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星野仙一氏の去就について (長文) [その他(雑感・私生活など)]

8月28日、甲子園球場で阪神=巨人戦を観戦した。
一塁側イエロー席の上段から双眼鏡で除くと、
NHK衛星第一放送の解説をするため来場していた
スーツに眼鏡姿という星野仙一氏の姿が見えた。

私が本格的に(球場まで足を運ぶという意味で)
阪神タイガースを応援するようになったのは、
2002年に星野氏が監督に就任したことがきっかけ
だった。一チームのみならず球界全体を展望した
理路整然とした野球哲学、そして厳しさと人情の
両方を兼ね備えた「尊敬できるリーダー」である
星野氏が監督になったことで、本気で応援するに
値するチームになるのではないかと思えたからだ。

2003年、就任二年目にして優勝を成し遂げた後、
日本シリーズの開幕を待たずして「健康上の理由
により監督を退任」という発表がなされると、
私は氏の最後の縦縞姿を見逃すまいと、甲子園で
の日本シリーズ第4戦の切符を手に入れ、縦縞の
ユニフォームを着て巨大な群集の中に身を投じた。
緊迫したシーソーゲームの末、延長10回裏に金本
のサヨナラホームランという劇的勝利に終わると、
星野監督のインタビューと六甲颪が鳴り止んでも
観客は客席に座ったまま、その余韻に浸っていた。
昨年は、チームの成績こそ不満足な結果だったが
それは今年の布石であることがわかっていたから
さほど心配はしていなかった。いまや伝説的とも
呼ぶべき「星野体制」から、岡田新体制へと移行
するのは、岡田氏の現役時代の活躍を踏まえても
なお一年程度でできるものではなかったろう。

そして今年、岡田体制は現在のところ首位を維持
しているが、ここにきて「来季巨人の監督候補に
星野仙一氏」という報道が盛んになされている。
中には「ほぼ確定」と報じているメディアもあり
私のように星野氏を通じてタイガースを応援して
きた人間には、かなり心理的につらい状況である。
昨日のNHK放送で、星野氏は「巨人からの要請は
ない」「候補に上がっただけ」「今はタイガース
の人間」などとコメントしたが、これは事実上
「段階を踏んで正式に要請されれば巨人監督就任
もありうる」という意思表示だろう。しかも、
星野氏は「巨人が弱いというのが(野球人気の)
低迷に結びついている」などという、過去の氏の
発言に賛同してきた人間から見れば信じがたい
内容のコメントすら口にしたと報じられている。

星野氏は今までずっと「日本のプロ野球をダメに
してきた現況は、メディアを含めた巨人中心主義」
「巨人の凋落があたかもプロ野球人気の低迷に
直結するかのような間違った印象操作は良くない」
と事あるごとに主張してきたはずではなかったか。
たしかに、昨日の巨人戦ではタイガースの勝利に
終わったとはいえ、かつてのような深い達成感を
味わえなかったのは事実である。実際、タイガース
は井川、福原、下柳という一線級投手を次の中日
戦に温存し、体調不良の藤川にも休養させており、
タイガースにとっての「巨人戦」がさほど大きな
目標でなくなっていることは否定できない。だが
だからと言って「巨人を強くすればプロ野球人気が
盛り上がる」などという底の浅い詭弁を、星野氏が
本心で口にしているとは考えがたい。もし本気で
そう思うのなら、星野氏が声高に批判していた
「審判団の巨人贔屓」をより強くすれば、巨人が
各試合で有利になって、プロ野球人気も復興する
ことになる。仮に、巨人のチーム建て直しが必要だ
としても、それは星野氏の仕事ではないはずだ。
原辰徳氏が監督になり、渡辺恒雄氏の影響力が消滅
すれば、数年で巨人はAクラスに復帰できるだろう。

巨人はこれまで、他チームで活躍した四番打者を
金の力で強引に引き抜いて自チームへと編入し、
バランスを欠いたいびつなチームへと変貌させた。
その結果が現在の低迷であることは子供でもわかる。
落合、清原、江藤、ペタジーニ、ローズ、小久保。
こうした札束の力を濫用した移籍攻勢で選手年俸を
高騰させたことは、現在のプロ野球が抱える問題点
の一つであるはずだ。ローズなどは、近鉄時代に
築いた選手としての名誉や尊敬を、巨人で完全に
失って誰にも惜しまれないまま帰国してしまった。
こうした行為がどれほどファンの気持ちを傷つけて
いるか、星野仙一氏は誰よりもよく理解している
はずではないのか。しかも、四番打者の引き抜きで
成功しないから、今度は同様の手法で他球団を成功
に導いた監督を金の力で引き抜こうと動いている。
このような「辺恒的な」安易な画策を誰よりも嫌って
いるのが星野氏であると、ファンは今まで思ってきた。
そして、現在の巨人が、そのような方法論の問題点を
きちんと認識して反省した形跡は、全く見られない。
そのようなチームの監督就任要請を受諾することは、
星野氏がこれまで行ってきた言動と完全に矛盾する。

