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2018年7月12日 [その他(ウォーゲーム関係)]

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7月6日に、学研『歴史群像』8月号が発売されました。この号は、同誌の通巻150号記念号で、私は収録記事「ドイツ陸軍の中国派遣軍事顧問団」の執筆に加え、付録ゲーム二点のデザインとグラフィック全般、ルール編集(組版も含む)を担当しました。

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前者の記事は、1920〜30年代のドイツと中国の軍事協力関係(ゼークトやファルケンハウゼンらドイツ軍人の果たした役割や、ドイツが引き換えに得たもの等)と、それが日中戦争と第二次大戦に及ぼした影響がテーマです。

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付録ゲームは、本格的なウォーゲーム(シミュレーション・ゲーム)としてデザインしたもので、テーマは二人用の「モスクワ攻防戦」と一人用の「バルジの戦い」、コマは薄いながらも厚紙打ち抜き、マップはカラーの両面印刷です。ルールブックは全32頁のものが独立して封入されています。司令官の決断とジレンマを手軽に味わえるボードゲームで、前者はソ連軍の冬季反攻まで含んでいます。

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今からちょうど6年前の2012年8月号でも、創刊20周年記念号ということで、私のデザインした「ミッドウェー海戦(2人用)」と「日本海海戦(1人用)」の二つのボードゲームが付録として付きました(この二つのゲームについては、こちらのカテゴリーで内容をご覧になれます)。『歴史群像』誌の発行部数は、36,500部 (日本雑誌協会 印刷証明付部数/2017年8月)ということですが、これほどの大部数で特定のウォーゲーム(シミュレーション・ゲーム)が出版・流通したことは、かつてなかったのではないかと思います。

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同誌に私が初めて寄稿したのは、1999年に出た第38号で、それ以来今号まで、一回だけお休みした以外の計112号(全150号の約4分の3、約20年)に、毎号(時には二本)記事を掲載していただきました。「戦史/紛争史研究家」としての私のキャリアは、20年近くにわたる『歴史群像』への寄稿と共に築かれたもので、歴代の編集長と編集者の方々に深く感謝いたします。

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また、この付録ゲームに関連する形で『歴史群像』誌公式サイトに「制作こぼれ話」を寄稿しました。戦史再現のボードゲーム(シミュレーション・ゲーム/ボード・ウォーゲーム)の歴史とその醍醐味、付録ゲームの追加Q&Aなどを簡潔に説明しています。

第150号 制作こぼれ話(歴史群像)



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さて、先月の話になりますが、6月19日から27日まで、米国のニューヨークとアリゾナに旅行しました。NYでは国連本部ビルや9.11関連の追悼施設と博物館、美術館等を見学し、アリゾナでは昨年に続き、今回『歴史群像』誌の付録についたような戦史ボードゲームのコンベンションに参加して、米国メーカー関係者と諸々の打ち合わせ等を行いました。

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米国行きは、初めてテキサス州のダラスに行った1993年以来、12回目でしたが、今回初めてヤンキー・スタジアムでメジャーリーグの試合(ニューヨーク・ヤンキース対シアトル・マリナーズ戦)を生で観戦しました。野球の試合だけでなく、重要な米国文化の一つである大リーグの野球場の雰囲気を実際に感じてみたいと、前々から思っていました。

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ヤンキースの田中投手は怪我からの回復途上、イチロー選手は不可解な現役「半引退」状態ですが、試合前の練習で「動くイチロー選手」を、試合開始時の国歌斉唱と試合後のハイタッチで「動く田中選手」を見られました。試合は、地元ファンからの声援が特に大きいアーロン・ジャッジ選手が初回に2ランHRを打ち、ヤンキースが逃げ切りで勝利しました。

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エンパイア・ステート・ビルの上から見たマンハッタン南部。前回ニューヨークに来た2000年には、今あるのとは違う双子の超高層ビルが、島の南西部(右奥)に立っていました。現在、マンハッタンで一番高い建物は、以前それらがあった隣接地に立つ「ワン・ワールド・トレード・センター」という超高層ビル。

