2014年10月26日 [ベアズ・クロウ(熊の爪)]
シックス・アングルズ第14号付録として出版したコンボゲーム『ベアズ・クロウ』の英語版のゲームマップが完成しました。ということで、今回は、久々に『ベアズ・クロウ』に関する話題です。
このゲームは、米国コンシム・プレス(ConsimPress)より英語版がボックス仕様で発売予定で、現在GMTゲームズのサイトでプレオーダーの募集が行われています。
コンシム・プレスの専用ページ
GMTゲームズの専用ページ
英語版のルールは、以前の記事で紹介した「改訂版ルール」を使用しています。マップのサイズはそれぞれハーフサイズからフルサイズに拡大され、駒のサイズも1/2インチから9/16インチに拡大されています。
『ベアズ・クロウ』のルールは、初版ではゲームバランスに大きな問題が存在することが判明したため、ルール修正案を以前の記事で発表しましたが、公式サイトの商品ページには反映していなかったので、先ほど「正誤表」扱いで追加しました。
『ベアズ・クロウ』商品ページ
以前の記事を書いた時点では、一定数のテストを重ねてから、正式に「改訂第2版ルール」として公開するつもりでした。しかし、諸々の仕事が忙しいことに加えて、いつもテスト等を手伝っていただいている石田さんが大阪に転居され、以前ほど頻繁にゲームをプレイできなくなったので、充分なテストを行える目処はまったく立っていません。
その一方で、何もせずにこのまま放置すれば、オリジナルのルールが「今でも正式版」だという誤解が広まり、問題のあるルールでプレイされて、失望や落胆を味わわせてしまうことにもなりかねないように思われます。そこで、現在できる最善策ということで、ルール修整の決定に踏み切りました。
以前の記事でも書きましたが、今回のルール変更点は以下の通りです。非常に重要な変更ですので、ゲームをお持ちの方は必ず、この修整を適用した上でプレイなさってください。
1. 「スモレンスク」のゲーム手順を、「キエフ=ウマーニ」と同じフェイズ順とする(4.0項の修正)。
2. ドイツ軍プレイヤーは、オーバーランの解決時に航空戦力ポイントを投入することができない(7.31項、10.21項、10.22項、10.23項の修正、「スモレンスク」「キエフ=ウマーニ」とも)。
3. ドイツ軍プレイヤーが、戦闘解決時に航空戦力ポイントを投入する場合、7.0項の手順5ではなく、1の手順開始時(双方の攻撃力と防御力の数値を見る前)に、投入するか否か(投入する場合はポイント数)を決定しなくてはならない(7.0項、7.31項、10.22項の修正、「スモレンスク」「キエフ=ウマーニ」とも)。
4. ソ連軍の増援ユニットは、ドイツ軍のZOCが及んでいても、自軍地図端補給源に登場できる(11.15項の修正、「スモレンスク」「キエフ=ウマーニ」とも)。
このゲームは、米国コンシム・プレス(ConsimPress)より英語版がボックス仕様で発売予定で、現在GMTゲームズのサイトでプレオーダーの募集が行われています。
コンシム・プレスの専用ページ
GMTゲームズの専用ページ
英語版のルールは、以前の記事で紹介した「改訂版ルール」を使用しています。マップのサイズはそれぞれハーフサイズからフルサイズに拡大され、駒のサイズも1/2インチから9/16インチに拡大されています。
『ベアズ・クロウ』のルールは、初版ではゲームバランスに大きな問題が存在することが判明したため、ルール修正案を以前の記事で発表しましたが、公式サイトの商品ページには反映していなかったので、先ほど「正誤表」扱いで追加しました。
『ベアズ・クロウ』商品ページ
以前の記事を書いた時点では、一定数のテストを重ねてから、正式に「改訂第2版ルール」として公開するつもりでした。しかし、諸々の仕事が忙しいことに加えて、いつもテスト等を手伝っていただいている石田さんが大阪に転居され、以前ほど頻繁にゲームをプレイできなくなったので、充分なテストを行える目処はまったく立っていません。
その一方で、何もせずにこのまま放置すれば、オリジナルのルールが「今でも正式版」だという誤解が広まり、問題のあるルールでプレイされて、失望や落胆を味わわせてしまうことにもなりかねないように思われます。そこで、現在できる最善策ということで、ルール修整の決定に踏み切りました。
以前の記事でも書きましたが、今回のルール変更点は以下の通りです。非常に重要な変更ですので、ゲームをお持ちの方は必ず、この修整を適用した上でプレイなさってください。
1. 「スモレンスク」のゲーム手順を、「キエフ=ウマーニ」と同じフェイズ順とする(4.0項の修正)。
2. ドイツ軍プレイヤーは、オーバーランの解決時に航空戦力ポイントを投入することができない(7.31項、10.21項、10.22項、10.23項の修正、「スモレンスク」「キエフ=ウマーニ」とも)。
3. ドイツ軍プレイヤーが、戦闘解決時に航空戦力ポイントを投入する場合、7.0項の手順5ではなく、1の手順開始時(双方の攻撃力と防御力の数値を見る前)に、投入するか否か(投入する場合はポイント数)を決定しなくてはならない(7.0項、7.31項、10.22項の修正、「スモレンスク」「キエフ=ウマーニ」とも)。
4. ソ連軍の増援ユニットは、ドイツ軍のZOCが及んでいても、自軍地図端補給源に登場できる(11.15項の修正、「スモレンスク」「キエフ=ウマーニ」とも)。
2012年9月24日 [ベアズ・クロウ(熊の爪)]
今日は先週土曜日に大阪のゲームイベントで行いました、シックス・アングルズ第14号『ベアズ・クロウ』の「スモレンスク」の検証プレイについての話題です。当日は、継本さんと1回(全3ターン)、鹿内さんと1/2回(第2ターンの半分で残念ながら時間切れ)プレイし、ゲームバランスやシステムの問題点について検証しました。
継本さんとのプレイ、第1ターンの1回目のドイツ軍移動終了時。初手で1613と1813に続けてオーバーランというパターンで試してもらい、1613はソ連軍狙撃兵の防御力3、1813は防御力4で、どちらも除去されました。ただし、2210の司令部は攻撃を受けたものの、幸運にも「6」の目が出て退却できました。
第1ターン終了時。イェリニャを占領されてしまいましたが、ソ連軍は第1ターンに4個の「有効反撃チット」を獲得していたため、ドイツ軍の追加VPはなし。
第2ターン終了時。スモレンスクは包囲されていますが、周囲は装甲部隊ばかりなので保持に成功。
