問題集に収録したいという連絡もあり、もちろん快諾しました。既存秩序への無批判な服従を良しとする「権威主義」の風潮が広がる現状についても、若い人に考えていただけたら幸い。今の選択が将来を左右する。
それから、「週刊朝日」2月25日号の「『週刊朝日』が報じた大正・昭和・平成の大事件」に、私のコメントも少し掲載されています。「大日本帝国時代のもの」は「大日本帝国時代以前のもの」に修正し、「皇室を」の前に「天皇や皇族よりも」を挿入して読んで下さい。
今日はこのあと、8月に出す予定の新書の原稿を仕上げ、明日からは5月に出る別の新書の再校ゲラの仕事に取りかかります。
下は、先日車で訪れた鳥羽の海です。
2022年1月31日 [仕事関係のおさらい]
遅くなりましたが、2022年の幕が開けました。本年も、よろしくお願いいたします。今年は、久々に自著を何冊か出せる年になりそうです。
一冊目は、2月10日発売予定の朝日新書『第二次世界大戦秘史』(朝日新聞出版)。従来、独英仏伊ソの五大国の視点中心で語られがちだった第二次大戦のヨーロッパ・中近東戦域について、ポーランドからイラクまでの関係国、計20か国それぞれの視点からも光を当てる内容です。
20か国の具体的な国名を挙げると、ポーランド、フィンランド、ノルウェー、デンマーク、オランダ、ベルギー、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリア、リトアニア、ラトヴィア、エストニア、ユーゴスラヴィア、ギリシャ、チェコスロヴァキア、イラン、イラク、シリア、レバノン、パレスチナになります。これら各国の政情や、第二次大戦期の立ち位置を読み解きます。
第二次大戦の原因や経過についての予備知識がない人にも、個々の周辺国の立ち位置が理解できるよう、序章では第一次大戦終結から第二次大戦終結までの五大国の動向と戦争の推移を、終章では戦後の欧州における各周辺国の歩みを解説しました。ヨーロッパ近現代史の学び直しにも最適な一冊です。
5月には、二冊目の新書が出る予定ですが、こちらも発売が近づいたら情報を告知します。その後は、発売時期は未定ですが、新しい本の執筆を二冊分始めており、できれば年内にどちらか、または両方を出したいと考えています。
1月発売の『歴史群像』最新号ですが、私の担当記事は「第二次ハリコフ攻防戦」です。
1942年5月に発生した、独ソ戦1年目の締めくくりとも言える、攻防の立場が数日のうちに急転回した戦いで、初年度の独ソ両軍の「力量の差」が勝敗を分けました。しかし、この戦いでのドイツ軍の勝利は、後にスターリングラードの大敗へと繋がる皮肉な展開に。
また、Wezzyの連載「詭弁ハンター」の第13回が公開されました。今回のテーマは【日本人はなぜ権力者の詭弁を見抜けず 何度もだまされてしまうのか】。なぜ日本では詭弁が詭弁として認識されず、繰り返しだまされるのかを検証します。
日本人が、権力者(企業の社長や幹部も含む)などの詭弁に弱い大きな理由として、「批判的思考」の弱さが挙げられます。実際、日本の小学校や中学校では、生徒の批判的思考力を伸ばす教育を十分にしておらず、そのような教育の重要度や必要性についても、社会で認識されているとは言えません。
日本人はなぜ権力者の詭弁を見抜けず 何度もだまされてしまうのか(Wezzy)/a>
一年続いたWezzyの連載「詭弁ハンター」は、今回でいったん終了ですが、全13回の記事は引き続き閲覧できる状態なので、ぜひ日本社会でよく見かける「何かおかしい理屈」の欺瞞性を読み解くヒントにしてください。詭弁のパターンを認識すれば、類似の詭弁を見抜くのも容易になります。
山崎雅弘の記事一覧(Wezzy)
あと、昨年11月にZoomで行った中島岳志さんとの対談が収録された『月刊 保険診療』(医学通信社)の2022年1月号も刊行されました。
新型コロナ対応で露呈した、日本政府と日本型組織の問題点を、戦前〜戦中の事例や社会学上の観点で読み解く内容でした。中島さんとは戦前戦中の日本などに関する前提知識を共有できているので、対談はとてもスムーズに進みました。
中島さんとは隣町珈琲の旧店で一度ご挨拶しましたが、きちんとお話したのは今日が初めてでした。ありがとうございました。
ところで、3年前の2019年5月に上梓した『歴史戦と思想戦』(集英社新書)が、久々にAmazonでカテゴリーのベストセラー1位になっていました。
佐渡金山をめぐる安倍晋三氏らの動きと、NHK番組(1月27日放送の「シブ5時」)での「歴史戦チーム」紹介がきっかけだと思いますが、こういう危ない動きが出た時に、即座にその問題点を世に知らしめられる本なので、出しておいて正解だったと感じます。多くの人に「歴史戦」の欺瞞とトリックを知ってもらえたら、と思います。
一冊目は、2月10日発売予定の朝日新書『第二次世界大戦秘史』(朝日新聞出版)。従来、独英仏伊ソの五大国の視点中心で語られがちだった第二次大戦のヨーロッパ・中近東戦域について、ポーランドからイラクまでの関係国、計20か国それぞれの視点からも光を当てる内容です。
20か国の具体的な国名を挙げると、ポーランド、フィンランド、ノルウェー、デンマーク、オランダ、ベルギー、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリア、リトアニア、ラトヴィア、エストニア、ユーゴスラヴィア、ギリシャ、チェコスロヴァキア、イラン、イラク、シリア、レバノン、パレスチナになります。これら各国の政情や、第二次大戦期の立ち位置を読み解きます。
第二次大戦の原因や経過についての予備知識がない人にも、個々の周辺国の立ち位置が理解できるよう、序章では第一次大戦終結から第二次大戦終結までの五大国の動向と戦争の推移を、終章では戦後の欧州における各周辺国の歩みを解説しました。ヨーロッパ近現代史の学び直しにも最適な一冊です。
5月には、二冊目の新書が出る予定ですが、こちらも発売が近づいたら情報を告知します。その後は、発売時期は未定ですが、新しい本の執筆を二冊分始めており、できれば年内にどちらか、または両方を出したいと考えています。
1月発売の『歴史群像』最新号ですが、私の担当記事は「第二次ハリコフ攻防戦」です。
1942年5月に発生した、独ソ戦1年目の締めくくりとも言える、攻防の立場が数日のうちに急転回した戦いで、初年度の独ソ両軍の「力量の差」が勝敗を分けました。しかし、この戦いでのドイツ軍の勝利は、後にスターリングラードの大敗へと繋がる皮肉な展開に。
