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2013年11月27日 [その他(戦史研究関係)]

学研パブリッシングさんより12月3日発売予定の、マララ・ユスフザイさんの自伝『わたしはマララ』の見本が、私の手元に届きました。

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ご存知の方も多いかと思いますが、パキスタンで女子が教育を受ける権利を訴えてタリバンに殺害されかけた少女マララさんの、現在までの足跡を記した興味深い1冊です。価格は1680円です。

マララさんの自伝『わたしはマララ』には、私も「編集協力」という形で関わっています。監修というほど大層なものではありませんが、固有名詞の訳語や、日本では馴染みのない人物・組織についての補足、文脈から見た誤訳チェック、詳細な地図を参照した記述内容の確認などを行いました。

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上の写真は『わたしはマララ』の仕事で用いた参考地図の一つ。ソ連軍参謀本部制作の20万分の1パキスタン地形図の上で、本文に現れる地名をマークし、原著の英文と訳文を対照して、意味を取り違えた訳文になっていないかを確認しました。険しい峡谷が描かれた現地の地形図を見ながら読むと、さらに想像力が膨らみます。

また、仕事中は以下のような動画も頻繁に鑑賞し、自分もスワート渓谷で過ごしているような気分に浸りながら、各種の作業を進めました。


マララさんを主題にした、ニューヨーク・タイムズのドキュメント番組「Malala Yousafzai Story」(2009年制作、2012年10月10日公開)。【閲覧注意】短い時間ですが、タリバンに殺害された人の遺体の映像などもあります。


上のドキュメント番組のダイジェスト版「The Making of Malala」。マララさんがノーベル平和賞にノミネートされたことを受けて、2013年10月7日に公開されました。


マララさんの国連での演説(2013年7月13日、アルジャジーラ)。何度聴いても、心が震えるような「演説」です。その内容を訳した文章は、この本の巻末に収録されています。

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世界で最も勇敢な少女(The Bravest Girl in the World)
マララさんのCNNとのインタビュー(2013年10月11日)。動画とテキストの両方が掲載されています。聞き手はクリスティアン・アマンプール。

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Malala Yousafzai Extended Interview
上は、マララさんがアメリカのケーブルTV局「コメディ・セントラル」で放映されている風刺番組「デイリー・ショー」にマララさんが出演された時の公式動画(2013年10月8日)。パート1からパート3まであります。国連演説とCNNのインタビューなどと共に、こういう娯楽番組にも出演されたという事実に驚かされますが、名物司会者ジョン・スチュワートの突っ込みに全く物怖じすることなく、ウィットの効いた切り返しで会場を沸かせているのは、やはり凄い人だなと思います。

マララさんの自伝『わたしはマララ』は、彼女と同年代(16歳!)の少女が読んでも内容を理解できるよう、文体や訳語にも工夫が凝らされています。彼女やパキスタンの人々、特に女性たちがタリバンから受けた仕打ちは、命にかかわる「いじめ」のようなものですが、彼女は繰り返し脅迫を受けてもなお毅然とした態度で彼らに立ち向かい、銃撃された後も自らの信念を貫く姿勢を崩してはいません。

現在の日本社会でも、理不尽な物理的・精神的「いじめ」に苦しんでいる大人や子供は少なからずいると思いますが、そんな人がこの本を読めば、きっと強く勇気づけられるだろうと思います。本の形に編集して仕上げる作業については、クリスティーナ・ラムという女性ジャーナリストが手伝っていますが、内容のほとんどはマララさん本人が書いたと見て間違いないと私は考えています。

また、英領インドから分離独立する形での建国から現在に至るパキスタン現代史や、同国におけるムスリム(イスラム教徒)の日常生活と文化を知る教材としても、非常に内容が充実していて、お薦めできる一冊です。

なお、この本の収益の一部は、世界中の子供の教育支援を行う国際NPO「マララ基金」に寄付されます。私も、今回の仕事でいただく報酬の半分を、この基金に寄付するつもりです。


【追記】

シックス・アングルズ別冊第10号『パンツァークリーク』の校正刷りが、昨日台湾より到着しました。内容をチェックしてゴーサインを出せば、いよいよ最終印刷工程に入ります。

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2013年11月25日 [その他(戦史研究関係)]

今日は告知をひとつ。ベストセラーズさんの『歴史人別冊 世界史人』「ヒトラーとナチスの真実」が発売となりました。

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私の担当記事は32ページで、ヒトラーのオーストリア併合からチェコスロヴァキアへの段階的侵蝕、1939年の対ポーランド戦(第二次世界大戦の勃発)から1940年の北欧(ノルウェー)と西欧(ベネルクス三国とフランス、イギリス)、そして北アフリカ戦線でのロンメルの活躍までを、一連の流れとして解説する「ナチスの欧州電撃戦の全貌」(12ページ)と、1939年の独ソ不可侵条約締結から1941年6月の独ソ開戦、キエフ包囲戦とレニングラード包囲戦、モスクワ攻防戦、1942年のスターリングラード攻防戦、1943年のクルスクでのツィタデレ作戦、1944年の白ロシアでのバグラチオン作戦、そして1945年のベルリン攻防戦とヒトラーの自決までの独ソ戦全体をわかりやすく解説する「ドイツ軍対ソ連軍 1416日の死闘」(20ページ)の2パートに分かれています。

