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2014年3月25日 [その他(戦史研究関係)]

今日は電子書籍の話題など。前回の記事で書いた東京出張の後、クルスク文庫本の執筆に専念する関係でずっと停止していた電子書籍出版事業(六角堂出版のアマゾンKindle版)を再開し、3月14日から18日までの5日間に、以下の6冊を刊行しました。タイトルの文字をクリックすれば、アマゾンの商品ページを開けます。


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第31弾『ブダペスト包囲戦』

第二次大戦末期に東欧のハンガリーで繰り広げられた独ソ両軍の攻防戦と、その傍らで発生したハンガリー軍とルーマニア軍による「旧枢軸同盟国同士の戦い」を解説。



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第32弾『光州事件』

1980年5月に韓国の光州で発生した悲劇的事件の顛末と背景。同時期の日本とは全く異なった道を歩んできた韓国の現代史について、その概要を知る一助となれば幸いです。



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第33弾『米ソ宇宙開発競争』

ガガーリン(表紙)の人類初宇宙飛行やアポロ11号等の重要な出来事に加え、記事の最後では新たなプレイヤーとして登場した中国の宇宙開発についても触れています。



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第34弾『フォークランド紛争』

1982年に南大西洋で発生した、イギリスとアルゼンチンによる領土紛争を解説。尖閣問題との類似点も多いこの紛争について、理解を深める一助になれば幸いです。



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第35弾『インドネシア独立の戦い』

オランダ植民地「蘭印」はいかにして独立を勝ち取ったのか。太平洋戦争期の日本は同国の独立運動とどう関わったのか。その背景を知る一助となれば幸いです。



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第36弾『クリミア侵攻作戦』

第二次大戦期のクリミア半島とセヴァストポリ要塞攻略戦をドイツの名将マンシュタインの指揮を中心に解説。国際的に関心を集めるクリミア半島とセヴァストポリ要塞の戦略的重要性とは。

電子書籍第36弾の『クリミア侵攻作戦』は、私が1999年(15年前)に『歴史群像』誌に寄稿した最初の原稿で、発表時のタイトルは「マンシュタイン戦記」でした。今とは少しスタイルが違う「戦記様式」の構成ですが、今回の推敲では文章の一部のみ手直ししました。昔の自分と対話するような気分になりました。

また、この刊行と合わせて、既刊の第1弾から第30弾までの価格を、150円から250円に改定しました。今後は1冊250円(原稿2本分の巻は350円)となります。改定の理由はいくつかありますが、アマゾンで規定している印税率の条件で、70パーセントにすると最低価格が250円となるため、それに合わせる形としました。

一昨年の10月にこの事業を始めた当初は、条件が35パーセントしかなく、また70パーセントの印税率は「対象の電子書籍をアマゾンKindleでしか販売しない」等の制約があり、しばらく様子を見ていました。しかし、個人が電子書籍を自由に制作・出版できるシステムの提供や整備という点で、アマゾン以外の関連企業は(私の見る限り)まったく「やる気がない」ように見えるので、独占販売の条件も受け入れることにしました。

事業開始当初は「iTunesで好きな楽曲を一曲ずつ買う感覚で」気軽に読んでもらえたら、と思い、150円でスタートしましたが、最近は250円の曲も増えているようです。以前より値上げになってしまい申し訳ありませんが、それでも「珈琲一杯分の価値はある原稿」だと思いますので、ぜひ今後もご愛顧いただければ幸いです。

アマゾンKindle版の電子書籍は、同社の専用端末を使わなくても、無料の専用アプリをダウンロードすれば、スマホやタブレット(iPhone、Android、iPod、iPadなど)でも読むことができます。複数の機器にアプリをダウンロードして、読み終わったページを同期しながら「続きは違う機器で読む」といった芸当もできます。

詳しくは→ Kindle無料アプリをダウンロード(Amazon)


第37弾以降のタイトルは、『マーティン・ルーサー・キングJr.』『ベルリン封鎖 1948』『蒋介石伝』『ルワンダ内戦』『チェチェン紛争史』などを予定しています。他の仕事と並行しながらの作業なので、次号の発売日は未定ですが、最低でも「第108弾」までは出し続ける所存です(今でちょうど3分の1に到達したところです)。今後の展開に、ぜひご期待ください。
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2014年3月15日 [その他(雑感・私生活など)]

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今週は月曜から水曜まで、二泊三日で東京出張に出かけてきました。今日はその話です。

昨年はいろいろあって一度も上京しないまま終わりましたが、執筆の仕事や主題研究などに関連する「深く掘り下げる話」ができる相手は、事実上東京に行かないといないので、今回もいろんな人と会食して様々な刺激を受けたり、新しい展開の道を示唆していただいたりしてきました。本当はもっと多くの人と会いたかったのですが、今月中に終わらせないといけない仕事がまだいくつも残っているので、水曜日に戻らねばならないのが本当に残念でした。

