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2018年6月15日 [その他(ウォーゲーム関係)]

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新刊『[増補版]戦前回帰』(朝日文庫)が、6月7日に発売になりました。三年前の2015年(一連の日本会議本が出る一年前)に学研から出た旧版の誤記を修正し、この三年間に起きた出来事を同じ文脈で説明する一章を加筆したものです。戦前・戦中と現在の日本の「見た目の類似点」だけでなく、ある行動の動機や価値観などの根源的な思考の土台にも光を当てています。

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この本の主題は、戦前、戦中、戦後を経て今の日本に繋がる、一本の「価値観の系譜」を読み解くことで、第2章では戦前戦中の日本人の思考を支配し、無自覚に破滅へと向かわせた「国体」思想についても詳しく解説しています。

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第1章から第4章は、三年前に書いた原稿ですが、一部誤表記の訂正や文章の手直し以外、特に内容の書き直しは必要ありませんでした。そのままの大きな流れで、この三年間の出来事、具体的には伊勢志摩サミット(伊勢神宮/神社本庁)と教育勅語復活、天皇の生前退位、神社の憲法変更運動などを扱った第5章に続きます。旧版を既にお持ちの方にもぜひ読んでいただきたい一冊で、拙著『日本会議』『「天皇機関説」事件』(共に集英社新書)と合わせて読めば、より理解が深まります。

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友人の青木真兵さんが主宰されている「オムライスラヂオ」は、無料で聴けるネットラジオですが、6月6日に公開された回(私との対談)は、『[増補版]戦前回帰』(朝日文庫)の趣旨説明のような内容構成になりました。今の日本社会にある諸々の問題や不可解な動きを、違った角度から見る参考になれば幸いです。以下のタイトルをクリックすれば、番組(約60分)を聴くことができます。

オムライスラヂオ


また、先週発売の週刊誌『AERA』(6月11日号)は「ウソつきとは戦え」という特集を巻頭に掲載していましたが、記事の中で私のコメントも一部掲載されています。

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日本人は元々、権威に弱い国民性だと思いますが、2011年の3.11以降、不安や孤立感、焦りなどの弱った心理から、権威主義が以前にも増して強化されていると感じます。私の発言部分は、以下のネット記事で読めます。

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「日大アメフト問題」の背景に日本に根深い「権威主義」



さて、来月発売の『歴史群像』7月号は、前回の記事でも触れた通り、通巻150号記念として、私のデザインしたボードゲーム(シミュレーション・ゲーム)二個が付録として付く予定です。2012年の創刊20周年記念号(8月号)に続き、厚紙のコマと両面カラーマップでプレイできる仕様です。コマの厚紙の厚さ(薄さ)は、前回と同様ですが、あまり厚くすると輸送費等にも影響する(一箱に入る冊数が減る)ので、これはやむを得ないところです。

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二人用の「モスクワ攻防戦」は、ドイツ軍が軍団、ソ連軍が軍(1個のみ軍団)規模の作戦級ゲームです(1ターンは10日で全9ターン)。初期配置されるソ連軍のほとんどが戦力未確認(アントライド)ユニットで、初めて戦闘に参加するまで、両プレイヤーとも戦闘力を知ることができません。これだけなら、東部戦線の作戦級ゲームでは定番ですが、今回はドイツ軍の損害管理に工夫を凝らしました。

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ドイツ軍の損害は、「第3装甲軍+第9軍」「第4装甲軍+第4軍」「第2装甲軍+第2軍」の3つのグループごとに管理されます。ドイツ軍ユニットが戦闘結果で被った損害の数値は、地図上に印刷された、所属グループの「損害管理トラック」の上限(8)に達するまで、退却ではなく、同トラック上で蓄積します。そして、それが上限に達した瞬間から、所属ユニットの損害は、退却で適用されます。これで、どのような展開になるかと言えば、攻勢をとる序盤と中盤の計6ターンでドイツ軍が被った損害が少ないほど、終盤の3ターンで戦線を持ちこたえられる(死守できる)可能性が高まり、被った損害が多いほど、戦線を持ちこたえられずに退却する可能性が高まります。

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こうしたシステムなので、ドイツ軍プレイヤーは自軍の損害を避けるため、なるべく戦闘ではなく、ソ連軍ユニットを包囲して補給線を断つことで全滅させるよう努めます。けれども、長いようで短い最初の6ターンでぐずぐずしていると、モスクワに到達できずに時間切れになるという側面もあるので、強攻策も時には必要となります。この辺りのジレンマが、ゲームのポイントとなります。

