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2020年3月3日 [その他(戦史研究関係)]

1月と2月は、諸々の仕事と旅行、その準備などで忙しく、更新するタイミングを逸してしまったので、今年最初のブログ更新です。

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まず、「歴史群像」(学研)2020年2月号が、1月初めに発売されました。今回の担当原稿は「日系アメリカ人の第二次大戦」です。このテーマでは、第100歩兵大隊や第442連隊戦闘団などの日系二世部隊が有名ですが、日系人の強制収容所や日系二世の語学兵の活躍についても解説します。

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こうした米軍部隊の足跡に加え、在米日本人と日系アメリカ人への差別や偏見、強制収容所での生活などの市民の苦難にも光を当てています。真珠湾攻撃の後、アメリカ西海岸では「日系人が水道に毒を入れた」「日系人がロサンゼルスを襲撃した」等のデマが広がり、在米日本人と日系アメリカ人は鉄条網と監視塔に囲まれた強制収容所に入れられていました。アメリカ人だけでなく、現代の日本人も学ぶことの多い事例だと思います。

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また、一年ぶりに個人出版の電子書籍(kindle版)で新刊を二冊出しました。一冊は、『アメリカ vs. イラン』で、アメリカとイランの蜜月関係が始まった第二次大戦から、一触即発の対立関係にある現在までの、80年間の両国関係史を多角的な視点から読み解く内容です。先日起きた、アメリカ軍によるイラン革命防衛隊の精鋭部隊「コッズ部隊」の司令官殺害事件についても、概要を解説しています。

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『アメリカ vs. イラン』(Amazon商品ページ)

もう一冊は、『美術品と第二次大戦』で、第二次大戦中のヨーロッパにおける、ドイツとソ連、アメリカの三国による美術品の争奪戦を描いています。今はウィーンで観られるフェルメールの「絵画芸術」をはじめ、ダ=ヴィンチやラファエロ、カラヴァッジョ、レンブラント、フェルメールなどの傑作の一部は、第二次大戦中ヒトラーとゲーリングの手許にありました。一方、パリのルーブル美術館やソ連のエルミタージュ美術館などは、ドイツ軍が迫ると「モナ・リザ」などの名作を安全な場所へ避難させました。戦争末期にはヒトラーが膨大な美術品を隠したオーストリアの岩塩坑やノイシュヴァンシュタイン城を、米軍とソ連軍が争って捜索しました。

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『美術品と第二次大戦』(Amazon商品ページ)


それから、久しぶりに新聞に論考を寄稿しました。2020年2月1日付の「神奈川新聞」に掲載された「潔白示す義務 政府に」という記事です。

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行政府トップの内閣総理大臣をはじめ、公金を預かる立場の公的役職者は、その使い道について「不正を行っていないこと」を常に公的記録で証明する義務を負っており、その記録に空白や欠落があれば、それが犯罪として立証されなくても、公的役職者の地位を失うというのが基本的なルールです。

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こうしたルールあるいは常識が、いつの間にか忘れ去られ、犯罪捜査における「推定無罪」と混同して、不正を立証する証拠がないなら公的役職者がその地位に留まり続けてもいい、という誤謬(間違った認識)が社会で広く信じられているようです。こうした誤謬に疑いを差し挟まず、追及の手を緩める多くのメディアも、実質的には不正を隠蔽する共犯者となってしまっています。

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さて、次は旅行の話です。2月3日から7日まで、仕事の取材を兼ねてフィリピンを旅行しました。

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今回はルソン島のマニラとレイテ島で、フィリピンの独立運動や第二次大戦中の同国での戦いに関する史跡等を見てまわりました。博物館等の展示内容を見れば、その国の人々が重視している人や出来事がよくわかります。

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マニラの旧市街(イントラムロス)にある、戦争で命を落としたフィリピン人市民の慰霊碑。マッカーサーは日本軍の侵攻時、市民の犠牲を避けるためマニラを「開城都市」にしましたが、1945年のマニラ市街戦では日本軍は市民を巻き込み、大勢の市民を敵視して殺害しました。詳しくは昨年上梓した『沈黙の子どもたち』(晶文社)を参照。