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出版関係では、学研さんや潮書房光人社さんの編集者さんと会食したり、現状進めている仕事の打ち合わせや今後の方向性の確認などを行いました。潮書房光人社さんからは、6月頃に一冊、文庫本を出版していただく予定です。本のタイトルは未定ですが、テーマは第二次世界大戦期の1943年7月に旧ソ連のクルスク周辺で繰り広げられた、いわゆる「クルスク大戦車戦」です。

クルスクに関連する書物は、日本でもいくつか出版されていますが、内容が既に古くなって「賞味期限」が過ぎていたり、内容がマニアックすぎて全体像を読み取りづらいものばかりであると思えたので、戦いに至る独ソ両軍の背景や戦略構想、ヒトラーの思考に影響を及ぼした政治的要素、両軍の参加部隊と戦車・航空機の解説、主な指揮官の横顔、そして最前線における実際の戦いの様相るまで、全体と細部の両方を手軽に見渡せるような内容の文庫本に仕上げようと思い、昨年末から取り組んできました。

原稿(400字詰原稿用紙換算で約600枚)は既に納品しており、現在は収録する地図(25点前後になる予定)と図版(戦車と航空機の側面イラスト)を制作しているところです。海外で2000年以降に出版された、クルスク戦に関する新しい文献も数多く参照して、戦史的に重要な意味を持つこの会戦についての新たな認識を、様々なレベルで読者の皆さんに提供できるのではないかと思います。関心のある方は、ぜひご期待ください。

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六本木ヒルズの屋上デッキから見た東京タワー。

また、会食の合間にはいつもと同様、美術館にも足を運んできました。今回観たのは、三菱一号館美術館の「ザ・ビューティフル 英国の唯美主義1860-1900」と、六本木の森アーツセンターギャラリーで開催している「ラファエル前派展」の二つです。私は同じ日の午前と午後に続けて観たのですが、この二つの展覧会は、実は作品の創作時期と作家が結構重なっていて(ウイリアム・モリスやバーン=ジョーンズ、ロセッティなどの作品は両方にある)、通しで観た後に全体を振り返ると、一方だけを観た場合よりも個々の作家に近づけるような気がしました。

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ザ・ビューティフル 英国の唯美主義1860-1900
(画像は公式サイトより)


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ラファエル前派展
(画像は公式サイトより)

「唯美主義」も「ラフェエル前派兄弟団」も、同時代には強い拒絶反応があったようですが、十九世紀のイギリスに生きた創造力あふれる「若い作家」たちが、当時の英国美術界を支配していた「良しとされる形式や慣習の踏襲」に反発し、「もっと自由に創作させてくれよ」「自分が魅力的だと思ったように描きたいんだよ」という素直な気持ちが画面にストレートに表れている作品が多いように感じました。「前衛(アバンギャルド)」と呼ぶには、あまりにも素直で礼儀正しい姿勢だったように思います。

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今回の展覧会二つで一番長く見入ってしまった作品が、右の「マリアナ」(ジョン・エヴァレット・ミレイ作)。同じミレイの有名な「オフィーリア」も隣にあって甲乙つけがたい存在感でしたが、私は「マリアナ」の方が好きです。出窓の外の木々、ステンドグラス、青いビロードの洋服、モデルの少し疲れたポーズ、椅子の赤、ろうそくの灯り、そして右下を走るネズミまで、ずっと観ていても全然飽きません。というか、家に欲しい(笑)。残念ながらポスターは無いので、今回はポストカードで我慢しました。左の「釈放令、1746年」もミレイの作品。彼の絵からは「そこにある自然への深い敬意」が感じられます。

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ウイリアム・モリスについては、今から5年前の2009年3月に東京都美術館の「生活と芸術──アーツ・アンド・クラフツ展」で壁紙などを観て気に入り、その時にミュージアムショップで買ったウサギ模様のTシャツは、今でもお気に入りです(上の写真)。職人気質の律儀そうな作家さんですが、詩人や政治活動家(社会主義者)という横顔もあり、興味の尽きない人物です。

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マッカーサーがGHQの本拠を置いていた第一生命ビル。

今月の残りは、前記したクルスク文庫本の地図と図版制作に加えて、『歴史群像』誌と『コマンドマガジン』誌の原稿執筆、そして六角堂出版からの電子書籍の刊行や『シックス・アングルズ』第16号「ベルリン陥落 1945」の準備作業などを行います。電子書籍については、今週から出版活動を再開しましたが、それについては次回の記事で書く予定です。

お忙しい中、東京で私との会食や面会に時間をとって下さった皆様、ありがとうございました。

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2014年3月9日 [その他(戦史研究関係)]

今日は雑誌記事の告知を2つ。まず、学研パブリッシング刊『歴史群像』誌の第124号が発売されました。

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私の担当記事「第一次世界大戦への道」は、この戦争が勃発した経緯を、直前に起きた二度のバルカン戦争を軸に、当時の欧州列強と周辺中小国の世界秩序(ワールド・オーダー)から読み解いています。日本では、あまり知名度が高くないバルカン戦争ですが、この二度にわたる戦争の背景、つまり当時のバルカン情勢を知れば、「サラエボ事件」(1914年6月28日、オーストリアの皇位継承者フランツ・フェルディナント夫妻がオーストリア領ボスニアのサラエボでセルビア系ボスニア人の若者に暗殺された)がなぜ第一次世界大戦の発端になったのかという理由を、より理解しやすくなるのではないかと思います。

