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2009年7月13日 [ツィタデレ: クルスクの決戦]

シックス・アングルズ第13号「ツィタデレ: クルスクの決戦」の発売も間近となりましたが、本ブログの7月9日付記事に対するコメントとして、同ゲームのユニット・レーティングについてのご質問がありましたので、少しご説明させていただきます。

編制図.jpg


まず、ドイツ軍の装甲連隊とその所属大隊の関係についてですが、ご指摘のとおり、編成上は一個大隊だけでクルスク会戦に参加した装甲師団も少なからず存在しました。例えば、第6装甲師団の場合、1943年7月5日の時点で、第11装甲連隊は第5~第8中隊から成る第2大隊だけを作戦に投入していました。上の画像は、本誌のヒストリカル・ノートに収録した第3装甲軍団の編成図の一部です。

ただし、ツィタデレ作戦開始時における、各師団(装甲連隊)の稼動戦車台数を見ると、1個戦車大隊しか持たない第6装甲師団は106輌なのに対し、2個戦車大隊を持つ第19装甲師団は81輌しかないなど、大隊の数と稼動戦車台数はかならずしも一致していませんでした。

本ゲームのデザインに際しては、書類上の「大隊数(1個か2個か)」ではなく、実際の稼動戦車台数を基にユニットのレーティングを行い(現在判明している資料ほどの信憑性は望めなかったとはいえ、私が初版のデザインを行った当時でも、W.Victor Madejaの”Russo-German War: Summer-Autumn 1943”など、装甲師団ごとの稼動戦車台数の推移についての詳しい情報が出ている資料はいくつか存在しました)、基本的に40輌を1ステップと換算して(突撃砲大隊は別)、個々の「ユニット化」と対戦車力の数値を決定しました。

今回選択ルールとして導入しました「大隊分割ルール」に関しても、ユニットの表記は便宜上「第1大隊」「第2大隊」となっていますが、ルールとしては「実際の稼動戦車を2分して使用する(これによって非機甲の装甲擲弾兵ユニット2個を同時に装甲兵力で支援できるようにする)」というのがルールの主旨であり、厳密に当時の部隊編成内容をそのまま表しているものではありません。従って、編成図の上では第2大隊しか保有していなかった第6装甲師団の第11装甲連隊が持つ「106輌の戦車」を2手に分割して、それぞれ装甲擲弾兵連隊とスタックして運用することは、史実で同師団が臨機応変に編成した戦闘団の運用(巻頭のヒストリカル・ノートで詳述しています)とも合致するもので、ユニットに付された大隊番号などの見かけ上はともかく、実際の効果という点では史実のクルスク戦のシミュレーションとして問題はないだろうと判断しました。

また、グロスドイッチュラント師団の「3/GD」パンター大隊ユニットについてですが、これは「グロスドイッチュラント装甲連隊第3大隊」ではなく「グロスドイッチュラント軽歩兵連隊第3大隊に一定数のパンター戦車を配属した戦闘団」を表すユニットです。ご存知のとおり、ドイツ軍はこの戦いに200輌近いパンターを投入しましたが、前記した「1ステップ=40輌」という算定法だと、第51と第52のパンター2個大隊を共に2ステップにしてもまだ吸収できず、苦肉の策として(パンター大隊を指揮下に置いて運用した)グロスドイッチュラント師団の戦闘力を強化する形で、追加のユニットを創出しました(グロスドイッチュラント装甲連隊をこれ以上強化することは、全体のバランスという点でも数値表現上の理由からも不適当と判断しました)。本ゲームにおけるパンターの戦力は、史実での不甲斐ない成果と比べるとやや過大評価と思われるプレイヤーもおられるかと思いますが、最終的なユニットのレーティングは、ゲーム全体を通したプレイテストによって検証・確認しており、ゲームバランスを根底から揺るがすほどアンバランスな評価にはなっていないのではないかと思います。

シミュレーション・ゲームのデザインに際しては、特定の意図に基づいてユニットの統合や省略、あるいは書類上の組織図ではなく実際の運用実態に基づく表現などを行うことが多々あり、本来ならこうした処理の全てをデザイナーズ・ノートやルール本文で解説すべきなのですが、現実には書くべき要素があまりに多すぎて、限られたスペースをこのような情報で埋めることは難しく、結果的に説明不足となってしまう場合も多いようです(申し訳ありません)。また、実際の編成内容を組織図どおりに忠実に再現したゲーム(ジ・ゲーマーズのTCSなど)を求める方から見れば、組織図の名称と異なるユニット処理や、同一兵科・同一規模のユニットのレーティングを画一化するような処理に不満を感じられるかもしれません。

ただ、私は「ツィタデレ: クルスクの決戦」をデザインした時、表現の核心となる部分以外の点については、なるべくプレイヤーの負担を軽くしたいと考え、ゲームの主役と位置づけたドイツ軍の装甲ユニット(このグループに属するユニットのみ、稼動戦車台数や装備戦車種に基づいて数値を変えてあります)を除いて、同一兵科・同一規模の(脇役的)ユニットのレーティングは画一化することにしました。この考えは、先日の『コマンド・マガジン』誌の対談でも述べましたとおり、現在私が手かげているゲームデザインの方法論でも変わっていませんが、私の見る限りでは、同様の判断(あくまで想像ですが)から、ユニットのレーティングを画一化したりユニットの統合や省略を行っているゲームは他にも数多く存在しており、特に異質なアプローチというわけではないと思います。

以上のような、私の判断およびデザイン上の処理が、果たして適切だったかどうかは、実際にプレイされた方の評価を待たなくてはなりませんが、少なくとも今回の復刻に際してルール検証のプレイテストを重ねた限りにおいては、ユニットのレーティングに関して、特に大きな問題は見つからなかったと考えています。発売まで、あと少しとなりましたが、ぜひご期待いただければと思います。

zit01.JPG


zit05.JPG

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K

ご説明頂いた内容にて理解致しました。
不躾な質問にもかかわらず、丁重な解説を頂きましてありがとうございました。
by K (2009-07-18 02:13) 

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