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マンハッタン南部にある、旧ワールド・トレード・センター跡地。2001年9月11日の同時多発テロ事件で崩落したツインタワーの建物があった場所(二か所)には、敷地を四角く掘り下げた追悼施設が作られ、絶え間なく水が流れています。周辺一帯は商業施設として再開発され、多くの観光客でにぎわっていました。

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旧ワールド・トレード・センター跡地の昼間部にある、9/11記念博物館。あの時、ここで起きた出来事を時系列に沿って知ることができる施設で、理不尽な市民の大量殺害(虐殺)という側面もあるためか、ホロコースト関係の博物館と近い雰囲気を感じました。ビンラディンらの動機について説明した展示もありますが、説明内容は善悪二元論的な「断罪調」ではなく、米政府がかつて(ソ連軍のアフガニスタン侵攻に対抗する関係で)彼らに資金援助などの協力をしていた事実にも触れていました。

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マンハッタンにある国連本部ビル。事前に予約して英語のガイドツアーに参加しました。過去に紛争史の原稿を書く時、何度も「国連安保理決議」に触れたこともあり、安全保障理事会の議場は感慨深く見ました。他の議場では、まさに会議をしている様子を少し見せてもらえました。

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ニューヨークのメトロポリタン美術館。ラ・トゥール、フェルメール、カナレット、エル・グレコなど私の好きな画家の名作が揃っていて大満足でした。

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ニューヨークのブルックリン地区にある同市の交通博物館。使われなくなった地下鉄の駅を利用した「地下鉄博物館」で、普通に地下鉄駅へ降りるように階段で館内に入り、ホームに降り立つと、ホームの両側の線路に端から端まで、ニューヨークで過去に使われた歴代の地下鉄車両が連結して展示されています。20世紀初頭のレトロな車両から、1950〜60年代独特の近未来的デザインの車両まで、いろんな時代の車両が開放状態で並んでいて、自由に乗って座席に座ったりできます。車内の広告も運用当時のものが使われているので、昔のニューヨークの雰囲気に浸れます。鉄道ファンでない人でも、たっぷり楽しめる博物館だと思います。

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ニューヨークのマンハッタン、パーク・アベニューに建つビルふたつ(一枚目は 44 East 23rd Street、二枚目は 257 Park Avenue South)。かつてここに、SPI(Simulations Publications, Inc.)社のオフィスが置かれていました。『歴史群像』誌の「制作こぼれ話」でも触れたように、SPI社は1970〜80年代に大量のゲームを出版した代表的メーカーです。40年ほど前、ここでジム・ダニガンやリチャード・バーグ、ジョー・バルコスキらが仕事をしていたのかと想像しながら、静かに興奮しました。

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日本からニューヨークまで16時間のエコノミー席が原因か、先日の旅行中に少しずつ、人生で初めての腰痛に直面しました。ニューヨークからアリゾナへ5時間半飛行機に乗ったあとが一番ひどく、空港ではヨタヨタ歩きしかできませんでした。迎えに来てくれた友人のジョン・クランツ氏と奥さんが、薬局でサロンパスを買ってくれましたが、症状は変わらず。

このままでは帰国便に乗れないと思い、現地アリゾナで人生初のカイロプラクティックへ二日通いました。いろいろ施術してもらった上、腰を支えるサポーターを買い、姿勢についてのアドバイスも受けました。そのおかげで、帰りはロサンゼルスから関空まで12時間でしたが、危惧していたほど辛くはなく、関空到着後もわりと普通に歩けました。

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アリゾナのテンピでは、昨年に続いてウォーゲームのコンベンション「コンシムワールド・エキスポ2018」に参加し、友人知人との歓談やゲームのプレイ、私が過去にデザインしたゲームといま作りかけている新作を、米国のメーカーから出版する条件交渉などを行いました。上の写真は、同イベントの主催者であるジョン・クランツ氏(中央)、GMT社の創設者でデザイナーのジーン・ビリングスレイ氏(右)と共に。