次号の担当記事は、ドイツと英仏露三国の対立関係を軸に、第一次世界大戦の勃発経緯に迫る内容で、今号の記事と「組」になります。参戦国が多いこともあり、日本人にはわかりにくい第一次世界大戦ですが、「第三次バルカン戦争」(最新号の記事)と「東西欧州戦争」(次号の記事)に切り分けると理解しやすくなるかと思います。

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ちなみに、今号の巻末には、第一次世界大戦の戦況を文章と写真、そして戦況図で紹介する戦時グラフ誌『欧州戦争実記』の一部が採録されています。出版元は、博文館という当時の雑誌文化を担った出版社で、私も何冊か所有していますが、珍しい写真が多く(各国の政治家や将軍など)掲載されているほか、詳細な折り込みの戦況図は特に私にとって興味深い内容です。青島(チンタオ)攻略戦やセルビア戦線の地図などは、眺めていると当時の戦いの息吹が伝わってくる気がします。1914年8月から1918年6月まで、計100号(!)が刊行されました。

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ところで、私が『歴史群像』誌に初めて寄稿したのは、1999年の春夏号(第38号、当時は季刊だった)で、それからちょうど15年、冊数に直すと87冊になります。最初の原稿は、ドイツ軍の名将エーリヒ・フォン・マンシュタインのクリミア半島攻略をテーマにした「マンシュタイン戦記」でした。

第38号から最新号まで、一号も欠かさず毎号一本以上の本文記事を書いてきた筆者は私一人だけです(自慢御免)。記事の本数を数えたら、最新号で計94本で、あと6本で100本の大台に乗ります。今後も、編集部からの執筆依頼が続く限り、内容の充実した記事を書くようベストを尽くしていきます。

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あと、先月の話になりますが、国際通信社刊『コマンドマガジン日本版』第115号も発売になっています。私の担当記事は、シックス・アングルズ別冊第7号『ウエストウォール』に収録している4ゲームの1つ「アルンヘム」の内容紹介です。付録ゲーム「マーケット・ガーデン作戦」と一緒に、このゲームも楽しんでいただければ幸いです。

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記事の中では、製品本体に収録できなかった「選択ルール」にも触れています。これは、橋梁爆破の判定がサイコロの目に大きく左右されるという、SPI社の原版にある構造的問題を解消するために考案したものです。ドイツ軍プレイヤーは、大河の道路橋(戦後に「フロスト橋」と名付けられる、アルンヘムの鉄橋を含む)以外では、連合軍のユニットが運河橋と鉄道橋のヘクスサイドに初めて接触した時、橋梁爆破を試みることができます(映画『遠すぎた橋』でソン橋が爆破されるシーンのイメージです)。

成功率は3分の1(6面体サイコロで1か2の目が出たら成功)で、爆破された橋は一時的に使用できなくなります。連合軍は、第30軍団の工兵ユニットを用いて、爆破された橋を修復できます。ただし、サイコロで判定するルールだと、ゲーム全体の運・不運に偏りが出る可能性があるため、製品には専用の橋梁爆破マーカー(橋1つごとに1回、爆破の試みを行える)を計15個用意し、「橋梁爆破マーカーをカップに入れて、チットとして引く」形式でプレイできるようにする選択ルールを考案したのですが、誌面スペースの関係から本誌に収録することができませんでした。

そこで改めて「アルンヘム」の選択ルールを以下に発表します。ゲームをお持ちの方は、ぜひ下記のルールでプレイしてみてください。

12.2 橋の爆破に関する選択ルール
12.21 両プレイヤーが同意すれば、以下の選択ルールを用いて橋の爆破を判定します。
12.22 ゲーム開始時に、計15個の橋梁爆破マーカーを、マグカップなどの不透明な容器に入れておきます。そして、ドイツ軍プレイヤーは、橋の爆破を判定する機会が生じるごとに、サイコロを振る代わりに、このカップから無作為にマーカーを1個引きます。
12.23 もし、引いたマーカーの表面(縁にカーブがある側)に「爆破失敗」が印刷されていれば、爆破は失敗したものと見なされます。引いたマーカーの表面に「爆破成功」が印刷されていれば、爆破は成功したものと見なされます。
12.24 引かれたマーカーは、そのまま表面を上にして、該当する運河橋または鉄道橋のヘクスサイドに置かれます。
12.25 いったん引かれたマーカーは、連合軍工兵による修理でマップ上から取り除かれても、カップには戻さず、ゲームから除外されます。

計15個あるマーカーのうち、「爆破失敗=表」が10個、「爆破成功=表」が5個なので、1回目の確率はサイコロを振る場合と同じですが、ゲーム全体での「成功と失敗の確率」がほぼ均等化できます(爆破の試み自体が行われない橋もあるので、完全に均等化されるわけではないですが)。


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