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2006年12月2日 [戦略級 日露戦争]

先週に引き続き、今日も石田さんと「戦略級 日露戦争」のルール検証の
プレイテストを行いました。二人とも、だいぶ経験を積んだせいかプレイの
進展はかなりスムーズになり、だいたい4ターンで1時間というペースで
プレイできました(活性化の成否で1ターンの時間が変わるので、均等に
1ターン=15分というわけではありません)。ゲーム全体のターン数は、
1904年2月から1905年12月までの23ターンですが、たいていは14ターン
か20ターンの勝敗判定でゲームの決着がつく(講和成立)ので、慣れれ
ば4~5時間でキャンペーンをプレイできる計算になります。


旅順港を海上封鎖中の日本軍第1艦隊(東郷提督)。

今回のプレイでは、日本軍は1904年のうちに乃木将軍の第3軍を、ウラジ
オストクに近いロシア領に上陸させて、同港から伸びるシベリア鉄道を脅
かしつつ、リネヴィッチの第1満洲軍に所属する3個ないし4個東シベリア
狙撃兵師団を遼東半島の主戦場から引き離すという戦略を事前に立てて
いました。ところが、黒木将軍の第1軍が、序盤のターンで繰り返し(計3
ターン)活性化に失敗してしまったせいで、東支鉄道方面への進出が予
定より遅れたため、日本軍は戦略の見直しを迫られることになりました。

本ゲームの日本軍は、第5ターン以降の3ターンごとに、1個の新しい都市
を占領することを課せられており、それが達成できないと即座にゲームが
終了します。史実通りの順番だと、第5ターン=1904年6月末までに仁川、
第8ターン=1904年9月末までに遼陽、第11ターン=1904年12月末まで
に旅順、第14ターン=1905年3月末までに奉天を占領という展開になりま
すが、第8ターン終了時までに遼陽を占領せよとの厳命を受けた黒木は、
遼陽正面のロシア軍部隊に対して(包囲攻撃ではなく)正面攻撃を繰り
返し(1回の戦闘フェイズは3回のサブフェイズで構成されており、活性化
している攻撃側ユニットは敵と隣接し続けている限り、1フェイズに3回の
攻撃を実施できる)、第7ターンの遼陽占領という目標達成と引き換えに、
4個歩兵師団が減少戦力となる大損害を被ってしまいました。


1904年8月、多大な出血により遼陽を占領した日本軍の黒木第1軍。

続く3ターンで旅順または奉天を占領しないといけない日本軍は、旅順港
の攻略を後回しにして奉天方面に主力を送り、第8ターンから第11ターン
にかけて奉天に総攻撃を実施、これを占領することに成功しました。しかし、
この奉天会戦でも日本軍の損害は甚大(確率的には戦力比に関わらず
6分の1でしか出ないはずの「2/2(双方2ステップロス)」という結果が、
今回の対戦では異様に多く出た)で、相次ぐ歩兵部隊の戦力低下を補う
ため、大湊港で待機していた乃木将軍にはウスリー方面への上陸作戦
の中止が伝えられ、第3軍の兵力は鹿児島経由で大連へと送られること
となりました(ただし指揮統率値2の乃木将軍は、鹿児島で下船して待機
を命ぜられる)。


奉天を攻める黒木軍。しかし激戦を続ける各師団の戦力は既にボロボロ。


第10ターン終了時点で本土に残る兵力。これが全て。


1904年12月、奉天入城を果たした黒木第1軍。だが、ロシア軍の兵力は
鉄道で続々と到着し続けており、行く手には暗雲がたち込める。

その後、日本軍は旅順港への総攻撃を開始しましたが、やはり「1/1」や
「2/2」の結果が連発し、第12ターン(1905年1月)だけで1個歩兵師団と
2個後備歩兵旅団が壊滅する惨事となりました(ちなみに攻撃を命じたの
は奥将軍の第2軍)。しかし、ロシア軍の旅順守備隊は、1回防御を行う
ごとに、備蓄している補給ポイント(鉄道線が通じている間は1ターンに
旅順またはウラジオストクのどちらかに1ポイントずつ蓄積できる)を1ずつ
消費する上、備蓄できる上限も12と決まっているため(開始時には6ポイン
トを保持)、1ターンに3回ずつ日本軍が攻撃を繰り返せば、残存ステップ
が日本側に残っている限り、いずれ旅順要塞の補給ポイントが底を尽き、
一挙に防備が瓦解することになります。このあたりの「出血覚悟の波状
攻撃」は、史実の二〇三高地の戦いを彷彿とさせ、なかなかリアル(それ
ゆえに悲壮)です。