また、Wezzyの連載「詭弁ハンター」の第13回が公開されました。今回のテーマは【日本人はなぜ権力者の詭弁を見抜けず 何度もだまされてしまうのか】。なぜ日本では詭弁が詭弁として認識されず、繰り返しだまされるのかを検証します。
日本人が、権力者(企業の社長や幹部も含む)などの詭弁に弱い大きな理由として、「批判的思考」の弱さが挙げられます。実際、日本の小学校や中学校では、生徒の批判的思考力を伸ばす教育を十分にしておらず、そのような教育の重要度や必要性についても、社会で認識されているとは言えません。
日本人はなぜ権力者の詭弁を見抜けず 何度もだまされてしまうのか(Wezzy)/a>
一年続いたWezzyの連載「詭弁ハンター」は、今回でいったん終了ですが、全13回の記事は引き続き閲覧できる状態なので、ぜひ日本社会でよく見かける「何かおかしい理屈」の欺瞞性を読み解くヒントにしてください。詭弁のパターンを認識すれば、類似の詭弁を見抜くのも容易になります。
山崎雅弘の記事一覧(Wezzy)
あと、昨年11月にZoomで行った中島岳志さんとの対談が収録された『月刊 保険診療』(医学通信社)の2022年1月号も刊行されました。
新型コロナ対応で露呈した、日本政府と日本型組織の問題点を、戦前〜戦中の事例や社会学上の観点で読み解く内容でした。中島さんとは戦前戦中の日本などに関する前提知識を共有できているので、対談はとてもスムーズに進みました。
中島さんとは隣町珈琲の旧店で一度ご挨拶しましたが、きちんとお話したのは今日が初めてでした。ありがとうございました。
ところで、3年前の2019年5月に上梓した『歴史戦と思想戦』(集英社新書)が、久々にAmazonでカテゴリーのベストセラー1位になっていました。
佐渡金山をめぐる安倍晋三氏らの動きと、NHK番組(1月27日放送の「シブ5時」)での「歴史戦チーム」紹介がきっかけだと思いますが、こういう危ない動きが出た時に、即座にその問題点を世に知らしめられる本なので、出しておいて正解だったと感じます。多くの人に「歴史戦」の欺瞞とトリックを知ってもらえたら、と思います。
2021年11月30日 [その他(戦史研究関係)]
ギリギリ二か月ぶりの更新です。
まず、9月6日に発売された「歴史群像」第168号。私の担当記事は「香港の第二次大戦」で、英統治下の香港に対する日本軍の軍事侵攻と占領統治について、英加両軍の公刊戦史を含む資料で解説しています。
真珠湾攻撃と同じ日、日本軍がイギリス領の香港にも侵攻したことをご存知ですか? シンガポールと同様、戦後の香港でも大日本帝国の統治時代(「三年零八箇月」)は「苦難の時代」と見なされています。
戦後の長い間、香港人の対日感情は良くありませんでした。イギリス軍公刊戦史やカナダ軍公刊戦史の戦況図を参照しながら書いているうち、また香港のあちこちに行きたくなってきました。
11月6日発売の「歴史群像」第169号は、私の担当記事は「タリバンとアフガニスタンの30年」で、1990年代のタリバン登場から現在に至るアフガニスタンの紛争史を、タリバン側の動きを中心に読み解いています。
今年5月〜8月の戦略的攻勢が成功した理由、アフガニスタンの戦乱とパキスタンでタリバンが誕生した経緯、米国との20年戦争の経過、パキスタン軍情報部(ISI)との繋がりなど、昨今の国際報道を読む上で参考になる情報を盛り込んでいます。
今回の原稿は、記事の冒頭にも記した通り、今から10年前の2011年秋、前後編の2回に分けて「歴史群像」誌の第109号と第110号に寄稿した、開始から10年が経過した米軍のアフガニスタン戦争を総括する記事と対になるものです。開始10年目の2011年秋の時点で、既に米軍のアフガニスタン戦争は袋小路に入って迷走する状態にあり、すでに撤退段階に移行していましたが、まさか実際に撤退が完了するまでさらに10年が必要になるとは、当時の私も予想しませんでした。米軍史上最長の戦争は、なぜ失敗と敗北に終わったのか。
その2本の記事を1本にまとめた電子書籍『米軍のアフガニスタン戦争』を、kindle版で発売中です(350円)。当時からさらに10年が経過した今、アフガニスタン戦争の全体像を振り返るのにお薦めです。
電子書籍『米軍のアフガニスタン戦争』
雑誌「GQ」11月号にも、久しぶりに寄稿しました。
菅義偉氏の辞任を受けて書いた、総理大臣としての能力評価がテーマで、能力以上のポストについて弱点を露呈したロンメル元帥や、逆にポストが高まれば高まるほど能力を発揮したアイゼンハワー元帥との対比など、他ではあまり言及されない観点から、菅首相の実績を厳しく評価しました。
Wezzyの連載「詭弁ハンター」は、前回の更新以来、3回の記事が公開されました。
第10回【憲法に基づく国会召集要求を「期限は書いてない」と拒否する詭弁術】
多くの人が批判する通り、臨時国会を開かない与党の言い分が憲法違反の詭弁であることを、論理面から検証しました。
記事本文より。「憲法第53条は、内閣に特定の義務を課す内容ですから、その義務を果たす期限を内閣自身が自由に決められる、というような解釈は、本来成立し得ません。そんな解釈が成立するなら、この条文自体、存在する意味のない空文になってしまうからです」「見送りという言葉は、本来は『義務ではないことを自分の判断で先送りにすること』を指す言葉で、課せられた義務を果たさない行為を『見送り』とは言いません。何かの罰金を科せられた人が、その支払いをしない態度を『支払の見送り』とは言わないでしょう」
第11回【自分は判断される側なのに「何々には当たらない」と勝手に主張する詭弁術】
平井卓也前デジタル大臣の「全く国民の疑念を抱くものには当たらない」発言の読み解きですが、この言い方を広く使って定着させたのは、菅義偉元官房長官でした。
2017年6月14日、当時野党「自由党」に所属した山本太郎参議院議員は「菅内閣官房長官の『全く問題ない』、『批判は当たらない』などの答弁に関する質問主意書」を安倍内閣に提出しました。この時点でメディアがきちんと欺瞞を批判していれば、この詭弁が常態化することもなかったでしょう。
第12回【「再調査するお考えは?」「その考えはない」という森友問題の本質を隠す詭弁問答】
