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2010年7月13日 [その他(雑感・私生活など)]

治安の悪さやスタジアム工事の遅れなど、開催を危ぶむ声もあった南アフリカでのサッカー・ワールドカップですが、スーパースターのいない職人集団スペイン(「アルマダ=無敵艦隊」と呼ぶには、少々威圧感が不足気味ですが)の初制覇と共に、無事に幕を閉じました。※ただし、南アフリカから遠く離れたウガンダの首都カンパラで、W杯決勝戦のテレビ観戦客で混雑する飲食店を標的とした、アルカーイダ系の武装組織による爆弾テロが発生して、大勢の犠牲者が出てしまいましたが…。

スペインとオランダの決勝戦は、華麗さとはほど遠い、双方が容赦なく削り合ってイエローカード計15枚(!)という壮絶な「殴り合い」でしたが、職人イニエスタの鮮やかなゴールは、大会の締めくくりにふさわしい光景でした。今大会で、印象に残った選手は何人かいますが(名前の響きのカッコ良さでは、ドイツのバスティアン・シュヴァインシュタイガーがダントツ)、強烈なプロフェッショナリズムを感じさせてくれたプレーヤーを一人だけ挙げるとすれば、私は本田圭佑選手を選びたいと思います。

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画像はFIFAワールドカップ南アフリカ大会公式ページより

二部リーグに落ちたオランダのVVVフェンロを一部へ引き上げる立役者となった後、ロシアの名門CSKA(チェスカ: 陸軍中央スポーツクラブ)モスクワに移籍し、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)で日本人初得点を挙げてチームを牽引したことなど、経歴では目を見張るものがありましたが、大会が始まるまでは、彼が日本代表でどれほど活躍できるのか、正直不安がありました。世界のレベルでそれなりに実績を残した選手というのは、逆に日本国内でプレーしている選手と馴染めない場合も少なくないと思われたからです。

実際、前回のドイツ大会では、「スター選手」中田英寿と他の選手の間に意識の面で大きな溝ができてしまい、日本代表はチームとしての一体感を形成できないまま、1勝もできずに尻尾を巻いて帰国する憂き目に遭いました。何か月か前のテレビ番組で、元日本代表の小倉隆史が彼にインタビューしている光景を見ました(両腕に腕時計を嵌めている理由を小倉に聞かれて「ボディバランスです」と答えた本田選手、「そうか、ボディバランスか…って、んなわけないやろ」と小倉に突っ込まれて「そういうツッコミが欲しかった」と逆に喜んでいたのが印象的でした)が、日本代表としての実績はまだ残していない中での「強気の発言」は、なんとなく「キング」中田を彷彿とさせるものがあり、彼が代表の中で浮いてしまうのでは、と少し心配していました。

けれど、実際に大会が始まると、そんな心配など吹き飛ばす結果を出してくれました。本田と同じようにヨーロッパ(ドイツのブンデスリーガ)で活躍している長谷部誠(ヴォルフスブルク)が、いい感じで「海外組」と「国内組」をまとめる役割を果たしてくれたという部分もあったと思いますが、個々のプレーや試合後のインタビューを見れば見るほど、彼の高いプロ意識、つまりプロフェッショナリズムが伝わってきて、更なる期待が高まっていきました。

決勝トーナメントの一回戦で、パラグアイに惜敗した後、日本代表の選手たちのインタビューがテレビで流れましたが、「自分が世界で通用するのがわかって満足できた」とか「大舞台で得点できたので満足している」というような緩いコメント(批判が目的ではないので発言者の名は伏せます)が多い中、本田君だけは表情からして違っていました。

この2~3日というレベルでなら、少し休みたいという気持ちはあるけど、他の(世界の)連中が休んでいる時に必死で練習するくらいでないと、いつまでたっても差は縮まらない。もちろん今大会の結果には満足なんてしていない

彼は、予選リーグ突破を決めた直後のインタビューでも「もう少し喜びがあるかと思ったけど、特にないです。ここはただの通過点ですから」と答えていましたが、やはり同じチームでプレーしている中でも、それぞれ選手が目指していた「目標」は微妙に違っていたようです。しかし、彼が前大会での中田選手のように浮いてしまわなかったのは、彼が決して「自分の価値観」や「自分の目標」を、周囲の仲間に押し付けようとはしなかったからだろうと思います。もし、次のブラジル大会で、彼と同じ目標を「共有」できる仲間が増えていれば、その時には今回以上の結果を残してくれるかもしれません。