今はまだ星野仙一氏の本心が明確に氏の口からファン
に述べられていないので、軽々に判断することは
慎みたいが、人間として尊敬する星野氏にはぜひ、
言行一致の哲学を最後まで貫き通してもらいたい。
そして、特定の一球団を特別扱いしない形での
プロ野球の復興に向けたビジョンを今までどおり
各方面に提唱し続け、機構改革や人気回復を実現する
「球界の至宝」として、力強く活躍していただきたい。


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国民擲弾兵

 ゲームとは全然関係ないのですが…同感です。今のプロ野球は巨人偏重からより地域性の高い他球団に人が集まりだしているのもあって、人気が低迷しているのかもしれませんね。であれば、巨人を強くするための今の方法は正しくないのかもしれません。もとより、巨人だけに依存したいびつな構造では、また、巨人が低迷すると人気が凋落するという同じ現象を繰り返すのみです。私は千葉ですのでマリーンズを応援しています。北海道にはファイターズが、広島にはカープが。Jリーグのように地域性の高いチームがそれぞれしのぎを削る事により、面白い試合が増えるのだと思います。
 星野さんはドラゴンズに最初に就任する前のNHKの解説者のころからずっと応援していましたし、今回の巨人就任の話からアンチ星野になる事はありませんが、巨人に行ってむしろせっかくの名監督の名をおとしめるのではないか?と思います。お金で解決すれがよいと思う巨人に迎合してしまう事、今の巨人で果たして立て直しがうまくいくかという問題、むしろタイガースを最後にもっと球界で違う役割を果たした方がよいような気がします。
 ちなみに、私は原さんのファンでもありまして、巨人には原さん監督が一番いいと思います。巨人の雰囲気ありますよね?巨人は監督を変えるより、経営陣を刷新した方が長い目で強くなると思います。阪神が優勝したときも、星野さんはずいぶん頭の固い阪神の経営陣と戦ったとか。

 全然関係ない話ですいません。9月末のDDを楽しみにしています。でも、良い物を作る、と言う事で遅れるのはいっこうにかまいません。今回もプレオーダーさせて頂きますのでよろしくお願いしますね。
by 国民擲弾兵 (2005-08-29 22:34) 

THE LAST GRENADIER

全く同感です。私は巨人ファンでしたが(です、ではありません。念のため)、私の長い間溜まっていた気持ちをそのまま代弁して戴いたような気持ちになり、思わずメールしました。失礼しました。
by THE LAST GRENADIER (2005-08-30 17:18) 

Mas-Yamazaki

国民擲弾兵さん、THE LAST GRENADI..さん、こんにちは。コメントありがとうございます。

今回の一件で、私がどうにも理解できないのは、なぜ巨人(読売)の首脳が、あれほど星野氏の招聘にこだわるのか、ということです。他に適任者が見つからないというのならまだしも、原辰徳氏という、人気も監督としての実績も兼ね備えた、巨人の元スター選手がいるではありませんか。原氏にもう一度監督を任せれば、野球とは無関係な波風を立てることもなく、球団の再生という目標は実現できるはずです。

私は、巨人が星野氏を監督にするというのは、スポーツ選手がステロイド剤で筋肉を増強するようなものではないか、と考えています。確かに、短期的には筋力が強化されて、良い記録を残せるかもしれません。しかし、長期的に見れば? 私は一度も巨人というチームを好きになったことがありませんが、しかし巨人というチームにしかない伝統や特色の価値は、理解できます。そういった貴重な「文化」と呼ぶべきものを、辺恒氏らが自らの手で無残に壊しているということを、彼らはまったく自覚していないようです。

札束で各チームの四番打者、札束で名監督、というような、地道なトレーニングをせずに筋力をアップしようとか、運動せずに痩せられるダイエット法とか、そういう安直な方法論を、いつまで続けるつもりなんでしょうか、あのチームは。
by Mas-Yamazaki (2005-08-31 02:25) 

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