自民党の政治家と政治記者が結託して繰り返す一見普通のやりとりが、国民の認識を誘導する詭弁であることを論証します。2020年7月17日〜19日に共同通信社が行った全国電話世論調査では、自民党支持者の71・7%、公明党支持者の85・5%も「政府は再調査する必要がある」と答えていました。ところが、政治報道は「再調査するか否かは、自民党の政治家が判断して決めていいもの」という誤謬を社会に広めています。
Wezzyの連載「詭弁ハンター」は、時事問題を扱っていますが、一週間や一か月で賞味期限が切れず、半年後や数年後にも読む価値を保つような内容を心掛けています。政治家が発する詭弁は特定の政権だけの問題ではないので、油断していれば国民は何度も騙され続けます。
ちょうど一年前にこの連載を始めた時、ネタがいつまで続くか少し不安な面もありましたが、もう12回目です。いまの日本社会は、人をあざむいてだます詭弁が横行しています。秩序を乱すことを怖れて詭弁を許す人が多い様子ですが、そんな傍観がますます事態を悪化させます。
山崎雅弘「詭弁ハンター」記事一覧(Wezzy)
明日から12月ですが、来年2月に発売予定の新書(テーマは今までとは違った角度からの第二次世界大戦史)のゲラ(校正)チェックと収録地図の制作、来年4月発売を目指して執筆中の別の新書(『戦前回帰』の続編的な内容)の仕上げに没頭する予定です。
【おまけ】
先日、奈良の曽爾高原へドライブに行きました。何年かぶりで、視界を埋めるほどの「金色の野」を目にしました。
曽爾高原は、ススキの名所として知られる場所ですが、この日は草が紅葉していて、ススキのフワフワ感とのコントラストも美しかった。
まず、9月6日に発売された「歴史群像」第168号。私の担当記事は「香港の第二次大戦」で、英統治下の香港に対する日本軍の軍事侵攻と占領統治について、英加両軍の公刊戦史を含む資料で解説しています。
真珠湾攻撃と同じ日、日本軍がイギリス領の香港にも侵攻したことをご存知ですか? シンガポールと同様、戦後の香港でも大日本帝国の統治時代(「三年零八箇月」)は「苦難の時代」と見なされています。
戦後の長い間、香港人の対日感情は良くありませんでした。イギリス軍公刊戦史やカナダ軍公刊戦史の戦況図を参照しながら書いているうち、また香港のあちこちに行きたくなってきました。
11月6日発売の「歴史群像」第169号は、私の担当記事は「タリバンとアフガニスタンの30年」で、1990年代のタリバン登場から現在に至るアフガニスタンの紛争史を、タリバン側の動きを中心に読み解いています。
今年5月〜8月の戦略的攻勢が成功した理由、アフガニスタンの戦乱とパキスタンでタリバンが誕生した経緯、米国との20年戦争の経過、パキスタン軍情報部(ISI)との繋がりなど、昨今の国際報道を読む上で参考になる情報を盛り込んでいます。
今回の原稿は、記事の冒頭にも記した通り、今から10年前の2011年秋、前後編の2回に分けて「歴史群像」誌の第109号と第110号に寄稿した、開始から10年が経過した米軍のアフガニスタン戦争を総括する記事と対になるものです。開始10年目の2011年秋の時点で、既に米軍のアフガニスタン戦争は袋小路に入って迷走する状態にあり、すでに撤退段階に移行していましたが、まさか実際に撤退が完了するまでさらに10年が必要になるとは、当時の私も予想しませんでした。米軍史上最長の戦争は、なぜ失敗と敗北に終わったのか。
その2本の記事を1本にまとめた電子書籍『米軍のアフガニスタン戦争』を、kindle版で発売中です(350円)。当時からさらに10年が経過した今、アフガニスタン戦争の全体像を振り返るのにお薦めです。
電子書籍『米軍のアフガニスタン戦争』
雑誌「GQ」11月号にも、久しぶりに寄稿しました。
菅義偉氏の辞任を受けて書いた、総理大臣としての能力評価がテーマで、能力以上のポストについて弱点を露呈したロンメル元帥や、逆にポストが高まれば高まるほど能力を発揮したアイゼンハワー元帥との対比など、他ではあまり言及されない観点から、菅首相の実績を厳しく評価しました。
Wezzyの連載「詭弁ハンター」は、前回の更新以来、3回の記事が公開されました。
第10回【憲法に基づく国会召集要求を「期限は書いてない」と拒否する詭弁術】
多くの人が批判する通り、臨時国会を開かない与党の言い分が憲法違反の詭弁であることを、論理面から検証しました。
記事本文より。「憲法第53条は、内閣に特定の義務を課す内容ですから、その義務を果たす期限を内閣自身が自由に決められる、というような解釈は、本来成立し得ません。そんな解釈が成立するなら、この条文自体、存在する意味のない空文になってしまうからです」「見送りという言葉は、本来は『義務ではないことを自分の判断で先送りにすること』を指す言葉で、課せられた義務を果たさない行為を『見送り』とは言いません。何かの罰金を科せられた人が、その支払いをしない態度を『支払の見送り』とは言わないでしょう」
第11回【自分は判断される側なのに「何々には当たらない」と勝手に主張する詭弁術】
平井卓也前デジタル大臣の「全く国民の疑念を抱くものには当たらない」発言の読み解きですが、この言い方を広く使って定着させたのは、菅義偉元官房長官でした。
2017年6月14日、当時野党「自由党」に所属した山本太郎参議院議員は「菅内閣官房長官の『全く問題ない』、『批判は当たらない』などの答弁に関する質問主意書」を安倍内閣に提出しました。この時点でメディアがきちんと欺瞞を批判していれば、この詭弁が常態化することもなかったでしょう。
第12回【「再調査するお考えは?」「その考えはない」という森友問題の本質を隠す詭弁問答】
自民党の政治家と政治記者が結託して繰り返す一見普通のやりとりが、国民の認識を誘導する詭弁であることを論証します。2020年7月17日〜19日に共同通信社が行った全国電話世論調査では、自民党支持者の71・7%、公明党支持者の85・5%も「政府は再調査する必要がある」と答えていました。ところが、政治報道は「再調査するか否かは、自民党の政治家が判断して決めていいもの」という誤謬を社会に広めています。
Wezzyの連載「詭弁ハンター」は、時事問題を扱っていますが、一週間や一か月で賞味期限が切れず、半年後や数年後にも読む価値を保つような内容を心掛けています。政治家が発する詭弁は特定の政権だけの問題ではないので、油断していれば国民は何度も騙され続けます。
