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2007年7月4日 [激闘ノルマンディ]

6月30日に公開した「激闘ノルマンディ(コブラ)」のユニットデザインについて、たくさんのコメントをいただきました。個別に回答すると内容がだぶる可能性もあるので、こちらで返答および説明をさせていただくことにします。

まず、ユニットを上下で色分けしている理由についてですが、プレイ中に最も頻繁に確認する戦闘力と移動力の数値を見やすいように、わざとその部分だけ色を薄くしているというのが一番大きな理由です。文字が黒だと、地色を薄めにした方が可読性は向上しますが、ヘクスの配置番号などは白抜き、スタック価は薄黄色という風に明るめの色も使い分けているので、全部を薄くするとその部分の可読性が低下します。それで、こんな風に下部分だけを少しだけ明るくするという方法をとったわけです。また、上下で色分けした方が、複雑な地形のマップ上では存在を確認しやすいというのも理由の1つです。

境界をグラデーションにしているのは、色分けによるコントラストをなるべく減らして「目にやさしい」境界にしようという意図によるものです。私は、かつてのコマンド時代の反省(後述)から、ユニットとマップのグラフィックは「プレイヤーの思考の妨げにならぬよう、アートワーカーの自己主張を控え、代わりに『ゲーム』の主張を前面に出す」という方針でグラフィック作業を行っており、私自身がプレイテストなどで目にしている経験から、パキッとした境界の明確な色分けよりは、グラデーションの方が「違和感が少ないだろう」と判断しました(このあたりは主観なので、同意されない方もおられると思いますが)。この方式を最初に使ったのは「砂漠のキツネ」のユニットでしたが、プレイヤーからの反応は上々で、特に違和感があるとの声も聞かれませんでした。

今から10年ほど前に、コマンド日本版誌の仕事をしていた頃、鹿内靖氏から面と向かって私のアートワークを酷評されたことがありました。当時、私はコンピュータというものに手を触れたばかりで、グラフィックソフトが魔法のように生み出す特殊効果に感動して舞い上がってしまい、あんなこともできる、こんなことも簡単に表現できるという風に、自分の楽しみを満たす方向に走ってしまっていました。しかし、本来ゲームのアートワークというものはアートワーカーの自己表現の場ではなく、プレイヤーのために奉仕するものだと鹿内氏から教えられ、プレイヤーへの配慮より自分の「やりたいこと」を優先してマップをデザインしたこと(「バルカン1941」や「ガダルカナルの戦い」「ビスマルク」など)を反省し、同誌で最後の仕事となった「イスラエル独立の戦い」のマップでは、図表類の見易さにも充分に配慮して、プレイヤーの利便性を優先した控えめなデザインのマップに仕上げました。

それ以降、「ゲームそのものが持つ魅力や特徴をプレイヤーに伝えられるアートワーク」を目指して、少しずつ自分なりの方法論を確立してきましたが、今回のデザインでも「プレイした時の利便性と雰囲気」を重視して、実際に地図上に並べて30センチから50センチくらい離れた距離から見た時の「見え方」に注意して、配色や文字の大きさなどを決定しました。兵科マークを中央ではなく、左に配置するという方法は、個別の情報の読みやすさを優先した配置で、もし中央に置くとするなら、部隊名と所属を兵科マークの両脇に配置することになり、桁数が大きくなると文字を圧縮するか、または横置きにせねばならなくなります。ユニット1個の見栄えという点では、中央に置くのが自然ではありますが、数値を圧縮したり横置きにしたりすると「読みやすさ」の点で劣る(これも私の主観なので、賛同されない方もおられると思います)ので、どちらを優先するかを考慮した結果、実用性(情報の読み取りやすさ)を重視した現在の配置法を使っています。