第3ターン終了時。勝利得点を計算すると、ドイツ軍は獲得VPへクスで30VP。対するソ連軍は、ドイツ軍自動車化歩兵師団1個全滅で3VP、ヘクスの保持で9VP、計9個の有効反撃チットで16VPの、計28VP。差し引き2点差でドイツ軍の勝利となりましたが、終盤に何個か迂闊にも間違った場所にソ連軍の増援を出していたことが発覚したため、本来ならあと3〜5点くらい点差が広がっていたと思われます。
こちらは鹿内さんとのプレイ、第1ターン終了時。こちらも同じパターンの初手ですが、最初の1613では防御力4で戦闘結果「L/R」、1813では防御力5でオーバーランの結果はなんと「L1/-」。非常にソ連軍にとって幸運な出だしとなりましたが、第1ターン終了時にはスモレンスクの北でソ連軍ユニットがごっそり包囲されてしまいました。
当初の予定では、大久保さんと午後の対戦を行う予定でしたが、私が鹿内さんと対戦することになり、大久保さんは石田さんと1回、継本さんと1回、同じテーブルの隣でこのゲームを対戦しておられました。
ゲーム終了後とそのあとの呑み会で、ゲームの問題点について、お三方からいろいろお話をうかがうことができました。まず、異口同音に指摘されていたのが、初期配置におけるソ連軍司令部の場所で、ドイツ軍が1310と2210の2つの司令部を最初の手番で潰すことができれば(かなり高い確率で成功する)、ソ連軍は中央の前線に増援を投入できなくなるので、バランスが大きく崩れるというものでした。
最初は、この2つの司令部の配置へクスを変えるか、または第1ターンの(1)の増援に含めるかで対処しようかと思いましたが、ゲーム全体の流れについてのお話を聞くうち、問題はもう少し根深いものであることがわかってきました。
諸々の情報を総合すると、「スモレンスク」の最大の問題点は、ゲームの手順にあるように思われました。「キエフ=ウマーニ」の場合、ドイツ軍の機械化移動フェイズの後に来るのが、必ずソ連軍のフェイズであるため、ドイツ軍は敵の包囲を試みる際、浸透移動で突出した部隊がソ連軍の反撃を受けるリスクを常に考えないといけなくなります。
それに対し、「スモレンスク」ではドイツ軍機械化移動フェイズの後に来るのが必ずドイツ軍のフェイズであるため、実質的にドイツ軍は「ノーリスク」で機械化移動フェイズの突進を行うことができます。これは、デザイナーズ・ノート等で再三述べている、このゲームのデザイン・コンセプト(つまりドイツ軍プレイヤーがソ連軍機械化軍団の反撃を恐れながら前進せざるを得ないという展開)から大きく逸脱する流れであると言えます。
これがとりわけ威力を発揮するのが、ターン終了時から次のターン開始時に連なる「ターンまたぎ」の手順で、「キエフ=ウマーニ」だとソ連軍の補給線を切る為に、最後の機械化移動フェイズに車輛ユニットを浸透移動で突進させる作戦には大きなリスクを伴います。しかし、「スモレンスク」では自軍の補給線さえ注意して設定すれば、ソ連軍の反撃というリスクを一切考慮することなく、装甲師団や自動車化師団、あるいは弱体化した戦闘団ですら、安心して奥地に突進させることが可能になります。そして、包囲されて補給を切られたソ連軍ユニットは、次のターンのドイツ軍のフェイズで為す術もなくやられていきます。
実は私自身も、両ゲームで手順を変えたことが正しいのかどうか、過去のプレイ中に多少疑問に感じることはありました。今回の検証で、それが確信に変わったので、この重要な問題点を解消するため、「スモレンスク」のゲーム手順を「キエフ=ウマーニ」と同一のものにする、という修正を適用してみることにしました。つまり、各ターンの1回目と4回目のフェイズがソ連軍の移動/戦闘フェイズ、2回目と5回目のフェイズがドイツ軍の移動/戦闘フェイズとなります。3回目と6回目のドイツ軍機械化移動フェイズはそのままです。
この修正を適用した場合、ソ連軍プレイヤーはドイツ軍のアクションが開始される前に自軍の移動を行えるため、先に述べた司令部の位置を自由に変更できますし、狙撃兵部隊の戦線も修正可能です。もちろん望むなら機械化軍団で先手を取って反撃を行うこともできます。ソ連軍の増援登場スケジュールは、とりあえず現状のままとします(従って最初のフェイズには狙撃兵を2個、地図上に配置できます)。
この大きな変更に加えて、両ゲームに共通する基本システムについても、比較的小さな変更を3点ほど、適用することを検討中です。
そのうちの2つは、ドイツ軍の航空戦力ポイントについて。修正前のルールでは、ドイツ軍の航空戦力ポイントはオーバーランの支援にも投入でき、さらに最終的な戦力比を確認した後で投入するか否かを決めることができましたが、これを「オーバーランには投入不可」および「航空戦力ポイントを投入するか否かは、攻撃の実行を宣言した瞬間、つまり戦力比を確認したり防御側ソ連軍ユニットの数値を確認したりする前に決めなくてはならない」という風に変更します。
イベント後の呑み会で、鹿内さんから「アントライド・ユニットは何を表現しているか」というご意見を聞くことができました。その要旨は、ゲームにおけるアントライド・ユニットとは、単にソ連軍部隊の能力のばらつきだけではなく、その戦闘が発生した局面でのドイツ軍の状況、例えば一時的な弾薬や燃料の枯渇や、疲労の蓄積などをも含んだ、相対的な表現であり、戦力比を見てから航空戦力の投入をドイツ軍が選べるというシステムは、こうした「局所的情勢の相対的評価としてのアントライド・ユニットの意義」を大きく損なわせてしまう、というものでした。
確かに、私自身もそういった相対評価のつもりで、ドイツ軍の部隊は全て兵科と規模ごとに規格化して、共通する数値を割り振っていたのですが、航空戦力ポイントの投入決定のタイミングとの関連については、詰めが甘かったと言わざるを得ません。また、流動的な状況下で突発的に発生するオーバーランを、航空機で的確に直接支援するというのは、現代の米軍でも難しいのではないか、というご意見についても、まったくその通りで、ゲームの便宜的な効果を優先してしまった初版の処理は確かに問題があるように思われます。
残る最後の1つは、ソ連軍の増援登場についてです。現在のルールではソ連軍の地図端補給源に隣接するヘクスであっても、ドイツ軍のZOCが及んでいればソ連軍は増援ユニットを登場させられませんが、これを「ドイツ軍のZOCが及んでいてもソ連軍の地図端補給源に隣接するヘクスなら無条件で(スタック制限の範囲内で)増援ユニットを登場させられる」という風に修正しようかと考えています。
ゲームの終盤、ドイツ軍が地図東端のへクスにユニットをばらまき、2へクスおきにユニットを置いてZOCでスクリーンを形成させれば、わずかな兵力で広大な戦線を保持した上、ソ連軍の増援登場を阻止することが可能です。しかし、このテクニックもあまりにゲーム的である上、中央部におけるソ連軍の反撃余力が大きく削がれてしまうため、兄弟ゲーム『モスクワ攻防戦』のルール10.15項と同じく、ドイツ軍のZOCであっても増援ユニットは出せるようにするのが良いかと思われます。
