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2017年12月30日 [その他(戦史研究関係)]

いよいよ2017年も今日を含めてあと二日となりました。12月の主な出来事を、今年最後の記事として報告します。

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まず、12月5日、東京の「神楽坂モノガタリ」という書店で、ジャーナリストの布施祐仁さんとトークイベントをしました。タイトルは『アメリカと北朝鮮の戦争、「負ける」のは誰か──今、知っておきたい安全保障の基礎知識』で、前半は拙著『「天皇機関説」事件』で描いた1935年頃の日本と現在の日本に共通する風潮の増加について説明し、後半では北朝鮮とアメリカの対立と緊張を、日本人はどう捉え、何に注意すべきかという話をしました。

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布施さんとお話するのは、これが三回目ということもあり、気心が知れた部分もあって、リラックスしていろいろ話すことができました。会場のお店も、サロン的ないい雰囲気の空間でした。この時に話した内容については、近々集英社の『週刊プレイボーイ』のネット版で、前後編に分けて紹介される予定です。


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そのあと、12月11日から18日までは、取材を兼ねた旅行で香港、マカオ、深圳と虎門(中国)、台湾の台北と宜蘭に行ってきました。香港、マカオ、虎門では、アヘン戦争と清国側要人の林則徐に関連する博物館や砲台跡などを見て回り、『歴史群像』次号記事「アヘン戦争」の校正も現地で行いました。

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香港での一泊目は、尖沙咀の「九龍美麗華酒店(ザ・ミラ)」のパークビューの部屋。映画『シチズン・フォー』を観た人にはおなじみの、エドワード・スノーデン氏が一時期滞在したホテルです。少々お高い宿なので、今回は最初の一泊のみでしたが、広くてとても快適な部屋でした。

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香港では、シミュレーション・ゲーム(ウォーゲーム)仲間と会食しながら、歴史談義やゲーム談義で盛り上がりました。第二次世界大戦とその前後にイギリスの植民地だった香港では、大陸中国の共産党目線とも、台湾の国民党目線とも違う歴史認識を今も継承しているのが面白いところ。明や清の時代への関心も高い。

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当日会食した香港人デザイナーの一人が制作中の、第二次大戦期における日本軍の香港侵攻を描いたシミュレーション・ゲーム「Glory Recalled」。1941年12月8日に、日本軍がハワイの真珠湾を攻撃した事実はよく知られていますが、同時に英領香港にも侵攻した事実を知る人は日本では意外と少ないように思います。

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香港の炒飯(チャーハン)。20年ほど前に初めて訪れた時、路地裏の店で大きな中華鍋を振って豪快に作っていた炒飯の味に感動して以来、行くたびに必ず炒飯を食べています。日本の店でよくある、くどい味付けの炒飯と違い、香港の炒飯はさっぱりした風味で、私の好みに合う。どこで食べても外れがない感じ。

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香港名物のトラム(路面電車)。ゴトゴトと激しく揺れて、乗り心地は良いとは言えない乗り物ですが、香港島をただ横断するだけでも景色の変化をたっぷり楽しめるので、観光客には魅力的な存在です。乗車賃も安い(一回2.3香港ドル=約33円)。

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香港東部の筲箕灣(サウケイワン)というところにある「香港海防博物館」。かつて砲台施設があった場所を改装した戦史博物館で、香港がイギリスに割譲されるきっかけとなったアヘン戦争の展示が充実しています。

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アヘン戦争当時の清国と英国の軍船の模型。両国の軍事面での力の差は圧倒的でした。

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館内には、アヘン戦争の戦いを描くジオラマもあります。近代的なライフル銃やライフルド・マスケット銃を持つイギリス兵を、火縄銃と槍、刀、旧式の大砲で迎え撃った清軍。

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第二次アヘン戦争(アロー戦争)の講和条約(北京条約)の複製で、末尾には「大英一千八百六十年十月二十四日」の日付があります。

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博物館のある鯉魚門砲台は、1941年12月の日本軍による香港侵攻作戦でも激戦地となり、日本軍の第38師団第229連隊がこの一帯に上陸して砲台を攻略しました。当時の弾痕が今もあちこちに残っています。日本軍占領下の香港では、食糧と燃料の不足を軽減するため本土への移住や労務が強制されましたが、餓死者も発生していました。

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香港に滞在したのは11日〜15日で、この間に日帰りで、マカオ(澳門)と中国本土の深圳、虎門にも出かけました。上の写真は、中国の深圳と広州の中間にある虎門の、アヘン戦争に関連する史跡。林則徐が四角い池を二つ作らせて大量のアヘンを廃棄した場所で、同サイズの池と「鴉片(アヘン)戦争博物館」、当時使われた大砲などの展示があります。

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1839年に虎門で行われた、アヘン廃棄作業を再現した「鴉片戦争博物館」の展示。アヘンはただ燃やしても成分を完全に消せないため、塩水を満たした池に、英国商人から没収したアヘンを投げ込み、石灰との化学反応で成分を消した上で、川に流しました。この作業が、実質的に、アヘン戦争を引き起こすきっかけとなりました。

