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2013年9月2日 [パンツァークリーク]

昨日、石田さんとシックス・アングルズ別冊第10号『パンツァークリーク』の検証テストを行いました。今日は、その報告です。

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パンツァークリークPanzerkrieg)』は、第二次世界大戦期の東部戦線(独ソ戦)における南方戦域の攻防を、特徴的なシステムと豊富なシナリオで再現する作戦級ゲームです。デザイナーは、アバロンヒル社(後にアヴァランチ・プレス社が再版)の『第三帝国The Third Reich)』やピープルズ・ウォー社(後にStrategy & Tactics誌と日本のタクテクス誌で再版)の『カニェフKanev)』などで知られるジョン・プラドス氏。初版は米国OSG社から1978年に出版され、アバロンヒル社が版権を買い取って1983年に再版されました。

収録されているシナリオは、全部で9本あり、シナリオ1は「キエフ包囲戦(1941年8月27日〜10月8日)」、シナリオ2は「ソ連軍冬季反攻(1942年1月14日〜3月31日)」、シナリオ3は「青作戦(1942年6月28日〜9月13日)」、シナリオ4は「スターリングラード包囲戦(1942年11月19日〜1943年2月18日)」、シナリオ5は「後手からの一撃(1943年2月19日〜3月29日)」、シナリオ6は「ツィタデレ作戦の後(1943年8月2日〜10月2日)」、シナリオ7は「ドニエプル渡河作戦(1943年10月2日〜12月21日)」、シナリオ8は「コルスン包囲戦(1944年2月1日〜3月28日)」です。最後のシナリオ9は、もしドイツ軍が1943年夏にクルスク突出部に対する攻勢「ツィタデレ作戦」を行わずに、ソ連軍の攻勢を待ち受けていたら、という仮想シナリオ「マンシュタインの選択」で、シナリオ6の「ツィタデレ作戦の後」と同じ開始線でスタートします。

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上はシナリオ9の検証テストの様子。ドイツ軍は第4装甲軍の強力な装甲部隊が温存された状態でゲームを開始できるので、ソ連軍の攻勢は史実のようなペースでは進展せず、各所でドイツ軍の限定的な反撃が繰り広げられます。

フルサイズ1枚のゲームマップには、プリピャチ沼沢地からクルスクに至る線よりも南の東部戦線が収録されており、西端はルーツクとドゥブノおよびルーマニア領、東端はスターリングラードとヴォルガ川となっています。1ヘクスのサイズは、25.8キロメートルで、1ターンは実際の一週間、1ユニットはドイツ軍が師団、ソ連軍が軍団となっています。ただし、砲兵や対戦車砲、司令部、将軍ユニットなどもあり、砲兵は攻撃時に戦闘力を加算、対戦車砲は敵戦車の攻撃を受けた場合の防御時に戦闘力を加算できます。

司令部ユニット(ドイツ軍は軍、ソ連軍は方面軍)は、このゲームを特徴づける重要なユニットの一つです。ゲームの手順は、補給判定、移動、戦闘、突破移動というオーソドックスなものですが、個々の戦闘を解決する際、非フェイズプレイヤーは自軍の「予備部隊」を急派して、戦力比を防御側に有利な方向へと引き下げることができます。

急派されることのできる予備部隊は、その戦闘の防御側ヘクスから5ヘクス以内の大都市または小都市ヘクスで、自軍の司令部とスタックしている戦闘ユニットです。このシステムが物語るように、『パンツァークリーク』は機動防御の有効性が地図上で再現されるゲームとなっており、ほとんどのシナリオでドイツ軍がより多くの司令部ユニットを持っています。

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予備部隊の使用例。歩兵師団と狙撃兵師団はZOCなし、装甲師団と戦車軍団はZOCありです。一般的なゲームだと、ドイツ軍は左のような戦線を張ってソ連軍を待ち受けますが、これだとソ連軍は防備の弱いヘクス(3-7歩兵師団が単独で守るヘクス)に戦闘力を集中して、戦闘後前進で敵陣への浸透を図ることになります。しかし『パンツァークリーク』では、ドイツ軍の装甲師団を司令部と共に後方の町で待機させておき、敵が兵力を集めて攻撃を宣言したヘクスに対して急派できるので、ソ連軍は迂闊に攻撃を行うことができなくなります。

この予備の威力を無力化するには、時間をかけてさらに多くの部隊(特に強大な火力を持つ砲兵)を集中し、全正面で一斉に攻撃を仕掛けるしかありません。ソ連軍は、司令部(=予備運用)の能力では劣りますが、砲兵ユニットの数ではドイツ軍を凌駕しています。

実は、このゲームの原版は、ジョン・プラドス、アルバート・ノフィ、ヴィンセント・カンボの3人が「モーニングサイド・ゲーム・プロジェクト」というチームでデザインし、1975年に米国ランド・ゲーム・アソシエーツから出版された『フォン・マンシュタイン』という作品で、後にプラドスが一人でユニット規模を変更するなどのディヴェロップを行って、『パンツァークリーク』という作品に生まれ変わらせました。下の写真は、ランド版の『フォン・マンシュタイン』のコンポーネントです。

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将軍ユニットについては、以前の記事でも紹介しましたが、マンシュタインやヴァトゥーティンなど、両軍の有名な将軍を表してしており、戦闘解決時にボーナスの戦闘力加算やサイの目修整(またはその打ち消し)を行えます。特に後者は、攻撃側で参加していれば「突破(BkTh)」の戦闘結果が出やすくなり、防御側で参加していれば逆に出にくくする効果を持ちます。この突破については、日を改めて詳しくご紹介しますが、これも『パンツァークリーク』を特徴づける、興味深いルールの一つです。

アバロンヒル社版は、同社のブックケース型のボックスに収めるために地図のサイズを縮小した影響で、ヘクスのサイズも小さくなり、ユニット同士が地図上でぶつかり合うなどプレイに支障が生じていました。今回発売する日本版では、OSG版とほぼ同様のサイズで地図を作製するほか、さまざまな点でプレイの利便性を向上させたバージョンとなります。

独ソ戦に関心のある方は、ぜひ新版の『パンツァークリーク』にご期待下さい。
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コメント 3

出戻り予備役

早速、紹介記事をアップしていただいて有難うございました。名前の通りずぶの素人というわけでもないので、元ゲームくらい自分で調べるべきところですが、やはり山崎様の「視角」からの評価をお伺いしたく、わがままを申し上げた次第です。
東部戦線での電撃戦が好きで、「モスクワ攻防戦」、「突撃レニングラード」を購入し、あとは南方戦域の手ごろな作戦級があればと思っていたところなので、ますます興味がわきました。システムも前二者とはまた違った形で独軍の機動性を再現するもののようで大変楽しみです。
by 出戻り予備役 (2013-09-04 00:07) 

かに

おぉ!マップの迫力すごい!地図の範囲が広いせいかフルマップなのに、それ以上の大きさを感じられます。
予備部隊の急派システムも面白そうですね
楽しみにしてます。
by かに (2013-09-06 03:09) 

Mas-Yamazaki

出戻り予備役さま、かにさま: コメントありがとうございます。昨日、リプレイ記事用の対戦を行いましたが、1943年10月〜11月のシナリオということもあって、ドイツ軍の予備部隊の急派による「機動防御」がかなりの威力を発揮しました。

前線をギリギリの兵力で守りながら、後方に拘置した機動予備で対応し、返り討ちに遭わせた時の達成感は、なかなか他のゲームでは味わえないと思います(笑)。ぜひご期待ください。
by Mas-Yamazaki (2013-09-09 21:35) 

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