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2013年10月18日 [その他(ウォーゲーム関係)]

今日は、シミュレーション・ゲーム関係の話題を二つほど。

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まず、シックス・アングルズ別冊第10号『パンツァークリーク』の制作作業が、予定より遅れています。前回の記事でもお伝えしました通り、残りは本誌の編集作業のみなのですが、KKベストセラーズさんの『歴史人』誌別冊の32ページ分の原稿と収録地図10点の仕事を先に仕上げる必要があり、『パンツァークリーク』の作業は来週中頃まで中断することとなりました。

既にプレオーダーをいただいた方をはじめ、発売を楽しみにされている方には大変申し訳ありませんが、11月には発売する予定ですので、今しばらくお待ちいただければ幸いです。プレオーダーは、引き続き同条件で募集を継続いたします。

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次に、国際通信社さんの『コマンド・マガジン日本版』最新号(第113号)が、本日手元に到着しました。今回の付録ゲームは、DDH社の『ゲティスバーグ会戦』と『アンティータムの戦い』という、同一システムで米国南北戦争の著名な戦いを描くハーフサイズのゲーム2個セットです。

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本誌記事の「ゲティスバーグ会戦ゲーム55年史」は、かつての『タクテクス』誌(初期)を彷彿とさせる内容で、(シミュレーション・ゲームの)有史以来、デザイン・出版されたゲティスバーグ戦ゲームを網羅的に紹介しています。

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今回のコマンド誌には、私も超久しぶり(記事筆者としては15年ぶり!)に記事を2本寄稿しています。1本は、特集記事に関連した「日本人デザイナーの見た戦場」で、私がかつてデザインしたミニゲーム『ゲティズバーグ1863』に関するデザイナーズ・ノート的な記事です。

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このゲームは、個人的には思い入れのある小品で、機会があればプレイしたいと思っています。上の画像は『シックス・アングルズ・コレクション』版の『ゲティズバーグ1863』ゲームマップの拡大画像です。

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もう1本は、この号から連載としてスタートした「第7の視角」で、第1回はシックス・アングルズ別冊第9号『独ソ戦コレクション-2』の1作「突撃スターリングラード」のデザイナーズ・ノートです。1942年7月から10月までのスターリングラード攻防戦がテーマで、拡大地図を使った市街戦と、郊外でのソ連軍による側面攻撃の両方をプレイできる作戦級ゲームです。


ところで、先日の台湾旅行で現地のゲーマーと交流し、ゲーム談義に花を咲かせた影響か、最近は新作への意欲も高まっており、帰国してからいくつかゲームを購入しました。

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GMT『アンデスの深淵(Andean Abyss)』と同じ「COIN(対反政府勢力)」シリーズの新作『遥かなる地平(A Distant Plain)』。電子書籍『米軍のアフガニスタン戦争』で解説している、現代アフガニスタンの紛争を、政府・米軍+多国籍軍・軍閥・タリバンの四つ巴の構図でプレイします。

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こちらは、デシジョン・ゲームズの現代戦ゲーム雑誌『モダーン・ウォー』最新号の付録『聖なる地(ホーリー・ランド)』。近未来に起こりうる第五次中東戦争がテーマで、シリア内戦を扱うバリアントも収録されています。本誌のページをめくると、ステーキハウスの通販広告が掲載されていたりして、ゲーム雑誌の趣も変わったなぁ、と感じます。

新作のアイデアもいくつか湧き出ており、テスト用のマップ作成なども仕事の合間に始めていますが、それについては次回以降に。
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2013年10月3日 [その他(雑感・私生活など)]

先週金曜日(9月27日)から昨日(10月2日)まで、台湾に出張で行ってきました。今日はその話題です。

今年の5月に行った時と同様、今回の台湾訪問でも台北の印刷所との打ち合わせとデータ入稿が重要な目的の一つでした。午後に到着した後、台湾の友人と合流してさっそく印刷所へ。SA別冊第10号『パンツァークリーク』のマップとユニット、表紙まわり、チャートのデータと印刷見本を手渡し、前回までの製品内容に関して直してほしい部分を細かく伝え、実務が終わったら世間話に花を咲かせましたが、先方もこちらの要望や好みをだいぶ理解してくれたようで、回を重ねるごとに確認事項が減ってきた印象です。あとは本誌を仕上げてデータで送るのみで、今回も内容の詰まった製品に仕上げるよう、今日から作業を再開しました。