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1926年完成の立法府議会ビルを再建したマニラの国立美術館には、フィリピンの歴史をモチーフにした長い絵巻物が、昔の議場に展示されています。同国を植民地として支配したスペインやアメリカとの戦いに加え、日本軍占領時代が大きな災厄として描かれています。フィリピンは、日本軍侵攻前に、既にアメリカから1946年に独立することを約束されていたからです。

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マニラの国立美術館にある第二次大戦時代をテーマにした展示室には、日本軍人によるフィリピン市民の虐殺や強姦を描いた絵画がいくつも展示されています。1945年のマニラ市街戦で、10万人の市民が死亡し、その過半数が日本軍人による殺害の犠牲者とされています。当たり前ですが、「日本軍への感謝」を描いた絵やモニュメントなどは、全く見当たりませんでした。

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イントラムロスの城壁に今も残る、日本軍が設置した大砲。

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フィリピンで国家的英雄とされているのは、まずスペイン統治時代に独立運動を指導して官憲に逮捕され、35歳で処刑された知識人ホセ・リサール(上)で、他には独立運動に尽力したエミリオ・アギナルド(下)とアンドレス・ボニファシオ、米統治時代末期に独立準備政府の初代大統領となったマニュエル・ケソンなど。

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マニラ市内には人文系書籍が充実した書店があり、フィリピンで刊行された第二次大戦に関する書物を買い漁りました。今年5月に出る「歴史群像」次々号に「フィリピンと第二次大戦」を寄稿する予定で、今回の取材で得た情報を織り込んで執筆します。ちなみに、2月3日は、悲劇的なマニラ市街戦の開始から75周年でした。

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マニラ市内の移動に便利なサイドカー。現地では「トライシクル(三輪車)」と呼ばれていますが、タイのトゥクトゥクと同様、狭い路地や市場の通路なども突っ切って走るので、タクシーよりも早く目的地に着きます。値段も100〜200円ほど。ただし、シートベルトが無いので、足を踏ん張ったりどこかを掴むなどの自衛が必要になります。

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マニラ市を走る電車。中は清潔で、女性専用車両もありました。

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レイテ島へは日帰りで行きましたが、激戦の舞台となった西部のオルモックとリモン峠、マッカーサーが上陸した地点として知られる東部のパロ等を車で巡り、記念碑や戦争で破壊された建物などを見学しました。上の写真は、オルモックにあるフィリピン人ゲリラ(親米)の記念碑。同地には、岐阜県慰霊碑建立奉賛会が建立した戦没者の慰霊碑もあり、手を合わせました。


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2月10日から11日は、講演で高知へ行きました。講演は、200人収容の会場が満杯になり、著書も73冊販売という大盛況でした。感想のアンケートでは「疑問やモヤモヤが解けた、今までとは違う視点が得られた」等の声が多くありました。ご来場下さった皆様、企画と運営をして下さった皆様、ありがとうございました。

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高知では、桂浜の坂本龍馬像や龍馬の記念館、自由民権記念館を見学しました。龍馬記念館には、東吉野のルチャ・リブロの入口に記念碑がある天誅組の吉村虎太郎(土佐出身)に関する書状もありました。龍馬は旧知の吉村らが東吉野で全滅したと知り「自分が戦の指図をしたなら打ち破れたのに」と残念がりました。

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自由民権記念館では、植木枝盛が明治14年に起こした憲法草案を知り、その大胆な内容に感銘を受けました。「政府が国権に違背する時は、日本人民はこれに従わなくてもよい」「政府が国権に背き、人民の自由権利を残害し、建国の旨趣を妨げる時は、日本国民はこれを覆滅して新政府を建設することができる」

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高知大学の小幡尚教授からいただいた、紙資料の保存についてのガイドブック。なぜ紙の資料を後世に残すのか、という意義の説明から始まり、紙資料の保存に適した条件や注意すべき点など、具体的な解説が丁寧になされていて、とても参考になります。湿度は、低すぎても紙に良くない模様。


【おまけ】

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フィリピンで食べた美味しいもの。地元料理のお店を探しても意外と見つからず、サン・ミゲルというフィリピンのビールを飲みながら、アジア料理全般をいろいろ食する結果となりました。2枚目の右側は、日本のしょうゆラーメンに似ていますが、麺はビーフンのような細麺とうどんに似た太麺の両方入っています。

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マニラ湾に沈む美しい夕陽。
 
 
 
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