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2008年5月11日 [モスクワ攻防戦]

シックス・アングルズ第11号「モスクワ攻防戦」の制作作業は、一歩ずつゴールに向かって進んでいますが、以前に告知しましたいくつかのオリジナル・ゲーム(の企画案)については、完成の目途がいまだ立っていない状況です。今日は、その辺りの話題で少し書きたいと思います。

モスクワ01.JPG

本ブログで「モスクワ攻防戦」というカテゴリーを立ち上げたのは、2005年12月のことでした。このゲームの漠然としたアイデアとゲームマップは、既に10年くらい前には出来ていましたが(コマンド日本版第19号の7ページに開発予定の1つとしてゲームタイトルが出ています)、本格的にゲーム開発の作業(システムデザインとルール構築、およびディヴェロップ作業)に着手したのは、今から2年と5ヶ月前になります。

この事実からだけでも、ある程度は察していただけるかと思いますが、少なくとも現在の私に関する限り、オリジナル・ゲームの制作は膨大な時間を要する作業であり、「モスクワ攻防戦」の完成後に次の新作の開発作業に着手したとしても、完成はおそらく今回と同様、2010年か11年頃になるものと思われます。

世の中には、もっと早い期間で新作を完成させるデザイナーもおられますが、現在の私はゲームのプレイテストをごく少数の知人に依頼して小規模なチームで進めていることもあり、開発ペースを上げることができずにいます。以前は、開発期間のペースアップと、より幅広い意見の募集という二つの目的を持って、面識の無い(外部の)方にもプレイテストを依頼するという方策を試みたこともありました。しかし、私が予想もしなかった問題がいくつか発生して、開発作業に混乱が生じる結果となってしまったため、現在は「幅広い意見を募る」という部分をある程度犠牲にして、私と面識のある、能力的にも人間的にも信頼できる少数の友人にのみお願いする方針をとっています。

この基本方針に加えて、原稿執筆の仕事が(幸いにも)増え続けているために、ゲーム関係の作業に割ける時間が次第に減少していることも、開発のペースダウンを招いている原因の一つです。ブログのコメント欄やメールで、次回作に期待していますというゲーマーの皆さんからのご意見を目にするたびに、シックス・アングルズ製品を毎回購入して下さっている方のためにも、良い製品を安定して出版する態勢を作らねばと思うのですが、これまで何度も書いてきましたように「時間が無いことを言い訳に、粗製濫造をするようなことは絶対にしない」というポリシーだけは曲げずに事業を進めたいと考えているので、どうしてもゲームや本誌の制作に事前の想定よりも多くの日数を費やし、その結果として予告よりも発売が遅れるという展開が続いてしまっています。

本ブログの2007年10月27日の記事で「ゲーム出版事業を一時停止します」と発表した時には、第11号を出した後はしばらく(出すに値するライセンス品が見つかるか、私の新作が完成するまで)シックス・アングルズの仕事はお休みするつもりでいました。しかし、何人かの方から「私が過去にデザインして海外で出版されたゲームは、日本では入手難なので、それを小部数でも日本版で出してみてはどうか」とアドバイスされ、海外向けにデザインした旧作を改めて見直した上で、現在の水準でデザイナーとして仕上がりに納得できる「ドイツ中央軍集団」と「ツィタデレ作戦」の2作を、シックス・アングルズ本誌の第12号と第13号として出版することにしました。現在、第11号に続くシックス・アングルズ製品として発売の目途が(頭の中で)立っているのは、この2つだけで、前者は初版のままでルールには一切手を加えずに出版、後者は初版のマップに一部のみ修正(ヘクス列を90度変更)を加えた上、初期配置と増援登場ターンを相手側から秘匿する競技用シナリオを新たに追加する予定です(両ゲーム共、地図と駒のグラフィックやコンポーネントはもちろん一新します)。この2つのゲームに関しては、需要がどのくらいあるのか不明な部分もあるので、発行部数を800部にするか600部にするか、まだ検討中ですが、これはプレオーダーの動きを見て最終的な決定を下す予定です。

神々の黄昏」第二版については、基本システムにもっと大幅な変更を加えるため、新たなシステムが想定した通りに機能するか、そして両プレイヤーが楽しくプレイできる内容になっているかを確認するためのプレイテストを入念に行う必要があります。また、東部戦線の作戦級クォードリ・ゲームについては、いまだ地図も出来ておらず(扱う範囲は頭の中に描いていますが)、こちらもシステムとバランスの確認のために、少なくとも1年以上のテストが必要になると考えられます。「フランス1940」はフルマップ1枚の大径ヘクスで地図のラフを作り、ユニットの規模やシナリオの構成案なども大体決まっていますが、本格的なシステムの構築作業はまだこれからです。これ以外の企画案、例えばフルマップ2枚のクルスク戦キャンペーンや、クルスク南部の作戦戦術級ゲーム、ソフィン戦争のマンネルハイム戦突破の作戦級、師団規模の広域バルジ戦ゲームなどは、構想段階で壁に直面したために、今は頭の中で「寝かせてある」状態です。

