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2009年10月12日 [ベアズ・クロウ(熊の爪)]

昨日は、大和八木で石田参謀長と新作「ベアズ・クロウ」の打ち合わせを兼ねた飲み会でした。

bearsclowunits.jpg


ベアズ・クロウ」は、初版のルールが九割方できあがり、地図の制作も六割くらい進んでいます。今日の午後から夕方には、ユニットの序列もほぼ確定しました。「スモレンスク会戦」は、ドイツ軍が41ユニットとソ連軍が46ユニット(後者は司令部6ユニットを含む)で、「ルーツク=ドゥブノ」はドイツ軍・ソ連軍とも各31ユニット(ソ連軍は司令部6ユニットを含む)となります。ちなみに「モスクワ攻防戦」は、ドイツ軍が79ユニット(KG・補給ユニットは含まず)、ソ連軍は137個(守備隊・司令部・スキー・工場も含む)でした。

ルールの方は、基本的には「モスクワ攻防戦」と共通ですが、ゲーム手順のシステムに新機軸を盛り込んでいます。「スモレンスク会戦」と「ルーツク=ドゥブノ」は全3ターン(追加で入れる北方のミニゲーム「街道上の怪物」は全2ターン)の構成ですが、1ターンにドイツ軍とソ連軍の移動フェイズと戦闘フェイズが各2回、そしてドイツ軍機械化移動フェイズを2回ずつ行うので、実質的には全6ターンのゲームで2ターンずつ組にして実行する形となります。

各ゲームターンでは、まず「両軍補給判定ステージ」で地図上の両軍のユニットについて同時に補給状態を判定(孤立や消耗はありません)した後、5回ないし6回の「作戦ステージ」を行います。各作戦ステージでは、ソ連軍プレイヤーが 「手順チット」と呼ばれる駒をカップからランダムに引いて、そこに示された側のプレイヤーが、示された内容の手順を実行します。

手順チットには「ドイツ軍移動/戦闘チット」と「ソ連軍移動/戦闘チット」、「ドイツ軍機械化移動チット」の3種類(各2個)があります。ドイツ軍移動/戦闘チットが引かれた場合、ドイツ軍プレイヤーは、この作戦ステージで、「ドイツ軍移動フェイズ」と「ドイツ軍戦闘フェイズ」を各1回、好きな順序で行えます。移動フェイズを先に行う場合には「移動→戦闘」の面(表面)を上にして、戦闘フェイズを先に行う場合には「戦闘→移動」の面(裏面)を上にして、その手順チットを「手順表示欄」のマス目に置きます。

ソ連軍移動/戦闘チットが引かれた場合、ソ連軍プレイヤーは、この作戦ステージで、「ソ連軍移動フェイズ」と「ソ連軍戦闘フェイズ」を各1回、ドイツ軍の場合と同様に、好きな順序で行えます。ドイツ軍機械化移動チットが引かれた場合、ドイツ軍プレイヤーは、この作戦ステージで、「ドイツ軍機械化移動フェイズ」のみを1回、行えます。

チットの順番は、基本的にはランダムですが、(1)第1ターンの1個目のチットは自動的に「ドイツ軍移動/戦闘チット」となること、(2)ソ連軍の手順が二度続くことはない(2個続けてソ連軍のチットが引かれたら、2個目をいったんカップに戻し、ドイツ軍のチットが出るまで引き直す)こと、(3)ドイツ軍の手順が三度続くことはない(3個続けてドイツ軍のチットが引かれたら、3個目をいったんカップに戻し、ソ連軍のチットが出るまで引き直す)こと、(4)5回の作戦ステージを完了した時点で、最後にカップに残ったチットが「ドイツ軍機械化移動チット」だったなら、即座にターンは終了し、「ターン終了ステージ」に移行すること(これは、史実でドイツ第4軍司令官クルーゲと第2装甲集団グデーリアンの間に発生したような、指揮統制面での対立や意見衝突の発生、およびそれに伴う限定的な「停止命令」を表しています)という、4つの制限があります。

ソ連軍プレイヤーは、各ターンにつき最低2回の「有効な反撃」を実行する義務があります(多く実行する分には、何回でもかまいません)。「有効な反撃」とは、ソ連軍の行う攻撃やオーバーランで、防御側のドイツ軍に「-(効果なし)」以外の結果が出た場合を指します。ソ連軍が1回「有効な反撃」を実行するごとに、ソ連軍プレイヤーはカップから1個「有効反撃チット」をランダムに引き、裏面を見ないで、地図上の「有効反撃ボックス」の、該当するゲームターンのボックスに置きます。「有効反撃チット」の裏面には、ソ連軍プレイヤーが獲得した追加勝利得点の数値(1~3VP)が記されています。