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GMT社の「COINシリーズ」で定評のあるデザイナー、ブライアン・トレイン氏と。彼がデザイン中の新作COINゲーム「サンダー・アウト・オブ・チャイナ」(1937年の盧溝橋事件以後の日中戦争を、中国国民党、中国共産党、どちらにも付かない中国の軍閥勢力、そして日本軍の四陣営で再現する)も少し見せてもらえました。これは個人的に期待大。

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新興メーカーの中でも特に活発にゲーム出版を行っているコンパス・ゲームズの面々と共に(左から3人目が社長のビル・トーマス氏)。私が制作中の新作「マザーランド2」について、同社から箱入りで出版することで合意し、帰国後に契約書にサインしました。

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今年の同イベントの主賓は、かつてGDW社で数々の名作をデザインしたフランク・チャドウィック氏でした。

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会場では、新作ゲームのプレイテストもいろいろ行われていました。これは、GMT社から出版予定の「スターリングラード'42」で、デザイナーはマーク・シモニッチ氏。

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これもGMT社から出版予定の「ア・タイム・フォー・トランペッツ」。大隊レベルでバルジの戦いを再現します。

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NES(ニュー・イングランド・シミュレーションズ)社から出版予定の「ジョーズ・オブ・ビクトリー」。1944年1月〜2月のコルスン包囲戦を、同社の「キリング・グラウンド」と同じ戦力チット式システムで再現しています。

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これもNES社から出版予定の「ウインターズ・ビクトリー」。ナポレオン戦争のアイラウの戦いがテーマ。

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デシジョン・ゲームズ社でテスト中の作戦戦術級の西部戦線シリーズ新作「ラッキー・フォワード」。1944年秋のフランス東部ロレーヌ地方でのパットン第3軍(アメリカ軍)の進撃を詳細に描くビッグゲーム。

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MMP社のOCSシリーズの新作テスト各種。「ビヨンド・ザ・ライン」(西部戦線、1944〜45年)、「ハンガリアン・ラプソディー」(ハンガリーでの戦い、1944〜45年)、「フォーゴットン・バトルズ」(東部戦線、1943年)。

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メーカーは不明ですが、GDWの「サード・ワールド・ウォー」のシステムで極東の戦いを再現する仮想戦。

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会場では米国GMT製の「関ヶ原」ゲームを、テキサスから来たという米国人ゲーマーにルールを教えてもらいながらプレイしました。戦略レベルの大局観が問われる内容で、大胆な抽象化と簡略化がなされたゲームですが、カードを併用して解決する合戦では、結集した兵のすべてが戦いに参加できるとは限らず、史実のような番狂わせの展開もしばしば起こります。例えば、毛利軍の兵が大量に集結したのに、毛利のカードが手許にないので、合戦に参加できず敗退、といった展開も、自然に起こります。

今年の後半は、単行本一冊と新書一冊、そして『歴史群像』誌の担当原稿の執筆がメインですが、前記した「マザーランド2」など、ゲーム関係の作業もそれに挟む形で進めます。



【おまけ】

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アメリカで食べた美味しいものを、いくつかご紹介。これはニューヨークで食べたロブスターロール。東海岸のメーン州で獲れたロブスターの身をパンにたっぷり盛って少し味付けしたものですが、プリプリした歯ごたえが絶品で、海老好きには大満足の品でした。

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これは、ブロンクスのヤンキースタジアムで食べたホットドッグとポテトのセット。ソーセージはドイツ風で、ポテトも黒コショウが効いていて、生ビールとよく合いました。

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シェイクシャックのハンバーガー。こういうシンプルで乾いたハンバーガーが好きなんですが、名張では「安いM」と「こだわりのM」しか選択肢がなく、なかなか味わえないのが残念(梅田阪神に最近出店した模様)。
 

 
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