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2011年3月28日 [その他(ウォーゲーム関係)]

今週は、原稿執筆とゲーム開発関連の仕事は一休みして、エクスキャリバー・ゲームズから出版(販売はデシジョン・ゲームズ)予定の、『バーバリアン、キングダム&エンパイア』 というゲームのマップ制作(アートワーク)と、妻の作品カタログ制作(DTPのデータ作成)の作業に取り組む予定です。前者は、イカルス・ゲームズというメーカーから1983年に出版されたエリア式のゲーム(これを知っている、という人がおられたら、相当なマニアだと思います)で、マップにはヨーロッパ全域と北アフリカが含まれています。

barbarian1.JPG


barbarian2.JPG

上は、原版のゲームマップ。新版では美的見地と実用性の両方での向上を目指しています。

このエクスキャリバー・ゲームズという会社は、大昔に小型ゲームをいくつか出版していたブランドですが、現在はロバート・モスィマンという代表の下、旧SPI社の版権をいくつか(デシジョン社から買収して)取得し、デシジョン社の販売ルートを間借りする形で、リニューアル版の出版を予定しています。

http://shop.decisiongames.com/SearchResults.asp?Cat=50
とりあえず、デシジョン・ゲームズの公式サイトにある「次の1年の出版予定」というリスト(上のリンクを参照)に、エクスキャリバー社のブランドで出版予定の旧SPI社タイトルが4つ(『ザ・コンカラーズ』、『ア・マイティ・フォートレス』、『エンシェント・コンケスト』、『バトル・フォー・スターリングラード』)、挙げられています(本当に1年以内に全て発売されるかどうかは、保証の限りではありません)。各タイトルの文字をリンクすると、個別のゲームのページに飛べます。

ちなみに、この4ゲームのマップと 『バトル・フォー・スターリングラード』 のカウンターは、私がアートワークを担当しました。2006年11月12日の記事で、見本画像と、当時発生した「ちょっとした騒動」について書いていますので、興味のある方はご覧ください。もう、あれから5年も経過したんですね。時が経つのが早いのか、それとも私とモスィマン氏の時間に対する感覚に差があるのか…。



ところで、最近はネットのニュースサイトやツイッターの情報でも、原子力発電所の問題ばかりが目に入ってしまいますが、私の感知できた範囲の情報で、政府や電力会社の事態への対処法を見ているうち、内田樹氏が『新潮45』という雑誌の2009年5月号で書かれていた記事を思い出しました。

shincho45.JPG

言葉なき政治の貧困」と題された巻頭記事の中で、内田氏は日本の政治家や国民の政治的センスを分析・考察されており、特徴の一つとして「最適解マインド」という概念を挙げられていました。これは、受験生の試験と同様、外部から出された問題に対して「最適の解」を解く、つまりあらかじめ出題者によって用意された「正解」を提示することに価値判断の重きを置く思考形態のことで、政治にもマスメディアにも、そして国民の間にも、広く蔓延している「風土病」のような事象であると指摘されています。

確かに、さまざまな分野で「なんとか検定」みたいな問題集と認定団体が作られ、それなりに人気を博している状況を見ると、現代の日本人はそういう「受身の最適解マインド」が好きな思考形態なのかな、という気がします。

そして、日本政府の外交や国内政治の方法論は、常に「外部から出される問題」つまり状況変化に対する「後手」からの上手な対処であり、主体的に中長期的な「戦略」を立案して、それに合致するような一貫した方策を「先手」としてとる政治家や国家指導者が見当たらないのは、政治家個人の資質に起因するものではなく、日本の政治風土そのものから生まれたものだと結論づけています。「政治とは 『すでに起きてしまった困ったできごと』 に対処して、できることなら 『正解』 を提出することである、と。」(27ページ)

