2021年11月30日 [その他(戦史研究関係)]
ギリギリ二か月ぶりの更新です。
まず、9月6日に発売された「歴史群像」第168号。私の担当記事は「香港の第二次大戦」で、英統治下の香港に対する日本軍の軍事侵攻と占領統治について、英加両軍の公刊戦史を含む資料で解説しています。
真珠湾攻撃と同じ日、日本軍がイギリス領の香港にも侵攻したことをご存知ですか? シンガポールと同様、戦後の香港でも大日本帝国の統治時代(「三年零八箇月」)は「苦難の時代」と見なされています。
戦後の長い間、香港人の対日感情は良くありませんでした。イギリス軍公刊戦史やカナダ軍公刊戦史の戦況図を参照しながら書いているうち、また香港のあちこちに行きたくなってきました。
11月6日発売の「歴史群像」第169号は、私の担当記事は「タリバンとアフガニスタンの30年」で、1990年代のタリバン登場から現在に至るアフガニスタンの紛争史を、タリバン側の動きを中心に読み解いています。
今年5月〜8月の戦略的攻勢が成功した理由、アフガニスタンの戦乱とパキスタンでタリバンが誕生した経緯、米国との20年戦争の経過、パキスタン軍情報部(ISI)との繋がりなど、昨今の国際報道を読む上で参考になる情報を盛り込んでいます。
今回の原稿は、記事の冒頭にも記した通り、今から10年前の2011年秋、前後編の2回に分けて「歴史群像」誌の第109号と第110号に寄稿した、開始から10年が経過した米軍のアフガニスタン戦争を総括する記事と対になるものです。開始10年目の2011年秋の時点で、既に米軍のアフガニスタン戦争は袋小路に入って迷走する状態にあり、すでに撤退段階に移行していましたが、まさか実際に撤退が完了するまでさらに10年が必要になるとは、当時の私も予想しませんでした。米軍史上最長の戦争は、なぜ失敗と敗北に終わったのか。
その2本の記事を1本にまとめた電子書籍『米軍のアフガニスタン戦争』を、kindle版で発売中です(350円)。当時からさらに10年が経過した今、アフガニスタン戦争の全体像を振り返るのにお薦めです。
電子書籍『米軍のアフガニスタン戦争』
雑誌「GQ」11月号にも、久しぶりに寄稿しました。
菅義偉氏の辞任を受けて書いた、総理大臣としての能力評価がテーマで、能力以上のポストについて弱点を露呈したロンメル元帥や、逆にポストが高まれば高まるほど能力を発揮したアイゼンハワー元帥との対比など、他ではあまり言及されない観点から、菅首相の実績を厳しく評価しました。
Wezzyの連載「詭弁ハンター」は、前回の更新以来、3回の記事が公開されました。
第10回【憲法に基づく国会召集要求を「期限は書いてない」と拒否する詭弁術】
多くの人が批判する通り、臨時国会を開かない与党の言い分が憲法違反の詭弁であることを、論理面から検証しました。
記事本文より。「憲法第53条は、内閣に特定の義務を課す内容ですから、その義務を果たす期限を内閣自身が自由に決められる、というような解釈は、本来成立し得ません。そんな解釈が成立するなら、この条文自体、存在する意味のない空文になってしまうからです」「見送りという言葉は、本来は『義務ではないことを自分の判断で先送りにすること』を指す言葉で、課せられた義務を果たさない行為を『見送り』とは言いません。何かの罰金を科せられた人が、その支払いをしない態度を『支払の見送り』とは言わないでしょう」
第11回【自分は判断される側なのに「何々には当たらない」と勝手に主張する詭弁術】
平井卓也前デジタル大臣の「全く国民の疑念を抱くものには当たらない」発言の読み解きですが、この言い方を広く使って定着させたのは、菅義偉元官房長官でした。
2017年6月14日、当時野党「自由党」に所属した山本太郎参議院議員は「菅内閣官房長官の『全く問題ない』、『批判は当たらない』などの答弁に関する質問主意書」を安倍内閣に提出しました。この時点でメディアがきちんと欺瞞を批判していれば、この詭弁が常態化することもなかったでしょう。
