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2010年7月20日 [マザーランド]

今日は、マザーランド(シックス・アングルズ第9号『ウォー・フォー・ザ・マザーランド』)の話題です。もうご覧になった方もおられるかと思いますが、まあちんさんという方が運営されている「シミュレーションゲーム馬鹿一代記!」というブログで、マザーランドのキャンペーン・シナリオのプレイ報告が紹介されています。

http://ameblo.jp/mapzk/entrylist.html

フルターン(全40ターン)のプレイレポートだけあって、記事の方も18回+αと長丁場ですが、読み物として面白く、また当該ゲームのデザイナーには非常に参考になる示唆や指摘の多い、ありがたい記事でした。

実は、少し前から石田参謀長との間で、再び「マザーランド改造計画」が話題に上ることが多く、先日の隠(なばり)ゲームクラブでも、石田さん、KMTさんとの3人で、この話題で盛り上がりました。最近は執筆の仕事と自治会関係の用事で忙しく、なかなかゲームのプレイに時間をとれないのですが、休憩時間や執筆テーマの切り替えなどの時期には、脳の休憩も兼ねて、ルールの改善案をいろいろと考えていたところでした(執筆で使う脳と、グラフィック作業で使う脳、ゲームデザインで使う脳は、それぞれ領域が違うみたいです)。

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可能な限り少ない修正で、最大限の効果を狙うことを目指して、現在デザイナーが考案しているルール改定案は、次の6点です。

《1. 手順》
降雪ターンのみ、以下の手順で行う。

1. 両軍補給フェイズ
2. 枢軸軍戦闘フェイズ
3. 枢軸軍移動フェイズ
4. ソ連軍移動フェイズ
5. ドイツ軍機械化移動フェイズ
6. ソ連軍戦闘フェイズ
7. 管理フェイズ

《2. ZOC》
ドイツ軍のKGは、全て弱ZOCを持つ(攻撃力1の歩兵KGも含む)。
ドイツ軍KGの弱ZOCは、大河の対岸に及ばない。
ドイツ軍KG以外の両軍ユニットのZOCは、大河の対岸に及ぶ時には「弱ZOC」となる。
弱ZOCは、敵の補給線を遮断できるが、敵の移動や退却には影響を与えない。
ドイツ軍のKGが2ユニットスタックしていれば、弱ZOCではなく、通常のZOCを持つと見なす。この通常のZOCも、大河の対岸に及ぶ時には「弱ZOC」となる。
ドイツ軍装甲師団は、弱ZOCではなく通常のZOCを持つ。

《3. オーバーラン》
枢軸軍は、ソ連の経済資産ユニットまたはそれを含むスタックに対して、オーバーランを実行できない。

《4. 降雪ターン》
11.27項と11.28項は廃止。代わりに、最初の冬(第8~11)ターン中に、ドイツ軍が行う攻撃やオーバーランでは、修正前のサイの目が5か6なら、戦闘結果を通常どおり適用した後、攻撃参加ユニットの中からソ連軍プレイヤーが1ユニットを選んで、1ステップを失わせる。2回目の冬(第22~25)ターン中に、ドイツ軍が行う攻撃やオーバーランでは、修正前のサイの目が6なら、戦闘結果を通常どおり適用した後、攻撃参加ユニットの中からソ連軍プレイヤーが1ユニットを選んで、1ステップを失わせる。

《5. ソ連軍の戦力回復》
ソ連軍は、管理フェイズ中に補給下ないし補給不足の状態にある軍ユニットを、狙撃兵軍団2個に分割できる(14.39項は廃止)。敵ZOCにいてもかまわない。このようにして分割された軍団ユニットは、同じ管理フェイズ中に、14.34項~14.36項に従って「編入」を行うために使用できる。

《6. ドイツ軍補給基地の機械化移動》
ドイツ軍機械化移動フェイズに、枢軸軍プレイヤーは、補給ユニットを1個のみ、全移動力で移動させられる。

このうち、《1》と《4》は、冬季(降雪)ターンにおけるドイツ軍の行動に関する、制約ルールの改訂です。史実におけるドイツ軍の「バルバロッサ作戦」は、改めて述べるまでもなく、数か月の「短期決戦」でソ連に痛打を加えて勝利するという、いわば「時間との勝負」という側面を持っていたわけですが、マザーランドの現行ルールでは「雪が降っても、ドイツ軍は多少の損害さえ覚悟すれば夏と秋の延長で攻勢を継続できるので、無理に冬までに決着をつける必要がない」という展開になりがちです。

