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2009年12月9日 [ベアズ・クロウ(熊の爪)]

文庫本「ポーランド1939」の執筆に全力投球の日々ですが、今日はひさびさに「ベアズ・クロウ」の話題など。うまく行けば、来年後半に発売できるかと想定しています「ベアズ・クロウ」ですが、今日の朝目覚めた時、ぼんやりとした頭でふと「値段を下げてみようか」と思いました。

bears_claw_map06.jpg


これまでのシックス・アングルズ製品は、私のオリジナル作品も、SPIなどの「レトロスペクティブ・シリーズ」も、同じ基準、つまり「フルサイズのマップ1枚なら5800円+税、2枚なら6800円+税」という価格設定で、販売してきました(「クルスク大戦車戦」のみ、ユニットとチャートが多いためマップ1枚ですが後者です)。この設定を考案した当初は、自分が出すゲームの「適正価格」がどのくらいなのかという確信が持てなかったため、事業失敗のリスクを極力減らせるような基準にして、とりあえず少し続けてみようと思いました。

「レトロスペクティブ・シリーズ」については、版権(ライセンス版の日本での製造販売権)取得契約時の条件である「上限800冊」を製造し、それが1年前後で完売する(別冊第4号「砂漠のキツネ」もあと少しなんですが、最後の伸びが足りません)という、ほぼ私の想定した通りの展開になっています。しかし、私のオリジナル・デザインのゲームが付いた号については、部数を1300冊(第9号)から1000冊(第10号)、800冊(第11号と第12号)、そして600冊(第13号)に縮小してもなお、なかなか完売には至っていない状況です。

こうなっている原因は、シックス・アングルズ製品を買って下さっているお客さんの一部が、「レトロスペクティブ・シリーズ」の製品と比較して、私のオリジナル作品に「同等のお金を支払う価値がある」とは考えておられないからだろうと思います。旧SPIのゲームには、ブランド価値に加えて、やはり他の類似品にはない「付加価値」があるからこそ、現在の価格でバランスよく売れているわけですが、私の作ったゲームには、「フルサイズのマップ1枚なら5800円+税、2枚なら6800円+税」という価値はない、と見なす方が少なからずおられるというのが、厳然とした「市場」の評価であるようです。

そうなると、今後の事業展開をどうするかという問題になるわけですが、1冊を制作するのに要するコストは、部数を減らせば減らすほどアップしてしまうので、600冊からさらに500冊へと減らすと言う「後退戦略」では、事態の打開にはつながらないことは明白です。

そこで、第14号では実験的に、価格を「税込み4500円(本体4286円)」にして、部数を800冊に戻してみようかと考えています(まだ最終決定ではありませんが)。計算してみると、本体5800円で500冊売れた場合よりも、税込み4500円で700冊売れた場合の方が、売上げの金額は少しだけ多くなります。なので、製造時に600冊と800冊で見積もりをとって、両者の差がそれほど大きくなければ、後者の設定でいこうかと考えたのです。

私は以前にも書きましたとおり、物の売り買いそのものよりも、物づくりに喜びを感じるタイプの人間です(もちろん、私の作った製品を買って下さる方が数百人もいてくださるというのは大きな喜びであり、感謝しています)。それゆえ、自分の作ったものに適正な価格をつけるという作業について、最初からズバリと「最適解」を見出すことはできないので、試行錯誤しながら修正していくしかないわけですが、そろそろ今までの経験とデータの蓄積を活かして、事業の全体や細部について「見直し」をする時期かとも思いますし、価格の高さがネックになって購入を控えられていた方にも私の作ったゲームを楽しんでもらえるようになれば、誰にとっても望ましい方向へと状況を変えられるのではないかと思います。

コマンドさんやゲームジャーナルさんと比較すると、これでもまだ少し高いですが、あとは「品質の高さ」や「内容の濃さ」でお客さんの評価を仰ぐ努力をしていきたいと思います。

それから、明日の10日から16日までの一週間、ドイツのベルリンとポーランドのワルシャワへと出かけてきます。この間、ネットには接続せず、メールチェックも行いませんので、いただいたメールへの対応などができなくなりますことを、ご了承いただければ幸いです。「マザーランド」のマップでは、ヘルシンキとタリンに続いて3ヘクス目の探索となりますが、さっき海外天気予報を見たら、私が訪問する日のワルシャワの予想気温は最高1度、最低マイナス6度とか。う~ん、ついに、ウォトカの出番か…。
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INB

グッドアイディアですね。 

ゲームでの作戦もそうですが、商品の値付けも重要な戦略の要素ですね。

例として参考になるかどうかわかりませんが、以前女性の中高年者向けの保湿スキンケア商品の研究をしたことがあります。

そのマーケティングの調査で消費者が衝動買い出来る心理的ハードルの上限は、5000円という調査もあり、その商品では調査を参考に当初3800円という価格設定をし、無料サンプルも受けたのか通算1000万個の大ヒット商品となりました。