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対するソ連軍は、最初の6ターンは防戦一方ですが、終盤の3ターンで冬季反攻を行って、戦線を西へと押し戻します。凍結による修正に加えて、戦車や重砲、ロケット砲(カチューシャ)、スキー部隊などを表す「攻勢支援マーカー」を重点に配置することで、有利な修正を得られます。

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勝敗は、ドイツ軍のモスクワ占領とソ連軍の降伏判定(5/6の確率で降伏)によるサドンデスを別にすれば、地図上に7箇所ある勝敗判定ヘクスを多く(4個以上)支配している側が勝者となります。終盤にドイツ軍の戦線が退潮するのは確実なので、どこまで戦線を東に押し上げておけるか、シベリア兵を含め最も大きな戦闘力を持つ第1打撃軍をどこに投入するか、そして損害蓄積の余力を残しておけるかが勝敗を左右します。

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ゲームの手順も、最初の6ターン(荒天)と最後の3ターン(凍結)では、内容を変えています。フェイズ攻勢を見れば、どちらがイニシアチブを握っている状態なのか、ベテランゲーマーには一目瞭然でしょう。

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一人用の「バルジの戦い」も、同様に「第6装甲軍」「第5装甲軍」「第7軍」の3つのグループごとにユニットの損害を管理しつつ、プレイヤーの担当するドイツ軍がアルデンヌの森を北西に向けて突破する展開となります。

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一般的なバルジのゲームとは異なり、マップの北西端にブリュッセルとワーテルローが含まれているので、大体どのあたりが戦場になっているのかを、より感覚的に理解できるでしょう。イギリス軍のホロックス中将がモントゴメリー元帥に提案した「ドイツ軍をワーテルローまで進ませて、そこで撃滅する」という展開も、もしかしたら起こるかもしれません。

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ノンプレイヤーのアメリカ軍は、すべて師団規模のユニット(一部はユニット化されず「固定戦闘力」としてマップに記載)ですが、バストーニュを守る第101空挺師団以外はやはり戦力未確認(アントライド)ユニットです。A、B、Cの三種のカテゴリーで分類され、後方エリアに配置される後者の方がより強い戦闘力を有しています。

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マップはエリア式で、黒い境界線は河を表しており、円形の「橋エリア」を通らないと、河の対岸には進出できません。ただし、「橋エリア」の固定戦闘力を撃破しても、橋梁爆破の判定で「爆破成功」なら、そのエリアにはゲーム終了まで進入できなくなります。ゲームの序盤では、史実同様、トロワ・ポンの「橋エリア」を確保できるか否かが重要なカギとなります。

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一方、南部のバストーニュは、第101空挺師団の「兵員ポイント」がマップ上のトラックで管理され、二本ある増援ルートをドイツ軍が遮断しなければ、兵員ポイントが毎ターン増加します。バストーニュ占領のポイントは高いので、ドイツ軍は同地を包囲したのち、波状攻撃で兵員ポイントをすり減らして、第101空挺師団を全滅(降伏)させることを目指します。

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また、全5ターンのうち、第3ターン以降は一部のドイツ軍装甲軍団が「燃料不足」に直面する可能性があり、燃料不足と判定された装甲軍団は、該当ターンの行動力が歩兵と同様になってしまいます。このゲームの勝敗も、第5ターン終了時にドイツ軍が支配しているエリアの数と種類で判定されます。このほか、史実同様にゲームでも活躍できない場合が多いですが、スコルツェニーの第150装甲旅団とハイテの空挺連隊も、彩りを添える薬味的な形でゲームに含めました。

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ゲームのプレイテストは、いつもの石田博さんに加え、横浜の堀場さんと山内さん、大阪の古角さんたちにも手伝っていただき、この種のゲームをプレイしたことがないという『歴史群像』の星川編集長や編集スタッフにも遊んでもらい、フィードバックをルールブック等に反映しました。

メジャーな雑誌で、こうした本格的なシミュレーション・ゲームが付録に付くことはめったにないので、熱意を注いで制作しました。付録付きで税込み1185円というのはかなりお買い得だと思います。発売日は、2018年7月6日(金)です。ぜひご期待ください。
 
 
 
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