これでは、枢軸軍プレイヤーのプレイ中の心理状態は、史実でドイツ軍の首脳が感じたであろう切迫感や焦燥感とは、似ても似つかないものになってしまいます。言い換えれば、枢軸軍プレイヤーに「何がなんでも雪が降る前に(初年度の)決着をつけねば!」という心理面でのプレッシャーを与えようというわけです。ちなみに、手順の変更というアイデア自体は以前から検討していました(第11号の「ゲーム制作工房」でも少し触れています)が、「降雪ターンのみ変更」という形式は、前記のブログでのご提案を採用させていただきました(ありがとうございました)。

《2》は、ドイツ軍KG(特に装甲)の威力を大きく削ぐものですが、浸透移動の能力は依然として有効なので、ソ連軍の背後を遮断するという戦法において、現行ルールでは例えば3本可能だった攻勢軸が2本ないし1本に絞られるという効果を期待しています。このルールと「経済資産にはオーバーラン不可」という《3》のルールは、石田さんの提案を参考にさせていただきました(ありがとうございました)。

《5》は、ソ連軍に防御面での柔軟性を付与するものですが、現行ルールでは1ステップを失った軍ユニットの強化(該当ヘクスの防御力回復)がきわめて困難という、ルールシステム上の問題があると思われるので、それを解消するために、上のようなルールを用意しました。

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とりあえず、現状ではまだ一度も対戦テストを行っていないので、あくまで「草案」段階ですが、もし興味のある方がおられましたら、ぜひ上の改訂ルールでプレイしていただければ幸いです。私も、自治会の役職から解放される来年には、バルバロッサ・シナリオとキャンペーン・シナリオの両方で、上記の改訂ルールをテストしてみたいと考えています。その上で、最終的な改訂版ルールは「第2版ルール」として、PDF形式で無料配布する予定です。

「マザーランド改造計画」については、ちょうど2年前に記事を書きましたので、興味のある方はぜひそちらもご覧ください。

ちなみに、冒頭で紹介しましたブログには、マザーランドだけでなく、GDW/HJ社の『英国本土決戦(ゼア・ファイネスト・アワー)』や、XTR社/コマンド日本版創刊号付録の『ウェン・タイガーズ・ファイト』など、他ではあまりお目にかかれない、いろいろなゲームのプレイ報告も写真入りで詳しく紹介されています。いずれの記事も、ちゃんと最終ターンまでプレイした上で論評するという姿勢を貫かれているようで、個々のゲームに対する愛情を感じます。

シックス・アングルズ関係では『激闘ノルマンディ(コブラ)』の本編に加えて、オマケで付けたノルマンディ上陸のミニゲーム『いちばん長い日』のプレイも紹介されているのが嬉しいところ。あのミニゲームは、こちらで作ったバリアントで、版権には抵触しないはずなので、そのうちルールとマップ、ユニットのデータを無料配布することも考えています。


追記

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昨日は、毎年恒例の甲子園巡礼でした。ゲーム自体は双方の投手が好調で、打撃面では薄味の試合でしたが、スタンドには涼しい浜風が吹いていて心地よく、金本選手が先発復帰後初めての甲子園で鮮やかなホームランを打つなど、それなりに満足のいく内容でした。

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視界いっぱいに数万個の風船が飛び交う「非日常空間」で気持ちを切り替えたところで、今週はハードカバー単行本の執筆は一休みして、歴史群像の記事『ニカラグア内戦』に取り組んでいます。
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リューノフ

MOTHERLANDは好きなゲームの部類に入ります。が、冬になっても除雪車よろしく独軍の戦車が突進するのは、すこし変だな、とは思っておりました(笑)。修正案はどれも納得できる感じですが、バランスがどう変わるかは実際やってみないとなんともいえないですね。。。自分もそのうち試してみます。改訂プロジェクトが成功することを願います。
by リューノフ (2010-07-22 02:27) 

