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2008年8月2日 [その他(戦史研究関係)]

 シックス・アングルズ第11号「モスクワ攻防戦」の本誌制作は、第4装甲軍所属部隊のモスクワを目指す進撃のごとく、着実に(笑)進行していますが、今日はその仕事の休憩時間を兼ねて、学研さんの「歴史群像」という雑誌について少し書くことにします。

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 私がこの雑誌に寄稿し始めたのは、今から9年前、1999年のことでした。当時、私はフリーとなる前の最後の勤務先で、旅行ガイドブックの編集と地図制作を担当しつつ、余暇に戦史研究をしていましたが、私が過去に「コマンドマガジン日本版」に執筆した戦史記事を読んで下さっていた「歴史群像」の前編集長(長谷川さん)から「よかったら書いてみませんか」というお誘いを受け、同年の「春・夏号」(第38号)に「マンシュタイン戦記」という1942年のセヴァストポリ要塞攻略の巻頭記事を執筆させていただいたのがきっかけでした。

 それ以来、今年7月に発売された第90号までの9年間(53冊)、私は毎号何がしかの原稿を書かせていただき、同誌で執筆した記事の本数は60本近くになりました(この間、1号も欠かさず3ページ以上の記事を同誌で執筆した筆者は私1人だけのはず)。現在の私が、戦史研究分野でのプロの文筆家として、多少の評価を戴いているのは、9年間にわたって「歴史群像」誌で編集者の方々から鍛えていただいたお陰であり、同誌の仕事をしていなかったら、私は今頃文筆家として独立すらしておらず、どこかの会社で別の仕事をしていた可能性が高いと思います。

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 そんな私自身の「身の上話」(笑)はともかく、つい先日これらの膨大な「歴史群像」誌のバックナンバーを数回に分けてコンビニに持ち込み、目次のコピーを取るという作業を行いました。これだけ数がたまると、過去に同誌に掲載された記事の号数を記憶できなくなり、「このテーマは、前に歴群に記事が出ていたと思ったが、あれは何号だったっけ…」と1冊ずつ書棚から取り出して、お目当ての記事を探すという苦行を強いられることもしばしばでした。そのため、目次だけをコピーしてクリアファイルに綴じ込んでおけば、どの号にどんな記事が出ているのか、探す時間と労力を軽減できるだろうと考えたわけです。

 完成した「歴史群像」誌の目次ファイルを眺めてみると、私が記憶していた記事だけでなく、「あっ、こんなテーマの記事が掲載されていたのか」と驚くようなマイナーな戦史研究記事がいろいろと見つかり、改めて「すごい雑誌だなぁ」と感嘆しました。記憶に残っていなかった記事というのは、当時の私にとっての興味の対象外で、現在は興味の対象内というテーマについての記事です。私の書いた記事は全て排除して考えても、同誌に掲載された戦史研究の記事は、時間の経過と共に色褪せて古くなっている印象がほとんどなく、特に西洋史のシミュレーション・ゲームで題材となっている戦史について、背景や要点をコンパクトにまとめた記事などは、このまま忘れ去られてしまうのがもったいないほどの完成度だと思いました。

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 最近になって、こうした過去のリソースを「歴史群像アーカイブ」という形態で復刻再発行するプロジェクトがスタートしましたが、刊行ペースとの関連もあってか、再録される記事は全体のごく一部であり、アーカイブに入らない記事の方が圧倒的に多いというのが現実です。将来において、過去のバックナンバーの記事がネットで有料公開されるという可能性もありますが、とりあえず私の見る限り、「歴史群像」という雑誌は一般の情報誌やコンピュータ雑誌などと違って「そう簡単には古くならない(価値が下がらない)情報源」なので、戦史を愉しむという趣味をお持ちの方なら、毎号買っておいても損をしない媒体だと思います。