第13ターン開始時における旅順要塞の備蓄補給ポイントは3しかなく、
このままでは旅順艦隊が戦わずして失われると危惧したロシア軍は、
遂にマカロフ提督率いる旅順艦隊を出撃させ、旅順港の海上封鎖を続け
る東郷提督の連合艦隊に決戦を挑みました(それまでは決戦を避けて
要塞港に籠もっていた)。その結果、ロシア海軍の旗艦ツェサレヴィチほか
戦艦4隻が大破、対する日本海軍は無傷で、これにより旅順艦隊の運命
は事実上決しました。第13ターン(1905年2月)、大連から上陸した川村
将軍の第5軍(史実の鴨緑江軍)部隊によって、旅順要塞は陥落し、旅順
港に閉じこめられたロシア艦隊は次々と自沈して姿を消しました(旅順攻
略の功労者である奥将軍は、肝心なところで活性化に失敗したため、
輝かしい戦功を川村将軍に横取りされる結果となりました)。


1905年2月、遂に旅順陥落。明け渡された要塞には旭日旗が翻る。

しかし、旅順要塞の陥落は、期せずしてロシア満洲軍将兵の士気を大きく
鼓舞する効果をもたらし、それまでのターンでは半分以下の確率でしか
活性化していなかったロシア軍部隊は、第14ターン(1905年3月)にはほと
んどが活性化に成功し、奉天を守る黒木の第1軍に襲いかかりました。
既に弱体化したまま、大連からの援軍の到着を待っていた黒木軍は、
怒濤のようなロシア軍の猛攻によって壊滅し、黒木将軍は戦死させられ
て、奉天はロシア軍の手に奪い返されてしまいました。


1905年3月、ロシア軍の大反攻で奉天が奪回され、黒木将軍は戦死。

この結果、第14ターン終了時に日本軍が占領している都市数は必要数に
1個足りない3個となり、ゲームはロシア軍の辛勝で終了となりました。
今回もまた、日本軍が敗れる結果となりましたが、どうやっても勝てないと
いう徒労感を感じることはなく、研究を重ねてうまくやれば日本軍が勝つ
ことも充分可能という感触を新たにしました。また、プレイを繰り返すにつれ
て、デザイナーのフランク・デイヴィスが私の考えていた以上に、日露戦争
というテーマを深く理解しているらしいことが見えてきました(デイヴィス様、
すいません)。一見すると「リサーチミスか?」と思われるマップの地形
(奉天=遼陽間の鉄道線の延び方や、安東=遼陽間の道路の引き方
など)も、何度もプレイすると指揮範囲や補給範囲を考慮した上での意図
的な処理であることがわかってきました。

ロシア軍(クロパトキン)は、軍事戦略的には序盤は遅滞戦術をとりつつ
増援兵力の到着を待ち、それらが充分に集まったところで広範囲からの
包囲攻撃を仕掛けるというのが最善ですが、都市を失ってばかりいると
日本軍がどんどん有利になるため、都市を守るか、それとも北へ撤退する
かというジレンマに繰り返し悩まされることになります。本ゲームの補給
ルールは、補給切れ即全滅という非常に厳しいものなので、包囲の危険
が生じれば、ユニットを後ろに退かさざるを得なくなります(戦闘前退却と
いうルールがあるので、指揮系統さえ整っていれば、包囲から逃げられ
る可能性も高い)。

次回は、いよいよ本誌のリプレイ記事用の対戦となります。今度こそ、
北の熊を退治すべく、戦略計画案を練り直したいと思います。


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乃木

なかなか「らしい」展開ですね~。ゲーム内での旅順の位置付けなどもよくわかりました。活性化のサイコロが悪くて黒木が動かなかったとのことですが、極端な話、サイコロで悪い目が出つづけたとしたら、それだけで勝敗がきまったりするのでしょうか? 全体としては非常に興味深い内容に見えますが、いかんせん原版が古いようなので、そのあたりが多少、心配ではあります・・・。
by 乃木 (2006-12-03 15:06) 