今年の始めにNHKで放送されていたシリーズ 『日本人はなぜ戦争へと向かったのか』 を観ていた時にも、同じように内田氏の件の言葉を連想していました。1930年代後半から1941年12月まで、そしてそこから1945年8月までの、日本政府と軍の動向は、まさに「外部から出される問題」つまり状況変化に対する「後手」からの上手な対処を目指したものであったように思えます。そこには、中長期的な一貫した戦略などは見られず、また各段階における自らの行動の積み重ねこそが、その後に外部からもたらされる「新たな問題」の原因になっていたという重要な事実を、当事者たちが正しく理解できていたのかどうか、改めて大きな疑問を感じずにはいられませんでした。

nippon.jpg

(画像はNHK公式ホームページより)

「外務省と陸軍が二重外交を繰り広げて国際的な信用を落とし、さらに、入手した情報を共有せず国家戦略なきままに外交を展開するというミスの連鎖が浮かび上がってくる。」(番組説明文より)

現在の発電所問題への対処も、基本的には「外部から出される問題」つまり状況変化に対する「後手」からの上手な対処を、全力で目指した行動であるように見えます。しかし、少なくとも欧米各国の政府やメディアが大きな関心を持っているのは、現在の状況が今後どのような方向へと発展するか、日本の指導者がどうやって望ましい方向に現実を合致させるかという「中長期的展望=シナリオ」であり、日本政府がいつまで経ってもそうした「シナリオ」を描かず(提示せず)、個別の「出てきた問題に対する後手からの対処」だけしかしていないことに、不安を募らせているようです(彼らが想定する「最悪のシナリオ」は、彼らの生活を脅かすレベルまで被害が拡大すること)。

少し前に、ベルリンに住む妻の親友から電話があり、妻は不在だったので私が応対しました。事態を心配した彼女から「日本には、今この瞬間までに起きた事態に対処するのではなく、明日、一週間後、一ヵ月後、一年後、十年後を想定してこの事態に対処できるリーダーはいるのか?」と質問されましたが、私はすぐに適当な人名を思いつかず、答えに窮してしまいました。民間人では、例えば大前研一氏などが説得力のある(私見です)提言をされていますが、政府の記者会見で出てくるのは昨日今日の話ばかりで、しかも数日が経過するとそれが恐ろしい現実によって土台から覆されるという事例も頻繁に生じているようです。



私が今ここで、あれこれと偉そうに書いても仕方がないことは承知していますし、こういう時期に上から目線で当事者を批判するような行為は、慎むべきかもしれないことも理解しています。ですが、少なくとも歴史の分析等を仕事にしている一人の人間として、過去にこの国を危機的状況へと追い込んだ人為的な事象の集合体が、本質の部分で何も変わらないまま、目の前で再演されているように思えるというのは、深い無力感に襲われる心境です。私よりもずっと優れた大勢の先人たちが、書物などを通じて警告してきた行為は何であったかと、気持ちが滅入ります。

ずっとあとになって私自身が改めて参照するための「備忘録」的な意味を込めて、発電所問題の人災的側面に関する記事類のリンクを、以下に記録しておきます。




東日本大震災:発生当日、東電会長ら不在 毎日新聞 2011年3月18日
http://mainichi.jp/select/weathernews/20110311/news/20110318k0000m040150000c.html

福島原発:東電全面退去打診 首相が拒否…水素爆発2日後 毎日新聞 2011年3月18日
http://mainichi.jp/select/weathernews/20110311/news/20110318k0000m040151000c.html

原発を捨て、逃げるつもりだった ~無責任極まりない東京電力
http://c3plamo.slyip.com/blog/archives/2011/03/post_2004.html#more

対応後手に回り日本政府に不信感
http://news.livedoor.com/article/detail/5422566/

政府筋「東電が米支援は不要と」…判断遅れ批判
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110318-00000578-yom-pol

福島第一原発:報道をはるかに超える放射能
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/5677

東日本大震災:福島第1原発事故 米軍無人機の映像、日本政府が公開に慎重
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20110319ddm012040016000c.html