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中国の虎門西方で珠江の蒲州水道に架かる虎門大橋のたもとに、「威遠砲台」というアヘン戦争当時の砲台跡地が残っています。外洋から広州へと通じる重要な水路の狭隘部にあり、沿岸部と丘陵部に大砲40門を配置した複合砲台でしたが、大砲の射程はイギリス軍艦の搭載砲よりも短く、砲撃戦に敗れて壊滅しました。

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威遠砲台のすぐ東には「海戦博物館」という戦史博物館が。名称とは異なり、アヘン戦争の海戦だけでなく陸上戦闘についても豊富な展示があります。

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清国にアヘンを売りつけて利益を得ていた英国商人デント、マセソン、ジャーディン。英国の武力行使の背後には、彼らのロビー活動が存在しました。

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海戦博物館」には、清国の水軍指揮官として活躍した関天培や、第二次アヘン戦争(アロー戦争)で活躍した清国のモンゴル人指揮官センゲリンチンに関する説明、中国では過大評価気味とされる三元里での反英民衆暴動に関する説明などもあります。清英両軍の銃や大砲、軍艦の違いなどの比較展示も興味深い内容。

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こちらはマカオの写真。北部の公園で「中国象棋(シャンチー)」をプレイする地元のおじさんたち。大阪の新世界にある碁会所や将棋の対戦場の雰囲気と似ています。あちこちで盛り上がっていました。

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マカオの街並み。今は中華人民共和国の特別行政区の一つで、香港から高速フェリーで行けます。1557年から1999年まで、ポルトガルの居留地/植民地であったマカオには、ポルトガル風の街区があちこちに残っています。

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マカオにある歴史的建造物の中でもシンボル的な存在の、聖ポール大聖堂。正面のファサード以外は火災で失われ、今は倒れないように補強されたファサードだけが史跡として保存されています。イエズス会のフランシスコ・ザビエルは、マカオを拠点にキリスト教のアジア布教を行いました。映画『沈黙』でも、日本の長崎に向かう宣教師がマカオに滞在するシーンがありました。

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今回マカオを訪れた理由の一つは、アヘン戦争で重要な役割を果たした林則徐の記念館「澳門林則徐記念館」を見学することでした。観光客が多いマカオ半島南部から離れた北部にあり、貸し切り状態で静かに鑑賞できました。マカオにも巡閲で訪れた林則徐は、治水事業や外国文化への着目など、有能な行政官としての実績も多く残しています。

香港での滞在を終えたあと、台湾の台北へ移動。

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台湾では、シミュレーション・ゲーム(ウォーゲーム)とボードゲームの友人たちと会い、ゲームをいくつかプレイしました。最近は、国内よりも海外の旅先での方がゲームを遊ぶ機会が多くなっていますが、来年はなんとか時間をつくって、大阪(ミドルアース)や横浜(YSGA)の例会に参加したいと思っています。台湾人ゲーマーの中には、日本のゲームマーケットに参加したという人もけっこういて、日本製のゲームもよく遊ばれています。



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今年は全体的に、取材旅行や資料の収集に時間とお金を費やす「仕込みの年」となりました。2017年における著作の刊行は、『「天皇機関説」事件』(集英社新書)と『[新版]独ソ戦史』(朝日文庫)の二冊でしたが、2018年は単行本二冊と新書一冊、文庫二冊が出る予定です。戦史・紛争史研究家としての執筆活動をメインに据えつつ、それ以外の仕事にも積極的に挑戦していく所存ですので、来年もよろしくお願いいたします。

それでは、皆様もよいお年を!


【おまけ1】

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ブレードランナー2049』を劇場で観てきました。これは凄い。良い意味で予想を完全に裏切る完成度と内容の濃さで、映画二本分くらいの密度を感じました。あの世界観に魅力を感じる人は、ぜひ劇場で。前作を観ていない人は、必ず観てから行くこと。そうしないと、たぶん1/4くらいしか意味がわからないでしょう。

観る前に得ておく情報は、前作だけで十分。パンフレットの内容も、鑑賞前に読まないで正解だったと思います。ネットで公開されている「前日譚」と題された短編三本も、私は事前に観ることをお薦めしません(私は鑑賞後に観ましたが、先に観なくてよかったと思いました)。今回は異例にも、予告編の動画なども一切観ずに、ただ前作だけ頭に入れて観に行ったおかげで、冒頭からエンディングまで、すべてのシーンを「初見」として新鮮に味わうことができました。

どこへ連れて行かれるのか、最後までわからない。乗り物も街の風景も、室内のデザインも、一風変わっているものの全て説得力があり、よくここまで前作の世界観を継承し、なおかつ+αを違和感なく付加したと思います。私にとって、今年観たベスト1の映画です。


【おまけ2】

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香港の地下道にあった映画『星球大戦』の広告。

「黒暗勢力承継人」

明日の大晦日に、私も観に行く予定です。
 
 
 
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