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2009年4月24日 [その他(雑感・私生活など)]

今日は映画の話です。先日、近所のスーパーへ買い物に出たついでに店の近くにある古本屋でいろいろ物色していたところ、香港映画「インファナル・アフェア」のDVD(特典ディスク付き)が安く売られていたので、衝動買いしてしまいました。

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この映画は、3~4年前にレンタルのDVDで観て、その完成度の高さに圧倒された記憶が強烈に残っていて、いずれまた観たいと思っていた作品でした。ストーリーは、犯罪組織が警察内部に送り込んだ内通者(アンディ・ラウ)と、警察がその犯罪組織に送り込んだ潜入捜査官(トニー・レオン)の二人を軸に、並行していくつかのストーリーが組み上げられていく形ですが、脚本や演出、映像、間合いの取り方など、改めて観ても初見の時と同じくらいに鮮烈な感銘を受けました。

広東語での原題「無間(地獄)道」が物語るように、この作品は単なる犯罪組織モノのサスペンス映画に留まらず、わかりやすい善悪二元論とは異なる、生き続ける限り逃れられない苦しみという仏教的価値観で映画全体が貫かれています。不気味な仏像の映像が冒頭に使われている意味など、初見の時には(予備知識なしに観たこともあり)何のことか意味不明でしたが、二度目に観ると個々の台詞や登場人物の行動原理にもこのテーマが貫かれていることがわかり、初見の時よりもさらに強い印象を受けました。

私が初見の時にショックを受けたのは、この映画のエンディングで、まだご覧になっていない方のために具体的には書かずにおきますが、エンドロールが流れ始めていろいろと考えを巡らせているうちに、突然そうか! とパズルが解けたように納得し、こういう終わり方をするんだ… と、香港映画の底力を見せつけられたような衝撃を受けました。終幕間際に示された「地獄での長寿こそ最大の苦しみ」という言葉が、苦い薬のように内臓へと染み渡る、そんな独特の余韻に、いつまでも浸っていた記憶があります。

ご存知の方も多いかと思いますが、この映画は公開当時にハリウッドでも高く評価され、レオナルド・ディカプリオとマット・デイモン主演で「ディパーテッド」というリメイク版が製作されました。このリメイク版もそれなりに高い評価を獲得し、いくつかのオスカー像が与えられましたが、ハリウッド映画なのでオリジナル版にあったような仏教的価値観の要素は排除されて「善悪二元論」的な脚本に変えられており、エンディングも「いかにもハリウッド」的な勧善懲悪の形で話を完結させています。

改めて書くまでもないことですが、マーティン・スコセッシの「ディパーテッド」は、そもそも文化圏の異なる製作者が、原作とは微妙に違うテーマを表現している作品なので、香港で作られたオリジナル版とどちらが優れているかという単純な比較は無意味ですが、内面的に仏教的価値観の影響をいろいろと受けている現代日本人の私は、「インファナル・アフェア」で描かれた無情さや哀歓の余韻が心地よく、切なく感じられました。たいていの香港映画は、盗用を避ける意図もあって細かい脚本を作らずにすぐ撮影へと入るらしいですが、この作品は例外的に、かなり作り込んだ脚本を用意してから撮影を始めたそうで、作品の完成度の高さにも納得できます。

ちなみに、この作品は当初二部作として企画され、最終的には三部作となったのですが、私はまだ二作目と三作目を観ていません。一作目の完成度があまりにも良すぎたため、その印象が崩れては嫌だなという消極的な理由によるものですが、今回改めて観たことで自分の中での「無間(地獄)道」の評価が定まったので、頃合を見て続編も(まずはレンタルで)観てみようと思います。「インファナル・アフェア」シリーズを、まだご覧になっていない方には、まずはこの一作目を強くお薦めしておきます。
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