「資産保護」優先で海水注入遅れる─福島第1原発事故
http://jp.wsj.com/Japan/node_204149

福島第一原発事故は人災である
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/5711

未曾有の震災が暴いた未曾有の「原発無責任体制」
http://www.fsight.jp/print/10319

保安院検査官、原発から1週間離れていた
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110323-00000078-yom-soci

原発が奪ったもの… - 鈴木 耕
http://news.livedoor.com/article/detail/5435133/?p=1

日本の不幸~矢面に立たないリーダー達
http://news.livedoor.com/article/detail/5440739/

高放射線量、作業員に周知せず=東電「3人の被ばく防げた」-2号機に真水注入作業
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110326-00000054-jij-soci

「『想定外』言い訳に使うな」 土木など3学会、声明で苦言
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110326-00000002-jct-soci

「汚染情報なぜ共有しない」東電の対応、専門家ら批判
http://www.asahi.com/national/update/0326/TKY201103260297.html

<福島第1原発>東電「貞観地震」の解析生かさず
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110326-00000070-mai-soci

炉心溶融を震災当日予測 応急措置まで半日も
http://www.47news.jp/CN/201103/CN2011032701000673.html

福島原発 「東電の罪」と「原子力ロビー」(仏ル・モンド紙報道)
http://francemedia.over-blog.com/article-70296514.html

東電 プルトニウム分析を依頼
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110327/k10014934661000.html

東電「決死隊」1日2食の劣悪環境 一時は水も1・5リットルのみ
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110328-00000543-san-soci

原子力監督機関と電力会社は一心同体
http://jp.wsj.com/Japan/node_211377

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エルンスト・ユンガイガー・カウンター

「最適解マインド」。私たちが好きな日本的「物づくり」も結局これですね。
でも、数千年こうやってきて今の日本があるわけで、良し悪しでいえば堅実。
でも、これだとiPhoneは出てこない。ましてや原発なんかどこから出てきた???

「原発 コピー」・「原発利権」で検索すると垣間見られる「わからない」「想定外」の遠因。
基礎研究は省略、実運用は丸投げ、安全だから安全なので危機管理なしのゼロ戦運用。
電力会社の原子力発電所なのに電源が真っ先にやられて、バックアップ電源もない。

大本営発表。「建屋の崩落⇒8m四方の穴が2つ」、「大量の高濃度汚水⇒水たまり」。
「東電社員が不眠不休の突貫作業⇒簡易防護服の日雇い人足に丸投げ」。
結局は、自衛隊・消防の献身と自己犠牲による壊滅的終息。

そして、復興のドサクサの中Fukushima50とか美談にすり替えられ、
気がつけば無数の英霊の墓標に紛れ、A級戦犯がのうのうと惰眠を貪る。

ゼロ戦・大和、大本営・特攻、そして、靖国。
by エルンスト・ユンガイガー・カウンター (2011-03-30 03:45) 

なかにし

対応能力を超えた事態というのは理解できますけれど、情報の隠蔽と操作(前後の矛盾)と矮小化は、ほんとうに昔の大本営発表と同じ体質だなあ、と言わざるを得ないです。
by なかにし (2011-04-02 22:30) 

Mas-Yamazaki

エルンスト・ユンガイガー・カウンターさま、なかにしさま: コメントありがとうございます。リンク先の見出しにもありますが、情報を公開・共有することのメリットの一つは、専門知識を持つ外部の人からの提言や助言を得られるということのはず。しかし、組織の「面子と威信」を重んじる観点から見ると、外部の人からの提言や助言を得るのは屈辱ということかもしれません。

最近は、ツイッターでBBCの報道を確認するのが日課になってしまいました。いずれにせよ、汚染された過酷な現場で、献身的に活動しておられる各組織の方々には、深く感謝いたします。
by Mas-Yamazaki (2011-04-02 23:37) 

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