あるゲームターンが終了した時点で、義務として課せられた回数の「有効な反撃」を、ソ連軍プレイヤーが実行できなかった場合、ドイツ軍プレイヤーは、不足している回数と同じ数の「有効反撃チット」をランダムに引いて、地図上の「追加勝利得点ボックス」に置きます。この際、ドイツ軍プレイヤーは、チットの内容(そこに示された追加勝利得点)を見ることができますが、ソ連軍プレイヤーには見えないように、表面(?と記された面)を上にして配置しておきます。つまり、ソ連軍が反撃の義務を果たさなければ、本来自軍が得られるはずのVPが、ドイツ側に渡ってしまうわけです。

もし、ターンの途中でドイツ軍が「重要目標ヘクス」を占領し、地図上に「ドイツ軍占領マーカー」が置かれたなら、そのターンにソ連軍プレイヤーが実行しなくてはならない「有効な反撃」の回数は、「ドイツ軍占領マーカー」1個につき1回、増加します。例えば、地図上に2個の「ドイツ軍占領マーカー」が置かれたなら、ソ連軍プレイヤーはそのターンに計4回の「有効な攻撃」を実行しなくてはならなくなります。「重要目標ヘクス」は、「スモレンスク会戦」ではスモレンスクともう1ヘクス、「ルーツク=ドゥブノ」ではジトミールともう1ヘクスです(未定のヘクスは仮に決めてはいますが、テストの内容を見て調整する可能性大です)。

第2ターンのターン終了ステージで、ドイツ軍プレイヤーは自軍の勝利条件判定の基準を決定するチットを引き、ソ連軍プレイヤーに知られないように、内容を確認します。この判定基準は、ゲームが終了した後に継続して行われる作戦の戦略方針に基づいて、ドイツ軍プレイヤー(つまり個々の軍/装甲集団司令官レベルでの判断)の貢献度を測定するもので、ドイツ軍はプレイの途中まで、上層部(ヒトラー、陸軍総司令部、軍集団司令部)の戦略意図を把握できず、「スモレンスク会戦」であれば直進(モスクワ侵攻)、南転(史実の戦略)、北転(史実で検討された案)のいずれのチットを引くかによって、地図上の地理的目標ごとの獲得VPが変動します(敵部隊撃滅のポイントが高くなる場合もあります)。

ゲームの骨格は、だいたい以上のようなものです(前記した通り、移動や戦闘のルールは、現状では「モスクワ攻防戦」と同じですが、ドイツ軍の補給ユニットや、ソ連軍のカチューシャ、スキーといった特殊ユニットは登場しません)。基本システムが両方のゲームで有効に機能するよう、「スモレンスク会戦」と「ルーツク=ドゥブノ」の制作を並行して進めていますが、内容が固まったら「街道上の怪物」の方も共通システムで作り始める予定です(こちらはA3マップで、独ソ開戦時の国境から西ドヴィナ川の渡河までを扱います)。興味のある方は、ぜひご期待ください。
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2009年10月6日 [ベアズ・クロウ(熊の爪)]

昨日、文庫本『ロンメル戦記』の初校戻しと地図データを無事に学研さんへ発送しました(日曜はひさしぶりに完徹でした)。再校が出るのは来週なので、今週は心置きなくゲームデザイン関係の作業を進められます。

というわけで、今日は仕事部屋の片付けをした後、『ベアズ・クロウ』のデータ制作を進めつつ、

PK1.JPG

こんなのや

PK2.JPG

こういうのを少しプレイして研究していました。

もちろん基本デザインの目指す方向性は違いますが、特に後者は『ベアズ・クロウ』とテーマがかぶることもあり、良い部分はエッセンスとして吸収しつつ、プレイした人が既視感にとらわれないような新作に仕上げるのが目標です。傑作と見なされているゲームが、既に2つも存在するテーマ(1941年夏のスモレンスク会戦)に挑むのはなかなか大変な作業ですが、自分なりにベストを尽くして取り組みます。

当初の予定では、ハーフサイズのゲーム2つ(スモレンスクとルーツク=ドゥブノ)にするつもりでしたが、同時期の北方(国境付近)を扱うクォーターサイズ(A3)のゲームをさらに追加で入れるかもしれません(もちろん同一システム・同一コンセプトで)。とりあえず、地図とユニットを早く作って、基本システムのテストを開始するつもりです。
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2009年4月15日 [ベアズ・クロウ(熊の爪)]

