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2010年11月11日 [その他(ウォーゲーム関係)]

関東遠征から帰還した頃から、気温がだいぶ下がってきましたが、今週も引き続きハードカバー本の執筆に没頭中です。休憩の時に、ネットでいろいろとブログなどを見ている中で、非常に示唆に富んだ内容の記事がありましたので、ご紹介させていただこうと思います。

Sideway-Shuffle 作家・市川丈夫の卓上ゲーム日記
【Web Link】「ゲーム猿のUstreamで生放送」NGワード編

シミュレーション・ゲーマーのコミュニティにおいて、ネット上・実社会上を問わず、ゲーマー相互の関係をいかに良好に保つかという問題は、おそらく新規参入者を増やすことと同等、あるいはそれ以上に、重要である気がします。なぜなら、せっかく現役ゲーマーの勧誘などの努力が実を結んで、新規のゲーマー候補生の方がこのホビーに関心を持って「ちょっと覗いてみようか」という気持ちになったとしても、現役ゲーマー間の雰囲気が悪ければ、すぐに関心を失って去っていくだろうと思われるからです。

もちろん、多くの場合は「意図的に他者との関係を壊そうとしている」わけではなく、相互の認識の違いや好みの違いなど、ごく些細な点から始まった「ズレ」が、次第に大きくなっていく、というパターンではないかと想像します(私の交友関係などごく限られているので、あくまで推測ですが)。そして、上にご紹介したブログの記事は、そういった「ごく些細な点」の段階で、お互いの意図を正しく把握し、片方または双方が相手の意図を悪いほうに解釈するという好ましくない展開を防ぐことで、コミュニティの人間関係をより好ましい方向に向けよう、という提言であると、私は感じました。

私事に話が飛んでしまって恐縮ですが、4年前に妻と結婚した当初、家の中では数え切れないほど、些細な理由でケンカを繰り返しました。しかし、冷静に頭を冷やしてお互いの言い分に耳を傾けてみると、それぞれ相手が無意識、あるいは無頓着に行った(自分の気に入らない)行動や発言を、勝手に「意図的な(つまり自分がそれを気に入らないことを相手が承知した上での)もの」と解釈して、自分の頭の中で相手への「怒り」を沸騰させるというパターンに陥ってしまったのが、ケンカの原因であることがわかってきました。その後、お互いに「こういうことをされると嫌だ」とか「こういう言い方は気に障る」ということを、日常会話の中で相手に告げるようになって、ケンカの回数は急激に減ったような気がします(まだゼロには到達していませんが・笑)。

シミュレーション・ゲーマーのコミュニティにおいて、ゲーマー同士が会話する場合でも、同様に「相手も自分と同じ感覚や価値判断基準の持ち主だろう」との思い込みから、うっかりして相手の気分を害するような台詞を口にしてしまう(またはそれに類する行動をとってしまう)可能性は、大いにあると思います。そんな時、「自分(の考え・解釈・流儀など)が(唯一)正しい」という前提から会話をスタートするのではなく、お互いの意見や認識を尊重しようという柔らかい態度で相手と接することで、不要な摩擦や紛糾をある程度回避できるかもしれません。我々がみな若かった頃にこのコミュニティを荒廃させた「ゲーム派対シミュレーション派の論争・対立」の経験は、多少の年輪を重ねた今、同じ轍を踏むことを避けるための「共有できる歴史」として、有効に活用できる気もします。

そして、参加者みんなが普段の生活で公共マナーを守るのと同じような感覚で、あまり窮屈に考えずに少しずつ手を貸すことで、シミュレーション・ゲーマーのコミュニティを「いつでも積極的に参加したいと思える、楽しくて魅力的な場所」という形で維持管理できれば、少なくとも現役のゲーマーが「悪い空気に嫌気が差して」去っていくという展開を減らしたり、あるいは新規参入の新人さんが「居心地が良くて楽しい場所」として定着してくれる、という展開を増やしたり、ということも、もしかしたらあるかもしれません(この部分は願望が色濃く投影された仮定の話です)。

私もこのホビーを愛する一人として、ネットや実社会でゲーマーと接したり、ブログや出版物(シックス・アングルズ)の記事などで意見を表明したり、サークルの例会にお邪魔したりする機会が多々ありますが、自分の発言や行動がコミュニティの中でどのように受け止められているのか、といった点に、今後はますます注意しながら、いろいろな活動を行っていこうと思いました。

また、記事の中でリンクが貼られている2つの記事も、非常に参考になるものでした。

1つは、「フィンランドの5年生が作った議論のルール」というもので、経営者向けの本で解説されていた内容を、ブログの筆者の方がわかりやすく紹介されています。他人を指差して「いるいる、こういう人」と言うのは簡単ですが、自分にとってこれらの「ルール」がどれほど価値があるのか、価値があるとすれば自分はそれを守れているか、といった点を改めて考えてみる、良いきっかけになりました。

