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2011年6月1日 [その他(雑感・私生活など)]

 政党の数が多ければ、権力闘争が激化し、権力をめぐる政党間抗争は人民が築き上げた成果を根底から破壊し、社会の利益となるはずの計画までも台なしにすることがある。野党がこうした破壊をあえてするのは、権力の座を奪うことを目的として与党の立場を損なおうとするためである。

 政党間の権力闘争は、それが暴力的な形態をとるのはまれだとしても、相手の活動に対する非難や中傷に終始し、その結果、はるかに重要で高次元の社会的利益が損なわれる。そうした利益の全部とはいわないまでも、少なくとも一部分は、明らかに統治機構の掌握をかけた権力闘争の犠牲にされるのである。

 社会的利益がこのようにして切り捨てられること自体が、与党に対する野党の攻撃材料ともなる。

 野党が権力を掌握しようとすれば、権力の中核を占める統治機構を駆逐しなければならず、そのことは与党の業績を傷つけることになる。野党は、与党の統治機構としての無能力を暴露しようとするあまり、社会的に有意義な計画までも否定してしまうことになるからである。

 こうして、社会の利益や計画が、政党間の権力闘争の犠牲とされる。それゆえ、多くの政党が繰り広げる抗争は、政治活動を活発化させるにもかかわらず、社会にとっては政治的・社会的・経済的な破壊要因でしかない。

 抗争は、政党間の勝敗にともなう統治機構の交代をもたらすだけではなく、実は人民と民主主義とに甚大な打撃を与えるような結果をうむのである。



少し長い引用となりましたが、今日の昼間に放送されていた国会中継を観ていて、最近読んだ本のことを思い出しました。これは、リビアの独裁者ムアンマル・カダフィ(アル・カッザーフィ)が書いた『緑の書』という政治理論書の一節(藤田進訳、第三書館版、15〜16ページ)です。『歴史群像』誌の次号担当記事が「カダフィ伝」ということで、資料の一冊として目を通した文献でしたが、ここで指摘されている「そのまんま」の状況が国政の最高レベルで繰り広げられている事実を、どう理解すればいいんでしょう。

カダフィ本.JPG

カダフィ「大佐」自身がリビアで長らく行ってきた、非民主的で残忍な独裁政治を踏まえれば、冒頭のそれなりに的を射た分析内容も「お前が言うな」という話なのですが(笑)、それでも過去に数限りなく指摘されてきたであろう議会制民主主義の初歩的レベルの問題点が、いまだ克服されていないということを、昨今の政局がらみの報道に触れるたび、強く思い知らされます。

「みんなの党」の若手議員の一人である松田公太氏(タリーズ・ジャパンの社長だった人)は、首相公選制を提唱する議員の一人ですが、もし現首相が国家の指導者として不適任だと考えるなら、代わりに誰をそこに据えるべきか、という人選を行う必要があります。私は、3.11以前の平時ならともかく、大嵐の中で帆船を操らなくてはならないような現状では、もう永田町という小さい村の中だけでは適任者を探すことはできないような気がします。

「次期首相の適任者」は誰か、という話になった時、具体的な名前を挙げるのはけっこう難しいものです。特定の分野では有名な人であっても、私が知っているのはごく一部の断片的な情報でしかないからです。しかし今この時期に、国の舵取りをまかせて今よりマシになりそうな人を強いて一人選ぶなら、私は大前研一氏かなぁ。情勢を多面的に把握する能力、解決法を自力でひねり出す発想力、構想を現在の社会制度の中で具体的な成果に結びつける実行力、国の内外に広がる人脈と実務的な交渉力なども理由ですが、何より「話しぶりが明るい」というのが重要な魅力です。

深刻な難題に直面している時ほど、不屈の精神力の裏返しとしての「明るさとユーモア」が必要になります。ドイツ軍の名将の一人であるヴァルター・モーデルは、1941年にモスクワ前面で独軍の攻勢が行き詰まり、酷寒の中で防御に転じることを余儀なくされた第9軍の司令官に任命されましたが、押し寄せるソ連赤軍の大軍に半ば包囲されてパニック寸前となっていた軍司令部の空気を、持ち前のユーモアで一変させることの意義をよく理解していたようです。

「それで我が軍への増援部隊は?」圧倒的な彼我の戦力差に緊迫した表情の参謀からそう問われて、モーデルはこう切り返したそうです。「…私が来たよ」
この一言で参謀の間に笑いが漏れ、「組織を萎縮させる嫌な空気」が取り払われ、独第9軍の司令部は一体感を回復します。そして、危機的状況にあった「ルジェフ突出部」と呼ばれる地歩を、一年にわたって赤軍の猛攻から守り抜いた上、最後には整然と大兵力を撤収させることに成功しました。

最終的に、現下の「政局抗争」がどのような結末に落ち着くのかは不明ですが、事実上何の影響力も持ち得ない国民の一人として、船の舵取りをある程度納得して任せられる人に、私の国の次の首相をしていただきたいと強く願わずにはおれません。
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