So-net無料ブログ作成
前の10件 | -

2019年9月30日 [その他(戦史研究関係)]

8月は結局ブログを更新しそびれてしまいましたが、気がつくと9月も最終日になっていました。まずはこの間の仕事などの告知です。

歴群オランダベルギー1s.jpg

まず、「歴史群像」最新号(第157号)が9月初めに発売されました。今回の担当記事は「オランダとベルギーの第二次大戦」で、英仏独という三大国の狭間で翻弄され、望まずして第二次大戦に巻き込まれた両国の足跡を追っています。米中露の三大国の狭間にいる現在の日本と南北朝鮮も、パワーゲームではこれと近いポジションにいるという側面があります。

歴群オランダベルギー2s.jpg


歴群オランダベルギー3s.jpg

オランダとベルギーは、第二次大戦史の記述では「とりあえずイギリスとフランスの側」として簡単に流されることが多いですが、それぞれ固有の政治的・軍事的問題を抱えて苦労していました。蘭印(オランダ領東インド、現インドネシア)の話やSS義勇兵の話なども書いています。そして、両国の太平洋戦争との関係も。オランダは「蘭印」が日本軍と戦いましたがベルギーは? 実は、ある兵器の開発に関連して、ベルギーが重要な役割を果たしていたのでした。



歴史戦と思想戦 新帯1s.jpg

それから、5月に刊行された『歴史戦と思想戦』(集英社新書)ですが、その後何度か増刷を重ね、現在までに五刷で累計2万5000部となりました。五刷では帯も一新され、内田樹さん、望月衣塑子さん、鴻上尚史さん、想田和弘さんのご推薦文が入りました。あいちトリエンナーレ事件の読み解きにも活用していただければ幸いです。

歴史戦と思想戦 新帯2s.jpg

この本の中で指摘したトリックや価値観を踏まえれば、今の日本社会のあちこちで起こる一見別々に見える出来事が、実は根底で同じ水脈に繋がっていることがわかると思います。



隣町珈琲 平川想田 20190808s.jpg

8月の上京時は、平川克美さんの隣町珈琲にもお邪魔しました。そして、日本に一時帰国されていた想田和弘さんと「ラジオデイズ」の収録を行いました。

話題の中心は、7月の参院選でのれいわ新選組の躍進についての分析を軸に、野党側から見た現在の日本の政治状況でした。立憲民主党と枝野さんについても、平川さん・想田さんが少し引かれるくらい率直に意見を述べましたが、今でも応援しているからこその言葉です。他の話題も濃密で、とてもエキサイティングな時間でした。ぜひ御一聴を!

ラジオデイズ特別鼎談 「れいわ」の民主主義



シンガポールTV1s.jpg

また、シンガポールのニュースTV局の番組「INSIGHT」8月30日放送回で、私のインタビューが少し使われました。

シンガポールTV2s.jpg

テーマは「日本の再軍備」で、憲法学者の長谷部恭男さんや石破茂議員、元日本軍人を含む戦争経験者などの言葉を紹介しながら、安倍首相の軍備増強政策を読み解く内容です。

シンガポールTV7s.jpg

先日東京某所で収録したインタビューは1時間くらいで、日本会議と安倍政権の関係なども話しましたが、私が特に重要と思う部分(日本国憲法の制定にどんな意図が込められていたのか)の発言を使ってもらえたので、特に不満はありません。安倍首相がなぜあれほど憲法変更に前のめりなのか、という理由は、もちろん党の悲願云々ではなく、戦前の精神文化に回帰する上で日本国憲法が最大の障害物だからです。下のリンク先で観られる、約48分の英語プログラムです(私のインタビューは日本語に英文字幕)。

Ep 18: Rearming Japan



さて、ここからは告知です。明日の10月1日は、大阪の「ロフト・プラスワン・ウエスト」で『TRICK』著者の加藤直樹さんとのトークイベントがあります。こちらは、いわゆる「歴史修正主義」に関する話がメインで、『歴史戦と思想戦』で「歴史修正主義」という言葉を極力使わなかった理由や、本の最後を「歴史戦という手法の全否定」にしなかった理由も語ります。

ロフトプラスワン イベントs.jpg

登壇者もお酒を飲めるイベントは初めてですが、話がどんな方向に展開するのか、私も楽しみです。

ダブル出版記念! 歴史戦と思想戦のTRICK



神楽坂モノガタリ イベントs.jpg

また、10月10日(来週木曜日)には、東京・神楽坂の書店「神楽坂モノガタリ」で、ジャーナリスト(東京新聞記者)の望月衣塑子さんとイベントをやります。既にお気づきの方も多い様子ですが、私が『歴史戦と思想戦』で紹介した論理のトリックは、実は安倍政権下の政治問題でもよく使われています。この東京のイベントでは、後者に重点を置いて語る予定です。

歴史と政治のトリックを『論理』で見破ろう


来月は、11月に朝日新書から刊行される新刊『中国共産党と人民解放軍』の校正および地図制作と、12月に別の出版社から刊行される単行本(タイトル未定)の校正および地図制作を中心に、他の仕事も並行して進めます。今年も残り3か月となりましたが、



【おまけ】

ギャロラグビー1s.jpg

9月28日、大阪谷六のビストロ「ギャロ」で、ラグビーW杯日本対アイルランド戦のパブリックビュー会に参加しました。ビールとワインと美味しい料理を味わいつつ、そして熱いラグビーファン諸氏の的確なコメントを聞きつつ観戦しましたが、まさか日本がアイルランドに勝つとは。

ギャロラグビー4s.jpg

皆さんおめでとう! ルールや戦術も少しずつわかってきました。

ギャロラグビー2s.jpg


 
nice!(0)  コメント(0) 

2019年7月20日 [その他(ウォーゲーム関係)]

今日はゲーム関係の話題を三つほど。

歴群201908as.jpg

まず、前回の記事でも少し紹介しましたが、今月5日に出た「歴史群像」誌の8月号(156号)に、担当記事「ドニエプル攻防戦 1943」と付録のボードゲーム2点が収録されています。

歴群201908bss.jpg

付録ボードゲームは、各方面で大好評のうちに完売した昨年8月号の「モスクワ攻防戦」&「バルジの戦い」に続いて一年ぶり(通算3回目)ですが、今回のテーマは日本海軍もので、2人用が「第二段作戦」、1人用が「マレー沖海戦」です。

歴群201908cs.jpg

第二段作戦」は、英文タイトルの「Carrier War」が示すように、太平洋戦争の空母戦を扱うゲームで、日本軍にまだ勝ち目があった1942年の5月から6月、つまり珊瑚海開戦からミッドウェー海戦に至る時期を扱っています。空母のコマは、上面イラスト入りで、横長のダブルサイズになっています。

歴群201908es.jpg

また、当時の日本海軍の上層部(軍令部と連合艦隊司令部)で検討された「第二段作戦」のさまざまなオプション(MI=ミッドウェー作戦、FS=フィジー・サモア作戦、MO=ポートモレスビー作戦など)をマップ上で試すことができ、それぞれの策にどのようなメリットとデメリットがあったのかを、指揮官の立場で感じることができるようになっています。珊瑚海海戦がなぜ起きたのか、日本海軍がなぜあれほどポートモレスビー攻略に執着したのかも、ゲームのプレイを通じて理解できるかと思います。

歴群201908fs.jpg

ゲーム自体は比較的シンプルな形ですが、隠密移動などのルールを使わない、未確認マーカーを併用するシステムなので、ソロプレイも可能です。また、空母同士の海戦の解決は、戦術色を出す形でルール設計を行っており、実際の空母戦と同様、人事を尽くして天命を待つという、緊迫感あふれる展開となるはずです。

ゲームのプレイ時間は、ウォーゲームに慣れた人なら30分前後、一般の人でも1時間ほどで、立場を入れ替えて再戦というのも十分可能でしょう。今回も、コマが擦り切れるくらいに繰り返しプレイしていただければと思います。

歴群201908ds.jpg

マレー沖海戦」は、1941年12月に発生した日本海軍航空機によるイギリス海軍の戦艦プリンス・オブ・ウェールズと巡洋戦艦レパルスに対する航空攻撃を再現するソリテアゲームです。単に飛行機で攻撃するだけでなく、その前段階としての南遣艦隊による捜索と、その結果に基づく出撃タイミングの決定、そして航空攻撃の結果を踏まえた「結果判定」まで、一筋縄ではいかないシステムを考案しました。

歴群201908gs.jpg

プレイヤーは、イギリス艦隊の位置に関する情報を集めてから、航空隊の出撃を行いますが、情報が少なすぎても、また十分な情報を得るために捜索段階に時間をかけ過ぎても、結果判定では不利になります。そのため、捜索結果の入電情報を見極めながら、ここぞというタイミングで出撃する必要があります。

歴群201908hs.jpg

また、発見後にはマップ上に描かれたディスプレイ上で、九六式陸攻と一式陸攻で両艦を攻撃(飛行機のコマは飛行中隊単位)しますが、爆装機は「低高度」と「高高度」、雷装機は「近距離」と「遠距離」のオプションがあり、それぞれ一長一短ある選択で、飛行中隊に命令を下します。