土曜日と日曜日は、台湾の仲間と久々にゲーム三昧の週末。まず土曜(9月28日)には台北のゲームクラブ「戦棋団」にお邪魔して、GMT社の4人用ボードゲーム『アンデスの深淵(Andean Abyss)』をプレイしました。

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このゲームは同社のGMT社のCOIN(counter-insurgency)シリーズの一つで、デザイナーは以前の記事で紹介した『ラビリンス(Labyrinth)』と同じくヴォルコ・ルーンケ氏。COINの訳語はまだ定まっていませんが、要するに「対反政府勢力」のことで、政府とそれらの仁義なき戦いがテーマです。

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テーマは現代コロンビアにおける政治と経済の支配権をめぐる内戦で、これだけ聞くと大抵の人は関心が薄いと思いますが、「政府」「共産主義勢力」「反共右派勢力」「犯罪組織(麻薬カルテル)」による四つ巴の仁義なき戦い、と書けば、どういうゲームか想像できると思います。皆初めてのプレイで、やり方がよくわからず、事前に役割ごとの個別ルールを研究しようということになり、私は「麻薬カルテル陣営」を担当して、行きの空港と飛行機内でルールを学習しました。

私の担当した「カルテル陣営」は、まず「葉っぱ」各種を栽培して収穫を増やし、それを「商品」に変えて資金を蓄える。そして資金が潤沢になったところで、その金を使って政府(軍・警察官)を買収したり他勢力と「取引」したりして勢力圏の強化を図る。栽培好きの私にはピッタリの役柄です(笑)。

各陣営の勝利条件はそれぞれ異なっており、政府は政治・経済的に重要な都市や交通路などの治安確保が勝利への近道。カルテルは畑の数と蓄財。反共右派陣営が一番単純で、「国内にある自分の活動拠点の数が、ゲーム終了時に共産主義陣営よりも多ければ勝ち」、それ以外には関心が無いというわかりやすさ(笑)。

ちなみに、この時のプレイ風景等の写真を昨日フェイスブックで公開しましたが、さっそくGMT社のロジャー・マクゴワン氏が運営する同社のゲーム情報サイト「C3i Ops Center」で紹介されています。

Andean Abyss - Taipei, Taiwan - By Masahiro Yamazaki & Maraxus Ann

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日曜日(9月29日)は友人の夏兄とSA別冊第9号付録のひとつ『突撃スターリングラード(Assault on Stalingrad)』をプレイ。次号のコマンドに、このゲームの関連記事(デザイナーズ・ノート)が掲載されます。今回はソ連軍を担当しましたが、このゲームは『突レニ』とは異なりソ連軍も積極的に反撃できるので、兵力を温存しつつ敵の弱点を突いて市街への突入を邪魔する展開となります。

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その後、台北市内でまだ行っていなかった「国父記念館」などを見学。ここは辛亥革命の立役者・孫文にゆかりの物品などを展示した記念館で、小学校の団体見学でも定番コースとのこと。

月曜日(9月30日)は台北近郊の鶯歌(インガー)という陶芸で有名な町を観に行き、夜は台湾の歴史シミュレーションゲーム雑誌「戰棋」第8号の付録『新帝国主義(New Imperialism in China)』をデザインされた邵軒磊さんと会食。東大に留学された経験をお持ちの台湾師範大助教授で、専門は東アジア政治史とのこと。

英キングズカレッジのフィリップ・セイビン教授(同氏のデザインされたミニゲームのいくつかが米ヴィクトリー・ポイント・ゲームズから製品化されている)をはじめ、海外では軍事史や国際関係史の授業でボードゲームを活用する動きが結構盛んですが、邵(ショウ)さんも授業でのゲーム活用に前向きで、先日は訪台した立命館大学の交流学生と台湾の学生とのゲームセッションも行ったそうです。今後、一緒に何かやりたいですね、と意気投合し、中国現代史や日中戦争、最近の尖閣問題などについても意見を交換して盛り上がりました。

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『新帝国主義』の主題は、1900年(義和団の乱)から1911年(辛亥革命)の中国(及び東アジア)での列強(帝国)の権益獲得競争です。マップには、日露戦争の原因の一つとなった「東清鐵路」や「南滿鐵路」も描かれており、日露の衝突に至る過程や、ロシアと新疆、イギリスとチベットの関係も当事者感覚で理解できます。日露英仏蘭米と大清帝国の7人でプレイすることも、日英・露仏など同盟関係を反映して2〜6人でのプレイも可能です。