以上、今回のフィードバックに基づくルール修正案(最終的な「改訂」とするには、まだ多少のテストは必要です)を整理すると、以下のようになります。
1. 「スモレンスク」のゲーム手順を、「キエフ=ウマーニ」と同じフェイズ順とする(4.0項の修正)。
2. ドイツ軍プレイヤーは、オーバーランの解決時に航空戦力ポイントを投入することができない(7.31項、10.21項、10.22項、10.23項の修正、「スモレンスク」「キエフ=ウマーニ」とも)。
3. ドイツ軍プレイヤーが、戦闘解決時に航空戦力ポイントを投入する場合、7.0項の手順5ではなく、1の手順開始時(双方の攻撃力と防御力の数値を見る前)に、投入するか否か(投入する場合はポイント数)を決定しなくてはならない(7.0項、7.31項、10.22項の修正、「スモレンスク」「キエフ=ウマーニ」とも)。
4. ソ連軍の増援ユニットは、ドイツ軍のZOCが及んでいても、自軍地図端補給源に登場できる(11.15項の修正、「スモレンスク」「キエフ=ウマーニ」とも)。
これらはいずれも最終決定ではなく、私自身も何度かテストしてから、最終的な「改訂」とするかどうかを決めたいと思います。このゲームを既にお持ちの方は、ぜひ上記の4点を修正したルールで、一度「スモレンスク」をプレイしてみてください。おそらく、初版ルールにおける問題点の多くは、解消あるいは改善できているのでは、と思います。
最後になりましたが、当日会場で「スモレンスク」を対戦してくださった継本様と鹿内様、貴重なご意見を下さった大久保様のお三方に、改めてお礼を申し上げます。ありがとうございました。
継本さんとのプレイ、第1ターンの1回目のドイツ軍移動終了時。初手で1613と1813に続けてオーバーランというパターンで試してもらい、1613はソ連軍狙撃兵の防御力3、1813は防御力4で、どちらも除去されました。ただし、2210の司令部は攻撃を受けたものの、幸運にも「6」の目が出て退却できました。
第1ターン終了時。イェリニャを占領されてしまいましたが、ソ連軍は第1ターンに4個の「有効反撃チット」を獲得していたため、ドイツ軍の追加VPはなし。
第2ターン終了時。スモレンスクは包囲されていますが、周囲は装甲部隊ばかりなので保持に成功。
第3ターン終了時。勝利得点を計算すると、ドイツ軍は獲得VPへクスで30VP。対するソ連軍は、ドイツ軍自動車化歩兵師団1個全滅で3VP、ヘクスの保持で9VP、計9個の有効反撃チットで16VPの、計28VP。差し引き2点差でドイツ軍の勝利となりましたが、終盤に何個か迂闊にも間違った場所にソ連軍の増援を出していたことが発覚したため、本来ならあと3〜5点くらい点差が広がっていたと思われます。
こちらは鹿内さんとのプレイ、第1ターン終了時。こちらも同じパターンの初手ですが、最初の1613では防御力4で戦闘結果「L/R」、1813では防御力5でオーバーランの結果はなんと「L1/-」。非常にソ連軍にとって幸運な出だしとなりましたが、第1ターン終了時にはスモレンスクの北でソ連軍ユニットがごっそり包囲されてしまいました。
当初の予定では、大久保さんと午後の対戦を行う予定でしたが、私が鹿内さんと対戦することになり、大久保さんは石田さんと1回、継本さんと1回、同じテーブルの隣でこのゲームを対戦しておられました。
ゲーム終了後とそのあとの呑み会で、ゲームの問題点について、お三方からいろいろお話をうかがうことができました。まず、異口同音に指摘されていたのが、初期配置におけるソ連軍司令部の場所で、ドイツ軍が1310と2210の2つの司令部を最初の手番で潰すことができれば(かなり高い確率で成功する)、ソ連軍は中央の前線に増援を投入できなくなるので、バランスが大きく崩れるというものでした。
最初は、この2つの司令部の配置へクスを変えるか、または第1ターンの(1)の増援に含めるかで対処しようかと思いましたが、ゲーム全体の流れについてのお話を聞くうち、問題はもう少し根深いものであることがわかってきました。
諸々の情報を総合すると、「スモレンスク」の最大の問題点は、ゲームの手順にあるように思われました。「キエフ=ウマーニ」の場合、ドイツ軍の機械化移動フェイズの後に来るのが、必ずソ連軍のフェイズであるため、ドイツ軍は敵の包囲を試みる際、浸透移動で突出した部隊がソ連軍の反撃を受けるリスクを常に考えないといけなくなります。
それに対し、「スモレンスク」ではドイツ軍機械化移動フェイズの後に来るのが必ずドイツ軍のフェイズであるため、実質的にドイツ軍は「ノーリスク」で機械化移動フェイズの突進を行うことができます。これは、デザイナーズ・ノート等で再三述べている、このゲームのデザイン・コンセプト(つまりドイツ軍プレイヤーがソ連軍機械化軍団の反撃を恐れながら前進せざるを得ないという展開)から大きく逸脱する流れであると言えます。
これがとりわけ威力を発揮するのが、ターン終了時から次のターン開始時に連なる「ターンまたぎ」の手順で、「キエフ=ウマーニ」だとソ連軍の補給線を切る為に、最後の機械化移動フェイズに車輛ユニットを浸透移動で突進させる作戦には大きなリスクを伴います。しかし、「スモレンスク」では自軍の補給線さえ注意して設定すれば、ソ連軍の反撃というリスクを一切考慮することなく、装甲師団や自動車化師団、あるいは弱体化した戦闘団ですら、安心して奥地に突進させることが可能になります。そして、包囲されて補給を切られたソ連軍ユニットは、次のターンのドイツ軍のフェイズで為す術もなくやられていきます。
実は私自身も、両ゲームで手順を変えたことが正しいのかどうか、過去のプレイ中に多少疑問に感じることはありました。今回の検証で、それが確信に変わったので、この重要な問題点を解消するため、「スモレンスク」のゲーム手順を「キエフ=ウマーニ」と同一のものにする、という修正を適用してみることにしました。つまり、各ターンの1回目と4回目のフェイズがソ連軍の移動/戦闘フェイズ、2回目と5回目のフェイズがドイツ軍の移動/戦闘フェイズとなります。3回目と6回目のドイツ軍機械化移動フェイズはそのままです。
この修正を適用した場合、ソ連軍プレイヤーはドイツ軍のアクションが開始される前に自軍の移動を行えるため、先に述べた司令部の位置を自由に変更できますし、狙撃兵部隊の戦線も修正可能です。もちろん望むなら機械化軍団で先手を取って反撃を行うこともできます。ソ連軍の増援登場スケジュールは、とりあえず現状のままとします(従って最初のフェイズには狙撃兵を2個、地図上に配置できます)。