帰還後の結果判定では、両艦の沈没だけでなく、捜索に費やした時間や自軍の被った損害なども考慮しながら、上層部による任務の評価を仰ぐことになります。時には、現場の苦労を理解しない上層部によって、予想外の低評価が下されることもありますが、それも現実の組織内における不条理を再現しています。

こちらのプレイ時間は、慣れれば15分か20分くらいで終わるはずです。この戦いを扱ったゲームは、他に無かったのでは、と思いますが、実際のマレー沖海戦が一般のイメージほど簡単な任務ではなかった事実を、プレイを通して実感していただければと思います。

なお、学研の公式サイトにある「制作こぼれ話」にも、デザイナーズ・ノート的な文章を寄せていますので、そちらも併せてご覧ください。

制作こぼれ話s.jpg

付録ボードゲーム(2019)について(歴史群像156号)



二つ目の話題ですが、今から7年前の2012年にシックス・アングルズ第14号付録として刊行したゲーム『ベアズ・クロウ』の完全中国語版『赤熊之爪』が、中国のメーカー「戦旗工作室」からボックス版として出版されました。

ベアズクロウ中国版1s.jpg

私の手許に見本が届きましたが、ルールブックはフルカラー、マップは日本版よりも分厚い紙(セミハードマップ)で、なかなか豪華な仕様。

ベアズクロウ中国版2s.jpg


ベアズクロウ中国版4s.jpg


ベアズクロウ中国版5s.jpg

「スモレンスク」「ドニエプル川」「キエフ」って、漢字ではこう書くんですね。

ベアズクロウ中国版6s.jpg

アメリカのメーカーからは、1990年代にWWWやゲーマーズなどから何個かゲームを出しましたが、まさか中国のメーカーから出す日が来るとは、1980年代にゲームを始めた頃には想像もしませんでした。

ベアズクロウ中国版3s.jpg

上海などで何度か現地のゲーマーと会食などしましたが、平均年齢は日本よりだいぶ若い感じです。中国では、若者にお金と時間の余裕が出てきたこともあり、ボードゲームのプレイ人口も増えつつあるようで、うらやましいです。



KCOI1s.jpg

そして三つ目の話題ですが、上記二つの発売を記念して、というわけでもないですが、2014年にボックス仕様として発売したゲーム『騎士鉄十字章』の価格を、2019年8月1日以降、従来の「11000円+税」から、半額の「5500円+税」に値下げします。

KCOI2s.jpg

このボックスセットは、フルサイズの作戦級ゲーム『パウルス第6軍』と『ツィタデレ:クルスクの決戦』をセットにしたものです。

KCOI3s.jpg


KCOI5s.jpg


KCOI4s.jpg


KCOI6s.jpg

歴史群像」誌の付録として付いた歴史ボードゲームからいきなりステップアップするのはさすがに難しいかもしれませんが、システムはオーソドックスなルールの組み合わせとなっているので、お手頃な価格で買っていただけるようにすることで、より多くのゲーマーにプレイしていただけるようになれば、と思います。


それから、先月「週刊プレイボーイ」誌に掲載された、映画「主戦場」のミキ・デザキ監督との対談記事が、ネットで公開されています。時たま私もRTしていますが、「主戦場」と私の『歴史戦と思想戦』(集英社新書)を相互補完的に観る/読むことで、より全体像の理解が進むと思います。

週プレ対談s.jpg

炎上しつつ全国拡大上映中のドキュメンタリー映画『主戦場』監督と戦史研究家が対談

また、「週刊朝日」の書評欄「ベストセラー解読」というページに掲載された内容が、ネット版でも読めるようになっています。

週刊朝日書評s.jpg

歴史戦と思想戦─歴史問題の読み解き方 山崎雅弘著

また、劇作家・演出家の鴻上尚史さんが「日刊SPA!」(扶桑社)というネット記事で『歴史戦と思想戦』を紹介して下さっています。読者に着目していただきたい本の中のポイントが、わかりやすく説明されています。

SPA鴻上s.jpg

「日本の悪口を言う奴は反日だ」と叫ぶ人たちが取り違えていること/鴻上尚史



このほか、近況としては、7月11日に大阪市立大学で伊地知紀子教授の授業に招かれて、「日韓関係と歴史問題の読み解き方」という講義をしました。『歴史戦と思想戦』の中で紹介したいくつかの「トリック」を実例に挙げ、言葉の使い方や「使われ方」に注意して下さいと、200人近い学生さんに話しました。

大阪市立大学講演2s.jpg

今月の残りは、「歴史群像」誌次号の担当記事「オランダ・ベルギーの第二次大戦」の執筆と、次に出る文庫本の執筆に没頭します。


【追記】

明日は、第25回参議院議員通常選挙の投票日です。過去にネット媒体や新聞に寄せた原稿をいくつかご紹介しますので、投票行動の参考にしてください。

《1》首相が「どの論点を避けているか」にも目を向けてみる(ポリタス、2014年)

《2》日本社会が「ウソの氾濫」を許すか否かを問う選挙(ポリタス、2017年)

《3》投票所の「入り口」と「出口」から見える風景(東京新聞、2014年)

 
ニンジンのヘタ陣営s.jpg

料理で使ったニンジンのヘタを水に浸けておいたら、葉っぱがどんどん伸びてきました。
 
 
 
 
nice!(1)  コメント(0) 

2019年7月5日 [その他(戦史研究関係)]

先月に続いて、今月も新刊の告知から。6月25日に、単行本『沈黙の子どもたち』が晶文社より発売されました。

沈黙の子どもたち1s.jpg

この本のテーマは、第二次世界大戦期における、軍(またはそれに準ずる組織)による市民の大量殺害です。実質的に同大戦の前哨戦であったスペイン内戦と日中戦争も含み、ゲルニカ、上海・南京、アウシュヴィッツ、シンガポール、リディツェ、沖縄、広島・長崎の計七章と最終章(戦後の反省)から成ります。

沈黙の子どもたち3s.jpg

上に挙げた地名の多くは、歴史的によく知られていると思いますが、本書はそれらの場所での市民の大量殺害がなぜ起きたか、その原因と構造を「実行した側の『合理性』」から読み解こうとする試みです。それに加えて、個々の大量殺害を引き起こす直接的な動機となった「命令への絶対服従」という組織内の規範について、戦後のドイツと日本が違った対処法をしている事実についても終章で光を当てています。

沈黙の子どもたち2s.jpg

ドイツ連邦軍は過去の反省から「命令への絶対服従」に留保を付けた。では日本は? 大日本帝国時代の反省は制度に存在するか? 戦争という怪物の実相を理解する一助として、本書を活用していただければ幸いです。

その2日後の6月27日付毎日新聞夕刊に、先日上京した際に受けた『歴史戦と思想戦』(集英社新書)の著者インタビューが掲載されました。ネット版もありますが、会員限定のようです。記事のタイトルには「出版文化の健全さに訴え 『歴史戦と思想戦』で修正主義に一石」とあります。

毎日新聞 山崎 20190627as.jpg

聞き手の栗原俊雄さんは、毎日新聞記者であるのと同時に『特攻 戦争と日本人』などの著作を持つ昭和史の研究家でもあり、同い年ということもあって様々な歴史上の論点について意見交換できました。

毎日新聞 山崎 20190627bs.jpg


毎日新聞 山崎 20190627ds.jpg


7月1日発売の雑誌「ZAITEN」(財界展望新社)にも、『歴史戦と思想戦』を主題とする2ページの著者インタビュー記事が掲載されています。

ZAITEN201908ds.jpg


ZAITEN201908as.jpg

内容は、同書の執筆動機や、いわゆる「歴史修正主義」の思考形態をどう理解し、どのように対処すべきか等で、見城徹氏と幻冬舎、百田尚樹氏を扱った巻頭特集の内容ともリンクしています。

ZAITEN201908bs.jpg


ZAITEN201908cs.jpg


雑誌「週刊金曜日」の6月14日号には、「新時代という虚構」という企画の第三回として「消えた『ニュースと政治プロパガンダの境界』」という2ページの記事を寄稿しました。

週刊金曜日20190614ds.jpg


週刊金曜日20190614as.jpg

特定の政治権力者による「宣伝(プロパガンダ)」にすぎない内容を、「ニュース」という体裁をとって国民の耳目に触れさせる手法が、最近の日本で増えているように思います。

週刊金曜日20190614bs.jpg


週刊金曜日20190614cs.jpg


また、今日(7月5日)の朝日新聞朝刊にも、先日自宅で受けたインタビューの内容が「耕論」という企画の中で掲載されました。

朝日新聞 山崎 20190705as.jpg


朝日新聞 山崎 20190705cs.jpg

昨今の日本(および世界)で広がりつつある権威主義についての話がメインですが、国会議員だけでなく市民もそれと自覚しないまま、服従的な思考形態に適応しつつあるのは危険な兆候だと思います。

朝日新聞 山崎 20190705es.jpg

私はいつも著作やSNSで権威主義を批判しているので、あらゆる権威を否定する「反権威主義者」のように思われているかもしれませんが、各分野の権威には一定の敬意を払っています。私が危ないと思うのは、特定権威の過剰な称揚と判断停止、権威を道具にした威圧や恫喝、権威への無条件服従などの心理です。



