2021年2月25日 [その他(戦史研究関係)]
やろうやろうと思いつつ、今年に入って最初のブログ更新は、2月の下旬になってしまいました。すいません。
まず、今年1月に雑誌「歴史群像」の2021年2月号が発売されました。私の担当記事は、第3特集の「ワルシャワ蜂起 1944」です。
第二次大戦終盤のワルシャワで発生し、仲間であるはずの連合国陣営の大国の思惑に翻弄された揚げ句、無残に粉砕された、ポーランド人抵抗組織の反ドイツ蜂起の顛末を、政治と軍事の両面から読み解いています。
1939年にドイツとソ連に分割併合された後のポーランド国内で少しずつ規模を拡大していった反ドイツの抵抗組織と、蜂起に至る内部での議論(および前哨戦としての1943年の「ワルシャワ・ゲットー蜂起」)、ソ連とイギリスの思惑、蜂起開始後における戦闘の経過、ポーランド抵抗組織側が捕獲したドイツ戦車(パンターとヘッツァー)の動き、ドイツ軍が投入した特殊戦車(シュトルムティーガーなど)と特殊兵器(ボルクヴァルトなど)、そして悲劇的な結末と、戦後のポーランドにおける蜂起の位置づけなど、この歴史的出来事を多面的に描き出しました。
今でこそ、ワルシャワ市内のあちこちに蜂起の戦士を称える記念碑や博物館等があります(写真は2009年12月に現地で撮影)が、蜂起の主体であったポーランド国内軍(AK)は1989年に冷戦が終わるまで、ソ連を親玉とする「東側諸国」の一員だったポーランドでは批判の対象でした。つまり、言論と学問の自由がありませんでした。
次に、2月13日付の毎日新聞朝刊に、電話取材で伝えた「森喜朗事件(女性蔑視などの発言により東京五輪組織委会長を辞任)」に関するコメントが掲載されました。
森喜朗氏個人の話ではなく、森氏が象徴する「森喜朗(さん)的秩序」の根深さについて、思うところを述べました。この出来事は、現在の日本社会が直面する「閉塞と停滞感」の縮図であり、今まで隠れていた膿に日の光が当たったようなものだと思います。
ネット版の記事もありました。森喜朗氏の五輪組織委会長辞任は、問題解決の第一段階で、それ自体に意味はありますが、本質的な問題の解決はまだまだ先。森氏一人だけ除去されても「森喜朗(さん)的秩序」が続くなら、また同じことが繰り返され、日本は後進国に衰退していくでしょう。
五輪組織委・森会長辞任 戦史・紛争史研究家 山崎雅弘氏
また、ネット媒体「Wezzy」の連載企画「詭弁ハンター」の第3回が公開されました。
今回のタイトルは【本当はこわい「控えさせていただく」という詭弁。強者と弱者を固定化するマジック】。
一見すると謙虚な印象のある「控えさせていただく」という詭弁には、実は恐ろしい毒が仕込まれています。
本当はこわい「控えさせていただく」という詭弁。強者と弱者を固定化するマジック
Wezzyの連載企画「詭弁ハンター」のテーマは、現在の日本社会、とりわけ政界にはびこる詭弁を一つずつ解析し、構造を読み解き、同種の詭弁にだまされにくくなる「論理の免疫」を読者に提供しようというもの。報道記者の方にも、政治家や官僚の言葉の裏を読む際のヒントにしていただればと思います。
それから、2020年4月30日の投稿で少しお伝えしました、竹田恒泰氏が私を告訴した民事裁判ですが、2月5日に東京地裁で、判決が出ました。
こちら側の主張が全面的に認められた勝訴でした。
応援や励まし、ご支援をいただいた皆様、ありがとうございました。
この裁判の判決については、判決文の全文をPDFで公開しています。弁護士などの法律の専門家と、私を含む非専門家では、読み取れる情報も異なると思いますが、多くの方の目に触れる形にするのが公益に資すると判断しました。
【判決文】
また、昨年11月に、今回の裁判で提出した陳述書と被告側準備書面をいくつか公開しています。判決文と合わせてお読みいただくと、竹田恒泰氏が著書やネットでどのような差別的言説を発信し、どのような「論法」でそれを「差別ではない」と言い張ったのかを理解できると思います。
【陳述書】原告の「これは差別ではない」という主張について
こちらも昨年11月に公開した陳述書で、竹田恒泰氏自身が「中止になった富山県朝日町で話す予定だった内容と同じ」と宣言してネットで行った講演について、問題点を検証したものです。一見人畜無害に思える「自国優越思想」が、実は差別思想と表裏一体だと論証しています。