復帰組

販売した後のゲームシステムの改訂は作者の良心を感じます。マザーランドは東部ものに珍しく初期配置指定があるほかいろいろと評価できます。しかしらしくするためだけにいわゆる陰謀(特殊?)ルールをピサの斜塔のように積み重ねていかねばならないならそれがこのゲームの限界なのかとも思ったりします。
ダニガン紙がハンドブックでかいていましたが歳を重ねるとシンプルで短時間でできるものを希望するということを心の片隅にでもおいてくださると幸いです。
by 復帰組 (2010-07-23 08:40) 

Mas-Yamazaki

リューノフさま: コメントありがとうございます。ご指摘のとおり、バランスの調整はテストを重ねて検証するしかないので、この修正案が意図どおりの効果をもたらしてくれるのか、修正による弊害はないか、慎重に確認していきたいと思います。
by Mas-Yamazaki (2010-07-25 00:01) 

Mas-Yamazaki

復帰組さま: コメントありがとうございます。ご指摘のとおり、細かいルールをあれこれ追加して「見かけ上のリアルさ」を追求するような方向性は、私も最初から「やらない方がまし」だと考えており、おそらくこのゲームを所有している方からも歓迎されないだろうと思います(混乱を招くだけなので)。

ただ、過去の記事でも触れましたように、出版時にデザイナーが見落としていた重要な問題点が、現行ルールの中に存在することが見つかっていることも事実なので、「どうしても必要な点以外はルールを増やさない」「可能な限り、現行ルールをシンプルな形で修正するだけに留める」という方向性で、改訂作業を進めようと考えています。

「屋上屋を架す(屋上屋を重ねる)」という言葉がありますが、今回の改訂作業がそうならないよう、肝に銘じたいと思います。
by Mas-Yamazaki (2010-07-25 00:08) 

maasa

私もまあちんさんのブログを見てみました。丁寧かつ楽しい記事に刺激され
私もフルターンでプレイしようと思っています。
その際、改定ルールをいくつか使おうと思うのですが、4.降雪 ルール
について質問があります。11.27項と11.28項の廃止ということは、ソ連軍の攻撃にもサイの目+3の修正は適用されないという解釈で、宜しいでしょうか?
周囲のへクスに攻勢支援群がいないとき、ソ連軍にとっても、サイの目+3の修正は心強く、サイの目修正を適用させてやりたいのですが、かといってソ連軍に有利過ぎるのもどうかと思います。現時点では何とも判断がつかないので、とりあえず、改定案を使ってプレイしていこうと思います。
良い案がありましたら、いずれまた教えてください。

by maasa (2010-07-28 01:50) 

東の風

マザーランドの改訂は興味深いので私も自主テストプレーに参加します。

ルール改訂とは別の話になりますが、地図半分で、10ターンくらいでプレーできる、ミニシナリオをいろいろと作ってもらえると嬉しいです。43年とか44年の状況をちょっとだけやってみたいと思うことがあります。
by 東の風 (2010-07-28 03:23) 

Mas-Yamazaki

maasaさま: コメントありがとうございます。冬季戦のルールについては、とりあえず「+3修正はなしで」テストしてみようと思っています。ソ連軍は、手順を入れ替えたことで現行ルールよりもかなり有利になるはずで、ここに今回の修正と「+3修正」を適用すれば、強くなり過ぎるのでは、という懸念があります。

もっとも、テストの結果次第では、残した方がよいようであれば残す形にしますし、もっとスマートな修正に変更することもあり得ます。このあたりは、テストを重ねてからの判断ということになりますが、もしプレイされて「おかしい」と思われたなら、ぜひこのブログのコメント欄でご指摘ください。参考にさせていただきます。
by Mas-Yamazaki (2010-07-29 00:13) 

Mas-Yamazaki

東の風さま: コメントならびにご提案ありがとうございます。手軽なミニシナリオを作って欲しいというご要望は、以前から何件もいただいており、来年時間ができたらぜひ1943年や1944年のシナリオも作るつもりです。ということで、今しばらく、お時間をいただけると幸いです。
by Mas-Yamazaki (2010-07-29 00:16) 

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