コンシム2019テスト1s.jpg

この単行本発売に前後して、私は一週間ほどアメリカに滞在していました。今回は、昨年に続いてアリゾナ州テンピで開催されたボードゲームのコンベンション「コンシムワールド・エクスポ2019」に参加し、米国コンパス・ゲームズ社から発売予定の新作ゲーム『For Motherland !』のプレイテストを会場で行いました。

テンピテスト1s.jpg

テストを担当してくれたアメリカ人ゲーマーの1人は、旧版の『War for the Motherland』をプレイした経験もあるベテランで、共通する基本システムをすでに理解されていたので、英語でルール等を説明する際の負担がだいぶ軽減されました。

テンピテスト2s.jpg


ナポレオニック・ゲームの伝説的デザイナーであるケヴィン・ザッカー氏とも久しぶりに再会(20年くらい?)。私は前に、彼のゲーム出版社(OSG: Operational Studies Group)のためにグラフィックの仕事を何度かしたことがあり、シミュレーション・ゲーム業界における彼の功績を深く尊敬しています。

kevinandmes.jpg


また、アリゾナへの行きと帰りにサンフランシスコに立ち寄り、いくつかの場所を見学しました。

サンフランシスコ市内にあるオペラハウスの建物。朝鮮戦争が二年目に入った1951年9月8日、日本と主要連合国の間で先の戦争の講和条約(通称サンフランシスコ講和条約)が署名されました。この日はオペラの上演日だったので内部は見られませんでしたが、脇の車寄せから入る着飾った人々の姿から当時の光景を想像しました。

オペラハウス1s.jpg

オペラハウスからタクシーで15分くらいの場所にある、米陸軍プレシディオ基地内のゴールデン・ゲート・クラブの建物。ここは昔「下士官クラブ」として使われ、サンフランシスコ講和条約締結後に吉田茂首相が米政府代表者との間で最初の「日米安保条約」に署名した場所です。こんな小さい施設で署名したのかと改めて驚かされました。ここが戦後の日米軍事同盟の出発点です。

ゴールデンゲートクラブ1s.jpg

サンフランシスコの名所、ゴールデン・ゲート・ブリッジ(金門橋)。出発前日に映画「007 美しき獲物たち」をBSで観て、ゾリンの飛行船が衝突した橋の上部を見るのを楽しみにしていたのですが、残念なことに同地名物の霧で上半分が隠されていました。たもとには橋の設計者ジョセフ・ストラウスの像が立ちます。遠くからだとわかりにくいですが、実はニューヨークのクライスラービルなどと同様、アールデコの装飾が橋のあちこちに施されています。

金門橋1s.jpg


さて、今日(7月5日)は雑誌「歴史群像」最新号の発売日です。今回は、本誌記事「ドニエプル攻防戦 1943」の執筆に加え、付録ボードゲーム2つのデザイン・制作・グラフィックを担当しました。プレイを通じて指揮官の決断を重さを体感できる、2人用(第二段作戦)と1人用(マレー沖海戦)のボードゲームが、打ち抜き駒と共にパッケージされています。これらについては、次回の投稿で詳しく書きます。

歴群201908aa.jpg


アリゾナ州テンピのゲームコンベンション「コンシムワールド・エクスポ2019」で、「第二段作戦」をプレイする、アメリカ人のベテランゲーマー2人。

「第二段作戦」対戦中s.jpg

 
 
 
nice!(0)  コメント(0) 

2019年6月5日 [その他(雑感・私生活など)]

今日は久しぶりの新刊の告知です。5月17日に集英社新書から『歴史戦と思想戦』が発売になりました。

歴史戦と思想戦表紙.jpg

どんな本なのか? それを説明する同書の「まえがき」の冒頭部分を、以下に転載します。

──────────────────────────────────

 今、もし書店にいらっしゃるなら、店内を見回してみて下さい。
 売り場の一番目立つところに、こんなタイトルの本が並んでいないでしょうか。
「中国・韓国の反日攻勢」「南京虐殺の嘘」「慰安婦問題のデタラメ」「あの戦争は日本の侵略ではなかった」「自虐史観の洗脳からの脱却」……。
 あるいは、もう少しマイルドな「日本人が、自分の国を誇りに思える歴史の書」という体裁で、日本人読者の自尊心や優越感をくすぐるような歴史関連本。
 もう何年も前から、こうしたタイプの本を書店でよく見かけるようになりました。
 過去の歴史について、日本に不都合なことを「なかった」といい、日本は何も悪くないと語る本は、読んでいる間は日本人にとって心地いいものです。けれども、そんな安心感に身を委ねてしまうと、それと引き換えに大事なものを見失ってしまうのではないか。日本は何も悪くないと誰かに言われれば、一人の日本人として肩の荷が下りたような気になるが、本当にその結論でいいのだろうか……。
 また、こうした本がどうも胡散臭いと感じても、具体的にどこがどう間違っているのか、何がどう問題なのかを、自分の言葉でうまく説明できない人も多いのではないでしょうか。

 本書は、そんなモヤモヤした違和感を、「事実」と「論理」の二つの角度から検証し、ひとつずつ解消していく試みです。本書を最後まで読まれれば、今まで心に引っかかっていた疑問や違和感の正体を理解でき、この種の本に巧妙に仕掛けられたさまざまなタイプのトリックを、一瞬で見破れるようになるはずです。
 また、歴史という大きな問題と向き合う姿勢についても、本来あるべき姿を改めて考えるヒントを、読者に提示するよう努めました。
 最近は特に、日本人の歴史との向き合い方が、大きく揺らいでいると思うからです。

歴史戦と思想戦2s.jpg

──────────────────────────────────────────────

また、ネット書店向けに用意された内容紹介の文を、以下に転載します。

──────────────────────────────────────────────

今、出版界と言論界で一つの「戦い」が繰り広げられています。

南京虐殺や慰安婦問題など、歴史問題に起因する中国や韓国からの批判を「不当な日本攻撃」と解釈し、日本人は積極的にそうした「侵略」に反撃すべきだという歴史問題を戦場とする戦い、すなわち「歴史戦」です。
近年、そうしたスタンスの書籍が次々と刊行され、中にはベストセラーとなる本も出ています。

実は戦中にも、それと酷似するプロパガンダ政策が存在しました。
しかし、政府主導の「思想戦」は、国民の現実認識を歪ませ、日本を破滅的な敗戦へと導く一翼を担いました。
同じ轍を踏まないために、歴史問題にまつわる欺瞞とトリックをどう見抜くか。豊富な具体例を挙げて読み解きます。

歴史戦と思想戦3s.jpg

──────────────────────────────────────────────

これらの説明で大体おわかりかと思いますが、この本はいわゆる「歴史修正主義」の出版物と正面から対峙し、そこで語られる言葉やロジックを「事実」と「論理」のふたつの角度から解析して、その言説としての信憑性や論理的整合性を検証する試みです。

これに加えて、現代の日本で繰り広げられる「歴史修正主義」の言葉やロジックが、実は先の戦争(日中戦争と太平洋戦争)の時代に日本政府が国の内外で展開したプロパガンダの方法論「思想戦」と瓜二つであることを、当時の資料をふんだんに紹介しながら実証し、彼らがなぜ「歴史修正主義」の思想に惹かれるのかという内面的な問題にも光を当てています。

この本で私が取り上げた主な内容は、ネット書店向けに用意された内容紹介で紹介されています。

──────────────────────────────────────────────

【主な内容】
◆産経新聞が2014年から本格的に開始した「歴史戦」
◆「歴史戦」のひとつ目の主戦場:戦時中の慰安婦問題
◆「歴史戦」ふたつ目の主戦場:日本軍による南京での虐殺
◆なぜ大日本帝国の否定的側面を批判する行為を「自虐」と呼ぶのか
◆第一次世界大戦後の日本軍人が着目した「総力戦」と「思想戦」
◆思想戦の武器は「紙の弾丸、声の弾丸、光の弾丸」
◆「歴史戦」の論客の頭の中では今も生き続ける「コミンテルン」
◆「戦後の日本人はGHQのWGIPに洗脳された」という「ストーリー」
◆児玉誉志夫は「思想戦」の独善的側面に警鐘を鳴らしていた

──────────────────────────────────────────────

そして、本書の章立ては、以下の通りです。

──────────────────────────────────────────────

【目次】
第一章 「歴史戦」とは何か
第二章 「自虐史観」の「自」とは何か
第三章 太平洋戦争期に日本政府が内外で展開した「思想戦」
第四章 「思想戦」から「歴史戦」へとつながる一本の道
第五章 時代遅れの武器で戦う「歴史戦」の戦士たち

──────────────────────────────────────────────

いわゆる「歴史修正主義」を扱った本は、今までにも何冊か刊行されていますが、本書のようなアプローチの本は書店の本棚に見当たりませんでした。そのせいか、発売から4日で二刷、18日で三刷と増刷を重ねており、書店での売り上げランキングでも1位になっているようです。