【陳述書】原告が予定していた朝日町の講演内容について
この裁判の判決が出た後、弁護士の佃克彦さん(日本における名誉毀損裁判の第一人者で、名誉毀損裁判に関する著書も上梓されています)と、私の法廷闘争をさまざまな面で支援して下さった内田樹さんと共に、判決内容についての記者会見を行いました。判決の要旨と記者会見の模様は、時事通信と東京新聞が記事にして下さいました。
差別指摘は「公正な論評」 作家の竹田氏敗訴 東京地裁(時事)
差別指摘投稿は「公正な論評」 名誉毀損訴訟で竹田恒泰氏敗訴<東京地裁判決>(東京新聞)
東京新聞のYouTubeチャンネルでは、佃さん、内田さんと私が行った記者会見のノーカット動画も公開されています。
竹田恒泰氏、ツイッターでの名誉毀損訴訟で敗訴 勝訴した山崎雅弘さんらの会見
原告の竹田恒泰氏は、この判決を不服として控訴した模様ですが、2020年4月30日の投稿でも述べた通り、私はこの件で人間として恥ずべきことは何もしておらず、控訴審で負ける要素も見当たらないと理解していますので、引き続き、毅然とした姿勢で対処していきます。
【おまけ】
裁判の判決を聞くために久しぶりに上京した際に、新幹線の車窓から撮った富士山。行き(2月4日:上)も帰り(6日:下)も快晴で、素晴らしい眺めでした。
まず、今年1月に雑誌「歴史群像」の2021年2月号が発売されました。私の担当記事は、第3特集の「ワルシャワ蜂起 1944」です。
第二次大戦終盤のワルシャワで発生し、仲間であるはずの連合国陣営の大国の思惑に翻弄された揚げ句、無残に粉砕された、ポーランド人抵抗組織の反ドイツ蜂起の顛末を、政治と軍事の両面から読み解いています。
1939年にドイツとソ連に分割併合された後のポーランド国内で少しずつ規模を拡大していった反ドイツの抵抗組織と、蜂起に至る内部での議論(および前哨戦としての1943年の「ワルシャワ・ゲットー蜂起」)、ソ連とイギリスの思惑、蜂起開始後における戦闘の経過、ポーランド抵抗組織側が捕獲したドイツ戦車(パンターとヘッツァー)の動き、ドイツ軍が投入した特殊戦車(シュトルムティーガーなど)と特殊兵器(ボルクヴァルトなど)、そして悲劇的な結末と、戦後のポーランドにおける蜂起の位置づけなど、この歴史的出来事を多面的に描き出しました。
今でこそ、ワルシャワ市内のあちこちに蜂起の戦士を称える記念碑や博物館等があります(写真は2009年12月に現地で撮影)が、蜂起の主体であったポーランド国内軍(AK)は1989年に冷戦が終わるまで、ソ連を親玉とする「東側諸国」の一員だったポーランドでは批判の対象でした。つまり、言論と学問の自由がありませんでした。
次に、2月13日付の毎日新聞朝刊に、電話取材で伝えた「森喜朗事件(女性蔑視などの発言により東京五輪組織委会長を辞任)」に関するコメントが掲載されました。
森喜朗氏個人の話ではなく、森氏が象徴する「森喜朗(さん)的秩序」の根深さについて、思うところを述べました。この出来事は、現在の日本社会が直面する「閉塞と停滞感」の縮図であり、今まで隠れていた膿に日の光が当たったようなものだと思います。
ネット版の記事もありました。森喜朗氏の五輪組織委会長辞任は、問題解決の第一段階で、それ自体に意味はありますが、本質的な問題の解決はまだまだ先。森氏一人だけ除去されても「森喜朗(さん)的秩序」が続くなら、また同じことが繰り返され、日本は後進国に衰退していくでしょう。
五輪組織委・森会長辞任 戦史・紛争史研究家 山崎雅弘氏
また、ネット媒体「Wezzy」の連載企画「詭弁ハンター」の第3回が公開されました。
今回のタイトルは【本当はこわい「控えさせていただく」という詭弁。強者と弱者を固定化するマジック】。
一見すると謙虚な印象のある「控えさせていただく」という詭弁には、実は恐ろしい毒が仕込まれています。
本当はこわい「控えさせていただく」という詭弁。強者と弱者を固定化するマジック
