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2014年7月19日 [その他(戦史研究関係)]

今回も告知を2つほど。まず、以前から何度か触れています文庫本『クルスク大戦車戦』が、潮書房光人社さんの「光人社NF文庫」の新刊として出版されました。

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かなり前の段階で担当編集者さんより「発売は8月後半です」と聞いていたので、ずっとその予定だと思っていましたが、入稿後の進行がスムーズに運んだので、早くなったようです。「光人社NF文庫」は、戦史関連書籍を扱う文庫本シリーズとして歴史があるブランドで、私の書庫にも「薄黄緑色の背表紙」の文庫本はたくさん並んでいます。

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文庫本『クルスク大戦車戦』は、第二次世界大戦最中の1943年7月、中部ロシアのクルスク周辺で繰り広げられた一大決戦の顛末と、その背景を詳しく記した研究書です。同テーマの決定版となることを目指して、長い時間をかけて調査と執筆を行いましたが、それなりによく知られた有名な戦いについて、改めて新しい本を出す必要があるのか、と思われた方も、中にはおられるかもしれません。そうした疑問に答えるため、本書の「あとがき」の一部を、ここに転載してみます。

 第二次世界大戦の終結から、来年でちょうど七〇周年を迎え、この間に様々な主題の戦記や戦史研究書が世に出てきました。日本でも、太平洋戦域とヨーロッパ戦域の両方について数多くの文献が出版され、重要な戦いについてはもう全ての情報が出尽くしたかのように思われている方も多いかと思います。

 しかし実際には、二十一世紀を迎えた現在もなお、当時の事実経過に関する新たな発見や歴史的文脈の再評価が、世界各国の研究者の間で続けられており、本書の主題である「クルスク大戦車戦」についても、二十世紀後半における主流的な認識とは大きく異なる実相が、今では明らかになっています。

 例えば、クルスク会戦の天王山とも言うべき「プロホロフカの戦い」は、かつては両軍の戦車が数百輌単位で入り乱れて近距離から撃ち合う「大混戦」という形で語られてきましたが、旧ソ連崩壊後に明らかになった史資料などにより、実際にはドイツ軍の一方的な「戦車狩り」とも言うべき待ち伏せの対戦車戦闘で、ドイツ側がこの戦いに投じた戦車の数もさほど多くはなかったことが判明しています。

 本書は、今まで日本の文献ではあまり紹介されていなかった諸々の「更新された事実関係」を整理した上で、独ソ戦を語る上で欠かすことのできない重要な会戦であるクルスク大戦車戦に、戦術・作戦・戦略・政治・人物・兵器・地図などの様々な方向から光を当て、この大会戦の全体像を浮かび上がらせようという試みです。


本書の構成は、全八章から成っており、第8章は「データで読むクルスク大戦車戦の実相」という表題で、シックス・アングルズ第13号の同名収録記事を再録したものです。後になって気づいたのですが、この内容を踏まえれば、あとがきに書いた文章は「重要な会戦であるクルスク大戦車戦に、戦術・作戦・戦略・政治・人物・兵器・地図・データなどの様々な方向から光を当て」とすべきであったか、と思います。

今までの学研M文庫の著作と同様、今回も自分で制作した戦況図を多数収録しています。地図は全部で25点あり、これに「データで読むクルスク大戦車戦の実相」用の図表データが9点、そして『ポーランド電撃戦』の時と同様に戦車の側面図を計16点(ソ連戦車8種、ドイツ戦車8種)作成しました。収録した戦車の図版は、今回新規に作成したものです(ソ連側は、M3リーやチャーチル、ヴァレンタインもあります)。また、以前から親交のある廣田厚司さんにご提供いただいた、クルスク戦当時の両軍の写真も豊富に収録されています。

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全441ページで、価格は900円+税となっています。クルスク戦についての予備知識がない読者の方も、独ソ戦マニアを自認される読者の方にも、同じようにご満足いただける内容になったのではないか、と思います。興味のある方は、ぜひ書店で手にとってご覧下さい。アマゾンでの販売も、既に開始されているようです。

山崎雅弘『クルスク大戦車戦』(光人社NF文庫)


また、ベストセラーズさんの歴史雑誌『歴史人』の別冊『世界史人』最新号「第2次世界大戦の真実」も発売となりました。

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私の担当記事2本「第2次世界大戦はなせ起こったのか?」と「ドイツ軍の電撃戦はどのように行われたのか?」が収録されています。共にわかりやすさを重視した概説記事で、計28ページあります。こちらも、興味のある方は、ぜひ書店やコンビニで手にとってご覧下さい。

『世界史人』「第2次世界大戦の真実」(KKベストセラーズ)


箱入りゲーム『騎士鉄十字章』は、ようやく最終的な製品仕様が固まり、制作フェイズへと移行しました。既に駒シートの印刷と型抜きは台湾の印刷所で始まっています。プレオーダーの募集も近々開始しますが、今回は従来の「モノクロコピー資料」とは異なる、ちょっと豪華な「プレオーダー特典」をおまけに付ける予定です。


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