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2013年9月9日 [その他(戦史研究関係)]

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今日は新刊雑誌の告知です。

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まず、おなじみの『歴史群像』誌第121号(2013年10月号)ですが、今回の私の担当記事は「デミヤンスク包囲戦」。1942年1月から1943年2月にかけて、東部戦線の北方軍集団戦区で繰り広げられた過酷な包囲戦を、独ソ両軍の視点から詳細に解説しています。

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ソ連軍は何を意図してデミヤンスクを包囲したのか。彼らの真の意図は何だったのか。対するドイツ軍は、なぜデミヤンスク突出部を放棄せずに頑強な抵抗を行ったのか。ドイツ空軍がデミヤンスクに対して行った、補給物資の空輸作戦は、いかにして実施され、どんな困難に直面していたのか。

この戦いの「全体像」について書かれた日本語の本はおそらく皆無(特定の視点から部分的に言及した本はいくつかありますが)だと思いますが、今回の記事は写真や地図、戦闘序列などの図版も豊富で、独ソ戦に関心のある方には特にお勧めです。

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もう1冊は、同じく学研さんの新刊ムック『ヒトラーと第二次大戦の真実』。私の担当記事は「ヨーロッパ大戦の名将たち」「第二次世界大戦欧州戦争を総括する(1. 枢軸陣営はなぜ連合国陣営に敗れたのか 2. 欧州大戦は世界に何をもたらしたか)」「もっと学びたい人のためのブックガイド」です。

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テーマの関係上、私の担当記事ではあまり「新しい情報」は書けませんでしたが、こういう媒体(定価780円でコンビニでも売られるムック)で地道に「新しい情報」を紹介して「ファン」と「マニア」の距離を縮められるような近道を提供できれば、と思っています。

ヒトラーと第二次大戦の真実』に掲載されている、守屋純氏の「偽装された『国防軍潔白神話』」は、戦史ファンに一読をお勧めの記事です。ある種の陰謀史観のようなタイトルですが、東西冷戦期にソ連/東側だけでなく西側の戦史研究も、政治の影響を色濃く受けていた事実とその背景を、わかりやすく解説しています。

「戦史マニア」はネットや洋書で日々新たな情報を仕入れて知識を更新していますが、気楽な「戦史ファン」は、そんなに駆け足では知識を更新しません。その結果、両者の差はどんどん開いて行きます。ここで守屋氏が書かれている「国防軍潔白神話」の話もそうで、私の著書『宿命の「バルバロッサ作戦」』でも少し書きましたが、東西冷戦時代に形成された「冷戦バイアス」を外して戦史を読むと、旧い本からでも新たな情報(正確には「目にしてはいたが意味を読み落していた情報」)を少なからず読み取ることが可能になります。

こうした「戦史マニア」の間ではかなり昔から「常識」として周知されているような歴史的事実や解釈が、「戦史ファン」の間では全然知られていなかったりします。トンネルが深く掘られれば掘られるほど、先端を進む人と、浅いところにいる人との距離は遠ざかり、やがて直接会話できないほどに隔絶した関係になってしまいます。

昔から様々な分野で存在し、ネットの登場でさらに加速しているかに見える「マニア」と「ファン」の乖離現象について、思うところを書いたツイートを下記のリンク先にまとめてみました。関心のある方は、ぜひご一読ください。

「マニア」と「ファン」の乖離あるいは断絶について

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コメント 2

Qazana

 久しぶりに投稿させていただきます。

 「マニア」と「ファン」の乖離あるいは断絶についてを読んでみてちょっと気になったのは、以前の記事(2009年8月2日)に私がAlmera WRC名義で投稿させてもらったコメントと、本文やコメントで山崎さんが書かれていることと根っこのところで同じではないのだろうかということです。

 あのときの記事は“ベテラン”、“初心者”の切り口でしたので全く同じと言うことではないでしょうが、ファンとマニア、初心者とベテラン、この辺の意識の違いがこの問題の解決の糸口にはならないでしょうが、一つのヒントになるような気がしますし、SLGコミュニティーの縮小もこの観点から見ると何か見えてくるかも知れません。

 それではますますのご活躍をお祈りいたします。

by Qazana (2013-10-02 18:40) 

Mas-Yamazaki

Qazanaさま:コメントありがとうございます。ご指摘のとおり、「入門用ゲームと謳うことで結局は自分たちの中で無意識のうちに差別化を計っている」マニア、というのは、今回のツイートで書いた「自尊心の拠り所を趣味の世界における優越性に置いてしまった」マニアと同根、あるいはもっとはっきり言えば同一人物である可能性も高いと思います。

とりあえず外部から見れば「マニア」の一員である我々にできることは、コミュニティ内部だけの視点に囚われず、常に外部あるいは第三者的な視点で内部の状況を見る習慣をつけることだと思います。その上で、コミュニケーションの一環として「自分の趣味」を外部の人にも紹介すれば、コミュニティ内の水や空気が淀むこともないだろうという気がします。「そこから先の話」は、コミュニティの内部ではなく、外側にいる人に任せるのが最善でしょう。
by Mas-Yamazaki (2013-10-04 00:21) 

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