ちょうど一年前にこの連載を始めた時、ネタがいつまで続くか少し不安な面もありましたが、もう12回目です。いまの日本社会は、人をあざむいてだます詭弁が横行しています。秩序を乱すことを怖れて詭弁を許す人が多い様子ですが、そんな傍観がますます事態を悪化させます。
山崎雅弘「詭弁ハンター」記事一覧(Wezzy)
明日から12月ですが、来年2月に発売予定の新書(テーマは今までとは違った角度からの第二次世界大戦史)のゲラ(校正)チェックと収録地図の制作、来年4月発売を目指して執筆中の別の新書(『戦前回帰』の続編的な内容)の仕上げに没頭する予定です。
【おまけ】
先日、奈良の曽爾高原へドライブに行きました。何年かぶりで、視界を埋めるほどの「金色の野」を目にしました。
曽爾高原は、ススキの名所として知られる場所ですが、この日は草が紅葉していて、ススキのフワフワ感とのコントラストも美しかった。
2021年9月1日 [その他(雑感・私生活など)]
7月と8月の主な仕事(ずっと続けている本の執筆等は除く)と出来事の報告です。
まず、7月6日に「歴史群像」第168号が発売されました。今回の担当原稿は、第三特集の「金門島の戦い 1949」で、第二次大戦後の国共内戦(中国国民党と中国共産党の戦い)末期に台湾海峡の西側にある金門島で繰り広げられた激戦を、主に台湾の資料に依拠して読み解きました。
金門島は現在も、中国と台湾の緊張で重要な意味を持つ場所です。
金門島へは2013年に訪れたことがあり、上の写真は現地の博物館と海岸で撮影したものです。
この記事では、日本の一部で信じられている「金門島の戦いの本当の指揮官は元日本陸軍中将の根本博だった」「根本が台湾を救った」等の「ストーリー」の信憑性についても触れています。「軍事顧問」という限られた役割の中で、まったく何の貢献もしなかったとは思いませんが、「当時の日本軍人を英雄視したい」という願望で、勝手に話を膨らませて戦勝の手柄を奪うのは、実際に戦って共産党軍を撃退した国民党軍の将兵と台湾の人に失礼な態度です。
ネット記事のWezzy連載「詭弁ハンター」は、第8回と第9回が公開されました。
第8回のテーマは「説明責任放棄の呪文と化した『丁寧に説明する』という詭弁」。「丁寧に説明する」という言葉は、現首相や前首相が何かにつけて口にするため、聞く方も慣れてしまい、これの何が問題かわからなくなっている様子ですが、改めてこの詭弁の問題を論考しました。以下、一部抜粋。
「安倍氏や菅氏が語る『丁寧に説明していく』とは、実際には「お前ら下々の国民に説明することなど何もない』という意味です」「また、民意を無視して政府中枢の一部の人間が密室で物事を決め 、国民は『決まった後で政府の説明を聴くだけ』というのは、民主主義ではなく、独裁国でよく見られる光景です」
【記事】説明責任放棄の呪文と化した『丁寧に説明する』という詭弁
第9回のテーマは「『始まったからには東京五輪応援を』という、善意につけ込む詭弁術」。東京五輪開幕と同時にあちこちから出始めた「始まったからには東京五輪応援を」という文言が、実は「善意につけ込む詭弁術」であることを論証しています。以下、一部抜粋。
「この詭弁に誘導されそうになったら、いったん立ち止まって、医療関係者の『声』を思い出しましょう。そうすれば、『始まったからには』という言い方が『煙幕』のような詭弁だと気づく」「医療関係者の声に耳を傾け、国民の命と健康を守るために東京五輪の中止を政府に求める。それは、東京五輪が『始まってから』言い続けても全然おかしくはないのです」
【記事】『始まったからには東京五輪応援を』という、善意につけ込む詭弁術
また、7月は「Choose Life Project(CLP)」というネットメディアの番組に、2回出演しました。
7月22日は、「コロナ禍の五輪開催を考えるVol.5: なぜ私たちは反対の声をあげるのか」という番組で、せやろがいおじさんの進行に沿って様々な立場の人が「東京五輪の開催に反対する理由」を説明する内容でした。
その中で、私も10分ほど時間をいただいたので、「なぜ東京五輪を今からでも、開幕した後でも中止すべきなのか」「日本政府の東京五輪ゴリ押し開催からどんな問題が読み取れるのか」「なぜ民意無視・人命軽視の開催強行を国民が追認してはいけないのか」などを話しました。
【動画】コロナ禍の五輪開催を考えるVol.5: なぜ私たちは反対の声をあげるのか
7月27日は、「コロナ禍の五輪開催を考えるVol.6: メディアの役割とは何なのか?」という番組で、小島慶子さんの司会で二人のジャーナリストの方と共に、平時とは違う「非常時」に、メディアがやるべきこと、メディアがやってはいけないこと等について、意見を述べました。
【動画】コロナ禍の五輪開催を考えるVol.6: メディアの役割とは何なのか?
8月15日、アフガニスタンの首都カブールに、タリバン勢力が事実上無血で入り、2011年から20年続いたアメリカ軍のアフガニスタン戦争は、完全な敗北に終わりました。
今から10年前の2011年、前後編の2回に分けて、開始から10年が経過した米軍のアフガニスタン戦争を総括する記事を「歴史群像」誌に寄稿しました。その2本の記事を1本にまとめた電子版記事『米軍のアフガニスタン戦争』は、アマゾンkindle版で発売中(350円)。さらに10年が経過した今、全体を振り返るのにお薦めです。
【電子書籍】米軍のアフガニスタン戦争(六角堂出版)
8月24日には、竹田恒泰氏が私に対して起こした裁判の控訴審判決が、東京高裁で言い渡されました。
一審に続き、こちら側の全面勝訴でした。
ご支援いただいた皆様、ありがとうございました。
下は、東京高裁で言い渡された判決文の一部抜粋です。控訴審の判決文は、原判決(一審判決)の内容に修正を加える箇所が多いですが、画像の抜粋部分は全て、控訴審の判決で東京高裁の裁判官が新たに修正または追加された文章です。
判決文のPDFは、今回も近日中に支援する会のサイトで公開します。
一審に続いて控訴審判決も、時事通信がいち早く報じて下さいました。
作家の竹田氏、二審も敗訴 差別指摘は「公正」東京高裁(時事)
【記事】作家の竹田氏、二審も敗訴 差別指摘は「公正」東京高裁(時事)
東京新聞と神奈川新聞、弁護士ドットコム・ニュースでも、判決を記事にして下さいました。
竹田恒泰氏、名誉毀損訴訟の控訴審でも敗訴 差別指摘投稿は「公正な論評、意見の表明」(東京新聞)
【記事】竹田恒泰氏、名誉毀損訴訟の控訴審でも敗訴(東京新聞)
竹田恒泰さん、二審も敗訴 「差別主義者」ツイートは名誉毀損にあらず「公正な論評」(弁護士ドットコム・ニュース)