もう1つは、「甲野先生の最後の授業」と題されたブログ記事で、リンクをクリックして出てきたページのトップの部分にある内田樹さんのお名前を見て「あっ」と思いました。内田さんの著書やブログは、以前から時々拝見していますが、この記事は迂闊にも見落としていました。記事の内容は、合気道の先生からの「教え」と、それについての内田さんの論考という構成ですが、今回の記事も深く唸らされる言葉が多々ありました。

内田さんは、「ネット上に自分が発表したものは、どなたでも自由に引用・転載してもかまわない」と著書で書かれている(光文社新書『街場のメディア論』p.37)ので、無礼を承知で、いくつか引用させていただきますと……
人間は自分のことは適切には評価できない。でも、「私のことを適切に評価してくれる人」を探し当てることはできる。自己評価とはその能力のことを言うのである。

「私のような人間ばかりの世界」で暮らしても「平気」であるように、できれば「そうであったらたいへん快適」であるように自己形成すること、それが「倫理」の究極的な要請だと私は思う。でも、これはむずかしい課題である。ふつうの人は「世界が私のような人間ばかりだったら」気が狂ってしまう。他者のいない世界に人間は耐えられないからである。だから、論理的に考えれば、「私のような人間ばかりでも平気な『私のような人間』」とは「一人の人間の中に多数の他者がごちゃごちゃと混在している人間」だということになる。

また、合気道の姿勢としての「キャスター=風見鶏理論」の箇所にある
攻撃の入力があったときに、それに防衛的に反応するのではなく、攻撃の入力そのものを「自分自身の運動の材料」にして立ち上がる動きを以て応じる。防衛的、反撃的に考えると、「攻撃を逃れる」という体制になる。そうではなくて、「攻撃」そのものを滋養として成り立つ体制をつくる。

という辺りは、フィジカルな側面だけでなく、メンタルな問題についても応用可能な示唆に富んだ内容だと思いました。

あと、内田樹さんと言えば、今年の8月に盛り上がった「出版バブル論議」についての深い考察と、内田さんご自身の決断を読んで、出版業界に携わる者の1人として大変感銘を受けた記憶が鮮明に残っています。

内田樹の研究室
ウチダバブルの崩壊

茂木健一郎 クオリア日記
当事者として

内田樹の研究室
縮み行く世界

独ソ戦のハードカバー本は、予定よりだいぶ進行が遅れてしまっていますが、私は幸いにして「バブル」とは縁の無い環境で仕事ができる静かな状況ですので(笑)、1ページ1ページに価値の詰まった(単に情報量が多いという意味ではありません)良い本に仕上げたいと思っています。
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市川丈夫

ご紹介ありがとうございました。
今回は、たまたま発生したネットおしゃべりの中から、
僭越ながら皆さんの優しい言葉をまとめさせていただきました。

「NGワード」や「NG行為」は腫れ物的な存在ですが、
それを生み出すゲーマーの心理をくみとることで、
もっと柔らかで、より良いゲーム環境になればいいなと思っています。

それから御執筆中の独ソ戦本も期待しております。
また、どこかのゲーム会等でお会いできればその時は宜しくお願いします。
(先日のYSGA例会にもお誘いいただいてたのですがあいにく仕事で……)
by 市川丈夫 (2010-11-12 01:11) 

作戦級の僕

市川丈夫様、ならびにその他の皆様のTwitter上でのやりとりを読ませていただきました。ゲームという趣味を取り巻く環境を、いい状態で保つには、というブレスト形式の対話を、今はこういう道具を使って離れた場所に住む多人数でできるのですね~。私も微力ながらご提言に賛同いたします。市川様のご提言が、一人でも多くのウォーゲーマーの目に触れますように。。。
by 作戦級の僕 (2010-11-12 18:55) 

Mas-Yamazaki

市川丈夫さま、作戦級の僕さま: コメントありがとうございます。ご指摘のとおり、『「NGワード」や「NG行為」は腫れ物的な存在』というのは一面で事実だと私も思います。ただ、同じような疑問や問題意識、あるいは不快な気分などを、その場を共有する多くの人が心の中で感じているのに、誰も口に出さないままで時間が流れていくと、それはいつまで経っても解決できないまま、ということになってしまいますので、今回のような形での問題提起は、コミュニティに参加する一員として、敬意を払いつつ賛同いたします。また、関東には来年も数回出向く予定ですので、もしよろしければ、どこかでお会いしましょう。

Twitterでの意見交換については、私も感銘を受けました。私は、まだアカウントを取得していないのですが、こういう場に参加できるのであれば、自分も参入(笑)してみようかな、という気になりました。
by Mas-Yamazaki (2010-11-18 19:20) 

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