第12回【「再調査するお考えは?」「その考えはない」という森友問題の本質を隠す詭弁問答】
自民党の政治家と政治記者が結託して繰り返す一見普通のやりとりが、国民の認識を誘導する詭弁であることを論証します。2020年7月17日〜19日に共同通信社が行った全国電話世論調査では、自民党支持者の71・7%、公明党支持者の85・5%も「政府は再調査する必要がある」と答えていました。ところが、政治報道は「再調査するか否かは、自民党の政治家が判断して決めていいもの」という誤謬を社会に広めています。
Wezzyの連載「詭弁ハンター」は、時事問題を扱っていますが、一週間や一か月で賞味期限が切れず、半年後や数年後にも読む価値を保つような内容を心掛けています。政治家が発する詭弁は特定の政権だけの問題ではないので、油断していれば国民は何度も騙され続けます。
ちょうど一年前にこの連載を始めた時、ネタがいつまで続くか少し不安な面もありましたが、もう12回目です。いまの日本社会は、人をあざむいてだます詭弁が横行しています。秩序を乱すことを怖れて詭弁を許す人が多い様子ですが、そんな傍観がますます事態を悪化させます。
山崎雅弘「詭弁ハンター」記事一覧(Wezzy)
明日から12月ですが、来年2月に発売予定の新書(テーマは今までとは違った角度からの第二次世界大戦史)のゲラ(校正)チェックと収録地図の制作、来年4月発売を目指して執筆中の別の新書(『戦前回帰』の続編的な内容)の仕上げに没頭する予定です。
【おまけ】
先日、奈良の曽爾高原へドライブに行きました。何年かぶりで、視界を埋めるほどの「金色の野」を目にしました。
曽爾高原は、ススキの名所として知られる場所ですが、この日は草が紅葉していて、ススキのフワフワ感とのコントラストも美しかった。
まず、9月6日に発売された「歴史群像」第168号。私の担当記事は「香港の第二次大戦」で、英統治下の香港に対する日本軍の軍事侵攻と占領統治について、英加両軍の公刊戦史を含む資料で解説しています。
真珠湾攻撃と同じ日、日本軍がイギリス領の香港にも侵攻したことをご存知ですか? シンガポールと同様、戦後の香港でも大日本帝国の統治時代(「三年零八箇月」)は「苦難の時代」と見なされています。
戦後の長い間、香港人の対日感情は良くありませんでした。イギリス軍公刊戦史やカナダ軍公刊戦史の戦況図を参照しながら書いているうち、また香港のあちこちに行きたくなってきました。
11月6日発売の「歴史群像」第169号は、私の担当記事は「タリバンとアフガニスタンの30年」で、1990年代のタリバン登場から現在に至るアフガニスタンの紛争史を、タリバン側の動きを中心に読み解いています。
今年5月〜8月の戦略的攻勢が成功した理由、アフガニスタンの戦乱とパキスタンでタリバンが誕生した経緯、米国との20年戦争の経過、パキスタン軍情報部(ISI)との繋がりなど、昨今の国際報道を読む上で参考になる情報を盛り込んでいます。
今回の原稿は、記事の冒頭にも記した通り、今から10年前の2011年秋、前後編の2回に分けて「歴史群像」誌の第109号と第110号に寄稿した、開始から10年が経過した米軍のアフガニスタン戦争を総括する記事と対になるものです。開始10年目の2011年秋の時点で、既に米軍のアフガニスタン戦争は袋小路に入って迷走する状態にあり、すでに撤退段階に移行していましたが、まさか実際に撤退が完了するまでさらに10年が必要になるとは、当時の私も予想しませんでした。米軍史上最長の戦争は、なぜ失敗と敗北に終わったのか。
その2本の記事を1本にまとめた電子書籍『米軍のアフガニスタン戦争』を、kindle版で発売中です(350円)。当時からさらに10年が経過した今、アフガニスタン戦争の全体像を振り返るのにお薦めです。