 ちなみに、私が「これは捨てられない」と思っている戦史関連の定期刊行物は、同誌の他には以前に本ブログでご紹介した「20世紀の歴史シリーズ」と、英バランタイン社の「History of the Second World War」シリーズ(サンケイ出版から出ていた「第二次世界大戦ブックス」の版元が週刊で出していた同大戦の研究誌)などで、後者の2シリーズはそれぞれ多少の経年劣化(物理的な本の傷みという意味ではなく、刊行後に研究が進んだことによる内容的な古さ)はあるものの、完全な「賞味期限切れ」という印象はなく、今でも原稿執筆の際に一応は目を通しておく「ベンチマーク的資料」として活用しています。

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「歴史群像」誌の年間定期購読料は、6冊分で送料込み5650円とのことですが、もし私が同誌に寄稿していなかったとしても、現在の内容でこの価格なら割安だと感じて、おそらく欠かさず購読しているだろうと思います。戦史研究や歴史シミュレーション・ゲームという趣味を長く続ける予定の方には、内容の濃さとコスト・パフォーマンス(高額なマイナーテーマの専門書を買うことなく要点を理解できる)という点で、堂々とお薦めできる媒体です。

 最後は、少し宣伝のような形になってしまいましたが、特に悪気はありませんので(笑)、皆さんのご判断の参考にしていただければ幸いです。

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コメント 5

ハナザー

私もここ30号くらいは、ほとんど買ってます(´∀`)
お陰で以前は興味のなかった日本の戦国時代や幕末にも、興味が出てきましたヽ(´ー`)ノ♪
従来誌で中心だった人物伝や一般政治史ではなく軍事的側面からの検討が多いのが、シミュレーションゲーマーに向いていますね(^^)b☆
by ハナザー (2008-08-03 09:22) 

古参兵

歴史群像は私も毎号購読してますよ。ライターにゲーマー上がりが多いせいか、家にある海外ゲームのテーマとピッタリ合うような記事が多いので、重宝してます。読者に対して過度に迎合せず、それでいて読者のニーズをちゃんと掴んでいるのは見事です。
by 古参兵 (2008-08-03 13:22) 

Mas-Yamazaki

ハナザーさま、古参兵さま: コメントありがとうございます。お二人が指摘されているように、ゲーマー出身のライターが多いためか、同誌の記事は歴史好きのゲーマーが求めているものとかなり合致していると思います。ただ、当然ですが、ゲーマー以外の読者(九割九分以上がそうでしょう・笑)が読んでも充分に楽しめる雑誌だと思いますし、今後もこの調子で中身の濃い媒体でありつづけて欲しいと思います(私も筆者の端くれとして全力を尽くすつもりです)。
by Mas-Yamazaki (2008-08-05 20:09) 

あどうち

歴史群像は第1号から愛読させていただいています。(オレンジ色のムックの方はもうはるか昔にリタイアしましたが)当初はどこかで見たことのある筆者や記事だなぁ、と思っていたらTacticsで連載されていた方や記事だったり、SLG雑誌衰退期にはその補完としてとても気に入っていましたし、今でも歴史を見直すきっかけになる貴重な雑誌と思います。
「モスクワ攻防戦」、楽しみにしてます。
by あどうち (2008-08-06 19:16) 

Mas-Yamazaki

あどうちさま: コメントありがとうございます。私も実は、昔第1号から第6号くらいまで揃えて持っていたのですが、ある時にオークションで手放してしまい、今は少し後悔しているところです。戦史研究への興味が、シミュレーション・ゲームへの熱意を生んだと考えれば、歴史群像のライターにゲーマー出身が多いというのも、それなりに納得できる部分が多いかと思います。

もし、歴史群像誌で取り上げてほしいというテーマがありましたら、ぜひ編集部へメールでお伝えください。同誌の記事内容は、基本的に編集部サイドで(一冊の雑誌全体のバランスを見渡しながら)決定し、ライターが毎回書くテーマを自由に決めているわけではないので、ご要望はぜひ、私ではなく、編集部の方までお願いします。読者の率直な声は、きっと歓迎されると思いますよ。
by Mas-Yamazaki (2008-08-09 13:55) 

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