今日は、以前に何度か軽く触れたことのある、東部戦線の新作作戦級ゲームの話題です。先日のアフリカ旅行では、飛行機の中で考えごとをする時間がたっぷりあったので、この新作の主題(テーマ)とその表現手法について、あれこれと考えを巡らせていました。前に告知した段階では、共通ルールを用いて時期ごと(1941年、1942年など)に数個のゲームを作るという漠然とした構想でしたが、そこからさらにテーマを絞り込んだ結果、まず第一弾として1941年7月のスモレンスク会戦と1941年6月のルーツク・ドゥブノ戦車戦(ドイツ南方軍集団戦区、第1装甲集団に対するソ連軍機械化軍団の大規模反撃)の2つを、共通の視点でパッケージにするという具体的なイメージが、かなり明確に浮かび上がってきました。

パッケージ(商品)のタイトルは、「ベアズ・クロウBear’s Claw)」。「熊の爪」という意味ですが、熊は言うまでもなくソ連赤軍の暗喩です。独ソ開戦直後のソ連軍は、指揮統制面で深刻な混乱状態に陥っており、モスクワの最高司令部は状況を正確に把握しないまま、闇雲に反撃の実行を命じていました。スモレンスク会戦もルーツク・ドゥブノ戦車戦も、遭遇戦に近い状況下で、ソ連軍の前線司令部はモスクワからの指令に基づいて手持ちの兵力をドイツ軍に叩きつけるような反撃を数度にわたって実行しましたが、強力な装備兵器を持つソ連軍の戦車師団は一時的・局地的にはドイツ軍部隊をパニックに陥らせたものの、統制のまずさとドイツ空軍の急降下爆撃による混乱ですぐに打撃力を失い、各個撃破されるか、または東への敗走を余儀なくされました。

このソ連軍の反撃を、寝込みを襲われて狼狽・逆上した「手負いの熊」に見立てて、両ゲームにおける全体的なイメージを膨らませてみました。ドイツ軍は、まだ完全には覚醒していない巨大な熊の場当たり的な反撃をかわしながら、急所に打撃を与えなくてはなりませんが、振り回される腕の先にある鋭い爪は、ほんのわずかにかすっただけでも相手に傷を負わせる威力を持ち、もし不運にも直撃を食らえば致命的な損害を被る可能性があります。従って、ドイツ軍プレイヤーは沈着冷静に状況を見極めた上で、自分の手番ごとに効果的な作戦を展開する必要があります。

対するソ連軍は、上層部からの絶対的な命令により、毎ターン一定数の攻撃やオーバーランを実行しなくてはなりません。この「攻撃強制」は、中黒さんの「モスクワ’41」にも含まれていたように、初年度のソ連軍が抱えていた指揮統制面での硬直を再現する上で有効かつ不可欠のルールだと思いますが、ターン開始時に「このターンは5回」という風に決定する方式だと、史実のソ連軍方面軍司令官が感じたであろう、理不尽さや(貴重な部隊をすり減らすことへの)焦燥感の再現という面ではやや不満が残るので、攻撃やオーバーランを1回実行するごとに、反撃実行チットを1個引くという方法を構想中です。

この反撃実行チットは、基本は全部で10個あり、うち5個には赤い星印がついていて、1ターンに3~5個(ターンによって異なる)の赤い星が出るまで、攻撃やオーバーランを実行する義務が継続します(これらの数はテストの結果を見て変更する可能性があります)。そして、もし(故意または不可抗力により)義務を果たさないでターン終了を迎えてしまったなら、次のターンでは赤い星の入っていない「ペナルティの反撃実行チット」を、前のターンに満たさなかった義務の数と同じだけ、カップに追加しなくてはならなくなります。例えば、あるターンに赤い星3個分だけしか攻撃義務を満たさずに終わったなら、次のターンには前記の10個プラス赤い星なしのチット2個の計12個をカップに入れなくてはならず、作戦の効果的な遂行がより難しくなるわけです。

この「作戦遂行の障害となる空チットを増やす」という方法は、一般的な「勝利得点にマイナス」という方法よりも、ソ連軍プレイヤーに心理的な圧迫感を与えられるのではないかと考えています。勝利条件のマイナスだけだと、冷静に割り切って頭を切り替えるような対応が可能となりますが、本来ソ連軍方面軍司令官が直面したであろう「攻撃実行の強制」とは、決して一過性の行動規制ではなく、頭を抱えて途方に暮れるような長期的な苦悩であったはずだと思われます(そして、似たような「トップダウンの行動強制」という事例はおそらく一般企業や官公庁でも存在していると思います)。実際に意図した効果が生まれるかどうかは、繰り返しテストしないと不明ですが、基本的には上記のような効果を狙ったルールを目指して、手法の検討を行うつもりです。