インドを支配するイギリスとインドシナを支配するフランスがシャムで衝突する局面や、フィリピンを拠点に中国へと食指を伸ばすアメリカ、という構図も描かれており、全方向から帝国の侵蝕を受けた中国人が「おまえら、ええかげんにせいよ!」とブチ切れた結果が、辛亥革命でありました、という教育的な(笑)ゲームです。ただ、邵さんによれば「一般の人に遊んでもらうには少々ルールが複雑すぎた」とのことで、ルール簡略化とマップエリアの仕切り直しを含めた第2版のデザインを構想中だそうです。

戰棋」第8号『新帝国主義』は、国際通信社の通販サイト「a-game」で購入できます。価格は2200円。

『戰棋』8号(季刊SG雑誌)

田村寛さんが翻訳された、このゲームの日本語ルールは、以下のサイトよりDL可能です(ただし無料登録が必要)。http://bit.ly/15KEdmk

BoardGameGeek / New Imperialism in China


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火曜日(10月1日)には、台北から飛行機で1時間ほどの場所にある、金門島というところへ行ってきました。戦史に詳しい方ならご存知のとおり、中国本土から目と鼻の先にあるこの小島は、過去に1949年と1958年の二回、中国人民解放軍の攻撃を受けた場所で、その古戦場探訪も今回の台湾旅行の目的の一つでした。上の写真は、金門島の尚義機場(空港)。

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金門島北西の古寧頭という場所にあるビーチ。高台に立って海岸を見下ろした時、一瞬ノルマンディのオマハビーチにタイムスリップしたのかと思いました。長い海岸線にびっしりと並んだ上陸障害物の存在は、中国との関係がだいぶ改善された現在もなお、この島が「最前線」であることを示しています。

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古寧頭から対岸の中国領(大嶝島)を望む。海峡の距離は5キロほどしかなく、中国軍の122ミリや152ミリの榴弾砲の射程内に島がほぼすっぽり入ってしまいます。

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古寧頭にある「古寧頭戦史館」。1949年10月に中国人民解放軍が上陸したものの、国民軍に撃退された戦いについての展示を行う記念館で、入口にはこの戦いで活躍した「金門の熊」とも呼ばれる米国製M5A1戦車などが展示されています。

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古寧頭のそばにある北山は、1958年8月に始まった中国人民解放軍の猛烈な砲撃(八二三砲戦)により甚大な損害を被った場所で、いくつかの建物は記念碑的な形で保存されています。上の建物は、1949年の市街戦による弾痕と1958年の砲撃による天井の破壊跡が戦いの苛烈さを物語っています。

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島の東にある「八二三砲戦」の博物館。斜め向かいには、台湾の国防相を務めた兪大維の記念館もあります。大きくはない島ですが、見所を効率よく回るにはやはりタクシーが不可欠です。ただ、路線バスは便数が少なく多少不便であるものの、値段が安い(1回12元=36円ほど)上、路線を「遠回り」する過程で予想もしなかった風景と出会えることも多いので、時間に余裕があるなら併用をお勧めします。

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金門島の特産品の一つ、金門菜刀(金門包丁)。中国軍がこの小さい島に撃ち込んだ砲弾の数は、八二三砲戦だけで47万発、古寧頭上陸作戦も含めれば100万発に及びますが、島の鍛冶屋はその砲弾を掘り出し、包丁の材料となる鋼材として再利用し、上質な包丁を作る事業を興しました。ただし、現在では火薬の詰まっていた「砲弾」ではなく中国側が投下した「ビラ散布用の宣伝弾の薬莢」が主な原料だそうです。現在では対岸の廈門から大勢の中国人観光客が金門を訪れますが、大陸の包丁よりもよく切れるというので買って帰る人も少なくないとか。

この金門島における二つの戦いは、かつて『歴史群像』誌第71号(2005年6月号)に掲載された「中台紛争史」で解説しましたが、現在は以下の電子書籍の形で読むことができます。

中国・台湾紛争史(Amazon キンドル版電子書籍)

ちなみに、金門島への便は台北市内の松山空港から発着していますが、日本が降伏した直後の1945年8月18日に、インド独立運動の指導者スバス・チャンドラ・ボースが飛行機事故で亡くなったのが、この空港の前身・松山飛行場でした。

今回の台湾紀行も内容の詰まった6日間でした。台湾でお世話になった皆様、ありがとうございました。

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古寧頭の入口にある門。
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