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2019年7月5日 [その他(戦史研究関係)]

先月に続いて、今月も新刊の告知から。6月25日に、単行本『沈黙の子どもたち』が晶文社より発売されました。

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この本のテーマは、第二次世界大戦期における、軍(またはそれに準ずる組織)による市民の大量殺害です。実質的に同大戦の前哨戦であったスペイン内戦と日中戦争も含み、ゲルニカ、上海・南京、アウシュヴィッツ、シンガポール、リディツェ、沖縄、広島・長崎の計七章と最終章(戦後の反省)から成ります。

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上に挙げた地名の多くは、歴史的によく知られていると思いますが、本書はそれらの場所での市民の大量殺害がなぜ起きたか、その原因と構造を「実行した側の『合理性』」から読み解こうとする試みです。それに加えて、個々の大量殺害を引き起こす直接的な動機となった「命令への絶対服従」という組織内の規範について、戦後のドイツと日本が違った対処法をしている事実についても終章で光を当てています。

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ドイツ連邦軍は過去の反省から「命令への絶対服従」に留保を付けた。では日本は? 大日本帝国時代の反省は制度に存在するか? 戦争という怪物の実相を理解する一助として、本書を活用していただければ幸いです。

その2日後の6月27日付毎日新聞夕刊に、先日上京した際に受けた『歴史戦と思想戦』(集英社新書)の著者インタビューが掲載されました。ネット版もありますが、会員限定のようです。記事のタイトルには「出版文化の健全さに訴え 『歴史戦と思想戦』で修正主義に一石」とあります。

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聞き手の栗原俊雄さんは、毎日新聞記者であるのと同時に『特攻 戦争と日本人』などの著作を持つ昭和史の研究家でもあり、同い年ということもあって様々な歴史上の論点について意見交換できました。

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7月1日発売の雑誌「ZAITEN」(財界展望新社)にも、『歴史戦と思想戦』を主題とする2ページの著者インタビュー記事が掲載されています。

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内容は、同書の執筆動機や、いわゆる「歴史修正主義」の思考形態をどう理解し、どのように対処すべきか等で、見城徹氏と幻冬舎、百田尚樹氏を扱った巻頭特集の内容ともリンクしています。

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雑誌「週刊金曜日」の6月14日号には、「新時代という虚構」という企画の第三回として「消えた『ニュースと政治プロパガンダの境界』」という2ページの記事を寄稿しました。

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特定の政治権力者による「宣伝(プロパガンダ)」にすぎない内容を、「ニュース」という体裁をとって国民の耳目に触れさせる手法が、最近の日本で増えているように思います。

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また、今日(7月5日)の朝日新聞朝刊にも、先日自宅で受けたインタビューの内容が「耕論」という企画の中で掲載されました。

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昨今の日本(および世界)で広がりつつある権威主義についての話がメインですが、国会議員だけでなく市民もそれと自覚しないまま、服従的な思考形態に適応しつつあるのは危険な兆候だと思います。

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私はいつも著作やSNSで権威主義を批判しているので、あらゆる権威を否定する「反権威主義者」のように思われているかもしれませんが、各分野の権威には一定の敬意を払っています。私が危ないと思うのは、特定権威の過剰な称揚と判断停止、権威を道具にした威圧や恫喝、権威への無条件服従などの心理です。



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この単行本発売に前後して、私は一週間ほどアメリカに滞在していました。今回は、昨年に続いてアリゾナ州テンピで開催されたボードゲームのコンベンション「コンシムワールド・エクスポ2019」に参加し、米国コンパス・ゲームズ社から発売予定の新作ゲーム『For Motherland !』のプレイテストを会場で行いました。

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テストを担当してくれたアメリカ人ゲーマーの1人は、旧版の『War for the Motherland』をプレイした経験もあるベテランで、共通する基本システムをすでに理解されていたので、英語でルール等を説明する際の負担がだいぶ軽減されました。

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ナポレオニック・ゲームの伝説的デザイナーであるケヴィン・ザッカー氏とも久しぶりに再会(20年くらい?)。私は前に、彼のゲーム出版社(OSG: Operational Studies Group)のためにグラフィックの仕事を何度かしたことがあり、シミュレーション・ゲーム業界における彼の功績を深く尊敬しています。

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また、アリゾナへの行きと帰りにサンフランシスコに立ち寄り、いくつかの場所を見学しました。

サンフランシスコ市内にあるオペラハウスの建物。朝鮮戦争が二年目に入った1951年9月8日、日本と主要連合国の間で先の戦争の講和条約(通称サンフランシスコ講和条約)が署名されました。この日はオペラの上演日だったので内部は見られませんでしたが、脇の車寄せから入る着飾った人々の姿から当時の光景を想像しました。

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オペラハウスからタクシーで15分くらいの場所にある、米陸軍プレシディオ基地内のゴールデン・ゲート・クラブの建物。ここは昔「下士官クラブ」として使われ、サンフランシスコ講和条約締結後に吉田茂首相が米政府代表者との間で最初の「日米安保条約」に署名した場所です。こんな小さい施設で署名したのかと改めて驚かされました。ここが戦後の日米軍事同盟の出発点です。

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サンフランシスコの名所、ゴールデン・ゲート・ブリッジ(金門橋)。出発前日に映画「007 美しき獲物たち」をBSで観て、ゾリンの飛行船が衝突した橋の上部を見るのを楽しみにしていたのですが、残念なことに同地名物の霧で上半分が隠されていました。たもとには橋の設計者ジョセフ・ストラウスの像が立ちます。遠くからだとわかりにくいですが、実はニューヨークのクライスラービルなどと同様、アールデコの装飾が橋のあちこちに施されています。

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さて、今日(7月5日)は雑誌「歴史群像」最新号の発売日です。今回は、本誌記事「ドニエプル攻防戦 1943」の執筆に加え、付録ボードゲーム2つのデザイン・制作・グラフィックを担当しました。プレイを通じて指揮官の決断を重さを体感できる、2人用(第二段作戦)と1人用(マレー沖海戦)のボードゲームが、打ち抜き駒と共にパッケージされています。これらについては、次回の投稿で詳しく書きます。

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アリゾナ州テンピのゲームコンベンション「コンシムワールド・エクスポ2019」で、「第二段作戦」をプレイする、アメリカ人のベテランゲーマー2人。

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