この大きな変更に加えて、両ゲームに共通する基本システムについても、比較的小さな変更を3点ほど、適用することを検討中です。
そのうちの2つは、ドイツ軍の航空戦力ポイントについて。修正前のルールでは、ドイツ軍の航空戦力ポイントはオーバーランの支援にも投入でき、さらに最終的な戦力比を確認した後で投入するか否かを決めることができましたが、これを「オーバーランには投入不可」および「航空戦力ポイントを投入するか否かは、攻撃の実行を宣言した瞬間、つまり戦力比を確認したり防御側ソ連軍ユニットの数値を確認したりする前に決めなくてはならない」という風に変更します。
イベント後の呑み会で、鹿内さんから「アントライド・ユニットは何を表現しているか」というご意見を聞くことができました。その要旨は、ゲームにおけるアントライド・ユニットとは、単にソ連軍部隊の能力のばらつきだけではなく、その戦闘が発生した局面でのドイツ軍の状況、例えば一時的な弾薬や燃料の枯渇や、疲労の蓄積などをも含んだ、相対的な表現であり、戦力比を見てから航空戦力の投入をドイツ軍が選べるというシステムは、こうした「局所的情勢の相対的評価としてのアントライド・ユニットの意義」を大きく損なわせてしまう、というものでした。
確かに、私自身もそういった相対評価のつもりで、ドイツ軍の部隊は全て兵科と規模ごとに規格化して、共通する数値を割り振っていたのですが、航空戦力ポイントの投入決定のタイミングとの関連については、詰めが甘かったと言わざるを得ません。また、流動的な状況下で突発的に発生するオーバーランを、航空機で的確に直接支援するというのは、現代の米軍でも難しいのではないか、というご意見についても、まったくその通りで、ゲームの便宜的な効果を優先してしまった初版の処理は確かに問題があるように思われます。
残る最後の1つは、ソ連軍の増援登場についてです。現在のルールではソ連軍の地図端補給源に隣接するヘクスであっても、ドイツ軍のZOCが及んでいればソ連軍は増援ユニットを登場させられませんが、これを「ドイツ軍のZOCが及んでいてもソ連軍の地図端補給源に隣接するヘクスなら無条件で(スタック制限の範囲内で)増援ユニットを登場させられる」という風に修正しようかと考えています。
ゲームの終盤、ドイツ軍が地図東端のへクスにユニットをばらまき、2へクスおきにユニットを置いてZOCでスクリーンを形成させれば、わずかな兵力で広大な戦線を保持した上、ソ連軍の増援登場を阻止することが可能です。しかし、このテクニックもあまりにゲーム的である上、中央部におけるソ連軍の反撃余力が大きく削がれてしまうため、兄弟ゲーム『モスクワ攻防戦』のルール10.15項と同じく、ドイツ軍のZOCであっても増援ユニットは出せるようにするのが良いかと思われます。
以上、今回のフィードバックに基づくルール修正案(最終的な「改訂」とするには、まだ多少のテストは必要です)を整理すると、以下のようになります。
1. 「スモレンスク」のゲーム手順を、「キエフ=ウマーニ」と同じフェイズ順とする(4.0項の修正)。
2. ドイツ軍プレイヤーは、オーバーランの解決時に航空戦力ポイントを投入することができない(7.31項、10.21項、10.22項、10.23項の修正、「スモレンスク」「キエフ=ウマーニ」とも)。
3. ドイツ軍プレイヤーが、戦闘解決時に航空戦力ポイントを投入する場合、7.0項の手順5ではなく、1の手順開始時(双方の攻撃力と防御力の数値を見る前)に、投入するか否か(投入する場合はポイント数)を決定しなくてはならない(7.0項、7.31項、10.22項の修正、「スモレンスク」「キエフ=ウマーニ」とも)。
4. ソ連軍の増援ユニットは、ドイツ軍のZOCが及んでいても、自軍地図端補給源に登場できる(11.15項の修正、「スモレンスク」「キエフ=ウマーニ」とも)。
これらはいずれも最終決定ではなく、私自身も何度かテストしてから、最終的な「改訂」とするかどうかを決めたいと思います。このゲームを既にお持ちの方は、ぜひ上記の4点を修正したルールで、一度「スモレンスク」をプレイしてみてください。おそらく、初版ルールにおける問題点の多くは、解消あるいは改善できているのでは、と思います。
最後になりましたが、当日会場で「スモレンスク」を対戦してくださった継本様と鹿内様、貴重なご意見を下さった大久保様のお三方に、改めてお礼を申し上げます。ありがとうございました。
2012年9月18日 [ベアズ・クロウ(熊の爪)]
今日は久々に『ベアズ・クロウ』の話題です。今週土曜日に、大阪で開催される中黒靖さん主催のゲームイベント「9/22ウォーゲーム(ぷち)コンベンション」に、私も参加し、その際に2人の方と、私がソ連軍を担当して「スモレンスク」を対戦する予定です。
最近、知人のKMTさんのブログで「『スモレンスク』でドイツ軍が第1ターンの第1フェイズで2カ所のオーバーランに成功しさえすればドイツ軍は圧勝する。失敗の確率は0.125パーセント」と、まるで「スモレンスク」では99.8%以上の確率でドイツが勝つ内容になっているかのように書かれているので、本当にそんなにひどくバランスが崩れているのか、実際にソ連軍を今までとは違う人とプレイして確かめてみたい、と考えたわけです。
ちなみにKMTさんのブログでの「スモレンスク」ドイツ軍圧勝パターンというのは、こちら↓
9/8 TSS例会 ベアズ・クロウ スモレンスク
スモレンスク 検討1
スモレンスク 検討2
スモレンスク 検討3
スモレンスク 検討4
ドイツ軍のやり方は、だいたい想定の範囲内ですが、私が知りたいのは、この後でソ連軍が何をどうやったかということです。
KMTさんのブログでは、ソ連軍の第1フェイズでは「戦闘→移動」の順序でプレイした、とありますが、これがまず私には疑問に感じられるところです。私なら間違いなく「移動→戦闘」を選びます。なぜなら、フェイズ開始時に隣接しているユニットが少なすぎるので、戦闘を先にするメリットがほとんど無いからです。ブログを読む限りでは、KMTさんが言われるところの「ドイツ軍圧勝パターン」へのソ連軍の対応策の違いによる展開の変化(積極反撃と後退防御のメリットとデメリットなど)については、特に深い研究(対戦による各パターンの検証)はされていないようです。
私がソ連軍なら、次のようにユニットを移動させます(以下、KMTさんのブログへの対応としてお読み下さい)。
まず増援の狙撃兵2個は2111と2110へ配置。
3010の機械化を2913へ。
2712の狙撃兵を2813へ。
2413の狙撃兵を2315へ。