Wezzyの連載企画「詭弁ハンター」のテーマは、現在の日本社会、とりわけ政界にはびこる詭弁を一つずつ解析し、構造を読み解き、同種の詭弁にだまされにくくなる「論理の免疫」を読者に提供しようというもの。報道記者の方にも、政治家や官僚の言葉の裏を読む際のヒントにしていただればと思います。
それから、2020年4月30日の投稿で少しお伝えしました、竹田恒泰氏が私を告訴した民事裁判ですが、2月5日に東京地裁で、判決が出ました。
こちら側の主張が全面的に認められた勝訴でした。
応援や励まし、ご支援をいただいた皆様、ありがとうございました。
この裁判の判決については、判決文の全文をPDFで公開しています。弁護士などの法律の専門家と、私を含む非専門家では、読み取れる情報も異なると思いますが、多くの方の目に触れる形にするのが公益に資すると判断しました。
【判決文】
また、昨年11月に、今回の裁判で提出した陳述書と被告側準備書面をいくつか公開しています。判決文と合わせてお読みいただくと、竹田恒泰氏が著書やネットでどのような差別的言説を発信し、どのような「論法」でそれを「差別ではない」と言い張ったのかを理解できると思います。
【陳述書】原告の「これは差別ではない」という主張について
こちらも昨年11月に公開した陳述書で、竹田恒泰氏自身が「中止になった富山県朝日町で話す予定だった内容と同じ」と宣言してネットで行った講演について、問題点を検証したものです。一見人畜無害に思える「自国優越思想」が、実は差別思想と表裏一体だと論証しています。
【陳述書】原告が予定していた朝日町の講演内容について
この裁判の判決が出た後、弁護士の佃克彦さん(日本における名誉毀損裁判の第一人者で、名誉毀損裁判に関する著書も上梓されています)と、私の法廷闘争をさまざまな面で支援して下さった内田樹さんと共に、判決内容についての記者会見を行いました。判決の要旨と記者会見の模様は、時事通信と東京新聞が記事にして下さいました。
差別指摘は「公正な論評」 作家の竹田氏敗訴 東京地裁(時事)
「前沢達朗裁判長は投稿について『公正な論評で違法性を欠く』と述べ、請求を棄却した」「前沢裁判長は、竹田氏が著書で『(中華民族は)民度の低い哀れむべき方々』と記したことや、『韓国は、ゆすりたかりの名人』とツイッターに投稿したことなどに触れ、山崎氏の投稿は人権侵害や差別が広がることを懸念した公益目的があり、『相応の根拠がある』と判断した」「同日、東京都内で会見した山崎氏は『公正な判断。著名人が公然と特定の民族を差別する今の社会は危険だ』と訴えた」
差別指摘投稿は「公正な論評」 名誉毀損訴訟で竹田恒泰氏敗訴<東京地裁判決>(東京新聞)
「判決は、竹田氏が『笑えるほどたちが悪い韓国の話』と題する著書などを出したり、『韓国はゆすりたかりの名人』『韓国が慰安婦の像を作るなら、日本は嘘をつく老婆の像でも作ったらどうだ』などと投稿したことに触れ、『竹田氏が元従軍慰安婦に攻撃的・侮辱的な発言を繰り返し、在日韓国人・朝鮮人を排除する発言を繰り返していることに照らせば、発言を人権侵害の点で捉える相応の根拠がある』と指摘」「名誉侵害には当たらないと判断した」「判決後、東京都内で記者会見した山崎氏は『公正な判断が出た。社会にはびこる民族差別に反論できるアクションになった。(国や自治体が)普段、差別的な言説を社会に拡散するような人物を招き、中高生に講演を行ったり、自衛隊の幹部候補生の前で話をさせたりすれば、差別的な主張が伝播する可能性ある』と指摘した」
東京新聞のYouTubeチャンネルでは、佃さん、内田さんと私が行った記者会見のノーカット動画も公開されています。
竹田恒泰氏、ツイッターでの名誉毀損訴訟で敗訴 勝訴した山崎雅弘さんらの会見
原告の竹田恒泰氏は、この判決を不服として控訴した模様ですが、2020年4月30日の投稿でも述べた通り、私はこの件で人間として恥ずべきことは何もしておらず、控訴審で負ける要素も見当たらないと理解していますので、引き続き、毅然とした姿勢で対処していきます。
【おまけ】
裁判の判決を聞くために久しぶりに上京した際に、新幹線の車窓から撮った富士山。行き(2月4日:上)も帰り(6日:下)も快晴で、素晴らしい眺めでした。
2021-02-25 03:55
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