この2つのゲームにおけるソ連軍プレイヤーの課題は、無慈悲な独裁者スターリンから下される絶対的な攻撃実行の命令を遵守しつつ、自軍の損害軽減と土地の確保という、相反する副次的条件を満たすことにあります。この、後者の条件は、必然的にドイツ軍の勝利条件ともリンクしますが、ドイツ軍プレイヤーは一般的な作戦級ゲームのように、ゲーム開始時に明確な勝利条件を知ることはできず、土地占領(=前進距離)優先と、敵兵力の撃滅優先、および両者の中間という、3種類の「勝利条件」のいずれかを、ゲームの途中で(ソ連軍プレイヤーからは秘匿した形で)知ることになります。

私が過去に書いたいくつかの記事や文庫本でも触れましたが、バルバロッサ作戦の実行段階において、ドイツ陸軍参謀本部と各軍集団司令官、そして各軍/装甲集団司令官の間で、明確な「目標の優先順位のすり合わせ」が行われておらず、極端に言えば「同床異夢」のような形で、ソ連領内へと雪崩れ込んでいきました。陸軍参謀本部は、基本的には前年の対仏戦で見事な効果が証明された「ソ連軍の兵力撃滅」を優先する方針を抱いていましたが、第2装甲集団司令官グデーリアンや第3装甲集団司令官ホートらは、作戦の第一段階である「ドニエプル川到達」を達成した後の目標について、それぞれ異なった考えや疑問を抱いており、1941年7月のスモレンスク会戦でもそうした齟齬が表面化していました。

具体的には、第2装甲集団司令官グデーリアンは、究極的な進撃目標としてモスクワを常に念頭に置いた形で作戦を実行しており、スモレンスク会戦中にも次の段階である「モスクワへの進撃」を前提とした、イェリニャをはじめとする土地の確保を重視する方針をとっていました。これに対し、第3装甲集団司令官ホートは、北東方向への進撃を望んでいましたが、とりあえず陸軍参謀本部の基本方針である「ソ連軍の兵力撃滅」を優先し、スモレンスク周辺で孤立したソ連軍の大兵力を北から包囲するような形で、作戦を実行しました。その結果、スモレンスク会戦は全般的にはドイツ軍の勝利に終わったものの、ソ連軍はスモレンスク包囲陣から限定的ながら部隊を東に脱出させることに成功し、その中には後に元帥/ソ連邦英雄となるロコソフスキーらの名将も含まれていました。

コマンド誌の付録となった平野さんの「スモレンスク」は、ドイツ軍プレイヤーの視点をグデーリアンに限定するという大胆な手法で、この指揮統制上の齟齬という問題を見事に表現することに成功しており、同ゲームは対戦ゲームとしてはもちろん、スモレンスク会戦のシミュレーションとしても非常に優れた仕上がりになっていると私は考えています。ただ、私はホートとグデーリアンの齟齬という具体的な事例ではなく、この戦いが終わった後の段階(に関する中央軍司令官ボックや陸軍総司令官ブラウヒッチュ、そして最高司令官ヒトラーの構想)があやふやな状態のまま、会戦の前半を戦わなくてはならないという、ドイツ軍野戦司令官の内面的な不安をストレートに表現しようと思い、上のようなシステムを考案しました。これについても、実際の効果が意図した通りに出るかどうかはテストの結果次第ですが、デザイン上の目標は上に掲げたような問題点の表現にあります。

基本的なゲームシステムは、第11号付録「モスクワ攻防戦」の晴天ターンのルールとほぼ共通で、地図(両ゲームともハーフサイズ)のスケールはスモレンスクが1ヘクス=16.8km、ルーツク・ドゥブノが15.4kmです(モスクワ攻防戦は17.2kmでした)。ユニットの規模も、ドイツ軍は師団(KGのサブカウンターもあります)、ソ連軍は2個師団または1個軍団(すべて戦力未確認)と、「モスクワ攻防戦」とほぼ同じです。ただ、遭遇戦特有の不安感を両軍プレイヤーに実感してもらうために、ゲーム手順を固定化せず、多少変動させるような方法をいくつか検討中です。初期配置は、「モスクワ攻防戦」と同様に固定しますが、最初にどちらが動けるかを変動させることで、両軍とも臨機応変な対応を強いられることとなります。

ゲーム地図の作成は既に開始しており、他の仕事を進めつつ、合間の気分転換などを兼ねて少しずつ形にしていく予定です。前回の「モスクワ攻防戦」は、1日で最後まで終わるゲームというのが目標でしたが、今回は「1日で裏表2回」または「1日で両ゲームを1回ずつ」終わるゲームに仕上げるというのが目標です。新たな進展がありましたら、本ブログで報告しますので、興味のある方はぜひご期待ください。
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