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2005年10月16日 [バルジの戦い]

今日も、バルジの戦い(戦史)についての話など。

バルバロッサ作戦、とりわけモスクワ攻略戦が失敗に終わった最大の
原因が、ドイツ軍の兵站計画の不備にあり、その責任はヒトラーよりも
むしろ参謀本部にある、という原稿を、過去に何度か書いたことがあり
ますが、バルジの戦いでも、それと同じような問題を内包していたよう
です。作戦期間中におけるドイツ軍の燃料不足は有名ですが、実際に
は燃料の備蓄は充分にあったものの、それを前線へと配送する手段を
きちんと確保しないまま、攻勢作戦を開始してしまったらしいのです。

今回の「バルジの戦い」には、パーカー氏による「戦局の推移」と、
コール氏(米陸軍の戦史研究将校)の「戦史分析」の計2本のヒストリ
カル・ノートを収録していますが(各6ページ・ただしコール氏の記事は
抄訳圧縮版)、コール氏の研究によると、B軍集団モーデルが上層部に
要求した燃料は「5消費単位(1消費単位とは所属各部隊をそれぞれ
100キロ移動させられる燃料)」だったのに対し、攻勢開始日に前線
部隊へと配布できたのは、わずかに1.5ないし2消費単位だったとの
こと。そして、ライン川周辺の補給集積所には、輸送手段の欠如から
放置されていた燃料が、9~10消費単位も存在したそうです。

ドイツ軍の補給部隊は、少ない道路と雪による地表状態の悪化、
そして連合軍のヤーボ(戦闘爆撃機)にも苦しめられましたが、しかし
このような実情を知ったコール氏は、結局ヒトラーとドイツ参謀本部は
大規模攻勢における兵站の重要性を最後まで理解できなかったと
結論づけています。実際問題として、当時のドイツ軍という組織に
どこまでのことが出来たのかという問題には、軽々に結論を出すべき
ではないと思いますが、少なくとも参謀本部はアルデンヌ攻勢に対して
特に反対もしておらず、むしろヒトラーの側に立ってルントシュテットや
モーデルの代替案を潰してきたという経緯を振り返れば、アルデンヌ
攻勢というギャンブルが失敗に終わった責任を、ヒトラーただ一人の
無能さに押し付けるというのは、現実を反映していない、参謀本部の
職務怠慢から目をそらせるための結論であるように思えます。

「バルジの戦い」の燃料不足ルールは、第9ターン(12月20日AM)
から補給判定時にサイの目判定を行い、数個師団が追加で補給切れ
状態になるというシンプルなものです。判定表に示されているのは、
燃料不足となる師団数だけで、どれを選ぶかはプレイヤーが選ぶこと
になりますが、最初の1個師団は必ず連合軍プレイヤーが選ぶという
きまりになっているので、リアリズムの点でもプレイバランスの点でも
なかなか上手い処理ではないかと思います。こういうところで煩雑な
判定が必要だと、プレイのリズムがそこで途切れてしまうものですが、
このゲームの処理は非常にシンプルかつスマートなので、記事用の
リプレイでも集中力を切らさずに、プレイに没頭することができました。
もちろん、時期によって段階的に燃料不足の師団数は少しずつ増加
していくので、ドイツ軍の攻勢はまさに時間との戦いになります。


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