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2007年12月23日 [フランス1940]

今日は、久しぶりに新しいゲームデザイン構想の話題です。

現在執筆中の文庫本「西部戦線1919-1945」の中で、1940年のフランス戦に関する部分を少し前に書き上げましたが、私の頭の中の「ゲームデザインを司る部署」では、それ以来フランス戦ゲームのデザインアプローチに関するアイデアが、少しずつではありますが、膨らみ始めています。

1940年のフランス戦は、例えて言うなら「NAW(ナポレオン・アット・ウォー)」シリーズのゲームしかプレイしたことがなく、NAWシステムこそあらゆるゲームの共通システムだと思っていた「熟練プレイヤー」が、ある日友人に誘われて「PGG(パンツァーグルッペ・グデーリアン)」をプレイしたところ、NAWにおける「定石」の戦法が全く通用せず、それどころか「オーバーラン」と「機械化移動」という、彼が初めて見る常識破りのシステムを駆使する相手に、完膚なきまでに叩きのめされてしまったような戦いでした。総司令官ガムランの司令部には、無線機もテレタイプも設置されておらず、彼の命令が前線に届くまでには「通常48時間を要した」という有様では、装甲ハーフトラックに無線機を搭載した「戦闘指揮車」まで用意して戦いに望んだドイツ軍の突破力に対応できなかったのも無理はありませんが、しかし果たして「当時のフランス軍は、こんな負け方しかできなかったのだろうか」という疑問は、「ゲーム」という表現方法で何か作ることはできないかという創作意欲へと変わりつつあります。

フランス軍プレイヤー・ターンをNAWシステム、ドイツ軍プレイヤー・ターンをPGGシステムで、それぞれルール化する、というのは、アプローチとしては安易に過ぎるきらいはありますが、しかしこの発想を出発点としてこれから基本システムを考案し、史実をおおむね正確に再現する(従って競技用プレイには向かない)ヒストリカル・シナリオと、コマンドコントロール面で多少の優遇措置をフランスに与えた仮想シナリオの両方でプレイでき、後者では「パウルス第6軍」のような競技性も備えたゲームにできればと考えています。フランス軍戦車部隊は、航続距離が短く、史実では燃料給油で時間を費やしているうちに反撃の好機を何度も見逃し、第2機甲師団などは混乱した命令に引きずられて右往左往しているうちに、燃料切れで戦車を放棄するという悲惨な末路をたどっていますが、シャールBやソミュアなど、戦闘能力はドイツ軍戦車を凌駕する戦車が多数あったことは事実なわけで、こういった要素をゲーム内のスパイスとして使えれば、と考えています。

これはまだアイデア段階なので、完成の目途などは全く立っていませんが、文庫本の作業が終わったら、地図とユニットの製作に手をつけたいと考えています。

追記: ご迷惑をおかけしております「激闘ノルマンディ」ですが、新たなエラーが1点見つかったので、エラッタを更新しました。付録ミニゲームのドイツ軍ユニットの配置ヘクスが、ユニット/マップと展開表で異なっていますが、正しいのはユニット/マップの表記です。ご購入いただいた方には、重ね重ねお詫びいたします。

http://www.mas-yamazaki.net/cobra_errata_2007_12_22.pdf
http://www.mas-yamazaki.net/sixangles_cobra.html


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コルネリウス

40年のフランス戦は、手に入るゲームが皆無に近く、旧作もダニガンの「激闘マジノ戦」くらいしか思い浮かばないテーマなので、期待しています。じっくり時間をかけて、よい作品に仕上げてください。
by コルネリウス (2007-12-23 18:18) 

作戦級の僕

独仏戦で「パウルス第6軍」のような競技性も備えた仮想シナリオというのは面白そうですね。独仏戦ゲームで入手が容易なのは、コマンドのミニゲーム「1940」とビッグゲーム「電撃戦1940」くらいですが、完成すればその中間あたりの位置付けになるのでしょうか。楽しみにしています。
by 作戦級の僕 (2007-12-25 20:40) 

ドーチェ

西部戦線の文庫本に出版についても、詳細が決まりましたら教えてください。ぜひ、購入したいです。
by ドーチェ (2007-12-26 11:46) 

ガムラン

OSG/SAの「バルジの戦い」には、史実の可能性をいろいろと試すことのできる仮想設定のヴァリアントがいろいろ付いていましたが、あれと同じような形式で、もしフランス軍が●●だったら、ドイツ軍が●●だったら、というヴァリアント設定を、たくさん付けてもらえると嬉しいです。私は、ソロ研究が多いので、シナリオやヴァリアントが豊富なゲームが希望です。
by ガムラン (2007-12-26 22:55) 