2312の機械化を2113へ。
2111の狙撃兵を1912へ。
2110の狙撃兵を2012へ。
2510の狙撃兵を2310へ。
2408の狙撃兵を2208へ。
2406の狙撃兵を2308へ。
2206の狙撃兵を1908へ。
1709の狙撃兵はそのまま。
2210の司令部は2410へ。
2606の司令部は1904へ。
1507の狙撃兵は1406へ。
1410の機械化は1411へ。
1414の狙撃兵は1415へ。
1008の狙撃兵は1310へ。
1310の司令部は1406へ。
0914の狙撃兵は0813へ。
0617の狙撃兵は0616へ。
0515の司令部は0214へ。
続く戦闘では、
(1)2913の機械化と2813の狙撃兵で2914のGDを攻撃。
(2)2113の機械化と2012の狙撃兵で2013の装甲師団を攻撃。
(3)1011の機械化と1012の狙撃兵で1112の装甲師団を攻撃。
(4)1411の機械化と1211の狙撃兵で1312の装甲師団を攻撃。
の計4箇所で攻撃を行います。見込みとしては2カ所で「有効反撃チット」を獲得する狙いですが、それ以外でも装甲師団が1ステップロスするか、退却して混乱状態になるかすれば、チットは得られなくても成功と考えます。もちろん攻撃に投入した機械化軍団の損害は覚悟の上です。
プレイテスターの石田さんも、本当にKMTさんの書かれているような展開になるのか、と、あれこれ試してくれていますが、今のところは「そうはならないのではないか」という感じです。石田さんのブログのリンクは、こちら↓
ベアズクロウ スモレンスク
もちろん、私は決して「『スモレンスク』のゲームバランスは現状で完璧だ」と主張したいわけではなく、逆に問題があるならその度合いを正しく認識した上で、初期配置の変更などの修正を適用し、問題を解消して、両軍が拮抗したプレイを楽しめるゲームに磨き上げたいと考えています。
ベテランゲーマーの方ならよくご存知の通り、アバロンヒル社やGMTゲームズ社のゲームの中には、初版の段階ではいろいろと瑕疵があったものの、発売後にコンシムのフォーラム(ゲーマーが意見交換できる掲示板)でのフィードバックなどを参考にして修正が加えられ、第二版や第三版で、ゲームとして完成の域に達した作品も少なくありません。言い換えれば、発売したゲームの初期配置やルールの一部を修正するのは、何も恥ずかしいことではないと思っています。
むしろ『ベアズ・クロウ』を買って下さった人が、「バランスが悪いのでわたしは二度とプレイしません」となるのではなく、適切な修正を適用することで繰り返しゲームをプレイしてくれるように状況を変えることが、発行人や開発者に課せられた責任です。土曜日のイベントでは、参加される方からその辺りのご意見もお聞きした上で、必要ならば修正案についても検討したいと思っています。
『ベアズ・クロウ』をお持ちの方は、ぜひKMTさんのブログと今回の私のブログを比較して、「スモレンスク」の序盤の展開をいろいろと検討していただければ、と思います。また、今回触れた以外で、何か問題点を感じている方がおられましたら、コメント欄やメールで、ぜひその内容を詳しくお聞かせいただければと思います。
最近、知人のKMTさんのブログで「『スモレンスク』でドイツ軍が第1ターンの第1フェイズで2カ所のオーバーランに成功しさえすればドイツ軍は圧勝する。失敗の確率は0.125パーセント」と、まるで「スモレンスク」では99.8%以上の確率でドイツが勝つ内容になっているかのように書かれているので、本当にそんなにひどくバランスが崩れているのか、実際にソ連軍を今までとは違う人とプレイして確かめてみたい、と考えたわけです。
ちなみにKMTさんのブログでの「スモレンスク」ドイツ軍圧勝パターンというのは、こちら↓
9/8 TSS例会 ベアズ・クロウ スモレンスク
スモレンスク 検討1
スモレンスク 検討2
スモレンスク 検討3
スモレンスク 検討4
ドイツ軍のやり方は、だいたい想定の範囲内ですが、私が知りたいのは、この後でソ連軍が何をどうやったかということです。
KMTさんのブログでは、ソ連軍の第1フェイズでは「戦闘→移動」の順序でプレイした、とありますが、これがまず私には疑問に感じられるところです。私なら間違いなく「移動→戦闘」を選びます。なぜなら、フェイズ開始時に隣接しているユニットが少なすぎるので、戦闘を先にするメリットがほとんど無いからです。ブログを読む限りでは、KMTさんが言われるところの「ドイツ軍圧勝パターン」へのソ連軍の対応策の違いによる展開の変化(積極反撃と後退防御のメリットとデメリットなど)については、特に深い研究(対戦による各パターンの検証)はされていないようです。
私がソ連軍なら、次のようにユニットを移動させます(以下、KMTさんのブログへの対応としてお読み下さい)。
まず増援の狙撃兵2個は2111と2110へ配置。
3010の機械化を2913へ。
2712の狙撃兵を2813へ。
2413の狙撃兵を2315へ。
2312の機械化を2113へ。
2111の狙撃兵を1912へ。
2110の狙撃兵を2012へ。
2510の狙撃兵を2310へ。
2408の狙撃兵を2208へ。
2406の狙撃兵を2308へ。
2206の狙撃兵を1908へ。
1709の狙撃兵はそのまま。
2210の司令部は2410へ。
2606の司令部は1904へ。
1507の狙撃兵は1406へ。
1410の機械化は1411へ。
1414の狙撃兵は1415へ。
1008の狙撃兵は1310へ。
1310の司令部は1406へ。
0914の狙撃兵は0813へ。
0617の狙撃兵は0616へ。
0515の司令部は0214へ。
続く戦闘では、
(1)2913の機械化と2813の狙撃兵で2914のGDを攻撃。
(2)2113の機械化と2012の狙撃兵で2013の装甲師団を攻撃。
(3)1011の機械化と1012の狙撃兵で1112の装甲師団を攻撃。
(4)1411の機械化と1211の狙撃兵で1312の装甲師団を攻撃。
の計4箇所で攻撃を行います。見込みとしては2カ所で「有効反撃チット」を獲得する狙いですが、それ以外でも装甲師団が1ステップロスするか、退却して混乱状態になるかすれば、チットは得られなくても成功と考えます。もちろん攻撃に投入した機械化軍団の損害は覚悟の上です。
プレイテスターの石田さんも、本当にKMTさんの書かれているような展開になるのか、と、あれこれ試してくれていますが、今のところは「そうはならないのではないか」という感じです。石田さんのブログのリンクは、こちら↓
ベアズクロウ スモレンスク
