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2009年9月29日 [その他(戦史研究関係)]

11月発売予定の文庫本『ロンメル戦記』(正式に決まりました)の地図制作も、いよいよ大詰めを迎えていますが、今日はもう一つ、ロンメルさんネタで。

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これは何でしょう?

答えはもちろん、ロンメルさんが帽子につけていた「ゴーグル」と同じタイプの品(さすがに本人が使ったものではありません)です。文庫本の執筆に際して、関係資料をいろいろ収集していた時、たまたま「当時英軍が使っていた同型のオリジナル(1942年製)」をebayで見つけて落札しました。

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上は厚紙製の収納ケース

ご存知の方もおられるかと思いますが、この「ゴーグル」は、実は砂塵除けのいわゆる「ゴーグル」ではなく、毒ガス対策で目を防護するための備品で、英軍の制式名称は「対ガス・アイシールド Mk.III」と呼ばれていました(ロンメルが1941年に分捕って使用していたのは一つ前の「Mk.II」だったとの説もありますが、形状に大した違いはないようです)。敵が毒ガス兵器を使用した場合に、とりあえず「上から下へと降りていく性質のガスから目を護る」ための、応急用の「簡易シールド」として作られたもので、上半分(額の部分)はフエルト製のベルト(ステープルで3箇所留められています)とゴム製のストラップである程度皮膚に密着するものの、下半分は隙間だらけで、防塵の密閉効果はほとんど期待できませんでした。

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アイ・シールドの裏面

また、ゴーグルの大部分を占める透明部分(1セットに6枚付いていて、うち3枚はサングラスのように黒く塗られた遮光バージョン)は、パリッとした硬質ではなく、柔らかいビニール状の材質でできている(経年劣化で波打っていますが)ので、バイクやオープントップの装甲車輌に乗車する際に「風防用のゴーグル」として使用することもおそらく不可能でした(強い風圧を受けると比較的簡単に変形してしまい、眼球を圧迫してしまうため)。実際、北アフリカでロンメルを撮影した膨大な写真の中で、これを「ゴーグル」として使用している(目に装着している)写真は、私が調べた限りにおいては一枚も存在しないようです。

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それでは、なぜロンメルさんはこのゴーグルをいつも将官帽に装着していたのか。といった話(私なりの考察)を、あとがきで少し書いてみましたが、実物は私がイメージしていたよりも、はるかにチャチな代物でした。透明部分は、厚紙製のケースに収納する時には平らですが、左右のストラップを留めてある部分の内側に1つずつホックがあり、そこをパチンとはめることで、顔面(および帽子)にフィットしやすい三次元の形状になります。素材のクオリティは、本来なら使い捨ての備品ということもあり、今で言えば100円均一の商品にも劣るようなレベルです。

rommelgoggle5.JPG


これ以外にも、DAKの戦友会が戦後に開いた集会のポスター(黄色をモチーフしていて、ロンメルの横顔と北アフリカの地図が図案化された、なかなか秀逸なデザインだった)などにも入札しましたが、こちらはドイツ人に競り負けてしまいました。ebayは、古い資料文献を格安で手に入れられるだけでなく、こういった「お宝アイテム」ともしばしば出逢えるので、定期的にチェックするようにしています(DVDはリージョン・コードの制限があるので「基本的には」対象外ですが)。ebayで海外のゲームを入手されている方は多いかと思いますが、ほかのカテゴリーもいろいろと閲覧してみてはいかがでしょうか。「こんなものが!」という珍しい品が、意外な安値で出ていたりしますし、ほとんど「蚤の市」感覚で楽しめます。
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コメント 4

INB

すこし遅いレスですが、 

先日映画でこれを発見しました。

なんとあのトム・クールズ主演の「ワルキューレ」です。

映画自体は賛否両論ですが、それはおいといて、

冒頭に、主役のシュタウフェンベルク(トム・クルーズ)が、北アフリカで戦う第10装甲師団に配属されて、師団長と話すシーンがあるのですが、

その師団長が軍帽にこのグラス(らしきもの)をつけていました。 多分これです。
いやいや細かい設定ですね。
by INB (2009-10-05 16:31) 

Mas-Yamazaki

INBさま: コメントありがとうございます(おひさしぶりです)。映画「ワルキューレ」はまだ観ていないので、そこにこの品が登場していたとは知りませんでした。名張近辺には、一軒も映画館がないので、新作映画はDVDにならないと観ることができませんが、最近はDVD化されるのが早くなったので、近々レンタル屋で探してみます。教えていただき、ありがとうございました。

シュタウフェンベルクが配属された第10装甲師団は、フォン・アルニムの第5装甲軍の所属で、1943年2月のカセリーヌ峠の戦いでは数日間だけですが、ロンメルの指揮下にありました。調べてみると、第10装甲師団長は、1943年1月31日まではヴォルフガング・フィッシャー、2月1日からは男爵フリードリヒ・フォン・ブロイヒという人ですが、あるいはロンメルのイメージとだぶらせて描いていたのかもしれませんね。
by Mas-Yamazaki (2009-10-07 00:20) 

東

ロンメルはゴムを ぶちきって 飾り緒を」つけて 制帽につけていたんですかねぇ?
写真調べると 初期は ゴムごと つけていましたが
後半から ゴムが見えなくなっていました
by 東 (2011-07-26 07:33) 

Mas-Yamazaki

東さま: コメントありがとうございます。前期と後期で装着の仕方が違うというのは、興味深い発見ですね。もともと、記事に書いていますように、非常にチャチなつくりなので、過酷な状況ではゴムがヘタって使い物にならなくなる、というのも十分に考えられます。特に北アフリカの灼熱はゴムに厳しいと思いますし。

残念ながら、ロンメルのアイシールドのゴムに着目した歴史家はまだおられないようなので、当分は謎のまま、ということになりそうです(笑)。
by Mas-Yamazaki (2011-07-29 02:31) 

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