【記事】竹田恒泰さん、二審も敗訴 「差別主義者」ツイートは名誉毀損にあらず「公正な論評」
新型コロナの感染は、いまだ収束の兆しを見せず、私の住む三重県も緊急事態宣言の適用地域となってしまいました。デルタ株の感染力は強く、換気の悪い空間で空気(エアロゾル)による感染も報告されているようです。皆様も、どうか気を緩めず、ご安全にお過ごしください。
【おまけ】
三重県名張市には、青蓮寺湖とひなち湖という二つの人造湖があり、それぞれ大きなダムでせき止められています。
その一方であるひなちダムを下から見ると、「進撃の巨人」の壁そのもの、という気分に浸れます。てっぺんを見上げていると、調査兵団の面々が、立体機動装置で降りてきそうな雰囲気です。
まず、7月6日に「歴史群像」第168号が発売されました。今回の担当原稿は、第三特集の「金門島の戦い 1949」で、第二次大戦後の国共内戦(中国国民党と中国共産党の戦い)末期に台湾海峡の西側にある金門島で繰り広げられた激戦を、主に台湾の資料に依拠して読み解きました。
金門島は現在も、中国と台湾の緊張で重要な意味を持つ場所です。
金門島へは2013年に訪れたことがあり、上の写真は現地の博物館と海岸で撮影したものです。
この記事では、日本の一部で信じられている「金門島の戦いの本当の指揮官は元日本陸軍中将の根本博だった」「根本が台湾を救った」等の「ストーリー」の信憑性についても触れています。「軍事顧問」という限られた役割の中で、まったく何の貢献もしなかったとは思いませんが、「当時の日本軍人を英雄視したい」という願望で、勝手に話を膨らませて戦勝の手柄を奪うのは、実際に戦って共産党軍を撃退した国民党軍の将兵と台湾の人に失礼な態度です。
ネット記事のWezzy連載「詭弁ハンター」は、第8回と第9回が公開されました。
第8回のテーマは「説明責任放棄の呪文と化した『丁寧に説明する』という詭弁」。「丁寧に説明する」という言葉は、現首相や前首相が何かにつけて口にするため、聞く方も慣れてしまい、これの何が問題かわからなくなっている様子ですが、改めてこの詭弁の問題を論考しました。以下、一部抜粋。
「安倍氏や菅氏が語る『丁寧に説明していく』とは、実際には「お前ら下々の国民に説明することなど何もない』という意味です」「また、民意を無視して政府中枢の一部の人間が密室で物事を決め 、国民は『決まった後で政府の説明を聴くだけ』というのは、民主主義ではなく、独裁国でよく見られる光景です」
【記事】説明責任放棄の呪文と化した『丁寧に説明する』という詭弁
第9回のテーマは「『始まったからには東京五輪応援を』という、善意につけ込む詭弁術」。東京五輪開幕と同時にあちこちから出始めた「始まったからには東京五輪応援を」という文言が、実は「善意につけ込む詭弁術」であることを論証しています。以下、一部抜粋。
「この詭弁に誘導されそうになったら、いったん立ち止まって、医療関係者の『声』を思い出しましょう。そうすれば、『始まったからには』という言い方が『煙幕』のような詭弁だと気づく」「医療関係者の声に耳を傾け、国民の命と健康を守るために東京五輪の中止を政府に求める。それは、東京五輪が『始まってから』言い続けても全然おかしくはないのです」
【記事】『始まったからには東京五輪応援を』という、善意につけ込む詭弁術
また、7月は「Choose Life Project(CLP)」というネットメディアの番組に、2回出演しました。
7月22日は、「コロナ禍の五輪開催を考えるVol.5: なぜ私たちは反対の声をあげるのか」という番組で、せやろがいおじさんの進行に沿って様々な立場の人が「東京五輪の開催に反対する理由」を説明する内容でした。
その中で、私も10分ほど時間をいただいたので、「なぜ東京五輪を今からでも、開幕した後でも中止すべきなのか」「日本政府の東京五輪ゴリ押し開催からどんな問題が読み取れるのか」「なぜ民意無視・人命軽視の開催強行を国民が追認してはいけないのか」などを話しました。
【動画】コロナ禍の五輪開催を考えるVol.5: なぜ私たちは反対の声をあげるのか
7月27日は、「コロナ禍の五輪開催を考えるVol.6: メディアの役割とは何なのか?」という番組で、小島慶子さんの司会で二人のジャーナリストの方と共に、平時とは違う「非常時」に、メディアがやるべきこと、メディアがやってはいけないこと等について、意見を述べました。
【動画】コロナ禍の五輪開催を考えるVol.6: メディアの役割とは何なのか?
8月15日、アフガニスタンの首都カブールに、タリバン勢力が事実上無血で入り、2011年から20年続いたアメリカ軍のアフガニスタン戦争は、完全な敗北に終わりました。
今から10年前の2011年、前後編の2回に分けて、開始から10年が経過した米軍のアフガニスタン戦争を総括する記事を「歴史群像」誌に寄稿しました。その2本の記事を1本にまとめた電子版記事『米軍のアフガニスタン戦争』は、アマゾンkindle版で発売中(350円)。さらに10年が経過した今、全体を振り返るのにお薦めです。
【電子書籍】米軍のアフガニスタン戦争(六角堂出版)
8月24日には、竹田恒泰氏が私に対して起こした裁判の控訴審判決が、東京高裁で言い渡されました。
一審に続き、こちら側の全面勝訴でした。
ご支援いただいた皆様、ありがとうございました。
下は、東京高裁で言い渡された判決文の一部抜粋です。控訴審の判決文は、原判決(一審判決)の内容に修正を加える箇所が多いですが、画像の抜粋部分は全て、控訴審の判決で東京高裁の裁判官が新たに修正または追加された文章です。
判決文のPDFは、今回も近日中に支援する会のサイトで公開します。
一審に続いて控訴審判決も、時事通信がいち早く報じて下さいました。
作家の竹田氏、二審も敗訴 差別指摘は「公正」東京高裁(時事)
「ツイッターで『差別主義者』『いじめの常習者』などと指摘されたのは名誉毀損(きそん)だとして、作家の竹田恒泰氏が紛争史研究家の山崎雅弘氏に550万円の損害賠償と投稿の削除などを求めた訴訟の控訴審判決が24日、東京高裁であり、高橋譲裁判長は「各ツイートは公正な意見論評の表明』とし、竹田氏側の控訴を棄却した」「高橋裁判長は、竹田氏が書籍やツイートで中国や韓国に対し攻撃的、侮蔑的表現を多数使用したと認定。山崎氏の投稿は『(竹田氏の)言動や表現方法から導かれる意見論評として不合理と言えない』と結論付けた」「一審東京地裁も今年2月、山崎氏の投稿を『公正な論評で違法性を欠く』として、請求を棄却していた」