西

「NAW」システムしか知らないプレーヤーが、初めて「PGG」をプレーして驚愕した、というのは、ゲーマー的にはわかりやすい比喩ですね~。対戦ゲームとして両方おもしろいゲームに仕上げるのは大変かと思いますが、期待しつつ、気長に待つことにします。
by 西 (2007-12-29 22:57) 

Mas-Yamazaki

コルネリウスさま、作戦級の僕さま、西さま: コメントありがとうございます。「フランス1940」については、まだ私の頭の中で「芽が出た」段階で、具体的な製品イメージが固まるところまでは行っていないのですが、何かしら進展があり次第、本ブログでご報告させていただきますので、気長にお待ちいただけると幸いです。よろしくお願いします。
by Mas-Yamazaki (2007-12-31 18:24) 

Mas-Yamazaki

ドーチェさま: コメントありがとうございます。文庫本の件ですが、テーマは第二次世界大戦の西部戦線(フランス、ベネルクス、ドイツ西部)における陸海空の戦いです(メインは陸戦です)。ただ、戦争勃発から描くのではなく、第一次世界大戦の講和条約(ヴェルサイユ条約)後の1920年代から30年代に至る独英仏米四国の国内事情と各国軍隊の内情を詳しく検証して、なぜ第二次大戦が勃発したのかという「流れ」を、最初の一章(原稿用紙換算で約110枚: 歴史群像の巻頭記事2本分以上)を割いて記述しており、「ドイツ(ヒトラー)対英仏独」という対立図式を、一本の大きな「河の流れ」のような形で描き出すというのが、本のテーマです。独ソ戦とは異なり、西部戦線の通史というのは、今のところ見当たらないようなので、良い本に仕上げたいと全力で取り組んでいます。ぜひ発売を楽しみにしていただければと思います。
by Mas-Yamazaki (2007-12-31 18:33) 

Mas-Yamazaki

ガムランさま: コメントありがとうございます。歴史的な興味に基づくシナリオやヴァリアントを豊富に用意するというのは、この種のテーマではとくに有効な方法論だと思います。ご期待に沿えるよう、シナリオやヴァリアントが豊富なゲームに仕上げる方向で、デザインを考えたいと思います。また何かご希望などありましたら、ぜひお知らせください。よろしくお願いします。
by Mas-Yamazaki (2007-12-31 18:37) 

INB

フランス1940ですが。 期待しています!

そこで私からの期待感+お願いを述べさせていただきます。

このケースというのは、彼我の兵力が均衡しているにも関わらず、
片方が戦史上でもまれに見る一方的を収めたケースでしたが。

この勝因を、極めて乱暴に分類をすると

①作戦軸(装甲兵力)をアルデンヌに集中したという戦略的奇襲が成功した(マジノ線へ過重な期待をかけていた。というのもこれに含まれる)

②いわゆる電撃戦効果(装甲部隊の機動力・近接支援・諸兵連合etc)という戦術的な成功があり、最前線の部隊の指揮系統が麻痺し独軍の突破に対して有効に対応できなかった。

が最も重要なポイントになると思います。

(その他、WWI後のフランスの出生率減少>フランスの兵力が少なかった
事もありますが、これは彼我の兵力が均衡しているのでこの際、無視します。)

そこで、山崎さんがおっしゃられたように独軍をPGG、連合軍をNAWというシステムを適用することによって再現できる部分は、②に限られると思います。

残りの①ですが、連合軍プレイヤーは、史実を知っているので、アルデンヌを軽視することはないと思います。
このあたりを再現するために、過去様々なゲームで様々な試みがなされていますが、この部分についても是非斬新なものにしていただければ幸いです。

また、ユニット数については出来るだけ少なく。(200個程度)たとえば歩兵は軍団規模にするとか、師団ユニットは2個師団で一ユニット等々、プレイアビリティが高くなるようにご配慮頂ければ幸いです。

以上わがままを申し上げましたが、1プレイヤーの声ということでお願い致します。
by INB (2008-01-26 11:03) 

Mas-Yamazaki

INBさま: コメントとゲーム内容のご提案、ありがとうございます。ご指摘のとおり、1940年のフランス戦をゲーム化する場合、史実のような「一方が陥った決定的な誤謬」をゲーム内でどう表すかが問題になると思います。ただ、史実のフランス戦を決した最大の理由、つまりフランス軍の最大の敗因についてですが、私は単に「ドイツ軍がアルデンヌに来ることを予期していなかった」ということではなく、そのような固定観念への執着も含めた「指揮系統面での致命的な硬直性」にあったと考えています。つまり、仮にドイツ軍がマンシュタイン計画を採用せず、ベルギー北部に主力を向けていたとしても、フランスが勝てる可能性は低かったように思います。