本田選手についての報道では、時おり「ビッグマウス」という修辞句が使われますが、彼はただ「高い目標」を目指していることを公言しているだけで、現在の自分にその能力があるなどとは一言も口にしていないわけですから、横柄さという点での「ビッグマウス」とは異なる気がします。しかも、彼は自分の言葉で自分を高めるのと同時に、それが周辺ひいては「社会」に及ぼす影響まで、考えた上で発言しているのではないか、と(単なる主観ですが)思うようなことも多々ありました。

例えば、彼は「自分は優勝を目指している」と何度か発言し、一部で苦笑・失笑を買っていたようですが、彼がこの言葉を口にしたことで、それまで嘲笑の的となっていた岡田監督の「ベスト4が目標」という発言が霞んでしまい、結果としてメディアがこの「ベスト4」云々という文脈で岡田監督に嫌味の質問をぶつけたりすることがなくなりました。試合内容や相手チームに対する分析も、非常に論理的で冷静であった点を考慮すれば、この「自分は優勝を目指している」発言も、周辺への効果を計算した上での行動であったようにさえ思えてきます(もちろん、それは買いかぶりすぎという意見も多いだろうと思いますが)。

大会終了後、日本代表選手はメディアから引っ張りだことなり、実際何人もの選手がテレビに出演してチヤホヤされていました(笑)が、本田君は数百万円の出演ギャラを提示されてもそれらを全て断り、静かに「仕事場」のロシアへと旅立っていきました。オランダのチームに入団するとオランダ語を学び、ロシアのチームに移籍するとロシア語を学んで、チームメイトとのコミュニケーションをより深めようと努力する「プロのサッカー選手」本田君にとっては、なんでも使い捨てにする安っぽいテレビ番組で芸能人のようにチヤホヤされて時間を浪費している暇などない、ということでしょうか。

このサッカー・ワールドカップ決勝と参議院選挙と日程が重なったので、ほとんど日本では注目されていないようですが、世界の舞台ではもう一つ、7月11日に日本の若者が優れた結果を残していました。F1のイギリスGPで、小林可夢偉(カムイ)が6位入賞を果たしたのです。「6位? 優勝はおろか表彰台にも立ってないんなら、だめじゃん」と思われるかもしれませんが、大手自動車メーカーのサポートも大手スポンサーもいない、二線級のマシンでこの結果を残すというのは、実は非常に大変なことだったりします。

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画像は小林可夢偉公式サイトより

昨年の終盤に、撤退寸前のトヨタチームからデビューし、シーズン最後の2戦のみ出走した可夢偉は、一流ドライバーを相手に素晴らしいレースを見せて、世界中のメディアから注目を浴びました。そして今年は、シーズン序盤こそマシンの信頼性不足に苦しみましたが、ここ数戦はコンスタントに結果を残しており、欧州の強豪チームからオファーが相次いでいると噂される本田君同様、来年か再来年には、かなり良いチームで走らせてもらえる可能性も高まりつつあります。

彼のすごいところは、ミハエル・シューマッハやフェルナンド・アロンソ、ジェンソン・バトンらの新旧チャンピオンと競り合いになっても、実質的なルーキーとは思えないほど冷静に戦い、そしてしばしば競り勝つという結果を残していること。これまで、F1の世界で優勝した日本人ドライバーは1人もいないのですが、エンジンメーカーやスポンサーの後押しが全然無いのに、実力だけでシートを確保して、実績を世界に見せつけている可夢偉の姿を見ていると、彼が戦闘力の高いマシンに恵まれれば、その「最初の日本人」になってもおかしくないような気がします。

本田圭佑はまだ24歳、小林可夢偉も今年24歳と、年齢が同じ2人ですが、もうひとつ共通するのは、関西弁で話す若者だということ(可夢偉君は尼崎、本田君は摂津)。「今はもう、土佐がどうたら薩摩がどうたらという時代ではないぜよ」と怒られるかもしれませんが、それはともかく、プロ意識に溢れた若者が世界のレベルで堂々と戦って結果を残している雄姿を見ると、自分もさらに上を目指して頑張らないといけないな、という気持ちになりました。
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