もちろん、私は決して「『スモレンスク』のゲームバランスは現状で完璧だ」と主張したいわけではなく、逆に問題があるならその度合いを正しく認識した上で、初期配置の変更などの修正を適用し、問題を解消して、両軍が拮抗したプレイを楽しめるゲームに磨き上げたいと考えています。
ベテランゲーマーの方ならよくご存知の通り、アバロンヒル社やGMTゲームズ社のゲームの中には、初版の段階ではいろいろと瑕疵があったものの、発売後にコンシムのフォーラム(ゲーマーが意見交換できる掲示板)でのフィードバックなどを参考にして修正が加えられ、第二版や第三版で、ゲームとして完成の域に達した作品も少なくありません。言い換えれば、発売したゲームの初期配置やルールの一部を修正するのは、何も恥ずかしいことではないと思っています。
むしろ『ベアズ・クロウ』を買って下さった人が、「バランスが悪いのでわたしは二度とプレイしません」となるのではなく、適切な修正を適用することで繰り返しゲームをプレイしてくれるように状況を変えることが、発行人や開発者に課せられた責任です。土曜日のイベントでは、参加される方からその辺りのご意見もお聞きした上で、必要ならば修正案についても検討したいと思っています。
『ベアズ・クロウ』をお持ちの方は、ぜひKMTさんのブログと今回の私のブログを比較して、「スモレンスク」の序盤の展開をいろいろと検討していただければ、と思います。また、今回触れた以外で、何か問題点を感じている方がおられましたら、コメント欄やメールで、ぜひその内容を詳しくお聞かせいただければと思います。
2012年8月28日 [ベアズ・クロウ(熊の爪)]
今日はまず告知から。学研パブリッシングさんのムック本シリーズ『大日本帝国の興亡(5) 勝算なき戦争』が発売となりました。新たな切り口で明治から大正、昭和前期の日本を再検証する『大日本帝国の興亡』シリーズの完結編で、私も「世界大戦としての『大東亜戦争』」という記事を書いています。興味のある方は、ぜひ書店で内容をご覧ください。
次に、ゲームの正誤表について。『ベアズ・クロウ』の戦闘後前進ルールで、以下のルール訂正を行いました。
《訂正》
1)7.78項 この項目の「陣地ヘクス」を全て「陣地または湿地ヘクス」に変更します。
ゲームをお持ちの方は、この訂正を反映してプレイしていただければ幸いです。
ご存知の方もおられるかと思いますが、米国GMT社の公式サイトで『ベアズ・クロウ』英語版のプレオーダー募集が行われています。この英語版は、友人のジョン・クランツ氏が主宰する「ConsimWorld」の派生事業「コンシム・プレス」が制作を担当し、出版と流通をGMT社が行うという形態ですが、もし日本版を既に繰り返しプレイされた方で、ゲームの問題点を何か見つけられた方がおられましたら、ご教示いただければ幸いです。
次の日曜日は、以前の記事でもご紹介しました、シックス・アングルズ第9号『ウォー・フォー・ザ・マザーランド』の改訂第3版ルールと改訂版戦闘結果表のテストの続きを行います。前回はケン先生にソ連軍を担当していただきましたが、1941年9月からはジューコフ石田さんに引き継いでいただきます。
おまけ
かぼちゃ。トマトとキュウリはまだ収穫していますが、それ以外はこのかぼちゃで打ち止め。他の作物との密集度が高かったせいか、期待したほど大きくはなりませんでした。鋳造砲塔のような触りごこち…。
2012年3月20日 [ベアズ・クロウ(熊の爪)]
本日、シックス・アングルズ第14号『ベアズ・クロウ』のプレオーダー分の発送を行いました。プレオーダー条件での募集は、店頭発売日前日の3月24日午後11時59分まで受け付けていますので、興味のある方はぜひこの機会にどうぞ。
2012年3月17日 [ベアズ・クロウ(熊の爪)]
シックス・アングルズ第14号『ベアズ・クロウ』のプレオーダー発送まで、あと数日となりました。今日、おまけで付けるソ連軍の資料を大量にコピーしてきました。左が書類の表、右が裏ですが、スキャンした画像をA3版で並べてモノクロコピーしています。
これは、1942年10月、ということはヴォルガ川沿岸のスターリングラードでは市街戦が真っ盛りの頃ですが、戦線の反対翼側に位置する北西方面軍の第6航空軍において、ボリス・ヤコヴレヴィチ・ディネールという第6航空軍の政治将校を「中佐に昇進させる」人事書類(資格審査証明書)です。
ロシア語に堪能なケン先生の助けをお借りしつつ、文書の内容を確かめてみたところ、ユダヤ系の家庭に生まれたボリス・ディネールは、13歳の時(ロシア内戦中の1920年)に共産党郡支部の伝令を務め、孤児院で過ごした後、17歳で金属旋盤工として工場で働き始めました。その後、1928年6月に正式な共産党員となり、1929年から31年まで赤軍で勤務し、いったん除隊した後、再び軍に復帰して、1932年4月には航空機関士(アヴィアモトリスト)となりました。
1933年に軍の速成講座と政治委員の教育を受け、1934年9月から政治将校(ポリトルーク)として勤務、空軍所属で大粛清を生き延び、大祖国戦争直前の1940年にはソ=フィン戦争(「白色フィンランドとの戦争」)で赤星勲章を受賞しました。1941年6月の独ソ開戦と共に、航空隊の上級指導員として北西方面軍の政治指導部に属し、航空部隊付政治将校として活躍したようです。
書類の裏面には、北西方面軍司令官セミョン・ティモシェンコ元帥をはじめとする高官の「承認」を示す直筆サインが入っています(上の紫色の署名がティモシェンコ)。独ソ開戦以来、主要な戦域で「総軍司令官」を務めたティモシェンコですが、この年の7月に「南西総軍」司令官を罷免され、重要度の低い北西方面軍司令官へと「格下げ」されていました。
政治将校ボリス・ディネールが、その後どのような人生を歩んだのか、無事に戦争を生き延びることができたのかどうかを知ることはできませんが、確かにあの戦争を生きた一人の人物について、想像力をかき立ててくれる文書ではあります。
プレオーダーは、店頭発売日前日の3月24日まで募集いたします。
シックス・アングルズ第14号
ベアズ・クロウ
3月20日プレオーダー発送予定
3月25日店頭発売予定
限定600部
小売価格 5460円(本体5200円)
プレオーダー価格 4935円(本体4700円)
シックス・アングルズ第14号の内容紹介ページ
※マップやユニット、チャート類の見本をご覧いただけます。
これは、1942年10月、ということはヴォルガ川沿岸のスターリングラードでは市街戦が真っ盛りの頃ですが、戦線の反対翼側に位置する北西方面軍の第6航空軍において、ボリス・ヤコヴレヴィチ・ディネールという第6航空軍の政治将校を「中佐に昇進させる」人事書類(資格審査証明書)です。