StrategyI

こんにちは。戦略級日露、発売を楽しみにしてます。

戦略級ということで、もっとアブストラクトな感じかと想像してましたが、けっこう師団や旅団で戦線つくったりできるんですね。砲兵とかの兵科ごとのルールもあるのかな?あと大連のやけに高いスタックの中身はなんでしょうか?気になります(笑)
by StrategyI (2006-12-03 23:20) 

Mas-Yamazaki

乃木様: コメントありがとうございます。ご指摘のとおり、このゲーム「Red Sun Rising」の原版ルールにおける最大の問題点は、活性化のサイの目が極端に悪かった場合の救済措置を全く用意していないということだと思います。第1ターンだけは、特別ルールにより日本軍は全て活性化した状態にありますが、第2ターン以降の活性化チェックで黒木が「6」の目を出し続けたなら、日本軍は全く鴨緑江より北に行くことなく、ゲームに敗北することとなります。また、活性化できなかったユニットは全く移動できないというルールも、日露双方でかなり非現実的な状況を招くことがあり、この点についても何らかの救済措置が必要だと考えています。

石田さんとテストしながら考案した「日本版改訂ルール」の1つは、司令部が活性化の試みで失敗するごとに「-1」マーカーを置いて、次回の試みではサイコロからその数値を引けるというものです。2回続けて失敗すると「-2」のマーカーが置かれるので、士気統率値「4」の黒木は3回目の試みでは必ず成功します。一方、ロシア軍は最大でも士気統率値「3」ですが、マーカーの修正は「-2」が上限なので、最悪の場合は6が出続けて活性化できないということも起こりえますが、戦略的に見ればロシア軍が防御側であり、防御には活性化は必要ないので、これが原因でゲームが崩壊することはないと思います。

あと、瀬戸さんと考案中の「日本版改訂ルール」として、限定移動と「野戦指揮官」のルール(およびオプション・ユニット)があります。限定移動とは、活性化していないユニットでも、移動力の3分の1(歩兵は1、騎兵は2)で、敵ZOCに入らない条件で移動を行えるというものです。一方、野戦指揮官とは、日本軍は秋山好古と梅沢、ロシア軍はコンドラチェンコとミシチェンコの4人を特定のユニット(秋山とミシチェンコは騎兵、梅沢とコンドラチェンコは歩兵)に貼り付ける形でスタックさせ、活性化チェックのサイの目を修正できるようにします。

いずれにせよ、原版の抱える問題点を解消するための日本版改訂ルールは、これまでの「レトロスペクティブ」シリーズと同様、いろいろと用意していますので、そのあたりの「実績」も加味してご判断いただければと思います。
by Mas-Yamazaki (2006-12-05 19:59) 

Mas-Yamazaki

StrategyI 様: コメントありがとうございます。確かに、戦略級ゲームと聞くと、フルマップ1枚でヨーロッパ全体が入っているゲームのように、縮尺の大きなヘクスがドン、ドンとあるイメージがありますが、この「戦略級 日露戦争」の作戦地図は1へクス=23キロというスケール(「マザーランド」は1へクス=35キロ)なので、作戦そのものはそれほど抽象化されているわけではありません(比べる対象がエポック社の「日露戦争」しかないというのが寂しいところですが)。

砲兵は、日本軍のみに与えられており、通常の砲兵は歩兵同様の使用法ですが、攻城砲は活性化や補給の面で有利な特典が与えられているので、旅順や奉天などの重要地点への総攻撃では多大な威力を発揮します。ちなみに、大連の高層ビルの中身は、日本軍の限定補給源(商船隊ユニットの裏面)マーカーで、冬の間は港でしか荷揚げできないため、旅順港を使えるようになるまでは、大連港は日本の船舶で大混雑の様相を呈することになります。
by Mas-Yamazaki (2006-12-05 20:11) 

sin

序盤に大混雑になるなら、大連のユニットはボックスに置けるようにした方がプレイしやすそうですね。
by sin (2006-12-11 18:19) 

Mas-Yamazaki

sin様: コメントありがとうございます。なるほど、大連ボックスと旅順ボックスというのは良いアイデアですね。さっそく検討してみます。ご提案ありがとうございました。
by Mas-Yamazaki (2006-12-11 19:42) 

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