歴史戦と思想戦広告朝日0517s.jpg


日経20190526広告歴史戦と思想戦s.jpg


歴史戦と思想戦 三省堂1位s.jpg


アマゾンランキング0603.jpg

この本の執筆に際し、担当編集者と相談したのは「既存の右派・左派という戦いの構図から少し距離をとりましょう」ということでした。自分を右派とも左派とも思わない人にも手に取ってもらえるよう、帯の文も工夫しました。

デザキ対談2s.jpg

先日上京した際には、慰安婦問題を扱った話題の映画「主戦場」のミキ・デザキ監督と、某誌の企画で対談しました。彼がこの映画でとった手法は、私が『歴史戦と思想戦』でとった手法と共通する部分があり、さまざまな話題で充実した対談になったと思います。具体的な記事として掲載され次第、改めて媒体名などを告知します。

父親や友人、会社の先輩や上司が、いつのまにか「いわゆるネトウヨ」化してしまったが、どう対処したものかと困惑されている方は、「本屋でこんなの見つけたよ、よく知らないけど」と、さりげなく『歴史戦と思想戦』をプレゼントされるのも一策かもしれません。

また、新刊企画会議で「売れるから」と提起された「歴史修正本」や「中韓悪口本」の企画を自分の良心に照らして出したくないと思う編集者の方や、書店の店頭に「歴史修正本」や「中韓悪口本」を並べたくないと思う書店員の方も、ぜひ『歴史戦と思想戦』(集英社新書)を上司の説得に活用してください。

歴史戦と思想戦1s.jpg

 
 
 
nice!(0)  コメント(0) 

2019年5月12日 [その他(戦史研究関係)]

まず告知です。『歴史群像』誌(学研)の最新号が刊行されました。

歴群朝鮮戦争後編1s.jpg

私の担当記事は、前号の続き「朝鮮戦争(後編)」です。1950年10月に中国が軍事介入した後の朝鮮戦争については、日本での知名度が比較的低い模様ですが、米国・韓国軍が中国・北朝鮮軍と戦場で激突した、過去に唯一の機会でした。今回も政治と軍事の両面から、朝鮮戦争の様相を読み解いています。

歴群朝鮮戦争後編11s.jpg


歴群朝鮮戦争後編2s.jpg


歴群朝鮮戦争後編3s.jpg


歴群朝鮮戦争後編4ss.jpg

朝鮮半島情勢は、今なお予断を許さない状況ですが、北朝鮮と中国およびロシアの複雑な関係を理解する上で、朝鮮戦争における中国およびソ連の役割を知ることはプラスになるのでは、と思います。いまだ「休戦」状態に留まり、「終戦」に至っていない朝鮮戦争の全体像を俯瞰する一助として、『歴史群像』誌の前号と最新号に寄稿した記事を役立てていただければ幸いです。

高地戦1s.jpg

歴史群像』誌最新号の書籍等を紹介するページでは、「朝鮮戦争(後編)」をより深く理解するアイテムとして、韓国映画『高地戦』を紹介しました。これは非常によくできた作品で、戦争という社会現象が持つ普遍的な不条理と、朝鮮戦争という出来事に固有の不条理を、生々しくえぐり出して描くことに成功しています。背景に関する多少の予備知識がないと、意味がよくわからない部分がいくつかありますが(「貴方は彭徳懐の恐ろしさがわかっていない」という台詞など)、「朝鮮戦争(後編)」を読んだ後でご覧になれば、それらの疑問はほぼ解消するだろうと思います。


それから、7月発売の『歴史群像』次号では、また私のデザインする歴史ボードゲームが付録として付きます。

歴群付録ゲーム予告1s.jpg


歴群付録ゲーム予告2s.jpg


歴群付録ゲーム予告3s.jpg

今回のテーマは、二人用が「第二段作戦」、一人用が「マレー沖海戦」です。指揮官の決断の重さや、重要局面でのリスク判断の難しさなども実感できる内容に仕上げるべく、鋭意制作中です。

マップ見本0507as.jpg


コマ見本s.jpg

ここに紹介している「第二段作戦」のグラフィックは、いずれも制作途中段階のもので、細部は製品版と異なる場合があります。

第二段作戦プレイ中1s.jpg


第二段作戦プレイ中3s.jpg


テストプレイ20190504dss.jpg

テストプレイ中の風景。ミッドウェー海戦(MI作戦)を行わずに、フィジー・サモア作戦(FS作戦)やポート・モレスビー作戦(MO作戦)を行っていたら、など、いろいろ試してみることができます。

テストプレイ20190504es.jpg

1回のプレイ時間は、慣れれば30〜40分(今までの最短は25分)で、未確認マーカーを併用するシステムなので展開は毎回変わり、日米どちらが勝っても「もう一回やろう!」となるようなゲームに仕上がりつつあります。空母戦の解決も、どちらが先手を打つかで展開が変わり、奇襲の効果が生じれば、一撃で相手空母を轟沈、という逆転の展開も起こりえます。

テストプレイ20190504fs.jpg

二人用「第二段作戦」は、史実のような空母戦の緊迫感を演出しつつ、対戦相手が見つからない人が一人でもプレイできるよう、システムを工夫してあります。一般的な隠匿配置や秘匿移動のシステムは使っていないので、ソロプレイでも大丈夫です。一人用の「マレー沖海戦」と共に、今回もリプレイアビリティの高いゲームに仕上げます。ぜひご期待ください。



あと、今月17日に新刊『歴史戦と思想戦』(集英社新書)が発売されます。この本の内容については、次回の更新で詳しく説明します。こちらも、お楽しみに。

歴史戦と思想戦表紙.jpg


 
 
nice!(1)  コメント(0) 

2019年4月22日 [その他(戦史研究関係)]

さくら201901s.jpg

3月はまた忙しくて更新し損ない、4月もうかうかしていると終わってしまうそうなので、とりあえず更新です。

歴群朝鮮戦争前編1s.jpg

まず、3月発売の『歴史群像』(学研)に、巻頭特集記事として「朝鮮戦争《前編》」を寄稿しました。

歴群朝鮮戦争前編2s.jpg

1945年に大日本帝国が連合国に降伏した後、政治力の空白が生じた朝鮮半島がなぜ南北に分断され、どんな経緯で韓国と北朝鮮という二つの国家が生まれたのか。北朝鮮の金日成はなぜ、1950年に韓国への軍事侵攻を開始したのか。朝鮮戦争序盤の韓国軍と米軍は、なぜ大敗したのか。韓国を助ける「国連軍」が、いかなる経緯で創設され、国連安保理の常任理事国であるソ連や中国はなぜ拒否権を発動しなかったのか。今回の前編では、中国人民解放軍の介入までの朝鮮戦争を、政治と軍事(戦略と作戦)の両面から読み解きます。

歴群朝鮮戦争前編3s.jpg


歴群朝鮮戦争前編4s.jpg

昨年11月に韓国を旅行した際、北朝鮮との休戦ライン近くにも行きましたが、ある地点から先に行くと緊張感が俄然高まり、朝鮮戦争はまだ終わっていないのだと改めて感じました。

歴群朝鮮戦争前編5s.jpg


歴群朝鮮戦争前編6s.jpg

また、連休明けの5月7日に発売予定の『歴史群像』誌次号にも、「朝鮮戦争《後編》」を寄稿しています。1950年10月に中華人民共和国が朝鮮戦争に介入した経緯と、1953年の休戦成立までの「中国・北朝鮮対アメリカ・韓国・国連」の戦争の推移を、政治と軍事の両面から読み解きます。前後編を通しで読まれれば、知っているようで知らない人の多い、朝鮮戦争についての理解が深まるのではないか、と思います。


それから、シックス・アングルズ第14号の付録としてデザインし、個人出版したボード・シミュレーションゲーム『ベアズ・クロウ』の中国語版が、近いうちに中国の出版社から『赤熊之爪』というタイトルで出版される予定です。

ベアクロ中国語版01s.jpg


ベアクロ中国語版03s.jpg


ベアクロ中国語版05s.jpg

テーマは、第二次世界大戦期の独ソ戦序盤における二つの戦い(スモレンスク攻防戦とキエフ=ウマーニ包囲戦)で、マップやユニット、チャートのグラフィックは、私のデザインしたオリジナル版のデータを基に、テキスト部分を日本語から中国語に置き換えたもので、マップの地名も英文と中文が表記されます。

ベアクロ中国語版06s.jpg

以前に上海と南京を訪問した時、現地のゲーマーとも交流しましたが、全体的に年齢層が日本のゲーマーよりも若く、バイタリティに溢れている感じでした。他のタイトルの中国語版も交渉中です。

ベアクロ中国語版09s.jpg


来月、新しい新書『歴史戦と思想戦』(集英社新書)が刊行予定ですが、それについては次回の更新で詳しく紹介する予定です。お楽しみに。さらに、次の単行本も既に原稿の校正が進み、収録する地図制作などを進めているところです。こちらも、発売が近づいたら改めて書名や内容をご紹介します。


【おまけ】

さくら201903s.jpg

トップの写真と上の写真は、名張の桜です。4月19日に家の近所で撮影しました。庭の様子も、すっかり春らしくなりました。
 
 
nice!(0)  コメント(0) 

2019年2月17日 [その他(雑感・私生活など)]