ロシア語に堪能なケン先生の助けをお借りしつつ、文書の内容を確かめてみたところ、ユダヤ系の家庭に生まれたボリス・ディネールは、13歳の時(ロシア内戦中の1920年)に共産党郡支部の伝令を務め、孤児院で過ごした後、17歳で金属旋盤工として工場で働き始めました。その後、1928年6月に正式な共産党員となり、1929年から31年まで赤軍で勤務し、いったん除隊した後、再び軍に復帰して、1932年4月には航空機関士(アヴィアモトリスト)となりました。
1933年に軍の速成講座と政治委員の教育を受け、1934年9月から政治将校(ポリトルーク)として勤務、空軍所属で大粛清を生き延び、大祖国戦争直前の1940年にはソ=フィン戦争(「白色フィンランドとの戦争」)で赤星勲章を受賞しました。1941年6月の独ソ開戦と共に、航空隊の上級指導員として北西方面軍の政治指導部に属し、航空部隊付政治将校として活躍したようです。
書類の裏面には、北西方面軍司令官セミョン・ティモシェンコ元帥をはじめとする高官の「承認」を示す直筆サインが入っています(上の紫色の署名がティモシェンコ)。独ソ開戦以来、主要な戦域で「総軍司令官」を務めたティモシェンコですが、この年の7月に「南西総軍」司令官を罷免され、重要度の低い北西方面軍司令官へと「格下げ」されていました。
政治将校ボリス・ディネールが、その後どのような人生を歩んだのか、無事に戦争を生き延びることができたのかどうかを知ることはできませんが、確かにあの戦争を生きた一人の人物について、想像力をかき立ててくれる文書ではあります。
プレオーダーは、店頭発売日前日の3月24日まで募集いたします。
シックス・アングルズ第14号
ベアズ・クロウ
3月20日プレオーダー発送予定
3月25日店頭発売予定
限定600部
小売価格 5460円(本体5200円)
プレオーダー価格 4935円(本体4700円)
シックス・アングルズ第14号の内容紹介ページ
※マップやユニット、チャート類の見本をご覧いただけます。
2012年3月10日 [ベアズ・クロウ(熊の爪)]
シックス・アングルズ第14号『ベアズ・クロウ』のプレオーダー分発送まで、いよいよあと10日となりました。商品説明のページに、デザイナーズ・ノートのPDFを公開しましたので、興味のある方はぜひご覧ください。
『ベアズ・クロウ』デザイナーズ・ノート(PDF)
また、『ベアズ・クロウ』出版を記念して(というわけでもないのですが・笑)、3月30日(金)の夜に、大阪のなんば辺りで、シックス・アングルズ読者の方との交流を主眼とする「小規模ミーティング」(ようは呑み会)を催そうかと考えています。今回は6人程度の小規模な集まりで、お酒と料理を楽しみながら、製作裏話やら、ご意見・ご要望を拝聴したりやら、という気楽な集まりですが、もし参加をご希望の方がおられましたら、下記までメールにてご連絡ください。
2008@mas-yamazaki.com
プレオーダーは引き続き募集中です。
シックス・アングルズ第14号
ベアズ・クロウ
3月20日プレオーダー発送予定
3月25日店頭発売予定
限定600部
小売価格 5460円(本体5200円)
プレオーダー価格 4935円(本体4700円)
シックス・アングルズ第14号の内容紹介ページ
※マップやユニット、チャート類の見本をご覧いただけます。
『ベアズ・クロウ』デザイナーズ・ノート(PDF)
また、『ベアズ・クロウ』出版を記念して(というわけでもないのですが・笑)、3月30日(金)の夜に、大阪のなんば辺りで、シックス・アングルズ読者の方との交流を主眼とする「小規模ミーティング」(ようは呑み会)を催そうかと考えています。今回は6人程度の小規模な集まりで、お酒と料理を楽しみながら、製作裏話やら、ご意見・ご要望を拝聴したりやら、という気楽な集まりですが、もし参加をご希望の方がおられましたら、下記までメールにてご連絡ください。
2008@mas-yamazaki.com
プレオーダーは引き続き募集中です。
シックス・アングルズ第14号
ベアズ・クロウ
3月20日プレオーダー発送予定
3月25日店頭発売予定
限定600部
小売価格 5460円(本体5200円)
プレオーダー価格 4935円(本体4700円)
シックス・アングルズ第14号の内容紹介ページ
※マップやユニット、チャート類の見本をご覧いただけます。
2012年3月2日 [ベアズ・クロウ(熊の爪)]
昨日から3月が始まり、シックス・アングルズ第15号『ベアズ・クロウ』のプレオーダー発送まで、あと20日を切りました。先日よりホームページで公開していましたルールのPDFも、校正チェックが完了した最終版とデータを差し替えました。また、プレイの実例(1ページ)のPDFも追加で公開しました。
『ベアズ・クロウ』最終版ルール(PDF)
『ベアズ・クロウ』プレイの実例(PDF)
プレオーダーは引き続き募集中ですので、興味のある方はぜひどうぞ。
シックス・アングルズ第14号
ベアズ・クロウ
3月20日プレオーダー発送予定
3月25日店頭発売予定
限定600部
小売価格 5460円(本体5200円)
プレオーダー価格 4935円(本体4700円)
シックス・アングルズ第14号の内容紹介ページ
※マップやユニット、チャート類の見本をご覧いただけます。
『ベアズ・クロウ』最終版ルール(PDF)
『ベアズ・クロウ』プレイの実例(PDF)
プレオーダーは引き続き募集中ですので、興味のある方はぜひどうぞ。
シックス・アングルズ第14号
ベアズ・クロウ
3月20日プレオーダー発送予定
3月25日店頭発売予定
限定600部
小売価格 5460円(本体5200円)
プレオーダー価格 4935円(本体4700円)
シックス・アングルズ第14号の内容紹介ページ
※マップやユニット、チャート類の見本をご覧いただけます。
2012年2月17日 [ベアズ・クロウ(熊の爪)]
今週は、KKベストセラーズさんの雑誌『歴史人』次号の特集「満州帝国」に収録されるカラー地図4点の制作をメインに行いつつ、シックス・アングルズ第14号『ベアズ・クロウ』の仕上げ作業を進めています。前者の仕事は、満州全体をカバーする比較的大きな地図や、柳条湖事件(および張作霖爆殺事件)の舞台となった奉天の詳細な市街図などで、見栄えとわかりやすさ、歴史情報的価値の並立を今回も追求しています。発売は来月中旬の予定ですので、興味のある方はぜひ楽しみにしていてください。