後者のパートでは、独ソ戦に関する戦況図10点の制作も担当しています。

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上の画像は私が制作した戦況図の一つ。独ソ戦の概要を、予備知識のない人にもわかりやすく解説するための見開き地図で、本文記事とリンクしています。

全国の書店やコンビニで発売中、価格は税込で680円です。私の担当ページ以外も、大澤武男さんのヒトラー伝や、金森誠也さんによるナチ幹部の人物伝、芝健介さんのホロコーストに関する記事など、一般の読者だけでなくマニアの人にも読み応えのある記事が満載です。

ただ、ここで一つお詫びと訂正を。P99で「対戦車ロケット」とあるのは「対戦車擲弾発射機」の誤りです。著者校正でうっかり見落としてしまい、編集部へ急いで連絡したのですが、もう既に校了後で間に合いませんでした。申し訳ありません。ただ、兵器マニアの方を別にすれば、本文の記述内容への影響はほとんど無いと思います。

さて、今月も最後の週となりましたが、シックス・アングルズ別冊第10号『パンツァークリーク』は既に台湾で印刷工程に入っています。数日中に校正刷りが届く予定で、それをチェックしたら本格的な印刷が開始され、来月初頭に製品が私の手元へ届くことになるはずです。

最終的な「プレオーダー発送日」の発表は、月末か来月頭になるかと思いますが、プレオーダーの募集はその発送日の前日まで行います。今回は初めて、海外からのプレオーダー受付を開始(英文ルールのPDFを後で公開するという約束で)していますが、既に何件も注文が届いており、別冊第3号『クルスク大戦車戦』の時と同じような売れ行きパターンになるのでは、と考えています。

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2013年11月15日 [パンツァークリーク]

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シックス・アングルズ別冊第10号『パンツァークリーク』の制作が、ようやく完了しました。本日、マップやユニット、チャート、本誌などの各種データを、サーバ経由で台湾の印刷所に入稿しました。正式な発売日は、印刷所からの返答を得た後、近日中に発表しますが、プレオーダー分の発送は12月上旬となる予定です。

別冊第10号『パンツァークリーク』プレオーダーページ

過去の「ウォーゲーム・レトロスペクティブ」シリーズの製品と同様、今回の日本版も、原版や過去の復刻版にさまざまな付加価値を加えた形で出版します。具体的には、コンポーネントの改良やルールの明確化、正誤表の反映などですが、購入された方がスムーズに「最初のプレイ」を行えるよう、練習用のミニシナリオを追加することも、シックス・アングルズの製品ならではの特徴だと思います。

別冊第3号『クルスク大戦車戦』と、別冊第4号『砂漠のキツネ』、別冊第5号『戦略級 日露戦争』でも、練習用のミニシナリオと専用マップを製品に同梱し、好評を博しました。これらはいずれも、ゲームシステムが特徴的である反面、プレイヤーの裁量の幅が大きいため、初めてプレイする際には、どこに重点を置いて何をすればよいのか、困惑することも多いのでは、との配慮から、フルマップを広げなくても手軽にプレイできる、オリジナルの「ゲームシステム練習用」ミニシナリオを制作しました。

今回の『パンツァークリーク』でも、練習用ミニシナリオを追加した理由はほぼ同じですが、さらに今までとは違う「ある試み」も織り込んでみました。それは、本誌に収録した「リプレイ記事」との連動、という形式にすることで、記事の「結末」をプレイヤーが自らの手で確かめられるようにする、というものです。

今号に収録したリプレイ記事は、シナリオ7「ドニエプル渡河作戦」の対戦リポートで、1943年10月2日から12月21日までの、ソ連軍のドニエプル川西方への攻勢と、ドイツ軍の機動防御がテーマです。しかし、実際に記事で紹介しているのは、全11ターンのうちの7ターンまでで、第7ターン終了時の両軍の配置を記録にとり、この続きの第8ターンから第11ターンの4ターンを「練習用ミニシナリオ」という形式にしたわけです。

ご存知の方も多いかと思いますが、『パンツァークリーク』の初期配置は、両軍ともかなり自由度が高く、一部の例外を除けば、開始線より自軍側では好きなようにユニットを配置できます。これは、逆に言えば、ゲームシステムに習熟するまでは、何が最善なのかわからず、ユニットを並べる作業における心理的な負担というか「敷居」が高いという問題を意味しています。しかし、練習用ミニシナリオは、両軍ともユニットの配置へクスが決められた固定式で、しかもゲームマップを2つに折り畳んで、ハーフサイズのマップでプレイできる形式になっています。

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上は、ミニシナリオを説明する本誌のページ。まず右下のチャートに従って必要なユニットを用意し、それを指定されたヘクスに配置します。