ブログ20190201.jpg

久々の更新です。2019年の1月は、後述するように、昨年から執筆してきた新書の脱稿とミャンマー(旧ビルマ)旅行、雑誌原稿(『歴史群像』誌次号の巻頭記事「朝鮮戦争 前編」)の執筆と沖縄旅行という慌ただしさで、ブログに手をつける余裕がありませんでした。

ブログ20190202.jpg

まず、1月発売の『歴史群像』(学研)第153号に、私の担当記事「二つのイタリアと第二次大戦」が掲載されています。第二次大戦の歴史で光を当てられることの少ない領域の一つである「枢軸国イタリアの連合国との休戦と、それ以後の南北に分裂したイタリアの戦い」を、政治と軍事の両面から読み解いています。

ブログ20190203.jpg

軍事や戦史のマニアの間では、兵器の性能が総じて低く、個々の「戦闘」の敢闘精神で日独に劣る第二次大戦期のイタリア軍をバカにして見下す風潮が根強いですが、価値判断の基準を少しずらして国民の戦争全体との向き合い方を俯瞰すると、むしろ日本やドイツよりも「賢い部分」もあったように思います。


ブログ20190204.jpg


ブログ20190205.jpg

1月10日から15日までは、ミャンマー(旧ビルマ)のヤンゴン(旧ラングーン)と古都バガンを旅行しました。昨年『歴史群像』誌に「ビルマの第二次大戦」という記事を書いたこともあり、ヤンゴンでは「独立の父」アウンサン将軍とビルマ近現代史に関連する場所を見学して、理解を深めました。

ブログ20190206.jpg

ミャンマー訪問は初めてでしたが、ラオスと同じように人がとても穏やかで、居心地良く過ごせました。買い物をする時、間違えて余分にお札を出しても、超過分を返してくれます。寺院等では入口から裸足が決まりで、歩くと平穏な気持ちになり、仏像の前に座るたびに自然と手を合わせる心境になりました。

ブログ20190207.jpg


ブログ20190208.jpg

ミャンマー(旧ビルマ)のヤンゴン(旧ラングーン)にある「ボージョー(将軍)・アウンサン博物館」。独立の父と称されるアウンサンが、1945年5月から暗殺される1947年7月まで住んだ邸宅(建物自体は1921年に完成)で、二階建ての館内には彼の生涯とビルマ独立運動指導者としての活動が説明されています。

ブログ20190209.jpg


ブログ20190210.jpg

こちらは、アウンサンが独立運動の司令部として使用した建物ですが、今はレストランとして営業中。二階の一室はアウンサンの執務室で、当時彼が使用した机やタイプライターなどが展示されています。

ブログ20190211.jpg

ヤンゴン(旧ラングーン)の中心部にあるシュエダゴン・パゴダ。パゴダとは仏塔を中心とする仏教の参拝施設で、ここは規模が大きく、周囲の緑地も含めれば東京ドームより広いとのこと。中央の一番大きな仏塔は五年に一度の修復が行われていたが、その周囲にもお堂や祠が建ち並び、くつろいで休憩できます。

ブログ20190212.jpg

お堂や祠には、金箔や宝石をふんだんに使った装飾が施されており、じっくり観察すると時間が経つのが早い。参道では、生年月日から算定する八つの曜日にちなんだ花が売られており、私は月曜日だったのでその花束を買って、月曜の神様のところにお供えしました。水かけ不動のように、仏像に器で水をかけます。

ブログ20190213.jpg


ブログ20190214.jpg


ブログ20190215.jpg

ミャンマーのヤンゴン(旧ラングーン)中心部に残る英植民地時代の建物。ミャンマー港湾局(1928年)、ヤンゴン地方裁判所(1900年頃)、元最高裁判所(1908年)。縦横に区画整理された街並みで、大通り以外の細い道には露店が建ち並んでいますが、朝夕は道路が激しく渋滞します。

ブログ20190216.jpg

ミャンマーのバガンにあるニャウンウー空港。外国人旅行者はここで、5日間の入域料として25000チャット(約1800円)を支払います。あとは寺院や仏教遺跡をいくら見学しても無料。私は充分に元が取れました。

ブログ20190218.jpg


ブログ20190219.jpg


ブログ20190217.jpg

古都バガンでは、到着日と翌日の丸二日、レンタル電動バイク(一日約600円)に乗って、一三世紀前後に作られた仏教の寺院と遺跡を見て回りました。広大な場所に仏教遺跡の尖塔が林立し、空気が乾燥しているので劣化が少ない遺跡内の壁画も興味深く鑑賞しました。ミャンマーにおけるヤンゴンとバガンの関係は、ラオスのビエンチャンとルアンパバーンと似ています。

ブログ20190220.jpg

ミャンマーのバガンは、エーヤワディー川(イラワジ川)のほとりにあります。川はここで西向きから南向きに流れを変えるので、バガン南部の河岸ではきれいな夕陽と夕焼けを満喫できます。対岸の遠くに見えるのは、ミャンマーとインドの国境付近に連なるアラカン山脈。イラワジ川とアラカン山脈といえば、太平洋戦争末期に行われた、あの作戦を思い出しますが、日本兵もこの美しい景色を見ていたのでしょうか。

ブログ20190221.jpg

シュエサンドー・パゴダ。十一世紀に建てられた仏塔で、高さは45メートル。

ブログ20190222.jpg

ダマヤンジー寺院。十二世紀に建てられた寺院で、バガンで特に強い印象を受けた建造物の一つ。ガイドブックの写真ではわかりませんが、他の寺院よりサイズがでかくて、古城のような威容に圧倒されます。シュエサンドー・パゴダの方から細い道を走っていくと突然これが目に入り、宮崎駿のアニメに入り込んだような錯覚を覚えます。

ブログ20190223.jpg

エーヤワディー川(イラワジ川)に沈む太陽。


ブログ20190224.jpg

ミャンマーから帰国したあと、1月19日には、大阪の隆祥館書店での相澤冬樹さん(『安倍官邸vs.NHK』著者)のイベントにゲストとして登壇しました。会場は大盛況で、部屋の隅までお客さんで埋まり、財務省の国有地不正払い下げ疑惑やNHKと権力の癒着状況など、幅広い話題で盛り上がりました。


ブログ20190225.jpg


ブログ20190226.jpg

1月27日から31日までは、四泊五日で沖縄へ行ってきました。今回は本島の那覇周辺と久米島で過ごし、珍しい自然や博物館、戦史・紛争史関係の場所を見て回ったほか、琉球新報本社の勉強会で講師として少しお話しました。また、牧志から安里まで古書店を何軒かはしごして、沖縄戦や戦後の沖縄に関する段ボール一箱分の古書を買い、自宅へ別送しました。

ブログ20190227.jpg

沖縄の久米島と橋で繋がった奥武島の海岸にある「畳石」。亀の甲羅のような六角格子の石が並んでいるように見えますが、実はこれらは「冷えた溶岩の柱」で、地中深くまで伸びているらしい。水の透明度が高くて、水たまりには小さい魚やカニがいました。

ブログ20190228.jpg


ブログ20190229.jpg

久米島の北部にある「ミーフガー」という奇岩と、南部にある「鳥の口」という崎。後者の名前の由来は、手前下に写っている「口を開けた鳥」に似た高い岩で、左奥の衛星通信施設(白い球)から遊歩道でテクテクと歩いて登る。久米島ではレンタカーを借りて島内を回りましたが、海水浴のシーズンオフのためか、今回は久米島のどこに行っても貸し切り状態でした。

ブログ20190230.jpg

久米島のサトウキビ畑の一角にある「痛恨之碑」。久米島では、朝鮮人を含む住民20人が、沖縄戦の実質的な終結後に、米軍ではなく駐留していた日本軍人によってスパイ容疑等で虐殺されました。日本軍人に殺された住民の中には、赤ちゃんもいました。今年刊行予定の単行本でも、この出来事について説明しています。

ブログ20190231.jpg


ブログ20190232.jpg

久米島の大岳小学校南側の駐車場そばに建つ、沖縄戦で亡くなった島民の慰霊碑と顕彰碑。市民を虐殺した日本軍の通信部隊の指揮官は、米軍と接触した島民をスパイ容疑で虐殺したあと、自分は米軍に投降して戦後も生き延びました。メディアの取材を受けた彼は、自分は間違っていないとして謝罪を拒否し、居直っていました。

ブログ20190233.jpg

沖縄の屋根の上や門の上にいるシーサー(厄除け、守り神の獅子)たち。通りをぶらぶら歩いていると、街のあちこちにいます。それぞれの性格が顔や姿に表れているようでおもしろい。

ブログ20190234.jpg

那覇市内では今回は車を借りず、モノレールとバス、タクシー、徒歩で移動しました。モノレール駅のエスカレーターにも、琉球新報と沖縄タイムスの社屋にも、県民投票の広告が。とりあえず全県民が投票できる、当たり前の状況に戻って良かった。

ブログ20190235.jpg

観光客が絶えない那覇の首里城にある守礼之門から、わずか90メートルほど離れた場所にある、第32軍司令部壕の入口。現在は封鎖されていますが、高台にある首里城の地下に作られた司令部施設の出入り口で、中学生から成る「鉄血勤皇隊」の少年が、砲弾の降る中で、壕の警備や伝令などの軍務に就いていました。

