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2018年4月8日 [その他(戦史研究関係)]

今年二回目の更新です。1月に続き、3月も他の仕事で忙しく、結局一度も更新できませんでした。

まずは告知から。今月20日に、新しい単行本『1937年の日本人』が、朝日新聞出版から発売されます。

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7月の盧溝橋事件を境に、日本は平和から戦争の時代に突入した… と教科書等では語られますが、実際にはその境界はグラデーションのように曖昧でした。当時の日本政府は、自国民に対しても諸外国に対しても「これは事変(戦争には到らない武力衝突や交戦)であって戦争ではない」と説明し、目的を達したらすぐに終わるかようなポーズをとっていたからです。

そんな、日本社会の空気に広がる薄いグレーが、日々少しずつ濃くなっていく経過を、当時の新聞記事や雑誌記事に書かれた文面に語らせる形で、当時の日本人の視点を意識しつつ、俯瞰する内容の本です。戦争や軍事だけでなく、市民の暮らし、特に主婦や子どもの生活がどんな風に変わっていったのか、その変化を丁寧に追いました。

また、当時の帝国議会(今の国会)での政府と各党議員のやりとりにも光を当て、前半の平和な時代から後半の戦争の時代へと移行する様子を、政界の空気の変化という観点からも描き出します。本の主題は1937年ですが、序章は1936年12月の帝国議事堂での第70議会開院式、終章は1938年春の国家総動員法成立です。

本のコンセプトは「時空を超えたホームステイ」で、大阪第四師団に勤務する陸軍将校のお父さんのご家庭に滞在して、その家にある新聞や各種の雑誌を読みながら、1937年の日本社会に漂う時代の空気を読者が知り、変化を感じられるような本を目指しました。

時期的には、昨年出た『「天皇機関説」事件』(集英社新書)の後に続く形となります。今の日本で暮らす生活者として、サラリーマンや主婦、大学生が気軽に手に取れる本に仕上がったのでは、と思います。平和から戦争へ、誰もその本当の意味に気づかないような形で、社会が日々、少しずつ変わっていく。ほんの80年前に、この国で実際に起きたことです。ぜひ、ご期待ください。


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それと、3月初めに『歴史群像』誌の最新号が発売されました。今回の私の担当記事は「ギリシャと第二次大戦」です。

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第二次大戦期のギリシャで、どんな戦いが行われたのかは、日本ではあまり知られていないと思います。この原稿では、ギリシャ軍、イギリス軍、オーストラリア軍の公刊戦史なども参照しながら、戦前期のギリシャが置かれた状況、イタリア軍のアルバニアからギリシャへの侵攻、翌年のドイツ軍によるギリシャ侵攻、枢軸占領統治下のギリシャで起きた抵抗と内戦などを軍事と政治の両面から俯瞰的に解説しています。

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バルカン半島最南部のギリシャは、成り行きでイギリス側に立ち、まずイタリア軍、次いでドイツ軍と戦って敗れ、国土を占領されましたが、1945年に「戦勝国」となっても真の平和は訪れませんでした。それはなぜなのか? 知られざる第二次大戦の一側面です。


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また、3月後半に刊行されたファッションとスタイルの雑誌『GQ』(コンデナスト・ジャパン)2018年5月号にも、私の寄稿した1ページのコラム記事が掲載されています。

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内容は、公文書改ざんに象徴される今の日本での「政治の腐敗」と、それを許す周囲の環境について。田中芳樹の『銀河英雄伝説』で描かれた、ヤン・ウェンリーの有名な科白も引用しています。


今月は、後半にまた更新するよう努力します。

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