シックス・アングルズの「ウォーゲーム・レトロスペクティブ」シリーズは、単に希少価値のある「コレクターズ・アイテム」を再版するだけでなく、希少価値ゆえにプレイされる機会が少なかったと思われるこれらのゲームを、実際にプレイしていただき、ゲームシステムやそこでプレイヤーの心理に投影される「映像」が、よりクリアに描き出されるようにする、ということを目標にしています。

別冊第10号『パンツァークリーク』も、東部戦線南部という魅力的なテーマを題材としたマルチシナリオのゲームで、一度システムをマスターすれば、かなり長い時間にわたって楽しんでいただける作品だと思います。しかし、原版の『フォン・マンシュタイン』が1975年にランド社から発売された後、OSG社とアバロン・ヒル社、CoSi社から復刻再版されたものの、それぞれのバージョンでルールやコンポーネント上の問題点を抱えていました。

今回のシックス・アングルズ版は、これらのバージョンの問題点を全て解消した上、さらにプレイヤーの利便性を高める工夫を凝らした「決定版」とも言える自信作です。この機会にぜひ、ジョン・プラドスの傑作を楽しんでいただければと思います。

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シックス・アングルズ別冊第10号
パンツァークリーク
2013年12月上旬プレオーダー発送予定
2013年12月店頭発売予定

限定600部
小売価格 7140円(本体6800円)
プレオーダー価格 6615円(本体6300円)

シックス・アングルズ別冊第10号の内容紹介ページ
※マップやユニットの見本をご覧いただけます。
 
《プレオーダー特典》
本体価格約500円割引
店頭発売5日前に発送
送料無料(ヤマト運輸メール便にて発送)
二冊以上ご注文の場合は宅急便にて翌日配達指定
ドイツ陸軍参謀本部作成の戦況報告用地図
 「Lage Ost(ラーゲ・オスト)」南方軍集団戦区
 のコピー(A3判白黒)を添付
希望される方のみ、日本版発行人のサインを製品にお入れします。

《プレオーダー同時注文特典》
「独ソ戦コレクション」のプレオーダーと同時に、
 第14号「ベアズ・クロウ」(通常価格5460円)
 別冊第7号「ウエストウォール」(通常価格7140円)
 別冊第8号「東方への突撃」 (通常価格6090円)を
 ご注文いただいた場合に限り、それぞれ3割引の価格
 でご提供いたします。商品は、別冊第9号と同梱して
 発送いたします。


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今回も、従来のプレオーダー特典に加えて「プレオーダー同時注文特典」をご用意いたしました。「ベアズ・クロウ」「ウエストウォール」「東方への突撃」共に数量限定生産ですので、品切れとなり次第、特典販売も締め切りとさせていただきます。
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2013年11月10日 [その他(戦史研究関係)]

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今日は告知をひとつ。『歴史群像』誌最新号(第122号)が発売されました。私の担当記事は「戦略分析 ブラウ作戦」。最初は「戦役(キャンペーン)」として立案された同作戦の構造が、ヒトラーの場当たり的な干渉によって変質していく経過を示した図版(後述)なども織り交ぜながら、コーカサス油田を目指す1942年のドイツ軍夏季攻勢を、戦略と作戦の観点から分析した内容です。

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今回も「通り一遍」の記事ではなく、様々な新しい情報と新しい視点・切り口を提供できたのでは、と思います。従来の戦史書ではわかりづらかった(というか、きちんと違いを説明した本が見当たらない)「ブラウ作戦」「ブラウンシュヴァイク作戦」「エーデルヴァイス作戦」の違いや区分も理解できるはず。

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実は、テキストだけでこれらの変遷を説明したのでは、読者にわかりづらいだろうと思われたので、今回は原稿と一緒に「作戦構造の変遷図」と「ヒトラーによる修正指示の一覧」を編集部に送りました。最終的な記事にも、それらは掲載されていますが、この図と本文を併せてお読みいただければ、ドイツ軍の「ブラウ作戦」が最終的な失敗に終わるまでの期間に、どれほど異様な道をたどったかを理解していただけるかと思います。

本文では触れる余裕がありませんでしたが、作戦目標の優先順位の曖昧さ、敵情把握の失敗と敵兵力の著しい過小評価、指導部における根拠のない慢心と楽観、場当たり的な方針変更など、多くの点で「ブラウ作戦」と「ミッドウェー海戦」は似通っているようにも思えます。両方とも(前者は開始日、後者が実行日)1942年6月というのも因縁めいています。

ところで、上の写真は最近近所の100均(100円均一ショップ)で購入した「ブックスタンド」に立てて撮影したものです。

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ハードカバーや文庫本、無線綴じや中綴じの雑誌など、なんでもページを開いたまま固定できます。これは便利! 昔、似た道具を自作しようとしたことがありますが、失敗しました。物書きの仕事には、大いに役立つアイテムだと思います。

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右が立てた状態。左は折り畳んだ状態。スチール製で適度な重さがあるので、軽い文庫本でも安定しています(裏にはゴムの足つき)し、逆にハードカバーの本でも重みで倒れたりしない構造。シンプルだけど、実用性はかなり高いです。これだ、私が求めていたものは!
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