シックス・アングルズの方は、最後に残った本誌の記事がもうすぐ完成し、あとは全体の校正チェックの作業となります(駒のデータは既に印刷所に入稿済みです)。今回は、今までとは違い、ヒストリカル・ノート的な戦史記事は収録せず、代わりに他社製品のゲームを紹介する記事を2本、掲載する予定です。ヒストリカル・ノートは、昨年出た『宿命の「バルバロッサ作戦」』や『歴史群像』第105号の記事「スモレンスク攻防戦」で同内容の原稿を書いてしまったから、というのが大きな理由ですが、他社ゲームの詳しい紹介も以前からずっとやりたいと思っていた企画なので、限られたページをどう使うかについて、今回は新たな試みに挑戦してみました。
ゲーム記事2本のうちの一本は、以前の記事でも少しご紹介しました、MMP/GJの『激闘! グデーリアン装甲軍(A Victory Denied)』についての4ページの紹介記事で、もう一本はこちらも先日のブログ記事で触れました、GMT社の『ラビリンス(Labyrinth)』に関する10ページの紹介記事です。目次と奥付込みで64ページの本誌中、1つのゲームに10ページ、しかも完結せずに次号にも続く(笑)というのは、ちょっとした冒険かもしれませんが、イメージ的にはかつてホビージャパンが刊行していたシミュレーション・ゲーム雑誌『タクテクス』の初期の号(隔月刊時代の第1号〜第6号あたり)をイメージして、記事を制作しました。
上の画像は『ラビリンス』記事の1ページ目ですが、このゲームは以前の記事でも書きました通り、ルール本文だけを読んだのでは、何をどうしたらいいのか初見のプレイヤーは理解できないのでは、と思われる部分があります。しかし、いろんな意味で「良くできたゲーム」なのに、それではもったいない、ということで、私なりにルールシステムの解説と、個々のルールが現実の何を表しているのかという説明、一般の日本人には馴染みが薄いと思われるイベントカードについての解説、そして付属の「チュートリアル(記事)」の通りにプレイした経過を私なりの追加説明で記述するという構成の記事に仕上げてみました。
ゲーム雑誌の記事に何を求めるかは、読者によっても違うと思いますし、今回のアプローチが多くの読者に喜ばれるかどうかは出してみないとわからないのですが、とりあえず発売後に読後感やご提案など、フィードバックの情報を頂けると幸いです。それを参考に、今後の記事作りに反映させたいと思います。原稿執筆などの他の仕事でもそうですが、弾着観測とそれに基づく補正のような作業は、仕事の質を高める上で、とても重要な意味を持ちます。『ラビリンス』をお持ちの方はもちろん、そうでない読者の方も、ぜひご意見やご感想をお聞かせください。
シックス・アングルズの方は、最後に残った本誌の記事がもうすぐ完成し、あとは全体の校正チェックの作業となります(駒のデータは既に印刷所に入稿済みです)。今回は、今までとは違い、ヒストリカル・ノート的な戦史記事は収録せず、代わりに他社製品のゲームを紹介する記事を2本、掲載する予定です。ヒストリカル・ノートは、昨年出た『宿命の「バルバロッサ作戦」』や『歴史群像』第105号の記事「スモレンスク攻防戦」で同内容の原稿を書いてしまったから、というのが大きな理由ですが、他社ゲームの詳しい紹介も以前からずっとやりたいと思っていた企画なので、限られたページをどう使うかについて、今回は新たな試みに挑戦してみました。
ゲーム記事2本のうちの一本は、以前の記事でも少しご紹介しました、MMP/GJの『激闘! グデーリアン装甲軍(A Victory Denied)』についての4ページの紹介記事で、もう一本はこちらも先日のブログ記事で触れました、GMT社の『ラビリンス(Labyrinth)』に関する10ページの紹介記事です。目次と奥付込みで64ページの本誌中、1つのゲームに10ページ、しかも完結せずに次号にも続く(笑)というのは、ちょっとした冒険かもしれませんが、イメージ的にはかつてホビージャパンが刊行していたシミュレーション・ゲーム雑誌『タクテクス』の初期の号(隔月刊時代の第1号〜第6号あたり)をイメージして、記事を制作しました。
上の画像は『ラビリンス』記事の1ページ目ですが、このゲームは以前の記事でも書きました通り、ルール本文だけを読んだのでは、何をどうしたらいいのか初見のプレイヤーは理解できないのでは、と思われる部分があります。しかし、いろんな意味で「良くできたゲーム」なのに、それではもったいない、ということで、私なりにルールシステムの解説と、個々のルールが現実の何を表しているのかという説明、一般の日本人には馴染みが薄いと思われるイベントカードについての解説、そして付属の「チュートリアル(記事)」の通りにプレイした経過を私なりの追加説明で記述するという構成の記事に仕上げてみました。
ゲーム雑誌の記事に何を求めるかは、読者によっても違うと思いますし、今回のアプローチが多くの読者に喜ばれるかどうかは出してみないとわからないのですが、とりあえず発売後に読後感やご提案など、フィードバックの情報を頂けると幸いです。それを参考に、今後の記事作りに反映させたいと思います。原稿執筆などの他の仕事でもそうですが、弾着観測とそれに基づく補正のような作業は、仕事の質を高める上で、とても重要な意味を持ちます。『ラビリンス』をお持ちの方はもちろん、そうでない読者の方も、ぜひご意見やご感想をお聞かせください。
2012年2月12日 [ベアズ・クロウ(熊の爪)]
おとといの土曜日、石田さんとシックス・アングルズ第14号『ベアズ・クロウ』「キエフ=ウマーニ」のリプレイ記事用対戦兼最終プレイテストを行いました。先の「スモレンスク」同様、今回も僅差のプレイとなり、ゲーム展開もほぼイメージ通りで、一カ所だけ勝利得点の数字を変更(キエフの10点というのは極端だと判明したため5点に)した以外は問題なくプレイできたので、これで完成と判断することにしました。
ちなみに、今回は対戦中一度もルールブックを見ず、チャートも戦闘結果表と地形効果表だけ見ながら最後まで対戦しました。記録を取りながらのプレイなので時間がかかりましたが、どちらのゲームも慣れれば1日に2回対戦が可能です。史実の「状況」の再現度は、独ソ戦史研究者として満足できるレベルにあると考えていますし、独ソ戦の序盤というテーマを扱っていながら、ドイツ軍とソ連軍のどちらを持っても、最初から最後までエキサイティングなプレイを能動的に楽しめるゲームに仕上がったと思います。
プレオーダーは引き続き募集中ですので、興味のある方はぜひどうぞ。
シックス・アングルズ第14号
ベアズ・クロウ
3月20日プレオーダー発送予定
3月25日店頭発売予定
限定600部
小売価格 5460円(本体5200円)
プレオーダー価格 4935円(本体4700円)
シックス・アングルズ第14号の内容紹介ページ
※マップやユニット、チャート類の見本をご覧いただけます。