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2015年5月7日 [その他(戦史研究関係)]

今日は、告知を二つほど。まず、『歴史群像』誌最新号(2015年6月号、第131号)が発売されました。私の担当記事は「アメリカとベトナム戦争 サイゴン陥落40周年 失敗はなぜ繰り返されるのか」で、終結から40年を経たベトナム戦争の経過と結末を、現在の米政府の対外戦略とも対比しながら振り返ります。

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本文でも書きましたが、ベトナム戦争当時のアメリカ政府は「圧倒的な軍事力の優位への過信」と「戦争の非軍事的側面に関する無配慮」という二つの陥穽に陥り、個々の戦場での勝利を「戦争全体の結果」に結びつけられませんでした。現在のホワイトハウスも同様の陥穽に嵌まり込んでいるように見えます。

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ベトナム戦争に従軍したアメリカ兵の、約5人に1人がPSTD(心的外傷後ストレス障害)を罹患。現代のアフガニスタンとイラクに派遣されたアメリカ兵も、約5人に1人が罹患。この問題は、海外派兵が準備されている自衛隊とも無関係ではありません。自衛隊員も、警察官や消防士と同じく、社会を守る役割を担っておられる、普通の日本人ですが、戦後70年を経て、政府(時の政権)から期待される役割が大きく変わりつつあるように思います。主権を持つ国民として、それをこのまま追認してよいのかどうか。


なお、この最新号には戦史研究家パウル・カレルとその著作に関する記事があり、記事を書かれた人がどう思うという話だけでなく「他の戦史研究者の態度」にまで(挑発的に)言及されていたので、私が過去と現在に『歴史群像』誌に寄稿した記事(巻末の参考文献紹介コーナーで取り上げたこともあります)とも関係のある話だということで、この記事を一読した感想を、つらつらと書いてみました。ただし、雑誌の発売日の当日に、いきなりそれをぶつけるというのは、やや大人げない気もするので(笑)、少し日数を置いてから、改めてここに掲載することにします。

文庫本『クルスク大戦車戦』をお読みになった方ならおわかりの通り、私はパウル・カレルの著作に見られる「印象操作」や「事実の恣意的選択」に批判的ですが、パウル・カレル程度の政治的偏向や誘導、隠された過去の経歴にいちいち驚いていたら、ソ連史や北朝鮮史、中国現代史の研究記事などまったく書けなくなります(笑)。

ちなみに、私は過去にも一度、このブログで「戦史研究家パウル・カレルとその著作」に対する私の姿勢や取り扱い方法を説明したことがあります。今からちょうど5年前(文庫本『ロンメル戦記』の発売から5か月後)の記事で、私は基本的には今後もここに書いてあるような姿勢や取り扱い方法でいくつもりですが、興味のある方は、下のリンクで記事を(コメント欄のやりとりも含めて)ご覧ください。

琥珀色のノート 2010年4月16日




次に、六角堂出版の電子書籍の新刊として、第60巻『第一次世界大戦への道』を出版しました。第一次世界大戦は、なぜ勃発したのか。開戦100年後の昨年、『歴史群像』誌に寄稿した3部作の第一弾です。

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第一次世界大戦への道(AMAZON)


「第一次世界大戦開戦史」3部作の残り二作、第61巻『勃発! 第一次世界大戦』と第62巻『オスマン帝国の第一次大戦』も数日中に発売予定です。昨年は「国際情勢が当時に近づいている」との声があちこちで語られていましたが、この世界史の重大事件の原因について、理解を深める一助となれば幸いです。


【おまけ】
スペインの友人ハビエル・ロメロ氏から、彼がデザインしたスペイン内戦のシミュレーション・ゲーム『The Spanish Civil War』が届きました。うっかり買いそびれているうちに絶版になったGMT社のゲームですが、最近日本の友人から「お薦め」されて興味が沸き、駄目元で「余分に持ってない?」と聞いてみたら、「あるよ!」との返事。すぐに「箱にサイン入り」で注文しました。

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歴史をテーマにしたボードゲームも、各国それぞれに異なる「歴史認識」を伝え合い、互いに理解し合う、有用な情報伝達ツールのひとつです。


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