2010年12月3日

約半年間にわたって執筆を続けてきました、独ソ戦（バルバロッサ作戦）のハードカバー単行本の原稿を、本日未明に脱稿しました。タイトルは未定ですが、発売は来年2月の予定です。

今回の単行本のテーマ等については、以前の記事で一度書いたことがあるのでリンク先を参照していただければと思います。独ソ戦を題材にした原稿は、文庫本 『完全分析 独ソ戦史』 と、歴史群像アーカイブの 『独ソ戦』 に収録されている記事群で過去に書いた経験があり、また同じ出版社（学研さん）からは過去にパウル・カレル著 『バルバロッサ作戦』 と、デヴィッド・グランツ／ジョナサン・ハウス 『詳解 独ソ戦全史』 という二冊の名著が刊行されているので、これらと類似テーマを扱いつつ、なおかつこれらを既に読まれた方にも「買う価値がある新しい本」と認めていただけるものを書く、というのが、今回のゴールでした。

果たしてその挑戦が成功したか否かは、来年2月に本が出た時点で、読者の皆さんに判断していただければと思いますが、著者としては「会心の自信作」に仕上げることができたのではないか、と思っているところです。原稿の枚数は、本文だけで800枚。以前の文庫 『西部戦線全史』 は750枚前後だったと記憶していますので、それより少し多いくらいになります。ただ、文量が多くて「詳しい」というだけでなく、独ソ戦の行方を左右した重要な要素について、過去に書いたものをいったん棚上げした上で、一から調べ直して出典を明記しながら分析・整理するという手法をとっており、独ソ戦史の理解に新しい視角をいくつも提供できる本になったのではないか、と思います。

今月の残りは、同書の校正作業と、付録として収録する戦況地図50点の制作に取り掛かりますが、今日だけは仕事をお休みして、妻と呑みに行ってきます。



ブジョンヌイ元帥の歌。1941年11月7日に赤の広場で挙行された有名な軍事パレードの閲兵は、この人が行いましたが、なぜブジョンヌイだったのか？　という話も書いています。馬の品種名として後世に名を残した人物ですが、キエフ包囲戦直前の、南西総軍司令官時代のスタフカ宛の苦言の報告などを見ると、意外と（失礼）理性的かつ筋が通っていたりもします。


《参考》　今年6月15日の記事

コメント 4

「計画暗号名は未定。発売は来年2月の予定。本作戦が開始されれば世界は息を呑む事であろう。」
今宵は、グラス一杯のウィスキーと缶入りのパイナップルで祝杯でしょうか？
ひとまずは、無事 脱稿 おめでとうございます。おつかれさまでした。発売を楽しみにしています。
by 雑木林 (2010-12-03 23:17) 

執筆お疲れ様でした。発売日を楽しみにしています。

今回の本では、例の「対ソ予防戦争説」は、どんな扱いになっているのでしょうか？最近は欧米の文献でもほとんど取り上げなくなってるみたいですが。
by 古参兵 (2010-12-04 21:50) 

雑木林さま：　コメントありがとうございます。「ウィスキーと缶入りのパイナップルで祝杯」は、前の『ロンメル戦記』の時にやりましたので、今回はオーソドックスに生ビールとお寿司でした。

私の場合、少しでも酔うと文章や論理が思ったようにスムーズに流れず、良い記事が書けなくなるので、執筆の仕事をやる時はアルコールを遠ざける日々が続きますが、全部終わって久しぶりに生ビールをゴクゴクと喉に流し込む爽快感は格別でした。ちなみに、グラフィックの仕事は酒が入っていてもできるため、今月はそんな気苦労とは無縁です（笑）。
by Mas-Yamazaki (2010-12-10 20:35) 

古参兵さま：　コメントありがとうございます。いわゆる「対ソ予防戦争説」または「ソ連先制攻撃準備説」については、私が調査した限りでは当時のソ連赤軍の内情や指導部における諸々の事実関係と全く合致しないという理由から、本文中では一切とりあげず、あとがきで軽く説明するだけに留めました。

文庫の『完全分析 独ソ戦史』を読まれていない読者もおられるかと思い、今回の本でも一応の背景説明だけは行いましたが、この問題の論点は「真珠湾奇襲陰謀説」と同様、提唱者の政治思想が前面に出てしまっていて、どちらかといえば「戦史研究」ではなく「政治・イデオロギー論争」の文脈に属するように思われます。なので、戦史研究の側面でより信憑性を強化する材料（スターリンが実際にこの「計画草案」を読み、検討した証拠となる文書など）が出てくるまでは、あまり深く関わらないようにするつもりです。
by Mas-Yamazaki (2010-12-10 22:59)