海外のメーカーの開発計画を見ると、2年後、3年後までゲームのタイトルが挙げられることも珍しくはないので、恐らく本気で良い新作を作ろうと思うと、そのくらいの長いスパンで開発計画を立てる必要があるのではないかと思います。とりあえず、年内は「モスクワ攻防戦」と「ドイツ中央軍集団」、2009年は「ツィタデレ作戦(改訂版)」とレトロスペクティブの第7弾(まだ検討段階で、復刻に値すると確信できれば出版します)、2010年に「ベルリン陥落(神々の黄昏第二版)」とレトロスペクティブの第8弾(これも未定)、2011年に東部戦線クォードリのパート1(1941~42年セット)、という大まかな目標を立てて、なるべく効率的に開発作業を進めていきたいと思いますので、もうしばらくシックス・アングルズの出版事業を見守っていただけると幸いです。よろしくお願いいたします。

モスクワ02.JPG
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中国地方の田舎者

製作作業、お疲れ様です。
今後のゲームにも期待しております。納得がいくまで時間をかけてください。楽しみに待たせていただきます。
他のお仕事との時間的制約や制作費の高騰等でご苦労が絶えないかと思いますが、体調に気をつけて頑張ってください。
地方に確実に購入を希望するものが一人存在することをご記憶の片隅に置いていただければ幸いです。

by 中国地方の田舎者 (2008-05-11 18:03) 

きむ

無理なペースで出版されるよりは山崎様が納得される完成度になってから
出版していただくのが一番だと思います。(焦ってだすことが、送り手受けて双方にとって幸せでないことは以前のブームのときに証明済みですし)
ご自分でゲームを製作、出版される大変さは非経験者には察しかねますが、これからも作品を出版し続けられることを期待いたします。
by きむ (2008-05-11 18:59) 

龍虎

山崎様、いつもシックス・アングルズの最新号楽しみにしております。
以前「FROZEN FRONT」の3部作(でしたっけ?)の話も出ていたかと思いますが 最近、TACTICS誌の付録MAPに自作ユニットでPlayしました。
面白いのですが、3部作そろってこそ各戦域の意味がわかるような気がして期待しております。
生きてる限りこの趣味は止めませんので、お待ちしております。
勝手なことばかり書いて済みませんが頑張って下さい。
by 龍虎 (2008-05-12 02:17) 

古参兵

私も昔某メーカーで新作の開発などに携わった経験がありますが、テストプレイを多人数でやるとしばしば統制がとれなくなって困った記憶があります。我の強い人がテストプレイヤーに2人や3人いれば、意見対立が解消できなくて作業がストップしてしまい、デザイナーはいつも頭を抱えていました。少人数だと意見が偏る危険はあるものの、統制さえきちんととれていればそう悪い結果にはならないはず。結果を焦らず、ぜひ良い製品に仕上げてください。
by 古参兵 (2008-05-12 02:42) 

Mas-Yamazaki

中国地方の田舎者さま、きむさま: コメントありがとうございます。お客さんにいろいろ気を使わせてしまって、恐縮です(笑)。前回の「激闘ノルマンディ」では、ルールの誤訳などで、購入して下さった皆さんにご迷惑をおかけしてしまいましたが、二度とあのようなことを起こさないよう、今回の「モスクワ攻防戦」以降は最終段階でのチェックを二重三重に行うつもりです。そのため、発売日の告知などはもう少し先になりますが、期待してくださっている方々を裏切ることのないよう、ベストを尽くす所存です。今後とも、よろしくお願いいたします。
by Mas-Yamazaki (2008-05-15 22:41) 

Mas-Yamazaki

龍虎さま: コメントありがとうございます。「凍結戦線」の話題は、途切れることがないようで、このゲームに対する皆さんのご要望の多さについては私の認識不足であったかと少し反省しております。

オリジナル版の出来が決して悪くないことは、私も充分承知しているつもりですが、デミヤンスク包囲戦という知名度の低いテーマであること、展開のパターン(というより第1ターンと第2ターンのソ連軍の行動パターン)がほぼ確定していると思われるために、果たして単独製品として販売できるかという点に懸念がありました。ただし、オリジナル版の北と南にマップを追加して3部作にするというアイデアは、現在頭の中で発酵状態になっていますが、いつか具現化に向けて動き出す可能性もありますので、もう少し時間をいただければ幸いです。
by Mas-Yamazaki (2008-05-15 22:49) 

Mas-Yamazaki

古参兵さま: コメントありがとうございます。プレイテストの進め方については、おそらく普遍的な「正解」はないと思いますし、方法論そのものではなく「それによって仕上げられたゲームの内容や完成度」が重要だと思いますので、お言葉の通りに「焦らず」、試行錯誤を繰り返しながら、今後も最善の方策を模索していきたいと思います。
by Mas-Yamazaki (2008-05-15 22:54) 

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