ブログ20190236.jpg

こちらは、観光客が絶えない首里城そばにある玉陵(琉球王国時代の王墓)から、わずか50メートルほど離れた場所にある、一中健児の塔。鉄血勤皇隊に参加して命を落とした一中(沖縄県立第一中学校)生徒の慰霊碑で、隣接する展示館では、十代の中学生がどれほど過酷な境遇に置かれていたのかを学べます。

ブログ20190237.jpg

沖縄・那覇の奥武山(おうのやま)公園にある島田叡元沖縄県知事の記念碑。兵庫出身の島田知事は、太平洋戦争での日本の敗北が決定的となっていた1945年1月に「他になり手がない」沖縄県知事として赴任し、戦火の中で(天皇でなく)県民のために最後まで尽力して亡くなった人物で、市民が玉砕や自決することを戒めました。

ブログ20190238.jpg


ブログ20190239.jpg

大田實海軍中将が「(沖縄)県民に対し後世特別の御高配を」と打電して自決した旧海軍司令部壕を今回初めて訪れましたが、沖縄にある他の戦争関連の施設とは空気が違っていました。売店で戦艦大和グッズをたくさん並べている時点で、方向性が違うとわかる。戦没した海軍軍人の顕彰と慰霊が、施設の第一の意図。

ブログ20190240.jpg


ブログ20190241.jpg

沖縄・那覇のシーサイドにある「不屈館」。戦後の沖縄で県民のために尽力した政治家・瀬長亀次郎の功績を称える博物館で、彼の足跡を追うことはそのまま戦後の沖縄県民の苦難を知ることにもつながります。同じ日本の一部なのに、なぜ沖縄県民が戦中も戦後も、現在も、過剰な理不尽を背負わされ続けるのか。いろいろなことを考えさせられる場所でした。

ブログ20190242.jpg


ブログ20190243.jpg


ブログ20190244.jpg

琉球新報本社での勉強会で使用した資料の一部。今の日本のメディア状況の問題点を読み解く視角はいくつか考えられますが、今回は「民主主義国と権威主義国のメディアの違い」という角度から光を当ててみました。右か左か、という時代遅れの分類法では、問題の核心に近づけず、逆に遠ざかるのでは、と思います。


ブログ20190245.jpg


ブログ20190246.jpg


ブログ20190247.jpg

それから、いま書店で発売中の『週刊金曜日』最新号は、NHKの問題点を批判・検証する特集ですが、私も岩田明子解説委員兼政治部記者に関する記事を寄稿しました。国民から強制徴収する受信料で高い給料を得ながら、特定の権力者にピッタリ寄り添い奉仕する態度は、政権が何党であるかに関係なく、公共放送の役割を逸脱した国民への背任だと思います。

今月は、少し時間に余裕があるので、しばらく停止していた電子書籍の刊行を再開しようかと思っています。『ロシア内戦』『シベリア出兵』『チェコスロヴァキアの第二次大戦』『モンゴルの第二次大戦』『インドの第二次大戦』などが候補です。いずれも『歴史群像』誌に掲載された記事の電子化ですが、関心のある方は、ぜひご期待ください。

ブログ20190248.jpg

ミャンマーのバガンで道路をのんびり進む牛車。


【おまけ】

ブログ20190249.jpg


ブログ20190250.jpg


ブログ20190251.jpg


ブログ20190252.png

ミャンマーでは、特徴的な油っぽいカレー(ヒン)のほか、麺類をいろいろ食しましたが、細いビーフン(米粉)からうどんような太い麺まで、種類が豊富でした。気温が高くて空気が乾燥しているので、一日あちこち歩き回ったあとのビールが美味い。1枚目はエビのカレーで、大きなエビがどっかり入っていました。

ブログ20190253.jpg


ブログ20190254.jpg


ブログ20190255.jpg


ブログ20190256.jpg

こちらは、沖縄で食べた美味しいもの。山羊汁、ラフテーの炒飯、久米島のざるもずく(店主が採ってきた太くて長いもずくをごまだれに浸けていただく)、島どうふ。左の豆腐に乗っている小さい魚は、スクガラスというアイゴの稚魚の塩辛で、豆腐と良く合います。山羊汁は前回もいただきましたが、これを食すと沖縄に来たと実感できます。

ブログ20190257.jpg

日本では沖縄にしかない米国系ファストフードチェーン「A&W」のThe A&Wバーガーとポテト、そしてルートビア。沖縄の人はA&Wを「エンダー」と呼ぶ、と琉球新報の人に教えてもらいました。
 
 

nice!(0)  コメント(0) 

2018年12月31日 [その他(戦史研究関係)]

2018年も、今日で終わりとなりました。今月は、来年春に刊行予定の新書の原稿執筆に明け暮れており、食事くらいしか楽しみがない日々ですが、12月8日に大阪の立命館大学いばらきキャンパスで、香山リカさんらと共に講演を行いました。

立命館講演自分3s.jpg


ヘイトスピーチ連続講演会s.jpg

私の演題は「ヘイトスピーチと歴史修正主義の根底にあるもの」。戦史・紛争史研究と、どんな関係があるのかと思う方もおられるかもしれませんが、近現代史に詳しい方ならご承知のとおり、特定の外国人や国内の少数派を敵視して存在価値を否定するような「ヘイトスピーチ」は、過去の紛争や戦争、大量虐殺の前段階としてしばしば見られる、いわば「戦争や紛争の初期症状」とも呼べる現象でした。

立命館講演1s.jpg


立命館講演2s.jpg

また、自国の過去の歴史を特定の政治的価値観に沿う形へと歪め、過去に起きた不都合な出来事を否認する「歴史修正主義」も、1930年代の日本を含む全体主義の権威主義国によく見られる現象で、自国優越思想の土台としても用いられる言説でした。そして、「ヘイトスピーチ」と「歴史修正主義」の両方の根底にあるのが、麻薬のように人の心を酔わせる「排外的で権威主義的な自国優越思想」です。

立命館講演3ss.jpg


立命館講演7s.jpg

従って、この二つの社会現象は、決して甘く見てよいものではなく、将来において国の進路を誤らせる効果を持ちうる、危険な「前兆」として捉える必要があるように思います。1930年のドイツや日本の状況を見て、人々はなぜ道を誤ったのか、何かできることはあったのではないか、と、後世の我々は気軽に論評しますが、もしかしたら今の日本人もまた、後世の日本人や外国人から「あの時代の日本人はなぜ道を誤ったのか」「それに抗うためにできることを全てやったのか」と論評される時代が来るかもしれません。そんな、同時代人としての当事者意識を持つことが必要ではないか、と私は最近特に強く感じているところです。もちろん、これが杞憂であればいいのですが。


cover西部戦線全史s.jpg


1937年の日本人表紙s.jpg


戦前回帰表紙s.jpg

今年は、2月に『[新版]西部戦線全史』(朝日文庫)、4月に『1937年の日本人』(朝日新聞出版)、6月に『[増補版]戦前回帰 「大日本病」の再発』(朝日文庫)を上梓したほか、毎号寄稿している雑誌『歴史群像』(学研)では7月発売号で付録のボードゲームも制作・デザインし、大きな反響を得ることができました。

歴群150号7s.jpg


歴群150号6s.jpg

来年は、春頃に単行本一冊と新書一冊が刊行予定で、それ以外の予定もいくつか決定しています。本の内容については、タイトルや発売日が確定次第、改めて告知しますので、ぜひご期待ください。来年もよろしくお願いいたします。


【おまけ1】
執筆の仕事の合間に、来年アメリカのコンパス・ゲームズ(Compass Games)社から発売予定の新作ボードゲーム『フォー・マザーランド!(For Motherland !)』のプレイテストを友人と行っています。テーマは第二次大戦期の独ソ戦(ドイツとソ連の戦い)で、昔デザインした『ウォー・フォー・ザ・マザーランド』をリサイズしてよりプレイしやすく、またより歴史再現性を高めた内容に仕上がりつつあります。

end_of_gt3_as.jpg


end_of_gt6_bs.jpg


motherland20181222as.jpg


motherland20181222es.jpg


motherland20181222fs.jpg

同社の公式サイトでは、既にプレオーダー(予約注文)が行われており、ユーザーの反応は上々とのことです。

コンパス・ゲームズ社の公式サイト


【おまけ2】
私の住む名張市では、毎年夏に花火大会が開催されていますが、今年は豪雨と重なったため、11月に延期されていました。そして11月24日の夜に予定通り開催され、私は地元の友人と一緒に観に行ってきました。

名張花火s.jpg

この頃には既に気温がだいぶ低くなっており、ちびっこたちは防寒着で観覧していましたが、適度に風が吹いて空気が澄んでいたこともあり、真夏の花火とは違った美しさがありました。

名張花火02s.jpg


名張花火07s.jpg


名張花火09s.jpg

これらの写真は、ポケットに入るコンパクトなデジカメで撮影しましたが、三脚に据えて「花火モード」にすれば、うまい具合に光跡を写し込むことができました。

名張花火10s.jpg


名張花火12s.jpg


それでは皆様、よいお年を!
 
