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2009年4月20日 [その他(テレビ番組紹介)]

今日は、またテレビ(しかもNHK)の話題です(増えてきたのでカテゴリーを作りました)。昨晩放送されていた、NHKスペシャル「マネー資本主義 第1回」は、内容に多少の瑕疵(これについては後述)があったとしても、非常に良く出来た「歴史探求番組」だったと思います。

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(画像はNHKホームページより)

この番組は、全5回シリーズで、現在の経済危機を招いた原因や経過、今後の展望を探るという企画です。番組における事実認識の正確さや解説の妥当性については、既にいくつかのブログで異論や批判が出ているようで(興味のある方はグーグルで検索してみてください)、あの番組に出てきた説明や解釈をそのまま鵜呑みにするのは危険だと思います(これは全ての歴史書、特に現代史の研究書についても言えることです)が、一連の問題を理解するための「最初の取っ掛かり」という意味では、非常にわかりやすく、あの番組を観た上で上記の批判的ブログや経済関係の記事などを読むと、問題点の理解がしやすくなっている気がします。

日本のメディアでは、これまで「サブプライムローンとは」「リーマン・ブラザーズとは」などといった、データベース的情報(インフォメーション)はそれなりに多い反面、問題の全体像を示す、いつ誰が、何を意図してそのような仕組みを作ったのか、その結果どのような問題が発生し、それがいかなる分野へと波及したのか、という分析的情報(インテリジェンス)は非常に少なかったように思えます。大きな戦争が起きると、書店には「緊急出版」と銘打たれた「○○戦争の速報本」が次々と並びますが、F117Aの速度とかトマホーク・ミサイルの航続距離など、一般読者にはどうでもいいようなデータベース的情報(インフォメーション)を適当に寄せ集めてページを埋めたような、内容の薄い安易なつくりの本が大半で、1年後にはほとんど価値がなくなっている(兵器の性能や主要緒元に興味がある人は、既にもっといい資料を持っています)場合が多いようです。

それを考えると、ブログなどでいろいろ批判が出ているとはいえ、渦中の問題を生み出した当事者に丁寧にインタビューして「どのような状況下で、何を意図してそのような決断を下したのか」を聞き出しているこの番組は、問題の全体像を知る手がかりとして貴重な材料だと思いました。各投資銀行の業績を示す棒グラフの表現(紆余曲折を経て、劣勢だったリーマンが大逆転して画面からはみ出すほどの業績を残すわけですが…)も秀逸でした。

私がこの番組を気に入った理由の一つは、よくある民放番組のように、番組制作者が自らの道徳観や正義感などの価値判断基準で当事者を安易に断罪したりすることなく、当時の状況と当事者が特定の選択肢を選んだ動機や背景を、可能な限りドライに、淡々と探求しようという姿勢が感じられたことでした。ソロモン・ブラザーズ元会長ジョン・グッドフレンド(すごい名前です)をはじめ、ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーといった投資銀行の最前線で「戦った」将軍クラスの面々は、当然ながら自分にとって本当に都合の悪い事実は言わないのですが、しかし彼らの口から出た言葉は、当時の状況を知る上での「史料」として重要な意味を持っているはずです。

さらに付け加えるなら、私はこの番組のオープニングCG(と音楽の組み合わせ)に、強い感銘を受けました。なぜか、喜納昌吉の名曲「花」を思い出しました。今この時代の「ある部分」を、これほど見事に映像化した「作品」を、私はすぐには思い浮かびません。人間の社会では、勝ち組・負け組とか、帝王とか超大物とか、一部の成功者と大多数の「その他大勢」の間に、あたかも天と地ほどの差があるかのように錯覚してしまいますが、傘を差した男たちが大空へと吸い込まれてゆくあのCGは、そんな思い込みの浅はかさ、本当はみんな小さい人間の、愚かさと愛おしさといったものを、静かに語っているかのようです。

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明日火曜日の深夜(4月22日の午前0時45分)に再放送されるそうなので、見逃した方には一見をお薦めします。
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Rose de Mai

NHKスペシャル「マネー資本主義」シリーズのオープニングCGに感銘を受け、検索をしているときに、貴方のブログがトップに現れました。

わたしもオープニングCGと細野氏アレンジのモダンタイムの絶妙な組み合わせに心が動かされました。

どのような部分に感銘を受け、反応したのか自分の中で整理できてはいませんが、きっといつまでも心に残る映像と音であろうと思います。
by Rose de Mai (2009-05-17 21:46) 

Mas-Yamazaki

Rose de Mai さま: コメントありがとうございます。私と同じように、あの映像と音楽に感銘を受けた人がほかにもおられたと知り、たいへん嬉しく思います。

今日は番組の第2回でしたが、何度見ても、あの傘をさした小さい人間たちが空を飛び、天に登っていく(しかし途中までしか行けない)光景と細野さんの音楽との組み合わせは、なぜか胸にグッとくるものがあります。
by Mas-Yamazaki (2009-05-18 00:05) 

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