【記事】作家の竹田氏、二審も敗訴 差別指摘は「公正」東京高裁(時事)
東京新聞と神奈川新聞、弁護士ドットコム・ニュースでも、判決を記事にして下さいました。
竹田恒泰氏、名誉毀損訴訟の控訴審でも敗訴 差別指摘投稿は「公正な論評、意見の表明」(東京新聞)
「高橋裁判長は、竹田氏がツイートや著書で中国や韓国に攻撃的、侮辱的な表現を多数使っていたと認定。山崎氏の投稿は『意見・論評として不相当・不合理とまでは言えない』」
【記事】竹田恒泰氏、名誉毀損訴訟の控訴審でも敗訴(東京新聞)
竹田恒泰さん、二審も敗訴 「差別主義者」ツイートは名誉毀損にあらず「公正な論評」(弁護士ドットコム・ニュース)
明治天皇の玄孫(やしゃご/孫の孫)で作家の竹田恒泰さんが、「差別主義者」などとツイートされたことで名誉を傷つけられたとして、戦史研究家の山崎雅弘さんに損害賠償などをもとめていた裁判で、東京高裁(高橋譲裁判長)は8月24日、竹田さんの請求を棄却した一審判決を支持し、控訴を棄却した。一審の東京地裁と同じく、ツイートを「論評」と認めた控訴審判決を受けて、山崎さんは「私の一連の投稿が、社会から差別をなくすという公益に寄与する公正な論評だと認められました」とコメントした。
【記事】竹田恒泰さん、二審も敗訴 「差別主義者」ツイートは名誉毀損にあらず「公正な論評」
新型コロナの感染は、いまだ収束の兆しを見せず、私の住む三重県も緊急事態宣言の適用地域となってしまいました。デルタ株の感染力は強く、換気の悪い空間で空気(エアロゾル)による感染も報告されているようです。皆様も、どうか気を緩めず、ご安全にお過ごしください。
【おまけ】
三重県名張市には、青蓮寺湖とひなち湖という二つの人造湖があり、それぞれ大きなダムでせき止められています。
その一方であるひなちダムを下から見ると、「進撃の巨人」の壁そのもの、という気分に浸れます。てっぺんを見上げていると、調査兵団の面々が、立体機動装置で降りてきそうな雰囲気です。
2021年6月30日 [その他(戦史研究関係)]
隔月更新が常態化していますが、5月と6月のおさらいを。
5月6日に「歴史群像」誌の6月号(第167号)が発売されました。私の担当記事は「クロアチアの第二次大戦」。ユーゴスラヴィアの一構成地域だったクロアチアは、ドイツ軍による占領後に枢軸国として独立を許され、戦前からムッソリーニの支援を受けていた右派の民族主義勢力が政権を握りました。
同政権は、民族差別政策と大量虐殺を実行。また、ドイツ軍に連隊規模、イタリア軍に大隊規模の義勇兵を派遣し、前者の第369クロアチア義勇歩兵連隊はスターリングラード市街戦にも参加したのち、ドイツ第6軍と共に包囲されて壊滅しました。
今回、ナチ党の正式名称をどう訳すかでいろいろ悩みましたが、ドイツ史にもナチス問題にも造詣が深い、日本語が堪能なドイツ人の友人にも相談した後、「国民に対する国家秩序と国家指導部の絶対的優越」等を鑑み、従来通り「国家社会主義」としました。ちなみに、ドイツ語での「国歌」は Nationalhymneです。
6月17日には、集英社新書のアンソロジー本『「自由」の危機』が発売されました。私の担当原稿の表題「守るべきは自由」は、著書にサインを求められた時に、いつも添えている言葉です。内田樹さんはじめ、他の寄稿者の方々による原稿も興味深い内容です。
横暴で不条理な力に自分を変えられないために、しぶとく図太く、自由を守り続けましょう。
ネット媒体「Wezzy」の連載「詭弁ハンター」では、5月初めに第6回が、6月初めに第7回が公開されました。
第6回のお題は「唐突にウイグル問題を持ち出す『ウイグル話法』。この詭弁の目的と弱点を解き明かす」です。一見もっともらしい、しかし実際には相手を黙らせることが目的の詭弁に、どう対処すべきか。
唐突にウイグル問題を持ち出す「ウイグル話法」。この詭弁の目的と弱点を解き明かす
第7回のテーマは「聞けば聞くほど『不安』になる、『安全・安心』という詭弁」。本来、異なる次元の言葉である「安全」と「安心」ですが、2つをくっつけることで疑問や批判を抱きにくいマジックワードに変化します。
聞けば聞くほど「不安」になる、「安全・安心」という政府の詭弁
記事より一部抜粋。「このように、『安全』と『安心』を切り離して考えれば、現実に即した使われ方をしているかどうかを簡単に判別できますが、この二つを繋げて『安全・安心』という形で使われると、論理的にあやふやな概念に変化し、現実に即した使われ方をしているかどうかが判別しにくくなり…」
記事の末尾には、第1回から第7回の記事に飛べる一覧のリンクが付加されました。この連載の目的は、社会に氾濫するもっともらしい詭弁に対する「免疫」をみんなでつけて、強い力を持つ者にだまされないようにしよう、というもので、シリーズ名を「詭弁ワクチン」としてもよかったかな、と思います。
6月13日付の「しんぶん赤旗 日曜版」に、私のインタビュー記事が掲載されました。既に他の人が指摘されている論点と重なる箇所もありますが、重要な論点は何度でも繰り返し指摘しないといけない。このインタビューはメールで行いましたが、一部割愛されているので、完全版をそのうちnoteで公開します。
2015年に上梓した『戦前回帰』等で、安倍政権下の日本社会は精神文化が戦前(昭和の大日本帝国)に近い方向へ回帰していると指摘しましたが、政治権力を中心に精神文化が戦前(昭和の大日本帝国)に回帰したあと、新型コロナという感染症で国内が「非常時」になれば、意思決定のパターンが戦前から戦中のそれへと移行するのは当然の成り行きです。「戦前回帰」の段階で社会が甘く見た結果、戦中同様の誤謬と災厄が国民に降りかかっているようにも思えます。
日本国内の新型コロナ感染は、いまだ好転したとは言えない状況ですが、皆様もどうか油断せず、お気をつけください。
【おまけ】
先日、名張市内で運良く遭遇できた虹です。近い場所にできた虹で、アーチが大きすぎて全体を写真に収めることはてきませんでした。よく見ると、アーチの内側は外側より少し明るい。
5月6日に「歴史群像」誌の6月号(第167号)が発売されました。私の担当記事は「クロアチアの第二次大戦」。ユーゴスラヴィアの一構成地域だったクロアチアは、ドイツ軍による占領後に枢軸国として独立を許され、戦前からムッソリーニの支援を受けていた右派の民族主義勢力が政権を握りました。