電子書籍『米軍のアフガニスタン戦争』
雑誌「GQ」11月号にも、久しぶりに寄稿しました。
菅義偉氏の辞任を受けて書いた、総理大臣としての能力評価がテーマで、能力以上のポストについて弱点を露呈したロンメル元帥や、逆にポストが高まれば高まるほど能力を発揮したアイゼンハワー元帥との対比など、他ではあまり言及されない観点から、菅首相の実績を厳しく評価しました。
Wezzyの連載「詭弁ハンター」は、前回の更新以来、3回の記事が公開されました。
第10回【憲法に基づく国会召集要求を「期限は書いてない」と拒否する詭弁術】
多くの人が批判する通り、臨時国会を開かない与党の言い分が憲法違反の詭弁であることを、論理面から検証しました。
記事本文より。「憲法第53条は、内閣に特定の義務を課す内容ですから、その義務を果たす期限を内閣自身が自由に決められる、というような解釈は、本来成立し得ません。そんな解釈が成立するなら、この条文自体、存在する意味のない空文になってしまうからです」「見送りという言葉は、本来は『義務ではないことを自分の判断で先送りにすること』を指す言葉で、課せられた義務を果たさない行為を『見送り』とは言いません。何かの罰金を科せられた人が、その支払いをしない態度を『支払の見送り』とは言わないでしょう」
第11回【自分は判断される側なのに「何々には当たらない」と勝手に主張する詭弁術】
平井卓也前デジタル大臣の「全く国民の疑念を抱くものには当たらない」発言の読み解きですが、この言い方を広く使って定着させたのは、菅義偉元官房長官でした。
2017年6月14日、当時野党「自由党」に所属した山本太郎参議院議員は「菅内閣官房長官の『全く問題ない』、『批判は当たらない』などの答弁に関する質問主意書」を安倍内閣に提出しました。この時点でメディアがきちんと欺瞞を批判していれば、この詭弁が常態化することもなかったでしょう。
第12回【「再調査するお考えは?」「その考えはない」という森友問題の本質を隠す詭弁問答】
自民党の政治家と政治記者が結託して繰り返す一見普通のやりとりが、国民の認識を誘導する詭弁であることを論証します。2020年7月17日〜19日に共同通信社が行った全国電話世論調査では、自民党支持者の71・7%、公明党支持者の85・5%も「政府は再調査する必要がある」と答えていました。ところが、政治報道は「再調査するか否かは、自民党の政治家が判断して決めていいもの」という誤謬を社会に広めています。
Wezzyの連載「詭弁ハンター」は、時事問題を扱っていますが、一週間や一か月で賞味期限が切れず、半年後や数年後にも読む価値を保つような内容を心掛けています。政治家が発する詭弁は特定の政権だけの問題ではないので、油断していれば国民は何度も騙され続けます。
ちょうど一年前にこの連載を始めた時、ネタがいつまで続くか少し不安な面もありましたが、もう12回目です。いまの日本社会は、人をあざむいてだます詭弁が横行しています。秩序を乱すことを怖れて詭弁を許す人が多い様子ですが、そんな傍観がますます事態を悪化させます。
山崎雅弘「詭弁ハンター」記事一覧(Wezzy)
明日から12月ですが、来年2月に発売予定の新書(テーマは今までとは違った角度からの第二次世界大戦史)のゲラ(校正)チェックと収録地図の制作、来年4月発売を目指して執筆中の別の新書(『戦前回帰』の続編的な内容)の仕上げに没頭する予定です。
【おまけ】
先日、奈良の曽爾高原へドライブに行きました。何年かぶりで、視界を埋めるほどの「金色の野」を目にしました。
曽爾高原は、ススキの名所として知られる場所ですが、この日は草が紅葉していて、ススキのフワフワ感とのコントラストも美しかった。
2021-11-30 22:18
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