で、4500円というのはなかなか絶妙な価格設定だと思います。

もしかしてコマンドやGJなんかも 4000円弱なので
「まいっか」という感じで売れているのかもしれません。

作者としてそういう気持ちで購入いただくのも複雑な心境かと思いますが、英断評価します。

by INB (2009-12-13 22:12) 

げるぴん

アクティブでない40代出戻り派としては、
5000円超えるとお小遣いが厳しいですw
by げるぴん (2009-12-14 20:27) 

出戻り2008

個人的な話です。
出戻って最初に購入したゲームが激闘ノルマンディーでした。
初めて覗いたクロノノーツさんのHPで残り5個だったのです。

マザーランドは常に購入予定の筆頭にあるのですが、未だに購入しておりません。
理由は価格では無く(ゲームとしての価格は適正だと思います)、
    “まだ在庫がありそう”
という事になります(自分でも不実な購買層だと思います)。

出戻って以来、なぜか騎兵と騎馬武者に興味が偏ってしまっている為か、GJ紙の最新号で“NAWシステムの考察”の記事に反応して、購入を真剣に考えていたりします(アウステルリッツの太陽自体にはさほど興味が無いのですが)。

シックスアングルを “ゲーム” として捉えた場合、“すぐにプレイする訳では無いから”、と購入を先延ばしにするケースもあると思いますが、“ウォーゲーム紙”として捉えた場合、“ツィタデレ作戦の全貌をゲームマップに即した20枚の図を使って詳細に解説”とか紹介されたら、即予約購入してしまいそうです。

又、“デザイナーのサイン入りマップ”という予約特典は非常に魅力的だと思います。モスクワと中央軍集団を予約購入しなかった事を 今は非常に後悔しています。

by 出戻り2008 (2009-12-16 21:31) 

Mas-Yamazaki

INBさま、げるぴんさま、出戻り2008さま: コメントならびにご提案ありがとうございます。商品の値つけというのは、本当にむずかしい問題で、気持ちとしてはできるだけ安く商品をお客さんに提供したいという反面、あまり安くしすぎるとその事業を継続するのが負担になり、やがて破綻するのではという心配もあります。

今回、いろいろなご意見をいただけたことも含めて、とりあえず次の「ベアズ・クロウ」で4500円という設定にしてみて、それで「需要と供給のバランス」がとれるようであれば、この新しい基準で商品開発を行おうと思っています。

本来なら、国際通信社さんの「ジャパン・ウォーゲーム・クラシック」シリーズのように、良いゲームは「いつでも手に入る状態」にすべきなのだろうと思いますが、やはり個人事業ではいくつものアイテムを常時在庫することは物理的に不可能(もし「レトロスペクティブ」の全品を常時ストックしていたなら、管理業務や保管などで執筆の仕事に支障が出ているだろうと思います)な状態です。ということで、発行人の勝手とも言える「1年前後で売り切り」という方針を今後も目指すつもりですが、悪しからずご理解いただきますよう、お願いいたします。
by Mas-Yamazaki (2009-12-17 00:15) 

田村@関西帰省中

お帰りなさいませ。
実はここ最近、あちこちでウォーゲームフリーミアム論を吹いています。古角さんの反応はイマイチでしたが、中黒編集長とは色々話が弾みました。拙サイトでもぶち上げたのですが、如何でしょうか?
by 田村@関西帰省中 (2009-12-17 20:29) 

しおさく

仕事の経験上、価格設定には3つの観点があると思ってます。
某成熟重厚長大産業の一企業での手法を紹介します。

第1は"コストプラス":商品作成にかかったコストに欲しい利益を足して価格を設定する方法。
昔ながらの方法ですが利益が確保できるのである意味健全。売れるかどうかは不明。

第2は"ノミナルプライス":3980円とか対象の商品単体でいくらで売るべきか、を追求した設定方法。いかにユーザーにとって買いやすい価格にするか、前出の5000円以下、などはこれに当たります。

第3は"マーケットプライス":競合他社との価格と価値の差をもって価格設定する方法。例えば某社の雑誌+ゲームがいくらだから雑誌がない分差し引いて、でもこちらはいくらプレミアムを設定できるかを加える(山崎さんのネームバリューやゲームの質などもここに入ります、マイナスもあり得ます)。

気になるのはユーザーの嗜好がゲームにあるのか、記事にあるのか、とかゲームの質をどう評価するのかなど不透明な部分も多く簡単に評価はできませんが、販売数量の実績から勘案すると今回設定された価格は概ね良いかと思います。あとは限界利益がどのポイントかによってどこまで価格設定できるか(あえて限界利益についてはふれません、採算度外視は個人商店では長期在庫品でない限りあり得ないと思いますので)によって決まるでしょう。

次に課題となるのはコストでしょうか?しかしこれも商品の質と裏返しになるものがほとんどですのでなかなか難しいですね。
by しおさく (2009-12-18 11:38) 