「アルデンヌ効果」の再現については、フランス軍プレイヤーに史実と同じ間違いを強要することはできませんが、指揮系統の硬直というルールの「強度」(つまり制約の大小)を何種類か用意して、史実のバリアントとして検証できるようにする方法を構想しています。あと、ベルギー軍のアントライドにして、英仏軍がベルギー軍を「当て」にしづらくするとか、両軍の初期配置を軍ごとにプロットするとか、頭の中で温めているアイデアもいくつかありますので、落ち着いたら具体的なシステムのノートを製作したいと思います。

歩兵は軍団にする、2個師団で1ユニットにするというのは、非常に現実的なアイデアですね。おそらく、その形で両軍の部隊をユニット化することになると思います。

他にも、何かご要望などありましたら、ぜひお聞かせください。よろしくお願いします。
by Mas-Yamazaki (2008-01-29 23:41) 

INB

山崎さん

ご返事どうも有り難うございました。私のような一般人がゲームのコンセプトに関してデザイナーにこうして欲しい、ああして欲しいというリクエストができるということ自体。すごい時代になったと興奮すると共に、自分の思い(前提・思考パターン・嗜好)を正確に、説得力を持って伝えることの難しさも同時に感じております。

ネットで伝えることも可能ですが、口頭でお伝えするメリットもあると思いますので、是非ミドルの例会にご参加下さい。(無理な場合、kgg_inb@yahoo.co.jpまで)

さて、釈迦に説法ですがこのテーマに関しては過去多数のゲームが発売されており、あるものは斬新な試みを行い、ある部分で成功し、また失敗しており、これぞ決定版というものは出ていません(と私は思います。)詳しくは、旧ゲームジャーナル54号を是非ご参照下さい。(ゲームジャーナルのウェブサイトからも一部参照(田島準氏の記述)できますので、ご覧下さい。
是非とも、以前のゲームになかった切り口で何度もプレイしたくなるゲームを作っていただきたく存じます。

さて、私からの最後のお願いですが、オーケストラでは準備70%本番30%で出来が決まるといいますが、それと同じく今回のテーマ:(特に黄色作戦)については、戦う前から勝負は7割方決まっていたと思います。

しかしそれに至るまでに参謀本部・ヒトラー・マンシュタイン等の中で色々な数ヶ月にわたって議論・検討・(+メケレン?事件)があったことはご存知だと思います。
私としては、決まっている規定事実の中で(つまり30%)の中で戦うのではなく、是非70%のそのプランニングの中で、あーでもないこーでもない、(出来れば連・独双方とも)と検討できる余地があるゲームにしていただければと思います。
繰り返しますが、期待しており、是非良いゲームにして頂きたいと思います。ご体調にご配慮頂きながらがんばってくださいね。
by INB (2008-02-12 11:07) 

Mas-Yamazaki

INBさま: コメントありがとうございます。デザイナーあるいはゲーム出版人という立場から見ても、製作中のゲーム内容やグラフィックの見本などを出版前に告知し、ユーザーから「発売後に聞く」はずの声を発売前に聞いて商品に反映させられることができるというのは、非常に恵まれた時代というか、よい環境になったと思います。「クルスク」の要塞シンボルや「戦略級 日露戦争」の商船ユニットなど、事前に改善できたことで、こういう「場」があって良かったとつくづく思います。

フランス戦の作戦級ゲームについては、今までのオリジナル・ゲームと同様、まずゲームマップの領域を決めて、地図を作るところから作業を始めたいと思います。そして、ヘクスの距離が決まると、おのずとユニットのサイズも決まってくるので、頭の中でいろいろイメージしながら、時間をかけてシステムを構築していく予定です。森之宮には、またお邪魔するかと思いますので、その時にはぜひ打ち上げのカレー屋でいろいろご意見やアイデアを聞かせていただきたいと思います。難しいテーマだとは思いますが、「(ドイツ軍だけでなく)フランス軍プレイヤーも、ゲームをやりたいという意欲を感じるような面白いゲーム」を目指して、気長に頑張ります。
by Mas-Yamazaki (2008-02-18 00:18) 

hiro

 フランス軍はNAWだろうか?(1914年ならそうでしょうが)マストアタックなのは日本軍でしょう。
by hiro (2012-05-10 21:14) 

Mas-Yamazaki

hiroさま: コメントありがとうございます。フランス軍がNAWというのは、記事にあります通りあくまで「出発点」で、そのまま使うという意味ではありません。
by Mas-Yamazaki (2012-05-11 23:36) 

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