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2007年7月9日 [その他(テレビ番組紹介)]

今日は、音楽関係の話を少し。

7月6日の夜、NHKでイエロー・マジック・オーケストラ(YMO)の特番を放送していて、懐かしい思いで観ていました。私が12歳(小6)の時、というと今から28年も前になりますが、親にねだって初めて買ってもらったLPレコードが、YMOの「ソリッド・ステイト・サバイバー」でした。中学に進学すると、同じようにYMOにハマっていた親友2人と一緒に、心斎橋のソニータワー2階にあったビデオシアターへYMOのワールドツアーのビデオ(赤い人民服を着てプレイしていた1979年のライブ)を観に行ったり、クラフトワークの初来日コンサートに行って会場に隣接するホテルのロビーで「出待ち」し、首尾よく(クラフトワークの)メンバーにサインと握手をしてもらったりした記憶が、頭の奥で次々と蘇ってきました。

私が音楽やデザインなどに興味を持つきっかけとなったのがYMOであり、現役当時についてのインタビューは非常に興味深いものでしたが、そこで長年にわたって私の中で「謎」だったある問題についての疑問が氷解し、妙な感慨を覚えました。「謎」というのは、いわゆるYMOブームが全盛期を迎えて以降、メンバーがなぜかファンの期待を裏切るような行動(カッコイイ存在であって欲しかったのに、くだらないテレビ番組に出演して低劣なコントをやったり、わざわざ武道館で客を怒らせるようなイベントをやったり)を繰り返し、音楽もどんどん「わかりにくくなっていった」のはなぜか、というものでした。NHKのインタビューで3人が語っていた話を総合すると、YMOの知名度が高まってビジネスとしての価値が出てきたことで、自分たちのやりたり方向とは無関係にビジネス上の要求から「やりたくないこと」をやらされるようになって、気持ちが荒んでいったということでした。数年前に行われた「YMO再結成」も、本人たちは「イヤでイヤでしょうがなかった」らしいですが、それは当時の曲を演奏したくないからではなく、会ったこともない人がプロジェクトの主導権を握って、メンバーの意向とは無関係に話がどんどん大きくなったりするのが耐えられなかったそうです。

歴史をひもといてみると、民衆レベルでの人気が予想外に高まったせいで、本人の意向とは無関係に「偶像(アイドル)」へと祭り上げられ、やりたくない役割を演じる人生を送る羽目になった人間を何人も見つけることができます。最近見たNHK-BSの番組で紹介されていた「革命の英雄」チェ・ゲバラなどもその一人だと思います。当時、子供だった私には、ビジネス上の要求から「やりたくないこと」をやらされるという図式は想像もできませんでしたが、社会でいろいろ揉まれた今となっては、当時の彼らの心情を思い描いてみることができます。幸い、私は基本的に「やりたい仕事」ができる環境にいるので、彼らが感じた本当の精神的苦痛を理解できるとは言えませんが、それでも一見良いことずくめに見える「人気」や「ブーム」にも、ネガティブな側面が少なからず存在することを改めて認識しました。

YMOを解散した後、彼らは「ヒューマン・オーディオ・スポンジ(HAS)」という名義で何度か活動を行っており、ライブではYMO時代の曲も演奏しているようですが、このHASのライブや、おとといの「ライブ・アース」での演奏(京都の東寺で行われたYMO名義での出演)を聞くと、音の重ね方が非常にすっきりしていて、曲が持つ本来の魅力がよく出ていたように感じられました。後期から末期のYMOに感じられた「荒んだ印象」が全くなく、心底から楽しんでプレイしているのがよく伝わってきました。ただ、これで人気が復活すると、また「会ったこともない人」が金もうけのために近付いてきて、昔と同じような流れになる可能性もあり、彼らの活躍を願う気持ちと「そっとしておいてあげたい」と思う気持ちが入り混じって妙な心境になります。実際、ふと思いついてYMO関連のページを検索してみると、こんな「公式サイト」の声明に出くわしました。

http://www.ymo.org/

「ごめんなさい」とファンに謝罪する彼らの真摯な態度に、私は深い感銘を受けました。彼らが言う「意図しない商品」とは、レコード各社が競って発売している、同じ曲のアレンジを少し変えただけの「リミックス・バージョン」や過去の音源から曲順などを入れ替えただけの「ライブ・ベスト盤」などを指すと思われますが、我々のようなYMO世代にとっては、金儲けが目的だとわかっていてもやはり気になるものです。「それを目にして、ぼくたちは心を痛めています」「しかし契約上、どうにもならない場合もあります」 この文面を、関係する音楽業界の人々はどんな思いで見ているのでしょうか。どんな分野でもそうでしょうが、「人気」や「ブーム」は諸刃の剣であり、やはり安易に喜ぶべきものではないようです。


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コメント 4

sin

かつてYMOがアイドル宣言をして「君に胸キュン」を発表したときは、私の周りの熱心なファンが「YMOはもう終わった」とえらく憤慨していたことを思い出します。
坂本龍一さんは、坂本さん個人の作品も本人の許可無く(!)ベスト盤を色々出されて困ると嘆いていましたが、どうしようもないのでしょうね。
by sin (2007-07-10 20:59) 

Mas-Yamazaki

sinさま: コメントありがとうございます。

>>かつてYMOがアイドル宣言をして「君に胸キュン」を発表したときは、私の周りの熱心なファンが「YMOはもう終わった」とえらく憤慨していたことを思い出します。

実は私もその一人でした(笑)。今となっては彼らの「余裕」や「遊び」を笑うこともできますが、当時は本気で怒っていましたから。音楽関係の契約は、最近はDLなども関連してより一層ややこしくなっているようですね。それに比べると、文章関係の契約はかなり単純です。
by Mas-Yamazaki (2007-07-11 14:48) 

VP

>どんな分野でもそうでしょうが、「人気」や「ブーム」は諸刃の剣であり、や
>はり安易に喜ぶべきものではないようです。

かつてのウォーゲーム・ブームを思い出しました。ウォーゲーム・ブームについては私はどちらかというと肯定派ですが、それでも色々と問題点があったように思います。その辺を自分なりに整理し切れていないのはちょっとなんですが。
by VP (2007-07-11 21:45) 

Mas-Yamazaki

VPさま: コメントありがとうございます。かつての「ウォーゲーム・ブーム」については、私もいろいろと書きたいことがあるので、もしかしたら近いうちに、このブログで私論を披露することになるかもしれません。私は決して「ブーム全否定派」ではありませんが、少なくとも「戦略的センスを習得できる」という謳い文句で登場したウォーゲームが、「戦略」とは対極に位置する(と私には思われる)ブームとなってしまった皮肉について、というのがテーマです。考えをまとめるには、もう少し時間がかかるかもしれませんが、じっくり考えていきたいテーマではあります。
by Mas-Yamazaki (2007-07-16 23:11) 

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