 
 
nice!(0)  コメント(0) 

2018年11月25日 [その他(戦史研究関係)]

先月は結局、忙しくてブログの更新を行えませんでした。ということで、二か月ぶりの更新です。

歴群ウラーソフ1s.jpg

まず、11月初めに『歴史群像』誌(学研)の第152号(11月号)が発売されました。今回の私の担当記事は「ウラーソフ将軍とロシア解放軍」で、第二次大戦中にドイツに降伏したあと、ソ連のスターリン体制打倒という大義を胸に抱いて義勇兵となってドイツ側で戦った、100万人を超えるソ連軍将兵たちの葛藤と苦難の物語です。

歴群ウラーソフ2s.jpg


歴群ウラーソフ3s.jpg

記事では、ロシア解放軍創設以前に大量に編成され、西部戦線のノルマンディー上陸作戦の戦場でも戦った「オスト大隊」についても書いています。戦争という嵐の中では、将軍ですら小さい存在でした。

ウラーソフ伝単s.jpg


ウラーソフ伝単2.jpg

上の画像は、記事中でも図版として使われていますが、親独義勇兵組織の指導者ウラーソフが署名してソ連兵の頭上に撒かれた宣伝ビラの一つ。


1124ブログ01s.jpg

11月5日から8日までは、内田樹さん並びに氏の門人の皆さんと一緒に韓国へ行ってきました。内田さんは、韓国の教育関係者向けの講演を二回行われ、私は韓国の近現代史関連の博物館などをたくさん見学でき、とても楽しく充実した韓国滞在でした。ソウルの気候は思っていたほど寒くはなく、ちょうど紅葉の季節を迎えていました。気候の乱れのせいか、今年の日本では紅葉がまだらに進み、一本の木でも赤や黄色の葉と緑の葉が混じっていたりしますが、韓国の秋の景色はとても良い感じでした。しかし意外と坂が多くて、一日歩き回ると結構疲れました。

1124ブログ02s.jpg

韓国の近現代史に関する博物館の展示内容は、かつてこの国を併合し支配した国の人間にとっては重いものが多いですが、日帝(大日本帝国)の非人道的行為だけでなく、戦後の軍部独裁政権時代の自国民に対する非人道的行為に関する公的博物館もあり、日本国内の現状との違いを改めて認識させられました。

1124ブログ03s.jpg

ソウルの明洞聖堂(1898年完成)。最近日本でも公開された韓国映画『1987、ある闘いの真実』でも描かれていたように、ここは軍部独裁時代の韓国で、民主化運動の重要な拠点の一つでした。私が訪れたのは朝九時過ぎで、聖堂建物の南側では、朝日を背にした聖母マリア像の前にひざまずいて祈る信徒の人がいました。

1124ブログ04s.jpg

ソウル駅東方の丘の上に建つ、安重根の銅像。隣には彼の記念館が併設されています。1909年10月26日に満洲のハルビンで伊藤博文を暗殺した韓国の民族主義者として知られる人物ですが、安重根は韓国に対する日本政府の理不尽な諸政策は「伊藤個人の悪辣さ」が原因だと理解していた模様。つまり彼は単純な反日活動家ではありませんでした。日中韓の対等な連携を提唱していた記録もあります。

1124ブログ05s.jpg


1124ブログ061s.jpg


1124ブログ06s.jpg

ソウル市内にある戦争記念館。朝鮮と韓国が経験した戦争を扱う軍事博物館で、朝鮮戦争に関連する地図や文書、装備のほか、平壌占領時に韓国軍部隊が捕獲した金日成の専用車(ソ連製のZIS110リムジン)も展示しています。

1124ブログ07s.jpg


1124ブログ08s.jpg

屋外には朝鮮戦争で使用されたものを中心に、戦車や航空機、火砲などが並んでいます。ソ連製のカチューシャ・ロケットもありました。

1124ブログ09s.jpg

中之島の中央公会堂に似た建物は、ソウル駅の旧駅舎。中央公会堂や東京駅を設計した辰野金吾の弟子の塚本靖が設計し、日本統治時代の1922年に建設が始まり、1925年に完成しました。隣接する新駅舎の開業で駅舎としての役目を終え、今は「文化駅ソウル284」という展覧会等を行う施設として公開されています。

1124ブログ10s.jpg

ソウル駅から1キロほど南方にある、かつて「南営洞対共分室」があった建物。映画「1987、ある闘いの真実」で描かれたように、ソウル大学の学生朴鍾哲(パクジョンチョル)君が、ここで警察の拷問を受けて死亡しました。現在は「警察庁人権センター」と「朴鍾哲記念展示室」として警察が反省的に公開しています。建物の1階、4階、5階に関連の展示室があり、5階には1987年1月14日に朴鍾哲君が水攻めで殺害された「事件現場」と、フロア全体を占めるそれ以外の独房が公開されています。

1124ブログ11s.jpg

朴鍾哲君が拷問で殺害された部屋。窓は縦長のスリット状で、脱走や自殺を図れないよう、横幅は人間の頭よりも狭い。ドイツのダッハウ強制収容所等とも近い雰囲気です。4階には、1980年代の民主化運動と朴鍾哲君の事件に関する展示がある「朴鍾哲記念展示室」と、それに隣接する「人権啓発センター」があり、後者ではイギリスのマグナ・カルタ(大憲章)などを引用しながら、政府や警察などの権力の横暴から守られるべきものとしての市民の人権の重要さを説明しています。

1124ブログ12s.jpg

ソウル駅から南西に1キロほどの場所にある孝昌(ヒョチャン)公園には、韓国の民族運動指導者・金九(キム・グ)の墓と、彼の配下で日本に対する武力闘争を行った「義士」の墓が並んでいます。李奉昌(イ・ポンチャン)は、1932年に東京の桜田門付近で昭和天皇の暗殺を試みて失敗し、死刑となった人物。

1124ブログ13s.jpg

孝昌公園にある「義烈祠(ウィヨルサ)」。金九をはじめ、李奉昌(イ・ボンチャン)、尹奉吉(ユン・ボンギル)、白貞基(ペク・ジョンギ)など、韓国独立運動で日本に対する武力闘争を行った「義士」7人の影幀(肖像画が描かれた掛け軸)が安置されている祠堂で、1990年に建立されました。

1124ブログ14s.jpg

孝昌公園の敷地内に建つ、白凡記念館。白凡とは金九の別名で、韓国独立運動の指導者としての功績を称える内容の展示がなされています。第二次大戦中は、中国の重慶で韓国の在外政府(大韓民国臨時政府)を指導し(ただし承認国はなし)、日本の敗戦後は米ソによる南北分断の信託統治に反対する運動を指導しましたが、対米従属的な李承晩と対立し、韓国軍の一将校によって1949年6月26日に暗殺されました。米国政府との関係は微妙で、日本敗戦後は親米派の李承晩との政争に敗れましたが、重慶時代は「韓国光復軍(KLA)」を編成し、米国の特務機関OSSの支援を受けていました。

1124ブログ15s.jpg

ソウル中心部の光化門広場にある、世宗(セジョン)大王の像。十五世紀に李氏朝鮮の第4代国王だった人物で、ハングルの創製を行った国民的英雄として尊敬されています。一万ウォン紙幣にもこの王の肖像画が記されていますが、その一方で仏教徒の弾圧や中国(明)への少女貢進などを政策として行っていました。

1124ブログ16s.jpg


1124ブログ17s.jpg

世宗大王像の近くにある大韓民国歴史博物館の展示物。日本統治下で「帝国臣民」とされ、毎朝皇居を遙拝することを強制された朝鮮の人々は、戦時には徴兵や徴用などで日本の行う戦争に加担させられていました。日本と朝鮮(韓国)の立場が逆だったら、と想像すれば、その意味を理解できます。日本が大韓帝国の植民地となり、韓国軍に日本人が徴兵・徴用されていたら。

1124ブログ18s.jpg


1124ブログ19s.jpg

金九らの指導した大韓民国臨時政府の、中国での移転を示した地図と、日本降伏後の朝鮮半島で米ソ両国が便宜上の統治境界線として設定した北緯38度線の境界標。もし日本がソ連参戦前に降伏していたら、大韓民国臨時政府が光復軍と共に帰国し、朝鮮半島は分断されずに統一国家となっていた可能性があります。

1124ブログ20s.jpg

ソウルの光化門広場の北にある景福宮。李氏朝鮮時代の十四世紀末に造られた王宮ですが、日本統治時代には、王宮を完全に塞ぐ形で朝鮮総督府の近代的なビルが敷地内に建てられていました。正面の光化門は別の場所へ移設されましたが、敷地内の建物の九割が破壊されました。こうした行為に、統治者としての大日本帝国政府の傲慢な悪意が表れているようです。景福宮は、日本に併合される前の1895年10月8日に起きた「乙未(いつび)事変」、つまり閔妃暗殺事件の舞台でもありました。日本人と朝鮮人の手下を使い、同地の敷地内で朝鮮国王の王妃を殺害した首謀者の三浦梧楼公使(予備役中将)らは、逮捕されて日本で裁判にかけられましたが、全員無罪放免となりました。

