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2011年8月12日 [その他(戦史研究関係)]

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KKベストセラーズさんの雑誌『歴史人』の9月号が、今日発売となりました。特集は「太平洋戦争の真実」で、全148ページの約3分の2が太平洋戦争の関連記事、それも決して「通り一遍」ではない、読み応えのある記事が満載です。

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私も、この特集冒頭の8ページ記事「米英ソが描いた世界大戦への巧妙なシナリオ」の原稿とカラー地図制作、そして別記事のカラー地図1点の制作を担当しています。米英ソ各国の、太平洋戦争勃発直前における思惑を説明する地図では、従来一般的であった手法、つまり「北を上」にした地図で説明するのではなく、それぞれの「陣営」側が下にくるような形で、それぞれの記事に対応した地図を制作しました。

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7月22日の記事で少し触れました、担当編集者さんから「それはゲーム的な視点ですね」と言われたというのは、この「地図の向きをいろいろ変えてみる」という手法のことでした。これはもちろん、私のオリジナルの発想というわけではありませんし、実際最新版の『防衛白書』でも、中国の動向を説明するページで「中国を下」にした地図が使用されています。

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ただ、一般的な太平洋戦争関連の本で、こういった地図を見た記憶は無いので(単に私が見ていないだけという可能性もありますが)、中学生からお年寄りまで幅広い読者を想定した媒体である『歴史人』の読者の方が、どんな感想を抱かれるか、興味のあるところではあります。地図の向きを変えてみるだけで、それまでなぜか「見えなかった」要素が突然見えてくるというのは、人間の思考の不思議なところですが、確かに歴史シミュレーション・ゲームを趣味としていなかったら、この手法によって得られる効果に気づかなかったかもしれません。

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私の記事の他にも、黒野耐さん、白石光さん、副田護さん、三野正洋さん、瀬戸利春さん、森山康平さん、山崎遊さん、松田十刻さん、纐纈厚さん(記事掲載順)がそれぞれ記事を執筆されており、このラインナップを見ただけでも各記事の内容の「濃さ」が想像できるかと思います。定価680円で、書店だけでなくコンビニでも取り扱われているようなので、興味のある方はぜひ現物を手にとってご覧ください。
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出戻り2008

遅ればせながら“歴史人”、購入させて頂きました。

私の場合、米英に関しては過去の擦り込み(北を上に描いた戦況図を見慣れている)による“当惑”が邪魔をしてしまった様で、“判り易い!”という感じには成らなかったのですが、ソ連の戦況図に関して “効果大”、でした(少し大げさに言うと目から鱗が・・・)。人の思考の癖とは面白い、というか大いに問題在りなのでしょうね。わたしも擦り込みの少ない若い世代の反応が気になります(アンケートの項目には入っていませんが)。

個人的には、VG社のPACIFIC WARを見た時の衝撃を思い出しました。ゲームをプレイする際、無意識にマップを回転させてはいたのですが、このゲームのマップ、北と南が逆になっていて、メルカトル図法を使用していない(距離〜面積を正確にする為)。“ニューギニアがデカイ”と驚いていました。あれで太平洋戦争に関する見方(軍事戦略面での)が変わった様な気がします。





by 出戻り2008 (2011-08-19 13:44) 

Mas-Yamazaki

出戻り2008さま: コメントありがとうございます。『歴史人』の国別地図で使用したような、方位を回転させるという手法は、あまり使いすぎると訳が分からなくなるという危険性もありますが、特定の国に視点を据えて国家戦略や情勢認識を説明する手段としては、有効であろうと思います。

VGの『パシフィック・ウォー』は、確かにマップエリアの切り取り方と展開図法が大胆なゲームでした。太平洋戦争のような広域の戦争を描くゲームでは、地図にどうしても歪みが生じることになり、メルカトル図法だと角度が正確な代わりに、赤道付近が実際より小さく、極地に近づくにつれて実際より大きく描かれるという問題点があります。

地球儀で見ると、日本とニューギニアは北緯15度あたりを軸にして南北に相似形に近い横幅のようですが、面積は日本が全部で約37万8000平方キロメートルに対し、ニューギニア島は約79万平方キロメートルと、日本の二倍以上あります。

こうした「図法に起因する面積の歪み」と、日本人のロシア/旧ソ連への恐怖心、南方侵攻時の問題認識の甘さなどとの関連というのも、興味深い視点かもしれませんね。

by Mas-Yamazaki (2011-08-23 22:56) 

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