Mas-Yamazaki

田村さま: コメントありがとうございます。XoDに書かれていた『フリー』の話は、ゲームエイプさんのリンクから飛んで、既に拝見していました。いちねんせいさんのブログに出ていた三笠の写真にも本が写っていたので、あ、田村さん買いはったんや、と思っていました(笑)。私は、仕事が忙しくてまだ買っていませんが、こばへん氏のトウィッターに告知が出ていたのを見て、限定1万人?だったかの「無料PDF版」で少し内容を読むことができました。

フリー版とプレミアム版を用意して、後者で収益を上げるというビジネスモデルは、今後かなり一般的になっていくと私も思います。PDFという形式がスタンダードになり得たのも、アドビさんがアクロバット・リーダーのCDをタダでばらまいたり、いろいろな機器の取説をPDF版でリーダー込みのCDにして添付したことが大きかったと思いますし、それで使い勝手の良さを実感すれば、自分のファイルをPDF化するための有料アプリを購入するという強い動機になると思います。

VASSALについては、いまだ私はチンプンカンプンなので(笑)、過去のオリジナル・ゲームをモジュール化するという計画にもぜんぜん着手できてはいませんが、やり方を理解して作業時間をとれるようになったら、前向きに取り組んでみたいと思っている事業のひとつです。VASSAL版の配布によって、正規版の売上げが落ちるとは、私も思いませんし、逆にゲームをプレイすることで、購入の動機につなげることも可能だと思います(ただし、そのためには「面白いゲーム」である必要がありますが・笑)。

中文版の展開と言うのも、なかなか有望なアイデアだと思います。前にブログでご紹介した台湾のゲーマーとのやりとりの中でも、けっこういろんなゲームが中文圏で流通していることがわかりましたし、日中のゲーマー同士の交流というのも面白いかと思います。

あと、田村さんが書かれていた話とは少し文脈が異なりますが、今書いている『ポーランド1939』の仕事が終わったら、DTPゲームをデザインされている方向けの「素材データ」をシックス・アングルズのサイトで無料配布しようと考えています。配布するのは、A1からA4までの各サイズのブランク・ヘクスシートのデータと、各種兵科記号を並べたイラストレータ用のベクター・データで、あとは数字と文字をご自分で用意していただければ、比較的簡単にユニットを作成することができます。

地図の地形については、基本的には各自で作成していただく形となりますが、湿地や森、都市のパターンについては、イラストレータの「パターン」として使える地形素材の形で配布できるかと思います。いわば、昔ホビージャパン社やツクダホビー社から出ていた「デザインキット」のデジタル版とも言うべき内容ですが、私はこれでお金儲けする気はないので、ミニゲームからフルサイズゲーム、さらにはビッグゲームまで、この素材を活用してオリジナル・ゲームを作っていただけたらと思います。
by Mas-Yamazaki (2009-12-18 20:47) 

Mas-Yamazaki

しおさくさま: コメントならびにご教示ありがとうございます。上に書かれている分類で言えば、今までのシックス・アングルズは、1番の方法で設定してきましたが、今後は2番目と3番目の方法も採り入れようかということになります。特に2番目の基準は、相対的ではなく絶対的な意味を持つので、社会全般の景気なども考慮に入れる必要があるかという気がします。

値段を4500円にしても、6090円の時と同じだけしか売れなかったら、もうあきらめるしかありませんが(笑)、とりあえず「需要と供給のバランス」や「お客さんが私の作るゲーム・パッケージ(ゲーム本体に加えて本誌の内容やグラフィック、コンポーネントの品質などを含めたトータルなパッケージ)にどれだけの価値があると考えておられるか」といったことを模索しながら、慎重にこの出版事業を進めていこうと思います。
by Mas-Yamazaki (2009-12-18 21:13) 

tyk

SIX ANGLESが価格改定としりました。
たいへん買いやすくなりました。
正直6000円台ですと、非常に吟味して買っていたのですが(ノルマンディと、パウルス6軍のみでした)、改定後の3000円であれば、発売するもの全て買うつもりです。
過去で在庫であるものはすべて購入させていただきました。

by tyk (2011-03-26 02:05) 

Mas-Yamazaki

tykさま: コメントならびに商品をご愛顧いただき、ありがとうございます。

ただ、念のためにご説明させていただきますと、現在半額にて販売しております商品は、いずれも定価で充分な数が売れたことにより、最終的に「残部を半額」という選択をとることが可能になりました。言い換えれば、最初から全ての部数を3000円で売ることは、制作費や私の利益等を加味すると、事実上不可能であることを、ご理解いただければ幸いです。

第14号の『ベアズ・クロウ』は、ハーフサイズのゲーム3個入りで、とりあえず4500円+税で出版する予定ですが、現在のコンポーネントのクオリティを維持しながら、これよりも価格を下げることは、かなり難しいと思います。

以前にも書きましたが、シックス・アングルズの方針として、マップやユニット、チャート等の品質(紙の厚さなど)を落として価格を下げる代わりに、品質面での付加価値の増大によって、買って下さった方に満足していただけるよう、努力していこうと考えています。

今後とも、よろしくお願いいたます。
by Mas-Yamazaki (2011-03-28 23:58) 

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