ユニットのツヤ消しについては、「激闘ノルマンディ」ではシックス・アングルズ第8号付録の「ゼーロフ&キュストリン」と同様のツヤ消しコーティングにする予定です(前の「ウォーゲーム・ミーティング」で同様の意見をうかがった時、そうしようと決めていました)。ただ、表面コーティングは駒の磨耗を防ぐための処理で、SPI社のオリジナル版のような「完全ツヤ消し」とは少し違った印象になりますが(SPI社のコマは表面の粗い厚紙を使っており、あれを正確に再現するのはかなり困難です)。マップとユニットのグラフィックについては、時たま「SPI版と全く同じにして欲しい」という声も耳にしますが(私もサイモンセン氏の仕事は嫌いではありません)、今回出る新版を購入して下さる人の大多数は、SPI版を持っていないか、または見たこともないと思われるので、オリジナルの良い部分も悪い部分も無条件に「復刻」するよりは、先に述べたように「ゲームそのものが持つ魅力や特徴をプレイヤーに伝えられるアートワーク」を目指す方が、初めてプレイされる方にとっては良いのではないかと思われます。なので、オリジナル版の良い部分は残しつつ、そうでないと思われる部分は私の判断で「プレイした時の利便性と雰囲気」を最大限に高められるグラフィックに変更しています。

タイガーIの戦車シルエット版とヴィットマンのおまけユニットは、駒数の枠に余裕があるので、実現できると思います。もし、他にも提案やご要望があれば、ぜひお知らせください(特に、SPI版やTSR版をプレイされた経験のある方からのアドバイスは歓迎します)。


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コメント 6

black9

一応趣味的な希望として、
(1)パットン将軍の顔のユニットが欲しい。
(2)航空支援ユニットは、マスタングかB-26のシルエットで入れてほしい。
(3)絨毯爆撃のマーカーは、B-24かマンチェスターで。
(4)そのターンの天候によるドイツの移動力表示をどこかマップ上にマーカーで再現できる欄が欲しい。
勝手なお願いですが。
by black9 (2007-07-05 02:19) 

コメダ

「実際に地図上に並べて30センチから50センチくらい離れた距離から見た時の見え方」は非常に大事なことだと思います。まだ切り離していないユニットシートを間近で眺めている時には「精密なイラスト満載でよくできたユニットだな」と思っても、地図に並べると数値が読みにくくて「イラストなんかいらんわい」と思ったことが過去に何度もありましたから。
by コメダ (2007-07-05 10:30) 

Mas-Yamazaki

black9さま: コメントありがとうございます。列記していただいた項目は、全て採用させていただきます。また何か良いアイデアがありましたら、ぜひご教示ください。
by Mas-Yamazaki (2007-07-09 19:56) 

Mas-Yamazaki

コメダさま: コメントありがとうございます。私も過去には、モニタ上だけでグラフィック作業を行っていた時期がありましたが、現在は最終データとなるマップとユニットのプリントアウトで「検証プレイ」を行ってから発売しています。ユニットの情報やチャートの使い勝手なども、自分やテスト担当者(石田さんなど)のプレイ経験に基づいて修正していますが、モニタ上では良いと思ったものが、実際のプレイ時の距離だと良く見えなかったりすることも多々あり、やはり原寸での出力を参考にした「プレイ中の見え方」の確認は大事だと実感しました。今後も「プレイヤーに奉仕するグラフィック」という現在の方針を堅持して、より良いデザインを追求したいと思います。
by Mas-Yamazaki (2007-07-09 20:05) 

pauke

SPI版を持っていますが、司令部ユニットと戦闘ユニットが同じカラーリングで見分けにくいです。
司令部ユニットの指揮範囲に戦闘ユニットを置いておくことが重要なので、その位置が把握しやすいよう改善して下さい。お願いします。
by pauke (2007-07-10 22:44) 

Mas-Yamazaki

paukeさま: コメントありがとうございます。「モスクワ攻防戦」では、まさにご指摘のような理由でドイツ軍補給ユニットの地色を、他の戦闘ユニットより濃くしてあります。司令部の色を目立たせるというのは、非常に的確な提案だと思いますので、「激闘ノルマンディ(コブラ)」と「モスクワ攻防戦」の両方で採用させていただきます。また良いアイデアがあれば、ご教示ください。ありがとうございました。
by Mas-Yamazaki (2007-07-11 14:50) 

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