1124ブログ21s.jpg

ソウルの景福宮の北側にある青瓦台(チョンワデ)。韓国の大統領官邸で、朴正煕大統領時代の1968年1月21日には北朝鮮の特殊部隊が朴大統領を暗殺するため、この場所から数百メートルの場所まで接近しました。2007年に学研から出たムック本『世界の特殊作戦』で、この事件について記事を書いたことがあります。この朴正煕大統領暗殺未遂の報復として、韓国側も北朝鮮軍の侵入者と同人数の31人から成る金日成暗殺部隊を極秘裏に編成し、仁川の沖にある実尾島(シルミド)で訓練しました。しかし南北融和で暗殺計画が放棄され、政府から闇に葬られようとした暗殺部隊は反乱。これが映画『シルミド』の背景となる実話です。

1124ブログ22s.jpg


1124ブログ23s.jpg

北緯38度線付近を訪れるDMZ(非武装地帯)の見学ツアーにも参加しました。1953年の休戦協定締結後に捕虜交換で使われた「自由の橋」や、北朝鮮が韓国侵入用に掘ったトンネルの中、北朝鮮が望める展望台などを見て回りました。次回は板門店のJSA(共同警備区域)にも行きたい。

1124ブログ24s.jpg

北緯38度線の境界近くにある都羅山(ドラサン)駅。分断されている京義鉄道を復旧し、ソウルから平壌まで繋ぐことを想定した韓国最北端の駅で、行き先表示には「平壌」の地名が記されています。北緯38度線という境界は、1945年も1953年も便宜上決まったもので、遅かれ早かれ解消される日が来るだろうと思います。

今月は、長く取り組んできた単行本の原稿と『歴史群像』誌の来年1月発売号の担当記事(イタリア内戦 1943-1945)を既に脱稿し、年内は来年出る新書の執筆に没頭します。テーマや発売日等は、年明けに改めて告知します。


【おまけ】

1124ブログ25s.jpg

韓国で食べた美味しいもの。昼食にキンパ(海苔巻き)とわかめスープを頼んだら、この写真を撮ったあと、スープに小皿とごはん一膳が付いてきました。しかし旅行中は食欲が旺盛になるので、結局完食しました。

1124ブログ26s.jpg

栄養満点の参鶏湯(サンゲタン)。鶏は骨まで全部食べられます。

1124ブログ27s.jpg

ソウルで食した平壌冷麺。韓国の冷麺は、ハサミで切るほど麺が硬い印象ですが、こちらは冷たいおそばのような感じで硬くはなく、ダシの効いたスープと共に、美味しくいただきました。暑い夏よりも寒い冬に、暖房の効いた部屋で食べる料理らしい。

1124ブログ28s.jpg


1124ブログ29s.jpg

唐辛子を利かせた肉料理と石焼きビビンバ。滞在中に食べた料理は外れなしで、どれも大満足でした。

 
 

nice!(1)  コメント(0) 

2018年9月28日 [その他(雑感・私生活など)]

平川山崎2018091s.jpg

2018年も、ほぼ4分の3が過ぎ去りましたが、いくつか告知です。

歴群151号1s.jpg

まず、『歴史群像』(学研)の第151号が9月6日に刊行されました。今号の私の担当記事は「ビルマの第二次大戦」で、太平洋戦争とその前後の時期におけるビルマ(現ミャンマー)の動向を俯瞰的に描き出す内容です。当時の日本軍にとって大きな関心事だった「ビルマ・ルート」の実情や特務機関「南機関」の活動についても解説しています。

歴群151号2s.jpg


歴群151号3s.jpg

太平洋戦争最中の1943年8月、日本は「大東亜共栄圏」の範疇でビルマの独立を認めましたが、秘密軍事協定により、日本軍は引き続きビルマ領内で自由に駐留し、そこから周辺地域への軍事作戦を行う権利を保持し続けました。当然、ビルマ側では日本に対する失望が広がり、1945年3月の対日反乱へと繋がっていきます。

歴群151号4s.jpg

現在の日本の一部では、「東南アジアの植民地は日本軍のおかげで独立できた」というような雑な歴史認識が声高に語られていますが、その実情はどのようなものであったかについても、参考にしていただければ幸いです。

歴群151号5s.jpg

最新号の読者コーナーでは、前号(第150号)の付録ボードゲームに対する反応の数々がたくさん掲載されていました。編集/制作サイドの予想を超える大反響で、企画としては大成功でした。昔ウォーゲームをプレイしていたという人も、やはり読者の中に多かったようです。

歴群150号7s.jpg


歴群150号8s.jpg

モスクワ攻防戦」も「バルジの戦い」も、戦史の雰囲気を味わいながら手軽にプレイできるボードゲームなので、ぜひ長く楽しんでください。



中旬の9月15日から19日までは、横浜と東京に行っていました。年内脱稿予定の本二冊と雑誌記事の打ち合わせ、諸々の取材と会食に加えて、隣町珈琲で平川克美さんと「ラジオデイズ」の収録も行いました。

特別対談 ジャーナリズムと自立性(ラジオデイズ)

平川山崎2018092s.jpg

ラジオデイズ」は、1本515円のネット音源です。平川さんとお話させていただくのは三度目でしたが、今回の対談の中で出た話題は、次のようなものでした。

・沖縄県知事選での公明党の動き方 ・安倍政権が内部から崩壊する可能性 ・トランプとともにレームダック化する可能性のある安倍政権 ・ソ連時代の政策を継承している今一番恐い政治家プーチン ・政治的な正論を言い続けていることのジレンマ ・社会の中での当事者意識が希薄化している日本人 ・今回の自民党総裁選で露呈したこと ・風化していく正論 ・当事者意識が極端に薄れたメディア ・抵抗のないジャーナリズム/ジャーナリズムの起源 ・報道の中立より大切な報道の自立性 ・破壊された見えない資産としての「文化資本」 などなど

オランダ441s.jpg

横浜では、16日の午前にYSGAさんの例会場に少し顔出ししたあと、古い友人二人と久しぶりに会い、GMTゲームズのシミュレーション・ゲーム「オランダ'44」(映画『遠すぎた橋』で有名な、1944年9月の「マーケット・ガーデン作戦」がテーマ)を3人でプレイしながら、積もる話に花を咲かせました。

オランダ442s.jpg


オランダ443s.jpg


オランダ444s.jpg

私はアメリカ軍を担当しましたが、幸運に恵まれ、ソン橋とベスト橋を無傷で確保したほか、ナイメーヘンを早期に完全制圧し、対岸にも橋頭堡を築くことに成功しました(ただしフェーヘルの橋を落とされました)。



秋葉原s.jpg

東京最終日の19日は、夕方から新幹線の時間(午後7時30分)まで、友人の記者と会食の約束をしていましたが、移動中の電車の窓から秋葉原の歩道橋に人がたかっているのを見つけ、急遽予定を変更して一緒に「安倍晋三候補の演説会」を見に行きました。

安倍.jpg

自民党の総裁選で、現職の安倍氏側があれほどの恫喝と脅迫を行ったにもかかわらず、党員算定票の結果は安倍224票対石破181票という結果となりました。議員の石破票は73票。非議員の党員の45%、全投票者中の254人が、安倍氏の恫喝と脅迫を無視したことになります。歴史が教える通り、恫喝では人を支配できません。むしろ、長期的には自分の足元を揺るがすことになります。

安倍秋葉原6s.jpg

私も以前「オレに刃向かった奴は絶対許さない」という執念深い人に、運悪く関わってしまったことがあります。派閥のような徒党を組んで、執拗に悪口を流して潰そうとする。しかし実際には、そんな人間の影響力は見かけほど大きくはありません。悪意丸出しの中傷は逆に周囲を呆れさせ、それを流す側が信用をなくします。

安倍秋葉原1bs.jpg

「あの人を敵に回したらこの業界で生きていけない」と周囲が言う相手とも衝突しましたが、全然そんな展開にはなりませんでした。威圧感を醸し出し、周囲にそう信じ込ませるのも一つの才能でしょうが、それを信じてしまう人が思っているほど世界は小さくありません。世界は大きくて広い。萎縮しなければ乗り越えられます。会社や団体などで、理不尽なパワハラに直面している人は、どうか挫けずに、心を強く持ってください。



東京.jpg

年内の残り三か月は、上記の本二冊と『歴史群像』誌次々号の記事執筆(次号の担当記事「ウラーソフとロシア解放軍(仮)」は既に編集部に送信済み)に没頭する予定ですが、取材を兼ねて韓国に行く予定もあり、朝鮮半島の南北首脳会談の行方にも注目しています。

1950年に始まった朝鮮戦争の終戦合意が成立し、地球上に残る、東西冷戦の最後の最前線とも言える38度線に平和が訪れるのか。戦史・紛争史研究家として、興味深く見守りたいと思います。


【おまけ】

東京滞在中に食べた美味しいもの。今回はシーフードを多くいただきました。

うまいもの1s.jpg


うまいもの2s.jpg


うまいもの3s.jpg


うまいもの4s.jpg

 
 
nice!(0)  コメント(0) 
前の10件 | -