同政権は、民族差別政策と大量虐殺を実行。また、ドイツ軍に連隊規模、イタリア軍に大隊規模の義勇兵を派遣し、前者の第369クロアチア義勇歩兵連隊はスターリングラード市街戦にも参加したのち、ドイツ第6軍と共に包囲されて壊滅しました。
今回、ナチ党の正式名称をどう訳すかでいろいろ悩みましたが、ドイツ史にもナチス問題にも造詣が深い、日本語が堪能なドイツ人の友人にも相談した後、「国民に対する国家秩序と国家指導部の絶対的優越」等を鑑み、従来通り「国家社会主義」としました。ちなみに、ドイツ語での「国歌」は Nationalhymneです。
6月17日には、集英社新書のアンソロジー本『「自由」の危機』が発売されました。私の担当原稿の表題「守るべきは自由」は、著書にサインを求められた時に、いつも添えている言葉です。内田樹さんはじめ、他の寄稿者の方々による原稿も興味深い内容です。
横暴で不条理な力に自分を変えられないために、しぶとく図太く、自由を守り続けましょう。
ネット媒体「Wezzy」の連載「詭弁ハンター」では、5月初めに第6回が、6月初めに第7回が公開されました。
第6回のお題は「唐突にウイグル問題を持ち出す『ウイグル話法』。この詭弁の目的と弱点を解き明かす」です。一見もっともらしい、しかし実際には相手を黙らせることが目的の詭弁に、どう対処すべきか。
唐突にウイグル問題を持ち出す「ウイグル話法」。この詭弁の目的と弱点を解き明かす
第7回のテーマは「聞けば聞くほど『不安』になる、『安全・安心』という詭弁」。本来、異なる次元の言葉である「安全」と「安心」ですが、2つをくっつけることで疑問や批判を抱きにくいマジックワードに変化します。
聞けば聞くほど「不安」になる、「安全・安心」という政府の詭弁
記事より一部抜粋。「このように、『安全』と『安心』を切り離して考えれば、現実に即した使われ方をしているかどうかを簡単に判別できますが、この二つを繋げて『安全・安心』という形で使われると、論理的にあやふやな概念に変化し、現実に即した使われ方をしているかどうかが判別しにくくなり…」
記事の末尾には、第1回から第7回の記事に飛べる一覧のリンクが付加されました。この連載の目的は、社会に氾濫するもっともらしい詭弁に対する「免疫」をみんなでつけて、強い力を持つ者にだまされないようにしよう、というもので、シリーズ名を「詭弁ワクチン」としてもよかったかな、と思います。
6月13日付の「しんぶん赤旗 日曜版」に、私のインタビュー記事が掲載されました。既に他の人が指摘されている論点と重なる箇所もありますが、重要な論点は何度でも繰り返し指摘しないといけない。このインタビューはメールで行いましたが、一部割愛されているので、完全版をそのうちnoteで公開します。
2015年に上梓した『戦前回帰』等で、安倍政権下の日本社会は精神文化が戦前(昭和の大日本帝国)に近い方向へ回帰していると指摘しましたが、政治権力を中心に精神文化が戦前(昭和の大日本帝国)に回帰したあと、新型コロナという感染症で国内が「非常時」になれば、意思決定のパターンが戦前から戦中のそれへと移行するのは当然の成り行きです。「戦前回帰」の段階で社会が甘く見た結果、戦中同様の誤謬と災厄が国民に降りかかっているようにも思えます。
日本国内の新型コロナ感染は、いまだ好転したとは言えない状況ですが、皆様もどうか油断せず、お気をつけください。
【おまけ】
先日、名張市内で運良く遭遇できた虹です。近い場所にできた虹で、アーチが大きすぎて全体を写真に収めることはてきませんでした。よく見ると、アーチの内側は外側より少し明るい。
2021年4月30日 [その他(戦史研究関係)]
もうじき4月も終わりということで、この2か月の仕事のおさらいです。
まず、今年3月に雑誌『歴史群像』の2021年4月号が発売されました。私の担当記事は「グレナダ侵攻 1983」です。
東西冷戦期にレーガン政権下のアメリカが行ったカリブ海の小国への軍事侵攻と、それが起きた政治的背景、そして戦場で露呈した米軍の組織的問題を、政治と軍事の両面から読み解きます。国民に人気があった同国指導者が殺され親ソ派軍事政権が誕生、そこでは3000メートル級の滑走路が建設中、それにレーガン政権が反応。中国が南沙諸島で進める飛行場建設との類似点と相違点にも触れています。
週刊誌の『AERA』4月26日号掲載の「総理と私たち 本当は対等なのに 過剰な尊敬語に違和感」という記事に、私もコメントを寄せています。
ある時期以降、日本人の意識が過剰に「秩序の上位者」に対してへりくだるようになり、それがメディアの報道にも悪影響を及ぼしていると感じます。
この『AERA』の記事は、ネット版も公開されました。この問題は、単独で存在するものでなく、大きな「社会の病理」の一部として捉えるべきだと思います。日本以外のG7加盟国で、政治報道人がこんなことをしている国はないはずです。
「総理がおっしゃる」テレビの過剰な尊敬語に違和感 メディアと「対等」なのになぜ?(AERA)
ネット媒体の記事では、「Wezzy(ウェジー)」の連載「詭弁ハンター」の第4回と第5回が公開されました。
第4回の表題は【総務省幹部らの不正疑惑、逃げ台詞の「記憶にありません」を封じる追及法とは】。
今も国会で盛んに用いられている、一見万能に見える逃げ台詞の「記憶にありません」ですが、実は穴もあります。
総務省幹部らの不正疑惑、逃げ台詞の「記憶にありません」を封じる追及法とは(Wezzy)
第5回は「報ステWebCM騒動」と「杉田水脈議員の女性蔑視発言」を例に、日本社会にはびこる差別擁護の欺瞞的な詭弁を構造的に読み解きます。
「何々の意図はなかった」と「誤解を与えたならお詫びする」という合わせ詭弁は、今では政治家や大企業の常套句となりましたが、こういう発言が許されるのは「現行秩序で強い側に立つ者だけ」と気づいておられますか? これは差別的構造の温存に使われる詭弁だ、という認識を共有しましょう。
繰り返される「何々の意図はなかった」と「誤解を与えたならお詫びする」という合わせ詭弁(Wezzy)
また、講談社のネット媒体「現代ビジネス」にも、記事を寄稿しました。主題は「なぜ日本政府と地方首長の新型コロナ対応が戦時中の現象と似てくるのか」。
国民の命よりも「国策」を優先する姿勢、状況悪化の責任を国民に押し付ける指導部、際限なく国民に課せられる「努力義務」の数々、明確な戦略がなく初期の方針に固執し続ける頑迷さ…。戦時中の大日本帝国と現代日本の表面的な「現象の類似点」だけでなく、「構造的な共通点」こそが重要で、深刻だと思います。
なぜ日本政府と地方首長の新型コロナ対応が「戦時中」と似てくるのか(現代ビジネス)
それから、私の原稿ではありませんが、竹田恒泰氏が私を訴えた裁判での私側の完全勝訴判決の内容について、ネット媒体の「リテラ」が詳しく紹介して下さっています。
竹田恒泰が山崎雅弘を訴えた裁判で完全敗訴も控訴! 東京地裁が竹田の「差別主義」「自国優越思想」を認めた判決文を改めて紹介(リテラ)
さて、3月28日に「インテックス大阪」でテーブルゲームのイベント「ゲームマーケット大阪」が開催されました。
私は、友人の古角博昭さんの「サンセット・ゲームズ」のブースを間借りして、「歴史群像」誌の付録ボードゲーム4種(数量限定)と、学研M文庫の戦史本各種(値引き)、SA別冊「パンツァークリーク」「突撃レニングラード/スターリングラード」の本誌のみ(日本語ルール等を収録)、「スターリングラード攻略」の和訳などを販売しました。
歴史群像付録ゲーム4種を一緒に並べて売るのは最初で最後になると思い、これら全てのゲームのテストプレイとディヴェロップを手伝ってくれた古角さん、石田博さんと3人で記念写真を撮りましたが、古い方の2種(「ミッドウェー海戦/日本海海戦」と「モスクワ攻防戦/バルジの戦い」)が完売しました。
会場では、久しぶりにボードゲーム業界/コミュニティの古い友人たちと会っていろんな話ができ、楽しかったです。
日本国内での新型コロナの感染拡大は、歯止めがかかっていない様子で、特に大阪は深刻な事態のようですが、皆様も、どうかお気をつけください。
【おまけ】
少しタイミングがずれましたが、今シーズンの名張の桜です。
まず、今年3月に雑誌『歴史群像』の2021年4月号が発売されました。私の担当記事は「グレナダ侵攻 1983」です。
東西冷戦期にレーガン政権下のアメリカが行ったカリブ海の小国への軍事侵攻と、それが起きた政治的背景、そして戦場で露呈した米軍の組織的問題を、政治と軍事の両面から読み解きます。国民に人気があった同国指導者が殺され親ソ派軍事政権が誕生、そこでは3000メートル級の滑走路が建設中、それにレーガン政権が反応。中国が南沙諸島で進める飛行場建設との類似点と相違点にも触れています。
週刊誌の『AERA』4月26日号掲載の「総理と私たち 本当は対等なのに 過剰な尊敬語に違和感」という記事に、私もコメントを寄せています。
ある時期以降、日本人の意識が過剰に「秩序の上位者」に対してへりくだるようになり、それがメディアの報道にも悪影響を及ぼしていると感じます。
この『AERA』の記事は、ネット版も公開されました。この問題は、単独で存在するものでなく、大きな「社会の病理」の一部として捉えるべきだと思います。日本以外のG7加盟国で、政治報道人がこんなことをしている国はないはずです。
「総理がおっしゃる」テレビの過剰な尊敬語に違和感 メディアと「対等」なのになぜ?(AERA)
ネット媒体の記事では、「Wezzy(ウェジー)」の連載「詭弁ハンター」の第4回と第5回が公開されました。
第4回の表題は【総務省幹部らの不正疑惑、逃げ台詞の「記憶にありません」を封じる追及法とは】。
今も国会で盛んに用いられている、一見万能に見える逃げ台詞の「記憶にありません」ですが、実は穴もあります。
総務省幹部らの不正疑惑、逃げ台詞の「記憶にありません」を封じる追及法とは(Wezzy)
第5回は「報ステWebCM騒動」と「杉田水脈議員の女性蔑視発言」を例に、日本社会にはびこる差別擁護の欺瞞的な詭弁を構造的に読み解きます。
「何々の意図はなかった」と「誤解を与えたならお詫びする」という合わせ詭弁は、今では政治家や大企業の常套句となりましたが、こういう発言が許されるのは「現行秩序で強い側に立つ者だけ」と気づいておられますか? これは差別的構造の温存に使われる詭弁だ、という認識を共有しましょう。
繰り返される「何々の意図はなかった」と「誤解を与えたならお詫びする」という合わせ詭弁(Wezzy)
また、講談社のネット媒体「現代ビジネス」にも、記事を寄稿しました。主題は「なぜ日本政府と地方首長の新型コロナ対応が戦時中の現象と似てくるのか」。
国民の命よりも「国策」を優先する姿勢、状況悪化の責任を国民に押し付ける指導部、際限なく国民に課せられる「努力義務」の数々、明確な戦略がなく初期の方針に固執し続ける頑迷さ…。戦時中の大日本帝国と現代日本の表面的な「現象の類似点」だけでなく、「構造的な共通点」こそが重要で、深刻だと思います。
なぜ日本政府と地方首長の新型コロナ対応が「戦時中」と似てくるのか(現代ビジネス)
それから、私の原稿ではありませんが、竹田恒泰氏が私を訴えた裁判での私側の完全勝訴判決の内容について、ネット媒体の「リテラ」が詳しく紹介して下さっています。
竹田恒泰が山崎雅弘を訴えた裁判で完全敗訴も控訴! 東京地裁が竹田の「差別主義」「自国優越思想」を認めた判決文を改めて紹介(リテラ)
さて、3月28日に「インテックス大阪」でテーブルゲームのイベント「ゲームマーケット大阪」が開催されました。
私は、友人の古角博昭さんの「サンセット・ゲームズ」のブースを間借りして、「歴史群像」誌の付録ボードゲーム4種(数量限定)と、学研M文庫の戦史本各種(値引き)、SA別冊「パンツァークリーク」「突撃レニングラード/スターリングラード」の本誌のみ(日本語ルール等を収録)、「スターリングラード攻略」の和訳などを販売しました。
歴史群像付録ゲーム4種を一緒に並べて売るのは最初で最後になると思い、これら全てのゲームのテストプレイとディヴェロップを手伝ってくれた古角さん、石田博さんと3人で記念写真を撮りましたが、古い方の2種(「ミッドウェー海戦/日本海海戦」と「モスクワ攻防戦/バルジの戦い」)が完売しました。
会場では、久しぶりにボードゲーム業界/コミュニティの古い友人たちと会っていろんな話ができ、楽しかったです。
日本国内での新型コロナの感染拡大は、歯止めがかかっていない様子で、特に大阪は深刻な事態のようですが、皆様も、どうかお気をつけください。
【おまけ】
少しタイミングがずれましたが、今シーズンの名張の桜です。
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